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『シックル 三話更新』 作者:エイル / ファンタジー
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☆☆シックル一話〜日常であれば〜☆☆

 暗い室内。唯一光を灯すパソコンのモニターの下にはキーボードが置かれて
おり、そのキーボードの上を滑るように指が動く。

 現時刻、深夜二時。小学生である河阪利絵が、この時間に狂おしい程にモニ
ターを眺めつつ、キーボードに手を伸ばしているのは、ここ二ヶ月前から以前
とした習慣になっている。
 利絵は小学六年である。親の遺伝によって、綺麗な顔立ちである彼女は小学
校での男子からの人気は高い。その証拠に二枚のラブレターが、勉強机の引き
出しにしまってある。

 しかし、その人気のせいか、女子からの人気は芳しくないと言えよう。
 そして、その人気が彼女の、この習慣を引き出したのかもしれない。

 軽い現実逃避――。
 特にいじめられているとかの様子はない、が、同様に、特に親しい友人もい
ない。

「ふぅ」

 溜め息を漏らし、首の凝りに反発させるかのように、体全体を後ろに倒す。
 骨が軽い音を立てる。体を戻す。
 モニターに表示されているウィンドウ枠部には、文章入力用ソフトの名前が
表示されている。
 そして、キーボードを叩く音に連動し、次々と文字が表示されていく。

 文章の構成から、彼女は小説を執筆している事がわかる。それもかなりの達
筆だ。
 一つ、口が切れそうな大きな欠伸をして、何か思い立ったかのように、文章
入力用ソフトを上書き保存し、閉じる。
 今度はインターネットに接続、御馴染みの検索サイト画面が表示されない内
に、お気に入りの一項目をクリックした。
 一瞬の読み込み時間の後に表示されたのは、桃色主体の可愛らしいデザイン
が施されたページだった。

 ここは利絵が執筆した小説を掲載する場所であり、利絵が運営する、小説サ
イトである。
 左上に表示されるカウンターを横目で一瞥しつつ、コンテンツの欄のBBS
――いわゆる掲示板――と書かれているテキストリンクをクリックする。

 この新しい書き込みがあるか否かを確認する瞬間というのは、何ともいえな
い緊張感と楽しみが生じる。
 書き込みがなかった場合は、落胆するし、その反対であった場合は、頬の筋
肉が自然に緩められる程に喜ぶ。

 そして見つけた新着の書き込みに――かなりの大手サイトなので、一日一回
の書き込みは珍しくない――喜び、その内容をスクロールさせ、読もうとする。

☆☆☆☆☆

 茉合敬典は並べられた本の中に、お気に入りの本の背表紙を発見した。
 真夏の真昼。敬典は一人の友達に誘われ、図書館に足を運んだ。
 本をただで読めて、涼めるこの環境は、中学生である敬典にとっては最高の
環境だった。
 もっとも、この図書館は自転車を爆走させても、三十分弱もかかる距離にあ
るので、そう気軽にいけるものではない。

 彼はその本を抜き出し、小脇に抱え歩き出す。
 向かう机の群れは、図書館の中で本を読む為に設けられたコーナーである。
 丸い机を囲むように、ひし形に椅子が置かれている。
 その一つの椅子に腰かけているのが、敬典をこの場所に誘った人物である。

 神田来祭は文庫本を食い入るように読み漁っていた。
 来祭という変な名前であるが、彼は紛れもない純潔の日本人だ。
 普段はひょうきんで抜け目ない彼も、読書という形で自分の世界に入り込ん
だ時だけは、表情さえも怜悧な物に変える。
 そのこともあり、敬典が自分の真横にいて、来祭が読む小説を覗き込んでい
ることにも気付かない。

 敬典は先程手にした本の表紙部分を、来祭のドタマにぶつける。
「うわぁっ!」
 静かな図書館でこれ程までの、大声をあげて驚くことができるのは、来祭の
性格柄だろう。
 当然、周りの視線はこの二人の中学生に集まる。
「黙れよ」
 敬典は自分で行った行動により、受けた辱めに顔を赤く染めながら、来祭を
たしなめる。
「だって、お前が叩くから……」
 とブツブツ言いながら、敬典が来祭のドタマを叩いた本に視線を移す。
 もう周囲からの視線は外れ、敬典の顔も元の肌色に戻っていた。

