- 『バスケットマン 第二話〜第五話』 作者:冬扇 / 未分類 未分類
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 第二話 「決着」
 
 「チュース」
 と言って体育館に部員らしき人が入ってきた。
 「キャッ、キャプテン!?何してるんですか?」
 「見て分からんか、1on1だ。邪魔するなよ。」
 そう言うと彼らは黙ってこちら見ていた。
 「観客か。いいぜその方が俺はヤル気が出るからよ。」
 「減らず口が。あと1ゴールでお前の負けなんだぞ。」
 たしかにあのあと点差は1点から開いちゃいないが9対8で俺が負けている。
 ダンダン パシュッ
 俺のシュートは入るがこのままじゃどのみち次で終わりだ。そう思っているといつのまにか見物人が増えていた。
 「バスケ部のキャプテンと謎の男が勝負しているぞ。」
 「マジかよ。見に行こうぜ。」
 するといつの間にか体育館は人でいっぱいになっていた。
 「さぁ、あと一点だぞ。やはり口だけの男か。」
 「チクショー。」
 このままじゃギャラリーの前でとんだ大恥をかいちまうぞ。俺はそう思い必死だった。
 「あの男どこかで。」
 「二ノ宮さん。」
 どうやら彼は副キャプテンらしい。
 「たしかどこかで……そうだ思い出したぞ。奴は鷹取中のエース三谷俊行だ。」
 「三谷?」
 「奴は伝説の男だ。」
 そう言うと男は語りだした。
 「あれは去年の県予選を見に行ったときだった。」
 
 
 ダンダンダンダン  パシュッ
 「おぉーあいつまた決めたぞ。」
 「これで42点目だ。」
 衝撃だった、奴は本物だったんだ。彼にボールが渡るたびに館内がどよめいたんだ。さらに中学生でありながら試合中にダンクも決めて見せる男だった。その後試合は106対57で鷹取中が圧勝。さらに、三谷はその試合、得点74 リバウンド15 スティール11 ブロックショット13と言う驚異的な数字を残したんだ。しかし、彼は準決勝から姿を見せなかった。文字どうり消えたんだ。
 
 「とっ、得点74!?」
 「それだけでも凄いのに、ほかも全て2ケタ以上。」
 「ほんとに中学生なんですか彼は。」
 「そうだ、だがその男を完璧に抑えているのは桐谷なんだ。」
 「さすがはキャプテン。全国区って言われているのは本当だったんだ
 。」
 確かに皆そう思っていた。だが実際に押されているのは桐谷の方だったんだ。
 (やはりこいつは相当の実力者だ。俺が点差を開けられないほどの相手は久しぶりだ。)
 「だがこれで終わりだ。」
 彼がそう言ったとき三谷という男が覚醒した。
 ドカ!!  ダン ダン ダン
 音と共に桐谷の手からボールが弾かれた。ボールが転がっている。だが桐谷はそれを拾おうとしない。なぜ?桐谷は固まっていたんだ。動けないほどの衝撃が体中を走ったのだ。
 「ハッ。」
 桐谷気付きボールに駆け寄った。しかしそこにいたのは、三谷だった
 。
 「取り。」
 三谷は笑った。桐谷は驚きを隠せずにいた。そのとき桐谷が思ったのは、
 (こいつは本物だ)
 その後三谷がドリブルをつき始めた。
 ダン ダン ダン ダン
 そして急にドリブルを速くつくとあっというまに桐谷を抜き去りそのままゴールに向かって、
 ドカン!!!
 ダンクを叩きつけたのだ。
 その後、数分の間館内のどよめきが止まらなかった。三谷は桐谷に向かって言った、
 「救世主参上」
 
 
 
 だが遠くで三谷を静かに見ていた一人の男がいた。
 「三谷俊行やるじゃん。」
 
 第三話「生意気二人目、嵐の予感?」
 
 
 あれから一週間がたった。あの桐谷とか言う奴に勝ってから皆俺の噂をしている。
 「ねぇ、あれでしょう。」
 「そうそうあのバスケ部のキャプテンを倒したんですって。」
 「しかもかなりの不良らしいよ。」
 「え〜マジ〜。じゃあこのクラスを仕切るのも時間の問題じゃない。
 」
 「怖〜い。」
 てな感じだ。だがそれより何より気に食わないのはあいつなんだ。あのキャプテン実は………
 
