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『武蔵ノ本屋 - 前編 《 訂正 》』 作者:ステラ・ランドス / 未分類 未分類
全角2877文字
容量5754 bytes
原稿用紙約8.7枚
遠く昔の武蔵ノ国で、一軒の本屋が建っていた。
この時代にはまだ”こみっくす”といった書物も、”てれび”と言った物も、一切ない
「ねぇ、昨日のてれび見たぁ?」
「うんうん。見た、見た〜。ちょー面白かったよねぇ〜」

 …ない、はずだった。

 なぜこんな時代にこんな会話が飛び交っているのか、それが今日最初の問題だろう。
それは外国人が来たことで、いっきに科学技術が発展し、なってしまったという早い寸法。
しかも、今風の喋りじゃん… そういうのは置いといて、一応念のためにもう一度。
 ここは遠く昔の武蔵ノ国。

客人二人が話している列の奥側で現代の本屋ではあまり見なくなった光景だが、本の整理をしたり本についた汚れをはたいたりする全身キリスト教徒みたいな服の上に黄色いエプロンを下げた店員の姿が見える。
 この店員こそが、ここ武蔵ノ国に訪れてテレビやらを開発させてしまった外国人、リリィ=寺沼である。
 リリィは読書をこよなく愛し、なんでも日本の文化や時代劇(強いて言うならお侍さん)に憧れて日本に着たんだとか。
 そして本棚を飛び出したその奥にあるカウンターを覗いてみるとカウンター全体にデーンと寝そべっている女店長の姿があった。
「テンチョー、どうします?」
テンチョーと呼ばれた赤いチャイナ服の女性は「んあ?」とだるそうな低い声を発した後ゆっくりと体を起こし始めた。
起きてみると目の前には入り口近くで本の整理をしている途中の手を止めたままカウンターに向かって叫ぶリリィの姿があった。
彼女の名は陰陽師嘉(よみする)。
彼女の家庭は由緒正しき武道の名門だったために体を動かすことに日々専念していたのだが、急に家の大黒柱である父親が病にかかり倒れこんだため嘉は父親の母方のほうへ預けられた。
そして最年少にして得たというよりはなってしまった本屋の第1997か8代目店長として今は居座る。
リリィは本の整理をいったん切り出しカウンターのほうへと足の向きを変えて、おどついた表情でお昼寝タイム中の嘉に近づいた。
なぜ、彼はおどついているのか、それはこの本屋(通称:時代屋)に隠された重大な秘密を知っているからである。
その秘密のことに関してはまた後で語るとしよう。
嘉は半開きの口を閉じないまま近づいてくるリリィの顔を「なにが?」という顔で見上げた。
「…あの客人二人デスヨ」
嘉は責任放棄で「別に、ほっとけば?」と眠たそうな声で呟くと、欠伸を一掻きしてカウンターの机の上に置いてあったビール瓶を勢いよく飲み干す。
「…ヒック…だって、どうせ‥さぁ、そこらへん触って危ない目にあうのあいつ等だけだし…いいんじゃないの?」
「…え、で、デモ‥」
「‥でも、もなにもないのよ…ぁふふ…ぉやすみぃ….... z Zz....」
「アァ!?て、テンチョーっ!!…アーァ」
気持ちよさそうに眠りについてしまった居眠り姫は永遠の寝むりにつき、二度と目を覚ますことはなかったそうだ。
めでたし、めでたし。

