- 『Link』 作者:犬 / 未分類 未分類
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全角3992.5文字
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原稿用紙約13.15枚
なにもないんじゃなくてなにもしないだけ
だから僕は決めたんだ。
その子は死の腕を持って生まれてきました。
その子が初めて聞いた言葉は祝福の声でなくただの悲鳴でした。
町から遠く離れた山の奥の洞窟にそこに少年とその父親は住んでいた。
洞窟といっても中に家をそっくり移したようなつくりでじめじめしていたり暗かったりそんなところは無い。
洞窟から突き抜けた煙突が煙を上げていた。
周りは林、道なんてない。家のすぐ横には川が流れていてその川には小さい滝が落ちていた
泥だらけの少年がスライディングをするかのように家に飛びこんでくる。
「バタンッ」
「父ちゃん今日の飯なに?」
「今日は父ちゃん特製スペシャルカレーだ」
「えぇまたかよ!」
「今日は牛肉入りだぞ」
「おっしゃぁ。腹減らしてくる!」
「おぉいってこい」
「そうだアル」
「なに?」
「明日久しぶりに川に行くか」
「おぉやったぁ」
アルは泥だらけの顔でそういうとすぐにかけ出して行った。
岩を越え走っていく少年の目の前には大きな木があった。
それは秘密基地の目印だ。その木の横は崖。その崖から下に降りるはしごがついている。アルが一人で付けたはしごだ。
そのはしごを降りていき崖の途中にある穴に入る、アルでも足をかがめなきゃ入れない穴の中を入っていくとそこはとても広いまるで誰かが住んでいたかのような空間があった。
洞窟の中だが上の穴からスポットライトのように光が差し込んできていて明るい。
アルはこの洞窟でどうしてもやりたいことがあって昨日からドキドキが抑えられないでいた。
「ここなら手袋ぬいでもいい…よな?」
わくわくしていた。初めて物を触ることができるんだ。
アルは乱暴に手袋を脱ぎ洞窟の壁に触る。ひんやり冷たかった。
いろんなところを触った。岩はごつごつしていてざらざらだった。土もざらざら。顔もざらざら。
触りつかれたアルは草が敷いてある地面に寝転ぶ。草は柔らかい。
…アルはそのまま寝てしまった。
「はっ」
上から差し込んでくる光がもうなくなってきていた。
「…やべっ飯食われる。あっ手袋しなきゃ」
アルは手袋をするとすぐに洞窟をとびだしていった…。
何とか夕飯は食われずにすんだようだ。
「今日はどこ行ってたんだ」
「秘密」
アルは無言で食べどんどん皿の中のカレーを減らしていく。
「おかわり」
「お前父ちゃんの食う分もとっておけよな」
「…」
「おまぇなぁもうちょっと親子の会話というものを大事にしろよ!」
「…あっ、おいアル空見てみろ」
「あっ!」
そういうと二人で素早く飯をかたずける。
父ちゃんは星の綺麗な日は決まって山の頂上に上がって俺に昔話をする。
「おっと!これは忘れちゃいけないな」
父ちゃんはいつものように普段は飲まないようにしている酒を戸棚から取り出し家を出る。
山頂に行くまでにはアルの背では届かない岩を登らなきゃいけない。
だからアルが山頂に行けるのは父ちゃんが登るのを手伝ってくれるこの時しかなかった。
父ちゃんのいつも同じ昔話を聞かなくちゃいけないのはつらいけど、アルはそこから見る星空が綺麗でとても好きだった。
「さぁ着いた」
山頂のでっぱった岩の先端で二人が座る。もうそこには二人と星しかなかった
アルはぼんやり空を見上げていた
父ちゃんは岩の上にグラスを置きそこに酒をドボドボと注ぐ。
そしていつものように話し始める。
「あのな。俺が母ちゃんと初めて出会った時もこんな星が綺麗な夜でさ」
今日はその出だしか…。とアルは思った。父ちゃんの昔話のレパートリーは3つある。
子供のころ犬に追いかけられた話と。沼で釣りをしていたら怪獣を見たって話と。それからこの話。
「昔、木登り名人だった父ちゃんは村の木という木をすべて登りつくしたんだよ。人の家の庭の木にも登ってな。そしてちょうど退屈してた時にな隣の村に
父ちゃんよりもすごい奴がいるって言われてさぁ。父ちゃん昔からプライド高かったからなぁ、父ちゃんはそいつと勝負しに行ったんだよ。そしたらなんとその相手が母ちゃんだったわけだ」
知ってるよ。アルはそう思った。
「それでな父ちゃんまさか女が勝負しに来るとは思わないだろ。びっくりしてさぁ。しかもそいつがまだ俺が登ったこともないくらい高い木に登っていくんだ。父ちゃん必死で追いかけてさ。母ちゃんがどんどん登っていくからさ。父ちゃんが止まるわけにはいけないだろ。父ちゃん昔からプライド高かったからさぁ」
おい。同じ事二回言ってるよ、相当酔ってるぞ…
「たぶん母ちゃんも下からどんどん追ってくるから止められなくなったんだろうな。気がついたら二人ともすごく高いところに来てて自分で降りられなくなっちゃったんだよ。それでずっと下に降りられないまま夜になっちゃったんだ」
いつもこの話聞いてて思うけど父ちゃんも母ちゃんもバカだなと思う。
「その頃下で友達が大人呼んできててな、父ちゃん怒られるのが怖かったわけじゃないけど母ちゃんにどうする?って聞いたんだよそうしたら母ちゃんなんて言ったと思う?」