 あのあと、
 「キャプテン、足の怪我は大丈夫ですか。」
 「あぁ、大丈夫だ。」
 「何ーー!!」
 
 
 あの野郎怪我してやがった。それなのに俺がぎりぎりでしか勝てなかった。バケモンだ。
 「たくほんとにここのバスケ部は毎年一回戦負けのチームなのか?」
 俺が、そんなことを言いながら職員室に入部届けを出しに行っていると俺と同じくらいの身長の奴に会った。(ちなみに俺の身長は189cm)
 「お前もバスケか?」
 「………」
 顔色変えずにしかとしやがった。むかつくやろーだ。入部届けを出したらやっぱり奴もバスケ部だった。名前は、「新垣慎也」どっかで聞いたことがあるな。ま、いっか。
 自分の教室に帰るとき新垣と並んでいたら女子がこっちを見ている。
 「意外ともてるんだな俺って。」
 なんて思ってたら自分の教室についた。そしたら女子は俺ではなく新垣のほうを向いている。今決めた奴は俺のライバルだ。
 それから、俺は練習着に着替えて体育館に行った。
 「1・2・3……9人か。」
 そしたら、
 「全員集合!新入部員も集まれ。」
 「はい!」
 集合のようだ。ほかの奴らは皆緊張しているように見えた。
 「まずは自己紹介をしてもらう。」
 キャプテンがそう言うと一人めが少し驚いた様子で答えた。
 「いっ1年2組の山田です。」
 やはり緊張しているようで少し声が裏返っていた。すると次はあの「
 新垣」だ。
 「1年6組の新垣慎也です。身長は187cm。ポジションはどこでも出来ます。」
 奴の名前を聞いたら周りがざわついた。
 (新垣ってあの新垣か?)
 (そうだよ。あの強豪「麒麟中」のキャプテン新垣だって。)
 まだざわつく周りを黙らした一言が飛んだ。
 「ざわつくんじゃない!次早く自己紹介しろ!」
 一瞬にして黙っただけではなく完全な姿勢になったのだ。しかも、それが1年だけじゃなく2年までつられて姿勢をとったのだ。
 「次!いないのか!」
 「え〜1年3組三谷俊行。身長は189cm。ポジションはPF。」
 (PFとはパワーフォワードのこと)
 「以上だな。次は俺たちが自己紹介をする。3年の桐谷剛司。キャプテンだ。」
 「同じく3年の二ノ宮英司だ。副キャプテンをやっている、よろしくな。」
 迫力のあるキャプテンと優しそうな副キャプテン。見た目からもこの二人は正反対のようだ。
 「2年の安原です。」
 「同じく2年の大谷です。」
 「2年の桑原です。あと一人2年がいるけど入院中なんで退院したらわかります。」
 淡々と自己紹介をしてさっと終わらした。がちがちの1年とはまるで逆だった。まだ緊張している奴がいるくらいだからだ。
 「さて、うちの目標は全国制覇だから練習が厳しくなるからな。やめるなら今のうちだぞ。」
 しかし、そう言われて怖気ずく奴はいなかった。さっきとは打って変って全員が堂々としていた。キャプテンは少し笑い、
 「よ〜し、南六〜ファイ!」
 「オォシ!」
 静かな体育館で大声を張り上げたためか、それとも気のせいかわからないが体育館が少し揺れた気がした。
 「まずは、いきなりで悪いが2対2だ。」
 「はい!」
 「それから、三谷、新垣、お前たち二人はチームだ。」
 「なっ、それはちょっと。」
 「何かな三谷君〜?」
 笑顔のようだが、内には仁王像のような顔が隠されていることに俺は気付いた。
 (殺される!)
 そう思った俺は、
 「いえ何も。」
 そう答えた。てかそう答えるしか俺が生きる道はなかったように思えた。
 「よし始めるぞ。」
 これが嵐の始まりだった。
 
