- 『雨の降る日』 作者:深海 / 未分類 未分類
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原稿用紙約6.15枚
雨が降っている
空で生まれた粒は容赦なく地面に叩きつけられて激しく飛び散り跡形も無く消えました。
僕はここにいます。
貴方が来るのを待っています。
雨の日――――。
僕はココで貴方を待っている。
薄暗くて空気には有害な毒が混ざっているこの場所に僕は気づいたら居た。
最初は怖くて悲しくて切なくて…
それでも、貴方が迎えに来てくれるのを信じて
僕は待ってる。ずっとココで。
空から降ってくる粒がこの狭い箱に溜まって
もう
足が濡れた。
近くを通る車が激しくうなって
地面に惨めな程広がっている水溜りを引いて殺してしまった。
死んでしまった水溜りの血が僕を濡らし、僕は空色に染まる。
それでも僕はココを動かない。
もう、腰が濡れました。
貴方にもう一度会いたい
だから僕はココで貴方を待っている。
だって
「大好きだよ」って言ってくれたから
僕も貴方が大好きだから
離れる理由が…わからないから…
今はそれがすべてで
ココが僕のすべてだから…
誰かが僕を見て笑っている
ケラケラケラ
僕は目を閉じた。何だかとても怖かったから…。
もう
何も見えません。
早く貴方が来てくれることだけを祈って
もう
肩が濡れました
「大切な友達」
「大好きだよ」
「ずっと一緒」
「ごめんね」
「ごめんね」
「ごめんね… 」
僕は泣いた
声をあげて
水の粒が地面にぶつかる音にも
車がうなる音にも
ひかれて叫ぶ断末魔の音にも
ケラケラ笑う誰かの音にも
かき消されてしまわぬ程の音で…僕は鳴いた…。
…………
………
……
…
。
誰かが近づいてくる
コツコツ
コツコツ
でも僕は鳴くことを止めなかった。
ただ声を張り上げていた
貴方の声に潰されてしまわないように…
僕は大きな足で蹴られた。
コツコツコツコツが僕を蹴ったんだ。
僕は何度も何度も蹴られて…意識が遠くなって
結局
動くことも
泣くこともできなくなって
箱の中に倒れた…。
僕が動かなくなると
コツコツ コツコツ
逃げていった。音が響く。逃げていった音が…
もう
何も見えません
もう
すべてが濡れました
僕は
もう
貴方を待てません
大切な貴方
大好きな貴方…
僕は濡れています
空から降ってくる粒で
水溜りの血で
僕の涙で
僕は濡れています
もう
何もわかりません
「さようなら…大好きな貴方」
最後に呟いた声は泡になって消えました。
もう
何もありません
もう…
何もありません
雨が降り続いています
空で生まれた粒は容赦なく地面に叩きつけられて激しく飛び散り跡形も無く消えました。
少女が
ボロボロの箱の前で泣いています。
雨が少女を濡らしています。
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2005/07/14(Thu)16:56:33 公開 / 深海
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■作者からのメッセージ
最近雨ばかりです。