- 『箱2』 作者:アィコ / 未分類 未分類
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原稿用紙約4.55枚
「何とかしましょうよ。このままじゃ全員死んじゃいますよ」
佐藤が少々声を荒げて言った。まぁ、死にそうなときに落ち着いていられた今までのこの四人がおかしいのだが。
「じゃあ、何をすれば…?」
菅原は今にも泣きそうになりながらもおずおずと聞いた。
佐藤は少しの間考え込んでから部屋をもう一度ぐるりと見回すと、天井に小さな扉があることに気がついた。そして再び考え込む。
俺は細身の筋肉質(自己評価)だからきっと通れないだろ…。くそぅ。筋トレなんかするんじゃなかった!!いいや、落ち着け!男だろ!?俺!――――よし。落ち着いた。佐伯さんは無理だろな…。筋力とか年齢とか体力とか…あと、失礼だが体系的に。瀬川さんは…無理だ。ケツがでかすぎて通れない。―――――となると、必然的に菅原さんに頼むしかないか。
佐藤が菅原のほうに目をやると、目があった。つかつかと彼女に近づくと彼女は後ずさりをした。
「な…何なんですかー?(汗)」
後ずさりされちゃ何も出来ん!と佐藤は心の中でツッコム。そのうち、この狭い部屋だ、すぐに壁にぶつかった。すると、菅原は戦闘体形になった。
「あ…あれなんでしょう?!一人でも少ないほうが酸素のなくなるスピードが遅くなるから、私を殺す気なんですね?!あぁん?そうなんじゃないですかぁ?」
キレタ。というか、切れた。佐藤の衣類の一部が。菅原は護身用にカッターを携帯していたらしい。幸い、切れたのは佐藤の衣類だけで直接身体には何もなかったようだ。
「な…何をするんですか!!僕は貴方を殺す気はない。貴方に頼みたいことがあるんだ」
「頼みたいこと?」
戦闘体形のまま彼女は聞いた。
「そうだ。天井を見てごらん。小さな扉があるだろう。あそこから外にでられるかもしれないんだ。とっても、肉付きの悪い…。じゃなくってスレンダーな君しかあそこから出られそうにないんだよ。だから、やってくれないか?」
三十秒後。
菅原はカッターをしまい、協力すると言った。その言葉に菅原以外の三人が安堵したのもつかの間、彼女はこんなことをいいだした。
「あそこから出ればいいんだよね。―――――でも、ちょっと待って。私、スカートなんだけど」
この期に及んでもまだそんな事を気にするのか…男軍二人が呟いた。この期に及んでなんて気にしないで・・・っていうかこの期に及ばなくても気にしないでほしいなあと一瞬だけ二人は思った。
「じゃあ、どっちかが菅原さんのスカートをはいて、そのはいた人のはいているズボンを彼女がはけばいいのでは…?」
瀬川が言った。それに対して、菅原が即答する。
「それなら、佐藤さんのがいい」
「いや…なんというか…スカートってはじめてはいたよ」
佐藤が少々恥ずかしそうに言った。そりゃそうじゃないと逆におかしいだろうと、その場にいた全員が心の中でツッコミの嵐。
そして、スカートの佐藤が佐藤のズボンをはいた菅原を肩車してなんとか扉に近づいた。扉が簡単に開くことを静かに四人はいのりながら、すこしだけのぞく絶望のかすかな影と戦っていた。
カチャリ。キー
扉の、開く音だった。
「開いた。開いたよ!」
佐藤の上で菅原が嬉々とする。それから、さすが女子高生という感じの身軽さでその小さな扉の向こうに入っていった。
「何が見える?菅原さん」
菅原の言葉を待ちきれずに瀬川が聞いた。
「あ?え?は?何?え?何なの?」
菅原の言葉を三人は必死に耳を澄ませて聞いていた。一言一句も逃さないというように。
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2005/06/19(Sun)20:13:30 公開 / アィコ
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■作者からのメッセージ
「箱」の続編です。
箱を思い出していただくために、軽くあらすじを…
四人の男女が扉のない部屋に、目が覚めたら閉じ込められていた。その部屋は小さいため、すぐに酸素がなくなって全員死亡することがわかる。そして、不思議なことに全員この部屋にいたるまでの経緯がすっぽりと忘れてしまっているのである。
訳のわからない狭い部屋に対して、キャリアウーマン風の女は呟く。
「この部屋に名前をあえてつけるのならば、箱部屋と名づけよう…」と。
果たして、四人は助かることが出来るのだろうか。
あらすじ―了