知ってるよ…答えると怒るから言わないけど。
「いいか、母ちゃんはな」
「ほら見てみなよ、この星空。こんな星空ここでしか見れないよ。ここまで登って来て良かったね。」
「って言ったんだぞ。またその時の笑顔が可愛くて可愛くて」
はいはい…
「そのあと父ちゃんと母ちゃんは何とか自力で降りてさ、もう二人には何も怖いものはなかったね。」
おい!降りたあと大人達にこっぴどく叱られたんでしょ…。過去をねじ曲げるなよ…。
「それから父ちゃんと母ちゃんは毎日一緒に遊んだ、そんでそのまま結婚してお前ができたってわけだ」
「ねぇ」
「何だ」
「父ちゃん今幸せ?」
「…あぁ最高に幸せだぞ!」
何だ急にと父ちゃんは思ったかもしれない。けどいつもこの話が終わると父ちゃんは悲しい顔するから
聞かずにはいれなかった。
朝起きるといつものように父ちゃんが残していってた手紙がテーブルの上に乗っている。父ちゃんはいつも朝早く起きて仕事に行くから用事とかを書いておいていくんだ。
用事って言ってもたいしたもんじゃなくて、たまにはおじさん所に行って勉強教えてもらえ。とか、今日はちょっと遅くなる、とかそんなもん。けど今日はおじさん所に行って勉強教えてもらえと川行けなくなってごめんな
だった…
まぁこんな日は多い。最近遊んでくれなくなってきてちょっと残念だけど父ちゃんも仕事が大変らしいから仕方ない…。仕方ない…。
「おぉ〜いアル、迎えに来たぞ〜」
ドンドンとドアが壊れそうなくらいノックしてくるのはシドさんくらいだ。っていうかシドさんしか家に来ない。
はいはいこっちから行く前に向こうから来るんだから…。父ちゃんは俺が逃げないように前もっておじさんに言っているのだろう。すぐにおじさんに抱えられて連れて行かれてしまう。
シドおじさんはかなりの大男だ。身長は打ちの父ちゃんよりはるかに高い。顔はひげだらけ服はぼろぼろどう考えたって頭を使うより体を使うことが得意そうな人だった、けどそれは見た目だけ、実は昔学校の先生をやっていたらしい。人は見かけで判断するなって父ちゃんは言ってたけど本当だった。
「さっここに座って」
アルは辺りを見回しながら座る。いつ来てもおじさんの家は面白い。外側は普通の山小屋なんだけど、中にはケースに入っているおもちゃがたくさん飾ってある。けど上を見ると不気味な鹿の剥製や何かよくわからない毛皮なんかがぶら下げてあってどれも俺が触ろうとすると怒る、半人前が触るもんじゃないんだよって…。勉強したら一人前になれるのかな…
「はいっこれ!わかるか?」
「わかりません…」
「これは?」
「わかりません」
「…いいかアル。勉強をすることは大切なことなんだぞ」
「わかりません」
「大人になって勉強しないで町に出れば必ず恥ずかしい目にあうんだぞ」
「出なければいいじゃん」
「出たくなるんだ」
「なんで?」
「そういうものなんだよ」
「僕だっておじさんみたいに猟をして暮らせばいいじゃんか」
「お前それでいいのか?」
「いいよ」
「友達欲しくないのか?」
「……」
「欲しいだろ?」
「…うん」
「よし。だったら勉強して一人前になって町に行け〜」
なんかうまく丸め込まれたような気がするけど、いいか…。早く友達欲しいなぁ、俺も町に住んでたらみんなと一緒に学校行けたのにな…
アルは手袋を見つめながらそう思った。
…やっと勉強が終わった。計算やらなんだかんだで頭がパンパンだ。
「ほら挨拶は!」
「ありがとうござ〜い…」
「おいちゃんと最後まで言って行け」
シドが言い終わったころにはもうアルはいなかった。
勉強が終わるとアルはいつも頭を冷やすため川に行く。川の水はとても綺麗で流れは緩やか。ここでアルはいつも川に浮きながら空を見る。まるで空を漂っているようでずっとそうしていたくなる。ずっと…、ずっと…。
「ゴボボボボッ」
「ゲホッゲホッ」
気がつくとアルは滝つぼに落とされていた。といってもそんなに高い滝ではない1m50pくらいの低い滝だ。アルはそこから落ちるたびに現実に引き戻されるようで苦手だった。いつか大人になったら滝つぼに石を積み上げてこの滝をなくしたいと思っていた。そうしたらずっと空に浮いていられるから。
「あっ」
家の煙突の煙にアルはすぐ川を出る。パンツ一丁で黒い手袋というなんともおかしな格好で泳いでいたアルはその格好のまま家にダッシュする。
「父ちゃん今日の飯なに?」
「今日は父ちゃん特製スペシャルチャーハンだ」
「うぉぉ。やったぁ」
「ははっお前その格好笑えるわ」
「うるさい」
そういうとアルは自分のTシャツで体を拭きそのまま奥の自分の部屋に直行した。今日は頭を使って疲れたので、ベットで一休みすることにした。
つづく
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2005/07/29(Fri)16:27:39 公開 / 犬
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■作者からのメッセージ
ハガレンが大好きですw
前の作品よりは分かりやすくなったでしょうか?
話す言葉多すぎかな…
また文を結構全体的に書き加えて見ました