- 『十三の王国OP〜5章』 作者:大豆 / ファンタジー ファンタジー
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……とりあえず、バグによるパスワード不一致の場合一作品しか投稿していない場合でも『作品名』も書きましょうね。
序章
大昔にとてつもないほどの激戦があった…その戦いは約千年続いた。長き、長き戦いの果てに戦争は終結した。
その後、軍を率いていた13人の者が、一人づつ王国築き上げた。これが十三の王国の完成である。
その後は戦という物がなくなり人々は平穏と平和を貪っていた。
しかし、平和と平穏といういう物は、ある一定の期間を過ぎると、殺戮と混沌へとなるのだ…
眩しい日差しが顔を照らしつける。俺はゆっくりと目を見開き、大きく背伸びをする。
「ん〜、今日もいい天気だ! のんびりと警護団体に加わって魔物狩りでもすっかな」
警護団体には十七歳から七十歳までの『剣術』または『魔術』を習った者にかかる募集である。
時給もそれなりによく、なおかつ生命の危険もそんなにないため、一人暮らしを始めた剣士や魔術師にはありがたい仕事である。
「さて…そこらへんの店で、軽く食事を取るかな」
俺は自分の愛用の剣を腰に提げて、額に『気合』の文字の入った鉢巻をしめた。
この鉢巻は、俺の母親がくれたものだ。今では俺のトレードマークになっている。
家の外に出れば数人の女の人が井戸から水をくみ上げていた。
いつ見ても心が和む光景だなと、俺は思いつつ、近くの握り飯屋でオニギリを注文た。
「今日も警護頑張れよアクト」
握り飯屋のおっちゃんが、軽く微笑みながら3つ頼んだオニギリに、さらに1個追加してくれた。
「ありがとう、今日もがんばってくるよ…」
正直、この程度の気遣いはとても嬉しい。俺は、オニギリを口に頬張りながら、集合場所に駈けていった。
集合場所には、俺の友達のバッシュもいた。
「おおアクト! 今日は珍しく早いな」
「いつもこれくらいじゃないか?」
「いや…今日は、普段より五分早いな」
「細かい奴だな、お前って」
そういうと、バッシュは軽く笑みを浮かべて剣を鞘から引き抜き、軽く素振りを始める。
「アクト…聞いてくれよ」
「ん? どうしたバッシュ?」
「今日の警備が終われば、俺はついに新しい剣を買えるんだよ」
バッシュが満面の笑みを浮かべ、俺にそう語った。
正直、俺にはどうでもいい事だったが、こいつとの付き合いを考えれば、一緒になって喜べる相手だ。
「そいつはよかったな、で…どんな剣を買うんだ?」
「バトルソードでも買おうと思ってな…」
俺はバトルソードの値段を頭の上に浮かべた。たしか、千五百ゴールドする品だ。
警護団体の時給が七十ゴールド、それなりに働けばすぐに買える剣だ。
しばらく雑談をしているうちに、隊長が来た。
「今日は沼地まで、軽く見回る予定だ! 各自、見つけた魔物は速やかに殲滅するように! では解散」
解散と言われた直後に、集まった人はゆっくりと歩き出していく
「さて…今日も、いっちょ頑張ろうぜ!」
バッシュがニヤニヤしながら、俺の肩を軽く叩いた。俺はそれに答えるように、バッシュの後を追う
しばらくして、集合場所に帰ってきたときには、数人の人しかいなかった。
「今日は皆早いな…いつもなら、もっと雑談している人で賑わってるのに」
「あら…貴方達知らないの?」
後ろからいきなり声がしたので、少し驚いたが、いつも時給を支払ってくれるアリシル副隊長と分かり
ほっと胸をなでおろした。
「今日は何かあるんですか?」
「いいえ…近くにエルガ族の集落があってね…皆そこに行ってるのよ」
エルガ族といえば、この一の王国では奴隷扱いされる種族である。背丈は成人で人間の成人の腰まわりほどの種族である。子供は足の膝ぐらいの背丈で、白いふかふかした毛と、左右に軽く垂れている耳が目印である。
「珍しいですね…エルガ族が見つかるなんて…探検隊がほとんど狩りつくしたと思いましたが」
「まあね…貴方達はいかないの?」
アリシル副団長の質問に、少し考え込んだが
「俺には興味ないので…それに…エルガ族は、俺にとっては魔物も同然ですから…」
