- 『僕の不幸 1〜5話』 作者:風間新輝 / 未分類 未分類
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全角11679.5文字
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原稿用紙約33.9枚
第1話
なぜ僕がこんな多い荷物を抱えてるかって。復讐の時がついに来たからなんだよね。
この僕の持ってる荷物こそ復讐の道具ってわけ。
まあ、話は3ヶ月前に戻るんだけど、僕は小説を無理やり押し付けられたんだよね。SNシリーズ、BUIシリーズ、QED証明終了いたしましたわよとかが中身だったよ。
僕ってば本の虫ってほどじゃないけど、本が好きなんだよね。現代では珍しい文学少年ってやつかな。もう少年って年じゃないんだけどね。
まあ、そんなわけで復讐にアルバイト目シリーズなんかを貸すんだよね。借りた本と合わせて20冊くらいかな。復讐ってもホントささいなもんだよね。
なのに、散々な目にあっちゃったんだよね。
その日、僕はかなり重い荷物を持って学校に来たんだよね。そこでとんでもないことを目にしたんだ。
本を借りた相手のケンが机にうつ伏して死んでるんだ。
この教室には今、僕しかいないんだよね。そう容疑者確定って感じなんだよ。でも、国民の義務ってやつですぐさま携帯で警察を呼んだよ。やましいとこないからね。当然、職員室にも行ったよ。すぐに担任を連れてきたんだ。担任はギョロ目で髪型がコウテイペンギンみたいなちょいと恰幅のいい中年なんだよね。
担任を連れて教室まできたら、僕ってば緊張の糸がプッて音たて
て切れちゃってさ。泣いちゃったんだよね。
でもさ暫くしたら、他の生徒も来るわけじゃん。泣いてらんないわけ。すぐに泣くのやめたよ。
ケンのことはもの凄く悲しかったけどね。
それから5分ぐらいで駐在さんが来たんだ。僕の通ってる高校はすぐ近くに駐在所があるんだよね。5分の長さは変わんないはずだけど、凄く長く感じたよ。
ゲームやってる1時間と授業の1時間の違いみたいな感じだというとわかりやすいかな。
しばらくして、警察の偉そうな人や鑑識も来たんだ。
偉そうな人はどうでもいいけど、鑑識は初めて見るからかなり感激したんだ。友達のケンが死んだというのに不謹慎極まりないよね。
でも実際、感激しちゃったんだから仕方ないよね。もう過去の出来事だかんね。
鑑識の仕事を見ていたかったけど、部外者は外にって追い出されちゃったよ。
しかも、それから第一印象最悪の偉そうな刑事から発見した経緯とか細々と聞かれたんだよね。
怪しいヤツを見なかったかとかを聞かれるんだよね。
見てたら、真っ先に言うに決まってんのにさ。たぶん、偉そうな刑事は頭が悪いんだよね
。顔も悪かったけど。名前ははじめに教えられたけど、すぐ忘れちゃったんだ。どうでも
よかったから。
名前ないと不都合だから勝手に決めたよ。モアイにワカメが乗ってるみたいだから、ワカメモアイ。そのまんますぎかな。
そんなこんなで容疑者の絞り込みがされたみたいなんだよね。
目立った外傷や争った痕跡がないから知人の犯行だって判断したみたいでさ、とりあえず僕と担任とその他の先生方が容疑者。
僕が犯人じゃないことは僕が一番わかってるから、先生の中に犯人がいるみたいなんだ。
そうそう、その日のその時間に、学校に来てた生徒は2人しかいなかったんだよね。
それが僕とケン。僕がはやく学校に来てたのはケンの机に本のピラミッドを作って驚かそうとしたからなんだ。
でもケンはすでに来てて、しかも死んでたって訳。
かなり最悪な出来事に巻き込まれちゃったみたいだ。日本の警察は優秀だからすぐに犯人が見つかると思ってたけど、なかなかみつからないんだよね。やっぱ、担当がワカメモアイだからかな。
これで僕が犯人なんてことになったら、たまんないからさ、僕なりに犯人探そうと考えたんだよね。一番怪しいのはやっぱり担任なんだよね。
ケンが死んでるのに冷静だったからさ。僕は担任が犯人だから落ち着いてたと思ったんだよね。