 
 第四話「嵐の始まり。遅れた人その名は…」
 
 
 大きな音を立てて揺れるボード。それは彼もといバスケ部キャプテン桐谷剛司のダンクが原因だった。
 「おーし。さぁドンドン来い!」
 そう桐谷が言うと次のチームが入る。しかし、
 「とうりゃ!」
 けたたましい轟音と彼の掛け声が一緒になると体育館を一瞬の静けさが襲った。その風貌だけでみな怖気ずいてまともにシュートにいけないのが現実だった。
 一人は、
 (殺される〜)
 一人は、
 (やめて〜)
 等を思っていた。さらにその怪物、桐谷と共にチームを組んでいる彼二ノ宮がこれまた曲者だった。この南六高校バスケ部のキャプテンが桐谷になってから一人、また一人部を去って行く中で彼は残った。体格からして正反対の彼らはお互いが心から信頼できる親友以上の存在だった。この、二ノ宮が桐谷を上手くサポートしてダンクを決めさせていたのだ。
 「次!」
 彼がそう言うとまた別のチームが入ってきた。しかし、ほかのチームとは違い彼桐谷に対する恐怖心などまったく抱いていなかった。
 「二人だけのチームで代えはイネェからな途中でへばっても我慢しろよ。」
 と三谷が言う。すると、
 「うるせぇ。てめぇこそ足ひっぱんなよ。」
 と新垣が言う。両方とも味方と思っていないようだ。
 「さっさとせんか。お前らからだぞ。」
 拳骨と共に桐谷が言った。まだ文句を言いながらも、しぶしぶ引いてやっと始まった。
 ダン ダン ダン
 静かにボールをつく新垣。ほかの部員がやっているときとはまるで違ってみな静かに固唾を飲んで見ていた。体育館は異様な静けさになっていた。まるで嵐の前の静けさのようだった。
 (麒麟中のバスケ部キャプテンの実力が生で。)
 (鷹取中の伝説の男のプレーがこの目で。)
 皆ひそひそと喋っていた。
 するといきなり、ボールを速くついたかと思うとあっという間に二ノ宮を抜き去り桐谷の前へ。
 (奴の腕前を確かめてやる。)
 すると、新垣は桐谷の目の前で止まるとそのままシュートを打った。
 (入った。)
 と、そう思った新垣の目の前に桐谷が現れてそのボールを弾いた。
 「出たー、キャプテンの【スラムショット】」
 部員の安原と大谷が大声でそう言った。
 「スラムショット!?」
 「まるでバレーのスパイクだ。」
 ほかの一年がそういった。そして、その弾いたボールを二ノ宮が取って速攻に出ていた。
 「バカタレ、アホタレ、自滅やろー。」
 三谷はそう言うと、レイアップでシュートに行った二ノ宮のボールを弾きそのままカウンターに出た。強くボールをつく三谷、そのスピードは並みの選手じゃ止められないほど速かった。そのままダンクに行った三谷それをまた弾く桐谷。
 「一人で勝てるほどバスケは甘くないぞ。」
 そう言って、二ノ宮にロングパスを出しそのパスを受け取った二ノ宮がシュートを打った。
 パス
 「さぁ、次!」
 そしてこの負けがさらにこの男たちを熱く燃え上がらせたことにまだ誰も気付いてはいない。
 もう一度順番が回ってくるまで静かに二人のプレーを見ている三谷と新垣。コートの上では鉄壁のディフェンスを誇る桐谷と冷静に周りを見て桐谷を活かしている二ノ宮。この二人が相手では他の2年ですら止めることは出来なかった。ましてや、1年なんかは話にならなかった。するとその時、
 「チワース。遅れました。」
 そう言って一人の女が入ってきた。
 「何だ綾子か。」
 そう、キャプテンが言った。
 「あ、新入部員ですか?一応挨拶しときましょうか?」
 「そうだな。よし、一旦休憩だ。よし自己紹介だけでいいからな。」
 「は〜い。えっと、マネージャーの〔溝渕綾子〕です。よろしく。」
 皆あっけにとられているようで黙っていた。すると、
 「こらこら、先輩が挨拶してんのよ。返事は?」
 なんとも気さくなマネージャーのようですぐにその場を取り仕切ってしまった。急に振られたんで、少し動揺していた1年がそろって、
 「はっはい!よろしくおねがいします。」
 「それでよろしい。」
 なかなか逆らえないマネージャーのようだ。すると、桐谷が
 「よし、続きを始めるぞ。」
 「はい!」
 皆がそう言って、体育館に活気が戻った。さっきまでの静けさとは打って変って皆が声を張り上げていた。その為か、やはり体育館が揺れていたのだ。
 そして、じっと見つめる三谷と、新垣の視線はどことなくさっきよりも輝きが増していた。
 (次は、絶対勝つ!)
 そう心に秘めた二人だった。勝つためには二人の力を合わせなくてはならない、嫌ではあったが渋々そうすることに決めた、三谷と新垣はある作戦を持って次の戦いに備えていた。
 そして、ついにその時が来た。
 「次!これでラストだ。声出してけよ。」
 「はい!」
 二人は少し笑いながらコートに出た。
 (勝つ)
 それだけを胸に秘めて。
 
