- 『日差し 序章』 作者:オキノ / 未分類 未分類
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今は朝の7時。
父さんは、まだ上の部屋で寝ている。
なにせ、今日は会社が休みだから。
いや、会社があろうとなんだろうと、父さんは朝遅い。
何故かというと、それは、父さんの息子の僕がよく分かっている。
父さんは会社なんて行く気はさらさらなくて、毎日を家でぐうたら過ごしている。
だから、家事全般はほとんど僕がやっていた。
何故父さんはこんな風になってしまったのだろう?
その理由は僕にも分からなかった。
ずっと前までは、優しくて働き者の父さんだったのに。
今では、僕と話そうともしない。
学校の授業参観にも出ないし、何もしていないのにしょっちゅう睨まれる。
こんな生活、もう絶えられなかった。
だから僕は心の中で決心を固めた。
この家を出よう、と。
もちろん、置手紙も挨拶もしない。
息子が家出したって、父さんは気にもしないだろう。
最初は、なんとか父さんに好かれようと努力していた。
だが、後々考えてみると、息子に心を開かない父親に、
愛情なんて求めても仕方がない。と思うようになったのだ。
そして今日、僕はあの苦しい生活から開放されるのだ。
リュックに自分の荷物を一切詰め込んで、ボロボロのスニーカーを履いて、
家を出た。
これであの生活ともおさらばだ、と思うと、心の中に日差しが差した。
僕はあの家を、一度も振り返らずに学校へと行った。
この清々しい気持ちに、僕はため息をついた。
閉じこもっていた殻を破って、体を自由に伸ばせるような気持ちだ。
まだ学校へ行くには早いが、僕は気にせず、学校へ向かった。
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2005/08/12(Fri)12:51:03 公開 / オキノ
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■作者からのメッセージ
どんな作品にしようか迷いましたが、こんな話になりました。
序章が短くなってしまいました(汗)
次からは長くするつもりです。