これって当然じゃん。でも、職員室に他の先生がいて、担任の動きを証言したから担任に
は犯行不可能なんだよね。だから、警察のマークから早々に消えたんだ。
他の先生も全くってほどケンと接点がなかったから、僕が犯人の最有力候補なんだよね。
パチパチパチパチ。あ〜、も〜、笑えね〜。
しかも、ワカメモアイは相変わらず殺人事件だーって騒いでてさ、僕ってばまるきし犯人扱い。
取り調べにカツ丼が出ないってのを知っちゃったんだよね。知りたくなかったな〜。
最も最悪な知り方だったしね。取り調べられてるのは僕なんだからさ。
でも、1週間くらいして、警察が僕の周りから消えたんだよね。犯人が捕まったんなら、僕の耳に入るはずだし、おかしいと思ったんだ。
だから、思いきってワカメモアイを呼び出して話を聞いたんだよね。
そしたら、ケンの親御さんから、ケンが以前蜂に刺されて、次に刺されたらアナフィラキー・ショックでショック死でするかもしれないって医者から言われてたって聞いたらしいんだ。
結局、犯人は蜂だったんだ。
案の定、教室の外に大きな蜂の巣がみつかったしね。
僕はついワカメモアイを殴っちゃったんだ。ワカメモアイのやつ、「散々、犯人扱いしてゴメンね、てへ」なんて言ったんだよ。
これは殴るしかないじゃん。
でも、傷害罪が認められちゃって少年院行きになっちゃったんだ。
ついてないにもほどがあるよね。
我が高校の問題児、風間真輝。
これが僕の肩書きだ…。ふっ、笑わせる。
実際笑えないけどね。
それから僕は腫れ物のように扱われるようになった。
これはそれだけの救いようのないお話。
第2話
僕が少年院から出たのは寒い冬の日だった。実際はそんな寒くなかったけど、こっちのが雰囲気でるからね。あしからず。
ワカメモアイを殴って顎の骨折っちゃった割にはたった3ヶ月ででられたんだよね。
ほら、僕ってば超優秀にして、性格がおとなしくて冷静だからさ。おとなしくて冷静な人間は人を殴らないって?
まあ、人間なんだから誰にでも過ちはあるもんだって。
と、とにかく僕は出所したんだよね。やっぱりあの名ぜりふを言うべきだと思ったんだ。
「シャバの空気はうまいぜ」ってね。これって他の一般ピーポーに言えないからさ、たぶん僕は得したんだよね。そうでも考えないとやってけないんだよね。
普通、暴力事件起こしたら、退学なんだよね。
でもさ、事情酌量の余地があるはずだって担任が口添えしてくれて、休学って形なんだ。
学年は1年下になっちゃったけど仕方ないよね。
そんなわけで僕は学校に行ったんだ。当然、皆びびって近寄んね〜の。まあ、182の身長
に体重は0、1トンだし、いつも不機嫌そうだし、経歴が少年院だからね。
そりゃ、僕もそんなヤツに近づきたいと思わないもんね。
でも、どこにでも変わりもんっているんだよね。ユウキってやつとハレってやつがそれ。この僕に話かけてくるんだよ。出席番号が近いからかな?
でも、やっぱりなんか魂胆があると考えたよ。普通に考えれば確実に裏があるって。
でも、ゲームとか漫画についてくだらない話をするだけなんだ。
思いきって短刀直入に聞いたんだ。
「ねぇ、君達何が目的なんだい?」ってね。
そしたら、妄想癖でもあるのとか聞いてくんの。ホント意味分かんないよね。僕みたいな分別のある人間を捕まえてさ。異論があっても外野は黙っておくように。野球でもそうじゃん。ピンチ時に話し合うのは内野で、外野は蚊帳の外。ちょっとひどいよね。
なんか知んないけど、ハレとユウキと仲良くなっちゃてさ。ユウキとハレん家に行くことになったんだ。誤変換をしないように悲惨な文になるからね。
ハレって普段はすげー静かだし、友達がそんないないんだよね。
部屋もゲームとかあるだけで殺風景。他人ん家に来たら、勝手に家宅捜査するしかないじゃん。お星さまになったケンの趣味がこれだったなあ。懐かしいな。まあ、まだ3ヶ月強なんだけどね。
ハレが僕らにお茶を持ってくる間にいろんな所あさったんだ。そして、ついに禁断のタンス