「お父様の件ね…あの人はどこまでも奴隷制度に反対してましたからね…」
「そのおかげで、あの親父は反逆者ですよ…だから、俺にはエルガ族は目の仇なんですよ…」
俺は副団長から給料を貰うと、寄り道もせずに家に帰った。その途中で握り飯屋の親父から
「お前のお姉さんが、来てたぜ! 早く帰ってやんな」
「姉貴が?…珍しいな…」
握り飯屋の親父に、軽く礼を言い、俺は家に駆け足で走っていった。
第一章
家についたころにはだいぶ日が暮れていた。
「お帰りアクト〜」
「ただいま姉貴…珍しいな、姉貴がここまで来るなんて」
姉貴は十三番目の王国に住んでいて、ここまで来るのに大体二週間ほどかかる距離である。
「うん…久々にあんたの顔を見たくなってね…な〜んてね」
「じゃあ、なんの用で来たんだよ?」
「ん…あんたが元気にしてるかなぁってね」
姉貴は微笑みながら、俺にそう言った。
俺はそんな姉貴に答えるように、姉貴に微笑んだ。
「アクト〜あたしお腹減った〜」
姉貴が静寂を破るように、空腹を訴えてきた。
「んと…今日の給料が三百五十ゴールドほど…って姉貴、金は?」
「ここまで来るのに、全部使っちゃったわよ!」
「まじっすか…とりあえず…俺と、姉貴の食費で二百ゴールドだから…」
「あら…私が料理してあげようか?」
俺は一瞬硬直した、なぜならば、姉貴の作る料理は別名殺人料理だからだ。
「なによ〜、私だってそれなりに料理の腕あげたわよ! 失礼しちゃうわ」
「じゃあ、お金渡すから、なんか作ってくれよ…」
俺は震える手で、姉貴にお金を渡した。おふくろ…ごめん…俺は、姉貴の料理を食って他界します。こんなアクトをお許しください…
そうこうしているうちに、姉貴が意気揚々と帰ってきた。
手には見た事もない食材を抱えている。袋からはみ出て見えるのはトカゲだ。
姉貴の料理する鍋から、なんとも怪しい臭いが漂ってくる…これが世に名高い魔女鍋なんだろうか…
(こんなとこで、俺一人他界するのは御免だ…道連れを探そう…)
俺はそんな事を考えながら、姉貴に、友達も呼んでくると言って、バッシュの家に向かった。
バッシュの家に着いた時、玄関の前で、バッシュが新しい剣を素振りしていた。
「おいバッシュ!」
「ん…なんだ、アクトじゃないか! どうしたんだ?」
「いやさ…姉貴が久々に家に来てるんだ…んで、料理作ってるから、お前もどうかと思って」
バッシュは大喜びで、仕度を始めた。そんな俺の脳裏に蘇る、姉貴の、呪いの鍋…
そういえば、聖書で呼んだことがあるっけ…不幸も幸福も、皆で分かち合おうと。
「お待たせアクト! いや〜なんかお前の姉貴に会うのも久しぶりだよな〜」
なにも知らないバッシュの顔を見ながら、俺はバッシュが姉貴の料理を食べた時の顔を想像した。
たぶんバッシュはこう言うだろう(ぐわ! なんだこれは! 胸が…苦しい…)
そう思うと、人知れず笑みが浮かぶ。
「ようやく着いたな…お前の家」
「そうだな、ただいま姉貴〜おわぁ! なんだこの臭いは!?」
扉を開けた途端、ただようこの臭い…バッシュも目を細めて、青い顔をしている。
「アクト…お前大丈夫か? なんか半分死んでないか?」
俺は、あまりの恐怖に、そこから動けないでいた。
「アクト〜! なにやってんのよ! 早く入りなさいよ〜」
「あ…リリアさんお久しぶりです…」
バッシュが、姉貴に軽く挨拶をする。しかし、バッシュが鍋に目をやった途端、バッシュも体が硬直した。
「とりあえず、食べましょ」
姉貴が、ニコニコしながら鍋の中身を俺とバッシュの容器にいれる。
俺とバッシュは、互いに目を合わせて、大きく息を吸い込み、目の前の料理を口に含んだ。
(ああ…口になんとも広がる毒のスープ…まるで魂が抜けそうな気分に…)
「ちょ!! アクト!? バッシュ君!? どうしたの?」
気が遠くなる…
「アクト…ねぇ大丈夫?」
姉貴の声がする…どうやら死なないで済んだらしい…
「う〜む…吐き気がする…」
「しっかりしないさいよ! あんた男でしょ!」
どうにも説得力に欠ける言葉だ…元はと言えば、あんたの作った料理が原因なんだ!