 
 第五話「必勝、そして練習試合」
 
 
 その戦いはまだ続いていた。桐谷のブロック、三谷のブロック、互いに一歩も引かない戦いだった。
 「二ノ宮打てー」
 桐谷がそう言うと二ノ宮がシュートを打とうとしてきた。しかしそれを、すかさず新垣がブロックした。
 「何!?」
 二ノ宮が驚いた。完全なフリーと思って打ったシュートだったからである。すると新垣が、
 「おい、スットコドッコイ、速く走れ。」
 新垣が偉そうにそう言うと、三谷も、
 「うるせー。もう走ってらい。」
 「何!?」
 部員たちだけではなく、コートに居た桐谷と二ノ宮も声を合わせていった。そう二人は圧倒的に速かった。誰も追いつけないと思ったその瞬間、ドテ。そう言って、三谷はこけた。
 「このどあほう、ふざけてんじゃねぇ。」
 新垣はそう言った。すると、
 「うるせぇ、仕方ねぇだろが。」
 三谷はそう言った、今で言う逆切れという奴だ。すると、一瞬のうちに桐谷と二ノ宮はあっという間に追いついていた。
 「お前らが、アホやってたおかげで助かったぜ。」
 桐谷が、バカにした口調で言った。すると新垣は、
 「まぁ、いいか。おい、どあほうあの作戦やるぞ。」
 「チッ、やっぱやるのか。だがしくじんなよ。」
 二人は追いつかれたからといって動揺はしていなかった。逆に少し笑っていたように、少なくともコートで戦っている彼らにはそう見えたようだった。
 (こいつら、何かやるつもりだな。)
 桐谷は何かを確信したようだった。だが、だからといって自分の持ち場であるゴール下からは動かなかった。それがセンターの宿命のようにも思えた。静かに、ボールをつく新垣。そして、見計らったかのように三谷が二ノ宮に近づいた。
 「これは!二ノ宮スクリーンだ!」
 (スクリーンとは、一人がディフェンスの盾になってオフェンス側をフリーにすること。)
 桐谷がそう言うと、二ノ宮は三谷の存在に気付いた。しかし、もう気付いたときには、完全にスクリーンに引っかかっていた。
 「!!」
 二ノ宮は言葉が出なかった。だが、だからといって慌ててはいなかった。
 (ここはスリーポイントラインより後ろだ。例え打ったとしてもゴールに届く事はない。)
 そう確信した二ノ宮だったが、新垣が打ったシュートは彼の予想に反して、そのゴールネットを揺らした。
 「なっ、何!」
 コート上の桐谷と二ノ宮だけではなく、ほかの部員たちも声をそろえてそう言った。だが、一番驚いていたのはシュートを打った新垣本人だったのだ。
 (入っちまった。)
 ということで、偶然の産物で生まれた勝利だった。
 「ん〜、なかなか良いシュートフォームだね彼は。」
 いきなり、白髪のいかにも穏やかそうな年寄りが現れた。
 「かっ監督!」
 部員一同が声をそろえていった。すると、桐谷が
 「先生、いらしてたんですか。」
 珍しく敬語を使って話していた。
 「あ〜桐谷君。なかなかの1年生が入ったようだね。」
 「はい。」
 などと、しばらく話していた桐谷が突然、
 「集合」
 と大きな声を張り上げていった。部員たちが急いで集合すると、
 「では、先生お願いします。」
 桐谷がそう言うと、一息ついて監督は話しを始めた。
 「まず、自己紹介をしようかな。監督の沖原信行です。よろしく。それじゃあ、本題に入りますかな。練習試合組んで来たからね。相手は大瀧高校だよ。」
 監督がそう言うと、皆が固まった。
 「大瀧って、去年県ベスト4の?」
 「やばいよな。勝てるわけないって。」
 皆動揺しているようだった。キャプテンでさえ少し驚いていた。すると、監督が、
 「全国制覇が目標なら倒さなければいけない相手だよ。」
 そう監督が言うと、桐谷は
 「そうだ、沖原監督の言うとうりだ。練習試合は勝つ気で行くぞ。」
 そう言うと、部員たちも大きな声で声を揃えて返事をした。
 「はい!」
 また、練習が始まる。しかし、今度の練習は勝つ為に。これが、全国制覇への第一歩だと桐谷は密かに思っていた。しかし、かつてないほどの強敵を相手にすることに、桐谷と二ノ宮以外はまだわかってはいなかった。
 
 
 少し、雨の降る中練習は続く…
 
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2005/08/16(Tue)21:40:28 公開 / 冬扇
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■作者からのメッセージ
 第五話完成。意外とすんなり勝たせちゃってよかったのかって思います。まぁ書いちゃったモンはしょうがないですね。さて、次回は練習試合に向けての練習と、三谷の恋?を書こうかなと思います、予定ですけど。さて、またどんどんしかちゃって下さい。その方が、もっと良い作品になると思いますから。では、よろしくお願いしますでは第六話で。