を開けてしまったんだ。中にはおぞましい物が…。っても服は服だよ。奇妙な未確認な生命体がいたわけじゃないよ。いるわけないけどね。察しのいい人はわかるかもしんないけど、あるのは女物なんだ。当然すぐタンスを戻したよ。僕は見なかったことにしたんだ。
でも、白のフリルのついたヒラヒラとかが頭から離れないんだ。
そうこうしてるうちにハレが戻ってきたんだ。僕はさ、ハレにオネイサンがいるって聞いてたから、ハレに「君のオネイサンっていつもどんな服着てる?」って聞いたんだ。結構少女ちっくなのって正直に答えてくれたんだ。なんでそんなこと聞くんだって顔してたけどね。
僕はすげ〜安心したよ。ハレのじゃなくて、オネイサンのだってわかったからさ。ああいうのはかさばるからハレの所を借りてるんだと僕は考えたんだ。まあ、めでたく謎もとけて満足して帰ったんだよね。
そのときは丁度連休でさ、ハレん家に行ったのは土曜だったんだ。
次の日に暇だったから地下街にでも行ってぶらつこうときめて、地下街に行ったんだ。新しいCDの発売日だったしね。(でも発売したのは2週間前)ちょうど良かったんだよね。
地下街に行ってぶらついてると目の前にデかくて、髪の長い、少女ちっくな服着た女が歩いてたんだ。ヒール履いてたから僕と同じくらい身長があるんだよね。ヒールはいてなかったら175くらいだと思ったんだ。なんか後ろ姿が誰かに似てると思ったんだよね。前から覗いてみるとやっぱハレなわけ。当然、不自然に見えないようにちらっと見たんだよ。全く知らない人だったら、洒落になんないからね。
なんでそんな格好してるのかを聞いたよ。あんま聞きたくなかったけど、礼儀としてさ。
そしたら、どちらさまですかとか上品に言うんだよね。
ハレの友達ですって正体わかってるのに答えちゃったんだ。
挙句の果てに「私はハレの姉よ。ハレと仲良くしてやってね」とか言うかんだよ。カツラとってやったんだ。
そしたら漸く観念して、事情を話だしたんだ。
オネイサンに小さいころ、無理やりこうゆう服を着せられて、はじめは嫌だったらしいけど、暫くしたら、はまっちゃったらしくてさ。まあ、そんなこと聞きたくなかったから、そうかとか適当に相槌をうってぎこちない笑みを浮かべて立ち去ったよ。
結局、新しいCDは買えなかったよ。これは確実にハレのせいだよね。まあ、こんな些細なことはいいんだ。もっと悲惨な不幸を体験してるからね。
次の日、学校に行ったら、恐怖じゃなくて、軽蔑の目でみてるヤツがいるんだよね。
腹がたったからさ、一人を少々脅して話を聞いたんだ。
昨日、女装したハレと話してたところを目撃されててさ、僕のことを同性愛で変態とか言ってるみたいなんだよね。
正直泣きたくなったよ。当然殴ってやろうとも思ったよ。でも、僕ってば大人だから我慢し
たんだ。前科があるだけに問題起こしたらまずいしね。前科がホントの前科なのが悲しいとこ。
はあ〜、問題児に変態だよ。どうしようもないじゃん。
しかもハレとは友達でもなんでもないって言っちゃえば、良かったんだけど、事実友達だから言い訳のしようもないし、友達裏切るのは気が引けたからね。
ますます僕ってばついてない。
もしかして僕は不幸のお星さまのもとに生まれたのかな〜。
これは僕、風間真輝のついてない話。
この不幸な僕が今後どんな不幸に巻き込まれるかは誰にもわかりやしない。当然、幸せになる場合
もね。望み薄な気がするけどね。
わからないことだらけだから、人生は面白いんだよね。
第3話
僕は変態と問題児というものすご〜く不名誉な肩書き手に入れた。レベル57にあがった
みたいな感じだよ。何を言ってんだろう。頭ん中、煮詰まりまくりだよ。
まあ、でも、ほら、僕自身、天上天下唯我独尊を地で行く人間だからさ、他人の目なんか気にしなかったんだ。いや、かなり嘘。実はかなり気にしてるけど、過ぎた時間は戻らないからね。
実は今もハレと友達やってるんだよね。学校じゃ、あんな格好してないしさ。ユウキのヤツも
どういうつもりかわかんないけど、ハレと友達やってんだよね。なんでだろう?