「そういえばさ…姉貴がここに来た目的は?」
「目的? ん〜、これといった事は無いんだけどさぁ…」
「嘘つけ! 姉貴がここに来る時はいつもなんかあるぞ!」
そうなのである、ここに姉貴が来る時は、必ず厄介ごとを持ち込んでくるのである。
「アクトにはお見通しかぁ…今ね、十三番目の王国はね、とっても苦しいの…
現国王のレイクっていう赤晶族の人がね、とんでもない税金制度を立ててね…だからお母さんと一緒にここに
住ませて欲しいのよ…」
赤晶族とは生まれつきに、額に赤い水晶を持つ種族である。魔術に長け、奇妙な物を発明するのである。
容姿はエルガ族に似ているが、身長が全然違うのである。大体人間の成人の胸辺り。
「まあ…俺はいいけどさぁ…おふくろをここまで連れてくるのは大変じゃないか?」
「そこはあんたに背負ってもらうのよ!」
会心の一撃である。姉というのはここまで自分勝手なのか? もしかしたら俺は世界一不幸なんじゃないのか?
そんな事まで考えてしまう。
「ん…おはようお二人さん…う〜んいい朝だ!」
考えている内にバッシュが起きてきた。これはチャンスだ! 俺はバッシュにおふくろを背負わせる事を企んだ。
「おいバッシュ、俺達これから十三番目の王国まで行って来るけど…お前もこないか?」
「ん…なんでだい?」
「だって、色々な物を見れるんだぜ! 友達としてさ、一緒に来ないか?」
「色々な物か…」
バッシュは少し考え込んだ後に、オーケーのサインを出した。
「じゃあ! 善は急げで、行きましょう!」
姉貴は腰に剣を提げて、街の外に向かって歩き出した。
過ごし慣れた街を後にするというのは、少し名残惜しい所があるが、しばらくすれば帰ってこれるのだから
それほど気に留めることもなかった。
第一王国国境付近ミヘンの森
ここは、いつも警護団体の狩りで来ている場所である。大体の道筋も把握してあった。
「綺麗な所ね…しかも魔物も少ないし…」
「姉貴の住んでる王国には警護団体はいないのか?」
「ううん…昔はいたけど、レイクが王様になってからは廃止されたわ…おかげで今は魔物だらけだし
動物もいないわ…なんだか…ここが羨ましい…」
姉貴は少し顔を俯けて、無口になった。
少し歩くと第二の王国の国境が見えてきた。何時みても綺麗な関所である。
ここの王様へリオンは、無類の発明家で、色々な騒ぎを起こす張本人であった。
しかし、ここ最近はそういう騒ぎを聞かない…
「旅の人ですか?」
俺は軽く頷き、簡単な手続きを済ませた。
「旅の方! 少しこの国の簡単な説明をしましょうか?」
「ああ…お願いしていいかい?」
バッシュが、わくわくしながら、そう答えた。
「では…まず、エルガ族に市民権はないため、なにかされた等のことがあった場合、遠慮なくお申し付けください
こちらで、そのエルガ族を処分いたしますので…それと、この国ではエルガ族に加担した者は反逆罪で牢獄入りです」
「牢獄に入れられたらどうなるんだ?」
「もちろん、打ち首でございます」
関所の兵士は笑みを浮かべて、そこだけ強い口調で喋った。
「そのほかの注意としては…国の重要な器物は破壊しないようにください、万が一破壊した場合は
どんな物でもかかわらずに十万ゴールドの罰金をさせていただきます」
「じゅ…十万ゴールド!? ひぇぇ…重要器物って具体的にどんなものなんだ?」
「国王へリオンの銅像ですね…それ以外には特にありません」
以外にも簡単な返答に一向は別の意味で驚いた。
「銅像っすか…はぁ…まあ…傷をつけるような事はしないので…安心してください…」
バッシュが少し呆れた様に返答する。
街の中に入ると、それまで静かだった姉貴がいきなり怒り出した。
「なによ! この国も種族差別してるの? 最低ね…ふざけてるとしか言えないわ」
「俺には、ありがたいけどね」
アレクは笑いながらリリアにそう答えた。
「ちょ…アレク! 貴方…いつからそんなにエルガ族が嫌いになったの?」
姉貴が俺の胸倉を掴んで怒鳴りだした、それを見たバッシュが静止にはいる。
「うっせぇな! エルガ族のせいで親父が死んだんじゃねぇか!」
「あの事件は、お父さんもそうだけど、私たち一家がかかわってたじゃない! それに
貴方もエルガ族を可愛がってたじゃない!」
「嘘つくんじゃねぇよ! 誰があんな奴らを可愛がってたって!?」