 敬典は基本的に目立つ事が嫌いで、どこにでもいる真面目な中学生だ。
 来祭とは対照的な性格である。学校生活のどの場面でも、細い目を保ちつつ
のポーカーフェイス。
 眉毛の濃さから、ポーカーフェイスもかっこよくはみえない。
 しかし、かっこよくはないが顔にハンデを持っているわけでもなく、平凡な
日常生活を過ごしている。

「お、間違い探しか……」
 敬典が手に持つ本に興味を持った来祭はそう呟き、敬典から間違い探しの本
を奪い取る。

 だが、中学生という立場であり、未だに間違い探しに興味をそそられるとい
うのはいかがなものであろうか……。

☆☆☆☆☆

 中崎智明はこれで三件目のゲームセンターの前で嘆息した。
 時は夕暮れ時。夕日が丁度、ガラス張りのゲームセンターを照らしていた。
 ゲームセンターの中には薄く、赤い色がかかる。
 彼は電車まで駆使して、数々のゲームセンターを回っているのかというと、
それは一つのゲームにある。

 智明は思ったことはすぐ行動に移す中学一年生だ。
 その単純性溢れる性格は、ふと思ったことでも行動に移す。
 そう言えば、大体わかるだろうか。
 そして、その思いつきは
(あ、あのゲーム久しぶりにやりたくなったな)
 という事柄だ。なんという短絡思考。

 そういうわけで、彼は久しぶりにやりたくなった、ゲームセンターのゲーム
を探しに一件、二件ときたわけだ。
 今、彼の頭の中では、たった一つのゲームの為、こんな遠方まで出かけた事
を酷く後悔している事だろう。
 だが、ここまできてしまったのだから、ここはパパンとやって帰りたいもの
だ。

 自動ドアから中に入り、予想以上の喧騒に耳を強張らせる。
 左に見える看板に書かれていた『ビデオゲームは二階』という文字に反応し、
緩慢な動きで螺旋階段を登る。
 多数の列を繰り出す、ゲームの中から自分が探していたビデオゲームを見つ
けた。
(おぉ!)
 心の中で歓声を挙げつつ、席に着いた。
 そこで彼はあることに気付いた。
(人が……いない?)
 普通ならば、二階に辿り着いたときに気付くことも、智明はゲームの所在の
事ばかりを気にしていたので、自分以外に人がいない事を考えるほど、気が気
でなかった。

 別に人がいないことなんて、今の智明としてはどうでもいいことなんだろう
が、やはり不気味だ。

 そこで考えるだけ無駄だと思ったか、財布から50円玉を取り出し、挿入口
に入れる。
 タン、タン、タン――
 鉄製の階段を登る音が、耳に入る。

 階段を登ってきた男は、耳にピアスやら、金髪の頭髪やら。
 如何にも悪一筋という男だ。
 背丈や顔立ちは、まだ幼く、智明ともそんなに年齢は変わらない。

 男は二階に辿り着くと同時に、智明の存在をいぶかしむ。
「んん?何で俺らの縄張りに侵入者がいるワケ?」
 誰に確認するでもなく、敵意丸出しで智明の方に歩を進める。
 智明も流石に、座ってはいられないと感じ、立ち上がる。

 智明はその穏やかな双眸を細め、その男の敵意も露な目に視線を合わせる。
「ここって、君の縄張りなんだ」
 薄く微笑み、男に尋ねた。
「あ?じゃあなんなんだよ?まさか、説教でもする気か?」
 男がスッと足でリズムを取るように、その身軽そうな体を上下させる。
 それと同時に両腕を胸の前に構える。
(ボクシング……か)
 男とは対照的に、智明は腕をたらして立っているだけだ。
 だが、視線はやはり男の双眸を目視している。

 男が攻撃にでようと一歩踏み出す――
 智明は傍らに置いてあった椅子を上に蹴り飛ばした。
「あ、ごめんね、縄張り荒らしちゃった」
 舐めた口の聞き方に男は、遂に憤怒も露に拳と共に、体を前に出してくる。
 やはりそれにも智明はほぼ動かない。手のひらを男に向ける。
 まさに、魔術師――実在しないものだけど――が魔法を手のひらから出す様
な構えだ。

 パシィッ!