サスガにハレん家に行きたいとはもう思わないから、ユウキん家に遊びに行くことにしたんだ。
ユウキは犬が駄目だから、僕ん家に行くことは無理なんだよね。僕ん家の犬はゴールデンレトリバーだしね。おとなしいくても、怖い人には怖いよね。まあ、呼ぶ気もないけどね。
あっ、そうそう一説によるとユウキは犬を見ると性格が変わって、犬をナイフで突き刺しまくるらしいから、犬を飼ってるひとはご用心。
あっ、ということはいつもナイフ持ってんのかな?あんまりからかうのやめとこう。
ちなみに犬を殺すと器物損壊罪になるからね。犬も人も同じ命なのにひどいよね。まあ、僕だって油虫嫌いだし、虫を殺すから似たようなもんかな。この世に虫一匹殺さない聖人がいたらみてみたいよね。単なる変人あつかいかな?
まあ、とにかくユウキん家に行くことになったんだ。
そしたら、部屋中、惨殺死体のミニチュアフィギュアやら、グロくて十八禁のゲームやら、ホラー映画ばっかなんだよね。僕の周り変人しかいねーの。ふっ、笑える。
も、もしかすると、僕とハレとユウキが友達になったのって類は友を呼ぶってやつなのか!?
だとしたら、かなり勘弁。僕は一般ピーポーでありたいんだ。まあ、少年院に行ったことがあれば、一般ピーポーではないかな。
まあ、死体のフィギュアやら、なんかの標本がある中、楽しく(楽しくなかった気もする)おしゃべりをして、グロくて十八禁のゲームをやって、グロさが足んないよね〜とか、ユウキの批評を聞いたね。後は、ご自慢のトレーディングカードを見せてもらったかな。僕もハレも価値が全然わかんないんだけどね。このカードがさ〜とか言われても困るんだよね。しかも、1時間もだよ。ほんと勘弁だよね。適当にそれで解散してさ、家に帰ったんだ。ナイフを見せられたりはしなかったから、あくまで噂なんだなと安心したよ。
嫌な予感はしっぱなしだったけど、一応、平穏にすんだね。嫌な予感がするようなとこに行くなって?怖いもんみたさが勝るお年頃なんだよね。どんな年頃だよと思うかもしんないけど、そういう時期があるんだって。
そうそう、やっぱりハレは例の格好だったよ。黒を基調にして白のフリルのついた服で、十字架やらなんやらの模様が特徴的だったね。ブーツも変わってたし、靴下は赤と黒の横縞だったよ。化粧もしてやがったよ。まあ、元々が中性的なだけに似合ってはいるんだけどね。以前、ハレん家でみたのとはタイプが異なり、ゴスロリというものらしい。どうでもいいのに、講釈をされたよ。この話題を話す人がいないからって、僕に語るのはやめて欲しいもんだよね。僕ってば、今日は語られっぱなし。なんでそんなに観察してるかって?ほら、地下鉄に着ぐるみを着た人がいたら、つい見ちゃうよね。それと一緒。う〜ん、サスガ僕、的確な例だよね。
次の日、大変なことに巻き込まれたんだよね。あくまで、第三者でその場にいただけなんだけどね。
ユウキは友達とトレーディングカードの交換をしてたんだよね。相手はちゃらくて、僕とは全く気が合わないタイプだね。名称は、タラコ唇でかっこつけだから、ナルタラにしよう。別にそれまでは特に何かあったわけじゃないんだ。
放課後、ユウキのトレーディングカードがなくなってたんだ。ナルタラと僕とハレ以外、ユウキがトレーディングカード持ってきてるのを知らないからさ、ユウキはナルタラが盗んだと思ったみたいで、すごい剣幕でナルタラのとこに走っていくんだよね。仕方ないから、僕とハレは追いかけたよ。ユウキは多少ふくよかな体型してるんだよね。だから、追いつくのは簡単だったよ。でも、僕とハレを振り払って進んでくんだ。まさに肉弾戦車。ユウキのヤツ、ポケットからナイフ取り出したんだよ。
僕は少年院にいたから、多少の免疫はあったけど、怖いものは怖いんだよね。少年院のやつらが何処からナイフを持ち込んでたのかは未だに謎なんだ。知ってる人がいるなら、教えてほしいぐらい。そんなことはどうでもいいよね。
それから、ユウキはその体型からは想像もつかない速さでふところに入って、ナルタラの首筋にナイフを当てたんだよね。ユウキは一言カード返せと言ったんだ。その一言がなければ、映画なみのロケーションだったね。そしたら、ナルタラのヤツ、泣きながらカバンの中とか言うんだよね。実に情けない。
まあ、ナイフを首筋にあてられてたら、誰でもそうかな?
