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『迷う金魚』 作者:きゃむ / 未分類 未分類
全角1172.5文字
容量2345 bytes
原稿用紙約3.85枚
昨日、御祭りで晃が赤い赤い金魚を買ってきた。
最初は、すくうのが破れて苦労したけど、なんとか一匹だけ取れた。と笑う晃は日焼けをした
普通の17歳の男の子だった。その金魚を貰う私というのは24歳のOLであり、恋人だっている。
「ありがとう」と私がビニルの中に入り器用に泳ぐ金魚を眺めると「気に入った?」と晃は
目を少し輝かせながら言う。ここで本当の事…「私、生き物とか苦手なのよね。」というのは
何故か私の良心に反する事だと思ったので「うん。可愛いわね。」と言っておいた。
私が生き物は苦手な理由は「死」というデメリットだった。生き物なんだから仕方ない。と
前誰かに言われた記憶があるが、愛着を持って育てだ分、死んでしまった時のダメージは
大きいと私は考える。金魚の寿命はいくらくらいなのだろうか?そう思いながらまだ金魚を
眺めていると後ろから晃が「その金魚の名前どうする?」とか「何に入れて飼うの?」とか
色々言っていた。「茜さん。」いきなし名前を呼ばれてびっくりして振り向くと晃は
すぐ傍にいた。「名前は、俺の名前付けてよ。」そう言って柔らかく笑う晃は大人びていて
とても17歳の毎日サッカーに明け暮れる青年には見えなかった。
晃には妙な色気があるのだ。と私は考える。年上の女をも魅了してしまうその笑顔。
さぞ学校ではもてもてなのだろう。そんな事を考えていると「ね、ね。名前!どうすんの」
よっぽど自分の名前をつけて欲しいらしい。私が折れて「いいわよ。じゃぁこの金魚の名前は晃ね」
といった。そうすると晃は満足そうに笑い「俺、時々晃の様子見に来るから!ちゃんと育てろよ!」
そう言い私の部屋を出ていった。まるで晃は嵐のようだ。
その晃というのは、私の隣の部屋に1人暮らしをしている、いわば隣人だ。
何回か挨拶をしていくうちに、妙に晃から話しかけてきた。
私に異性として好意があると知ったのは、挨拶を始めて3ヶ月後の事だった。
私は丁重にお断りをした。「ごめんなさい。私、恋人がいるんです。」(これが丁重かどうかは分からないが)
そう言うと晃はがっかりした素振りも見せず「じゃぁ、俺と友達になってもらえませんか?」
この一言が私と晃の始まりだった気がする。それから毎回晃が美味しいと感じたお菓子を
わざわざおすそ分けしにきてくれたり、借りてきたDVDを一緒に見るようになった。
晃は私を引きつける力をもっている。
もちろん晃を異性として見た事がない。いっつも「人懐っこい弟」という印象だ。
もちろん晃の事は恋人には言っていない。恋人は独占良くが強いのだ。
もしも「時々隣の男子高校生が遊びにくる」と知ったら、とても嫌な事が起こると思ったのだ。

いつのまの夕方になっていた。ひとまずまだビニルの入ったままの金魚をテーブルに置き、
この金魚をいれる適度な水槽は無いかと物置の方へ向かう。

2005/07/11(Mon)16:28:40 公開 / きゃむ
■この作品の著作権はきゃむさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
こんいちは。初めまして。
ここは始めてなので、とても緊張します。
これからちょくちょく話を書かせてもらうので
どうぞ宜しくお願いします。
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