俺がそう言うと、姉貴は下は俯き、握り拳を締めた。
「じゃあ! あの子の事はなんだったの!? あれは芝居のように見えなかったけど!?」
「あの子?…なんだよあの子って…また姉貴の作り話か?」
「最低…そうやってごまかすんだ…もういいわ…」
姉貴はそう言うと、どこかへ歩きだしていった。
「おい姉貴! どこ行くんだよ!あの子って誰だよ!」
「もう知らない!」
姉貴はそう大声で答えると、何処かに走り去った。
「あ〜あ…リリアさん怒っちまったな…」
バッシュが呆れ顔で俺の肩を軽く叩いた。
「ほっときゃいいだろ…それより、宿を探そう…」
「ほいきた」
俺とバッシュは、宿探しへと出かけた。
しばらくして、俺とバッシュは手ごろな宿を見つけることができた。
「宿も見つけることができたし、この後どうする?」
「そうだな…お前のリリアさん探しをしようぜ」
バッシュの提案に、俺は気乗りをしなかったが、うなづかざるを得なかった。
しかし、この街は俺とバッシュにとっては未開拓地域、あちこちを探しまわったが
結局見つけることはできなかった。
「いねぇなぁ…リリアさん…」
へとへとになったバッシュが、息を切らしながらそう言った。
「とりあえず…宿に戻ろうぜ…」
「そうするかぁ…俺はもうくたくただよ…」
俺とバッシュはベンチから重い腰を上げて、宿への道を歩いていった。
しばらく歩くと道筋に人だかりができていた。
「なんだ? あの人だかりは…」
「大方なんかの事件だろ…兵士もいるしよ」
バッシュの指先の向こうには、数人の兵士が罪人らしき人物ともめていた。
「ちょ…なにすんのよ! 放しなさいよ!」
一瞬耳に聞き覚えのある声が飛び込んできた。
「はは…バッシュ…なんだか俺の姉貴の声が耳に飛び込んできたぜ…」
「いやぁ…奇遇だな…俺もなんだよ…ははは…」
俺とバッシュは顔を見合わせると、急いで人だかりの中に突っ込んでいった。
「ちょ…放しなさいよ!!」
近くまで寄って見ると、姉貴が兵士に肘鉄を食らわせている所だった。
「強いな…リリアさん…」
「魔女鍋を作るほどの腕だからな…兵士の一人や二人ぐらいどうってことないだろ」
俺の言葉に、バッシュは違いないなといわんばかりにうなづいた。
そんな会話をしてる最中に、一番聞きたくない言葉が飛び込んできた。
「アクト! バッシュ君! なにそこでぼさっとしてるのよ! 少しは手伝いなさいよ!」
声の方向を向くと、姉貴が憤怒の目で俺とバッシュを睨んでいた。
「君たちはこの女の知り合いか?」
その声を聞いた兵士が、俺とバッシュの目の前に来て、そう問いかけてきた。
「はぁ…まあ知り合いですが…」
バッシュの何気なしの返答に、俺は氷ついた。
「とりあえず…この国の法律は知ってるね?」
「はぁ…一応大体の事は国境の兵士の人には聞きましたが…」
「それなら話は早い…おい! こいつらもひっ捕らえろ!」
兵士の号令と共に、数人の兵士が俺とバッシュを取り囲んだ。
「お…おい! 俺達がなにをしたってんだよ!」
「アクト! そんな事言ってる暇ないぞ! あいつら本気だ!」
兵士のほうを見ると、皆剣を取り出し戦闘態勢を取っていた。
「畜生!!! こんな所で死ぬのか!?」
俺も剣を取り出し、戦闘態勢を取ったが…騒ぎがさらに大きくなったのか、どんどん兵士が集まってきた。
「無駄な抵抗をやめなさい…そうすれば、今ここで死ななくて済むぞ」
結局俺達は死ぬんかい! 心のなかでそんな突っ込みをいれながら、俺は周りを確認した。
周りには、沢山の兵士と、野次馬だらけ、ここで逃げようとしても、すぐに捕まってしまう
「俺の人生はこんな所で終わっちまうのか!?」
バッシュが泣き言を漏らした。その隙をついた兵士がバッシュの胸倉に剣の柄で強烈な一撃を放った。
おい! そんなの有りかよ! 残るは俺だけか!?
「残るは君だけだ、おとなしく降参しなさい」
俺は剣を納めて、両手を挙げて降参した。
「いい心がけだ…では城までご同行願おう」
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2005/08/02(Tue)17:08:31 公開 / 大豆
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