誰かが先生をよんできたみたいでさ、先生が来たんだよね。一人じゃなかったよ。一ダースくらいだったかな。ユウキも落ち着いたみたいでナイフを先生に渡したんだ。
僕とハレはユウキがナイフを出してからは、ただオロオロしながら、成り行きを見てるだけだったね。下手に刺激したら、ユウキがナルタラを殺しかねないと思ったしね。これは言い訳。本当は怖かっただけ。
ユウキは指導部に連れてかれて、こってり絞られたみたいでさ。すっかり痩せちゃってたよ。
嘘だけどね。
結局、停学2週間で済んだんだ。ナイフはかなりまずかったけど、盗みをしたナルタラにもかなり非があるということでさ。ちょっと甘いよね。
僕なんか素手で一発なぐっただけで少年院がこんにちはだよ。過去のことは気にしない、気にしない。思い出したら、欝になることが安請け合いだからね。やばい。ちょっと暗くなってきちゃったよ。
ちなみにナルタラは学校来なくなっちゃったよ。学校恐いって言って震えてるらしい。
僕は周りから恐怖の対象として見られるのが8割、変態と見られるのが2割に減ったことを明記しておく。ユウキのおかげだね。僕はまだ気づいてなかったんだよね。誰も僕ら3人に近づこうとするヤツがいないってことに。これは先生を含めてだったりするんだ。
僕らのまわりは正月のオフィス街状態なんだ。僕は社交的な人間なのにさ。
さらに不幸な展開になった僕、風間真輝。
今後はどうなることやら、神が手招きしてるのか、悪魔が手招きしてるのか。
きっと悪魔なんだろうなぁ…。
第4話
僕は不幸の原因を考えていた。
突然だけど、実は僕の名前って風間真輝って漢字でカザママキって読むんだよね。マサキとかマサテルとかにしてくれれば良かったのにさ。小学生になると、変な名前のやつって大抵いじめられるんだよね。生後何日かで、すでに不幸を背負ってたわけ。案の定、いじめられたしね。でも、地球は広いから、もっと不幸な人はたくさんいるはずなんだ。だから、僕の人生は小さな不幸があるだけで並以上だと思ってる。僕ってばプラス思考。自分でプラス思考だと思ってるやつはだいたいマイナス思考なんだけどね。
まあ、とにかく今度はこの名前のおかげで助かったんだ。
話は1ヶ月くらい前に遡ってしまうんだけどね、小学生の頃の怪談話にでてきそうなミステリースポットで、人が死んだらしいんだ。ミステリースポットの名前は刺し老婆の坂、死んだ人の名前は後藤ヒロシ。後藤は僕のクラスメートだったりするんだ。刺し老婆の坂ってのは人通りが少なて、夜は真っ暗な場所でさ。噂だと、夜中に一人で歩いていると、後ろから老婆が歩いてきて、包丁で刺し殺すらしいんだ。私の子供、私の子供、盗ったの誰だって言いながら、刺すらしいんだ。その老婆は戦争で子供が死んじゃったという経歴の持ち主なんだそうだ。
くだらないよね。そういう経歴の老婆ならいくらでもいてもおかしくないしね。
ところが、後藤の死に方がまんまそれなんだ。そんなわけで刺し老婆の噂は巷の話題になったんだよね。まあ、一部のオカルトおたくが騒いでるだけなんだけどね。
後藤には申し訳ないんだけど、僕にはどうでもいいことだったんだよね。
突然、僕は警察に任意同行させられてしまったんだよね。任意同行ってのはほぼ強制なんだよね。任意なんてかなりの嘘。どこまで不幸ってのは僕のことが好きなんだろうか?勘弁して欲しいんだけどなぁ。
しかも、よりにもよってワカメモアイに尋問されたんだよね。そこで、後藤が死の間際に血文字でマキって書いたと聞かされたんだよね。ミステリー小説では有名なダイイングメッセージってやつ。それについて聞いた時はすげーびっくりしたね。目が飛び出て162キロのスピードで飛んでくぐらい。だって、僕の名前がダイイングメッセージとして残されていたんだもん。当然、驚くよね。驚かないやつは感情が欠落してるに違いない。僕の戯言だから、クレームをつけないように。
