- 『目玉の大きいアイ子ちゃん』 作者:むた / 未分類 未分類
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イライライライラ、
俺の今の心を擬音にしたら、きっとそんな音が出ているはずだ。
高校の時の友人(前田)と、企画した合コン、
お酒を飲んで、会話は盛り上がって、メアド交換したり、王様ゲ−ムしたり・・・・・・。
おいおい、
なんだよ、今のこの状況は。
俺は、つまみの手羽塩の軟骨を奥歯で噛み砕いた。
俺たちのせいもあるけど、
女の子たち、ものすごく冷めてんですけど・・・・・・・。
タバコ片手に携帯いじって、
時たま、氷でふやけたカシスサワー、
目玉の大きいアイ子ちゃん、
そのグラス、もう一時間も水位が変わってないんですけど。
必死に気を利かせて注文を取ったり、ご機嫌を取ろうとする前田、
普段からまじめでいい奴だけど、
今回ばかりはその真面目さが、実にけなげで痛い。
元々合コンでは、人数あわせの俺たち二人、
競争の苦手な日本人の血を、色濃く受けてしまった俺たち二人。
そんな俺たちが、初めて勇気を振り絞り、今日二対二の、合コンをセッティングした。
しかし!
普段から、駐車場のコケのように、薄暗く目立たない俺たちは、
こんなこと慣れてないもんだから、
やたらにやる気が空回り、
会話は、言わずもがなの滑りっぱなしのドリフト状態。
そんな俺たちのマイナス電波を、受信してしまった彼女たち、
相方の肉マシュマロは、アンテナバリ3の携帯電話と合コンし始めた。
寒い、寒すぎる、店の利きすぎるエアコンのせいなのか、
急に冷め始めたアルコールのせいなのか、
それとも、前に座る女の子の態度そのものなのか。
そんな、三要素が引き立てあって 風引きそうなほどよく冷える、
ここはマッタンホルンかエべレストか?
空気が薄いところなんて、実にそっくりだし・・・・。
「ごめん、ちょっとトイレ、」
思わず絶えられなくなり、トイレに立つ、
別に誰も聞いてはいないけど。
「いっ、いっトイレ。」
前田の苦しみ紛れの発砲という奴か・・・・・・、
わざわざ、言わなくてもいいのに、
これ以上会話のクレパス深めてどうすんだよ?
まあ、別に・・・・・、どうでもいいけど。
お洒落な居酒屋独特の穴倉のような店内、
水浸しのトイレの床が、さらに俺を落ち込ませる、ズボンのすそが濡れた。
周りには、髪の毛も、服も残らず手を入れた、合コン&ナンパ仕様の男達、
鏡の前で、自慢の無造作ヘアーを指でクルクルしながら、作戦会議中である。
「物も、場数も違うんだよ。」と、
諦めながらも、鏡に映った自分の姿が、
泣きたくなるほどダサかった。
ぬれた手をシャツで拭きながら、席に戻ってみると、
なんだか、盛り上がっている様・・・・。
というより、なんだかトラブル発生中の様子。
「ちょっと、ナにこれ、サイテ〜。」
水浸しのバックを抱えながら、
脳みその足り無そうな発音で、アイ子ちゃんは叫ぶ。
「いっ、いやっ、ごっゴメン。」
こちらも、腰の抜けた、へっぴり腰の声で応戦中。
水浸しのテ−ブル、転がるグラス、
気を利かせて、下げようとしたのか、端に寄せられた空のお皿、
その光景を見るや、大体の状況は想像できた。
俺は、とりあえず、軽いヒスを起こし気味なアイ子ちゃんに、話し掛けてみる、
「大丈夫?。」
するとアイ子ちゃん、クッと、マスカラでケバケバした目を、
さらに妖怪のように大きくして突っかかってきた。
「ちょっとなによ〜っ、あんたの友達、アタシの前で水ぶちまけて、
携帯とバック、グチャグチャなんだけど!。」
それに併せ、携帯をいじりながら、肉マシュマロも、あいずつちを打つ。
物凄い迫力、なんだかわからずに、俺もあいずちを打ってしまう。
でも水浸しのバックより、その密林の獣じみた顔のほうが、
よっぽどグチャグチャのような気がした。
その後も、携帯のメモリーが消えたとか、
本物の、カルティエのバックだの、
どうしてくれるんだ、とか。
俺からすれば、どうでもいいことが続き・・・・・。
ついには、俺達のトークは、面白くなくウザイだけ、
お前ら地味な童貞は、家でオ○ニ−して寝ちまえとまで言われた。
周りのボックス席にいる奴らは、俺らの怒られるさまと、アイ子ちゃんの
獣のような、ヒスをツマミに、にたにた笑いながら一杯、
ついには、写メで撮り出す奴らもいた。
確かにこんな所で、あんた等みたいに、遊べて活きのいい男を探しに
来たんなら、そりゃ俺達はまったくの圏外だし、やることなすこと、空周り
してるよ。
でもなあ、俺達だって、一応気ィ使って無い頭使って、話したり、
こうやってお店も、探したりして。
それなのにそんな言い草ないじゃない?
俺は、喉まで出かかった言葉を心の中で叫んだ。
でも次の瞬間、
「パシャ、」
水しぶきとともに、俺達はぬれていた、
アイ子ちゃんのカシスサワ−が、氷ごと飛んできた。
さすがにこれには、肉マシュマロも動揺したのか、アイ子ちゃんを抑えようと
したが、もう遅い。
俺も大きな目玉めがけて、灰皿の中身をぶちまけていたからだ。
転がるシケモクに、タバコの匂い、
運悪く、灰が目の中に入ってしまったのか、その場でジタバタし始めた。
でも俺は、テ−ブルの上に全財産の三万円を叩きつけると、席を立ち、
前野の腕をつかんで、逃げるように店を出た。
夏のジメジメした、湿気が、夜の駅前のロータリーに充満していた。
バス停の時計は、午後一時半を回っていた。
俺はとりあえず、前田に謝った。
前田は、苦笑いしながら、「飲み直すか?」と一言、
でも俺は、とてもそんな気分にはなれなかった。
「家でカシスサワ−でも飲んで寝る。」
冗談混じりに言うと、俺は、タクシーを拾った。
やっべ俺、お金もってね〜わ。
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2005/07/25(Mon)02:13:34 公開 / むた
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■作者からのメッセージ
今回は、前回の反省を元に、ちょっと
長めに作っては見たのですが、
まったくといっていいほど、進歩していない自分に、ちょっと情けなくなってしまいました
でも、小説は、始めたばっかりなので、
いろいろ工夫してがんばりたいです。