 と、終われば問題ないのだがこれまたこれで終わらないというのだからこれを書いてる作者のほうが大変だ。
 リリィが恐れていたこと。それはここの本屋が極普通の本屋ではないからってこと。
ここの本屋には色々な時代に関する書物や、今はやりのマンガだとかエロ本やらが多数置いてある。
それは通常の本屋と変わりないのだが、変わっているのはその本の内容だ。
本の内容は出版社とかによって違い色々なストーリー、特集などがある。なかにはおまけとかあったりする。
そういう違い。ではない。
じゃあ、どういう違いか? というと本の見た目やつくりは一緒なのだが、この未来本というのはまさに未来で出来た未来のテクノロジー搭載の画期的な早い話が何処でもドア。
一冊開けばたちまち異世界へようこそ! という変な本。
「テンチョー…おーイ‥はァ、駄目だこりゃ」
時代屋の本は簡単、便利に好きな本の扉を開けばたちまちその物語の中、時代の中に吸い込まれて、自分もその物語の一員として活躍するのだ。
ただし、直ぐに帰ってこられるのは物語の徹頭徹尾、短いもののみの話。
コミックスのような続編のもの、特にアドベンチャーや冒険ファンタジーといったものは直ぐには戻ってこない。
 ほら、人って直ぐにこのキャラカッコイイ〜♪とかいって夢中になってついにはファンサイトなんてのも開いちゃうくらい大好きメーターアップ!なんてことになる人はよくいうのがこれ「私、何とかにハマった」。
そうやって、ハマってしまって抜けなくなるのと同じです。
「…危ないお話しに入らなければいいんデスけど……」
 だからこうして、リリィは自分の命の次に大事な客人を心配しているのにのん気に居眠りなんかしちゃってる嘉を前に深く溜息をつく。
そして視点を嘉から離すと同時に客人の悲鳴と共に人気がまったく感じられなかった。
それはまるで風の如く消え去ったかのように…。
 こうして、また物語の中に行ってしまった客人を見届け、そして助けに行くのである。
「……しかた、ありまセンネ‥行きますか」
何故だかトイレへ駆け込みなにやらトイレの中で怪しい物音から悲鳴のような音、そして勢いよく大きなものが上から崩れ落ちてくる音が激しく続いたトイレからやっとのことでリリィは姿を現した。
一体トイレで何があったのか、は知らないが彼は変わっていた。
見ればピストルや日本刀、接近戦用の弓矢、バズーカに手裏剣…そして鎧姿という完全武装で出てきたのだ。
リリィはカウンターで眠る嘉に近づいた。
「テンチョー、行ってきますね」
もの凄く騒がしかったのにも関わらずカウンターでぐっすりと眠る嘉を前に軽く微笑むとリリィは顔を上げて、本棚のほうへ視点を変える。
リリィは本棚のほうへ歩き始めた。
客人が吸い込まれたと思われる本を見つけるとすぐさま手に取り、その本を床にたたきつた。
「…えっと、‥あった。ココですね…待っててくださいね、お客サマ!」
そしてなにやら表紙に向かってお経(?)のようなものを言い始めた。
こういう店長が居るところには必ずしっかりとした店員が居ないと困るのです。責任重大?
「…人・非・賢・有・在・家‥我ら客人を有するもの、…在・有‥アーメン!」
すると本の表紙から黄色い光が発せられ、光はリリィの体を優しく包み入れ、そして姿を消したのである。
彼が消え去った頃、時代屋はシン‥とし静まりかえり、あたりが少し暗くなったという。
嘉はリリィが出動したのにもかかわらず、カウンターでぐっすり寝こけていた。
というのは仮の体制で、実はちゃんとリリィより先に嘉も出動していたのだ。
彼女は呪文や、時空移動といったものを扱うほど能力が足りないため、寝ている間、つまり夢の中だけで移動を行っている。
そのため、いつも朝方問わず年がら年中眠たそうに嘉はカウンターに寝そべっているのだ。
リリィはさきほどのように本の世界(二、三次元の中)に入るための呪文を唱えてからではないと彼は入れない。
 まるで、物語の冒頭でウサギが出てこないまま始まる不思議の国のアリスだ。
2005/07/26(Tue)16:33:48 公開 / ステラ・ランドス
■この作品の著作権はステラ・ランドスさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ステラです。
訂正してみましたが…まだよく解りません。
ので、指摘のほうお願いします!
ちょっと長めですが、頑張ってみます。
この作品に対する感想 - 昇順
[簡易感想]文句無しのおもしろさです。
2013/08/28(Wed)18:30:250点Alba
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