しかも、その日は本屋に行って立ち読みしてたんだけど、誰も僕が立ち読みしてたのを覚えてないからアリバイなし、親も旅行に行ってて、一人だったしね。タイミング悪すぎだよね。
これで生涯2度目の容疑者。パチパチ。はぁ…。
うざいワカメモアイに詰問されながら、僕は犯人が誰かを考えてたんだ。僕を知ってるから、家族あるいはクラスメートの可能性を真っ先に考えたよ。それに後藤に彼女や女友達がいて、その子がマキかもしれないとも考えた。後は書きかけの可能性ぐらいかな。よく考えたら、小学校でいじめられて以来、僕は自分のことマサキって名乗ってるからクラスメートが名前を知ってるはずがないんだよね。これでだいぶ絞れたよね。僕はワカメモアイに「後藤にマキやマキコとかいう知りあいか彼女はいないんですか?」と尋ねたんだ。とりあえず敬語使ったよ。使いたくなかったけど。「そんなヤツはおらん。まだシラをきるのか。お前が後藤を脅してたと皆が証言したんだぞ」とか言うんだよね。後藤を脅した?この僕が?後藤なんて死んで初めて僕に認識された人間のはずだよ。かなり失礼だけどね。死人に口なしだからさ。火葬するまでは口があるんだけどね。
「後藤君の写真を見せてもらえますか?」仕方ないからワカメモアイに尋ねたよ。写真を見せてもらって、漸く思い至ったんだ。後藤って僕が以前に脅して、変態扱いされてる理由を聞き出したやつだったんだ。ということは犯人が僕に罪をなすりつけようとしたなら、僕が後藤を脅した事実を知っていて、僕の名前を知ってるやつの可能性が高い。クラスメートは後藤を脅したことは知ってるけど、名前は知ってるはずがない。
そのとき、一筋の光が僕に道を示した。ちょっとオーバーかな?
今の今まで僕の頭の大部分を占めてた謎がいっぺんに収縮して消えたんだ。僕はあの名ぜりふをワカメモアイに言ってやったんだ。
「謎はすべて解けた」ってね。
ワカメモアイのやつ、あんぐりしてやがんの。いい気味だ。家に早く帰るためにも教えてやったよ。家に居場所はないんだけどね。犯人は僕の担任だってわかったんだ。担任ってもコウテイペンギンの髪型したほうじゃなくて、今の担任だよ。なぜ担任かって?答えは簡単。後藤を脅したという事実と名前を知りうる唯一の存在だからね。正式な書類にはちゃんとフリガナがあるから、僕の名前を知ってて当然。自分で言いたくないけどさ、我が高校の問題児が人を脅してるんだから、クラスメートの誰かが担任に伝えていたっておかしくない。というか伝えて当然だよね。ワカメモアイも話を聞いて、納得してさ。担任を調べたんだよね。そしたら、担任の車から血のついた包丁がみつかったんだ。僕はすぐ帰れるようになったんだ。ワカメモアイのやつ、帰り際に「散々、犯人扱いしてゴメンね、てへ」とか言いやがるんだよね。まあ、今回は殴んなかったけどさ、学習能力なさすぎだよね。動機なんてしょーもないけど、気になる人は気になるだろうからね。態度の悪い生徒に腹がたったんだってさ。実にしょーもないよね。陰湿に成績さげてやればいいのにさ。
取り調べの際に、ワカメモアイのやつ、風間真輝は態度悪くないのかと聞いたらしいんだよね。
余計なお世話ってやつだよ。プンプン。当然、ハレじゃないんだから冗談だよ。僕はプンプンなんて言ったりしない。そうそう、僕に罪をなすりつけようとしたのは、脅したという事実もあったし、前科持ちで一番疑われやすそうだからだって。たまんないよね。
でも、今回ばかりは親に感謝かな。犯人を言い当てたお礼に感謝状ももらったしね。
ちなみにワカメモアイには復讐として車のタイヤを隠してやったよ。手袋をつけてやったし、目撃者は0。これぞ、完全犯罪。規模は小さいけどね。なんで、ワカメモアイの車がわかったかって?それはあくまで秘密。
謎はわからないから謎。わからないからこそ、魅力的なことが沢山あるからね。今回は巻き込まれて皆勤賞が駄目になっちゃっただけだから、小さな不幸だよね。クラスメートの見る目も多少変わったみたいだし。どちらかと言えば、良いことだったかな?
良いことの後は災難な目に合うってのが僕だからさ。
ちょいと怖いんだけどね。
とりあえず今回は珍しくメデタシメデタシ
第5話
実のところ、すべての犯行は僕がやったんだ。
そう、後藤を殺したのは僕だ。あれから、僕は毎日のように夢を見る。皆が僕を人殺しと責める夢だ。夢ならいいが、本当に殺してしまったんだ。もう耐えられない。でも、死ぬ前に犯行の方法だけは記しておこう。
あの晩、僕は刺し老婆の坂に後藤を呼び出した。あとは、包丁で後藤を刺し殺して、担任の車に包丁を隠しただけだ。車の鍵を開けるのは簡単だった。少年院にいたときAに教えてもらった方法を使ったからだ。使わないと約束して教えてもらったので、Aに非はない。よく考えれば、わかる話だが、僕が後藤を脅したのは気が弱そうでおとなしそうだったからだ。そんなやつの態度が悪いはずがない。弁護士が罪を認めたほうが罪が軽くなるって言ったから、あんな動機をでっちあげたのだろう。裁判ではノイローゼ気味だったとでも言うのだろうか。どちらにしても僕には好都合だった。もういいだろう。さようなら。先ゆく不考をお許しくださいなんていう気はない。謝って済むわけがないが、担任には悪い事をしたと思っている。
風間真輝
僕は首をつった真輝の姿を見つけ、すぐに手遅れだと理解した。パソコンのディスプレイが鮮やかに光っていた。僕はパソコンのディスプレイに近づき、写し出されていた文を発見した。そして次にすべき行為を考え、警察を呼んだ。
僕は人の死体があんなに冷たくなることを知った。死と生の境界に触れた気がした。
真輝の死は状況から自殺だと判断されたようだ。でも、真輝ならこんな苦しい死に方はしないはずだ。文面が本当ならば、苦しみながら死ぬことで、罪が払拭されるとでも思ったのだろうか?
それにしても不可解だ。この自白文には、後藤の事件のダイイングメッセージについての記述が全くない。第一に真輝が犯人ならダイイングメッセージなどを残すはずがないじゃないか!そんなことを見落とすとなんて、僕は馬鹿だ!ダイイングメッセージは公にはなっていないはずだ。僕は真輝から聞いたから知っているだけだ。ということは誰かがこの文をでっち上げたに違いない。真輝の死にも不審な点がある。首つりの踏み台にした椅子が倒れていないことだ。なぜ、警察はこんなことに気付かないのだろうか?警察内部に真輝を殺した犯人がいるのだろうか?
もう、警察も信じることはできない。仇討ちとはいかないが、せめて冤罪だと証明してやるのが、僕から真輝への弔いとなるだろう。
それにしても真輝は本当についていない男だったな。容疑者2回、被害者1回、少年院1回、彼の人生valuelessって所だろうか。
僕なりに犯人像を考える。いや、考えるまでもなかった。すぐに気づくべきだった。犯人は真輝の担任の車から包丁が見つかったと知っている人物だ。このことは公になっていないはずだ。それに日本の警察なら、今回の椅子が不審だと気づくはずだ。それをうやむやにできる人物。
犯人はわかった。しかし、物証がない。動機も特には思いあたらない。もし、アレが動機なら執念深かすぎだし、逆恨みだ。ここには明らかに不審な状況があるだけなので、ここで犯人を明らかにする気はない。そして僕が誰なのかもだ。
これは「謎はわからないから謎なんだ。証拠もないのに犯人を決めつけるのは謎を曲げる愚挙だ」という真輝の言葉と僕の命の保身のため、そして君を危険に晒さないためだ。
だが、いつか物証をつかんで犯人をつかまえてみせる。
しかし、途中で犯人が僕を厄介だと思い、僕を殺そうとする者がいるかもしれないので、これを書き残したのだ。
僕が死んだら、君に僕の遺志として継いで欲しい。でも、あくまで自分の意思に従って欲しいというのも本音だ。少々、矛盾しているね。僕は行かねばならない。
また逢えることを願ってsee you again
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2005/07/29(Fri)15:39:41 公開 / 風間新輝
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■作者からのメッセージ
当然、フィクションっす。
ぼか〜小説書き始めて1ヶ月ちょいのド素人っす。だから、ガンガンどんどんに指摘アドバイスください。よろしくっす。
最終話っす。読んでくれれば、ありがたいっす。