 当然だが、智明の手のひらから魔法は出なかった。
 しかし、男の拳は吸い込まれるように智明の手のひらに止められる。
 男はそのスゴ技に唖然とする間も無く、智明が繰り出した逆の腕からの拳に
顔面を打たれた。
 ボクシングの知識を少し齧っている、というだけの男は衝撃を緩和するでも
なく、拳の進行方向に派手に跳ね飛ばされた。

(う〜ん、こりゃ素人だな)
 智明が感じた通り、なかなかの経験者なら、そう一打一打に全力をかけたり
はしない。

 だが、素人といえ経験者を圧倒した智明の実力にも賞賛するべきであろう。

「さてと、ゲームゲーム」
 椅子に座りなおし、画面に視線を注いだ智明は愕然とした。
 どうやら、50円を入れたまま男を成敗していたので――このゲームは格闘
ゲームであるのだが――制限時間が過ぎ、勝手にゲームは進行していたようだ。
 当然、プレイヤーのいないゲーム等成り立たず、敗北を喫していた。

「そ、そんなぁ」
 金=命である智明としては、男の拳よりも痛いダメージであっただろう。

 この後、更なる悲劇が智明を襲うのだが、気絶した男をもう一度ブチのめそ
うと考えていた智明は、その出来事への悪寒を感じる事は出来なかった。

☆☆☆☆☆

 やはり真夏。運動場をこれでもかと疾走する、女生徒達。
 景気のいい掛け声と共にランニング。

 その様子を見学という形で見ていた北条りんは落胆した。
(はぁ……、いいなぁ、私も一度でいいから運動場を悠々と走ってみたいな)
 
 中学一年生である、りんはその明るい性格と対照して、体の方は酷く弱体だ。
 成績優秀で、綺麗とは形容しがたい顔立ち。綺麗ではなく童顔で可愛いと言
った方が正しい。
 長く伸ばした髪は両側の側頭部に垂らしている。その髪は漆黒で大和撫子を
連想させる。
 けれども、その漆黒も陽光の影響で今は茶色く見えてしまう。

「暑すぎ……」
 誰にも聞こえぬ様、一人ごちる。

☆☆シックル二話〜移動でよかった〜☆☆

 利絵は何とも言えない悪寒を感じた。
 その悪寒は深夜なだけあり、更に恐怖を増す。

 書き込みを閲覧するのを中断し、モニターを凝視する。

 そしてそれは現れる。

(っ!!? 画面の右端に黒い点が?)
 その点は、明滅していた。うつったり消えたり。
 普通にパソコンをやっていては絶対に気付かない黒い点。
 黒い点はその妖艶なる雰囲気をかもし出していた。
 だからこそ、利絵は気付けた。
(ウィルス?でも、こんなの聞いたことない……)

 その明滅、最初はゆったりとした感覚でうつる、消えるの連続だったのだが、
利絵がそれの正体をつかもうと思考を巡らせていた間にも、その感覚は速く、
そして、激しくなっていく。

 利絵の心臓の鼓動が高鳴る。
 体の中の全ての感覚が危険信号をあげている。警鐘を鳴らしている。



 ――黒い点の明滅と……心臓の鼓動が同調したように、大きく跳ねた――

☆☆☆☆☆

 真夏のオアシスとも形容できそうな、憩いの場所、図書館。
 先刻手にした間違い探しの本を、来祭に渡した敬典は、来祭の間違い探しに
対する、熱中ぶりに苦笑しつつ、自分が読みたい本をまた探しにいった。

(たまには社会勉強でもするかね……)
 敬典は自分から苦行に挑戦する、チャレンジ精神を豊富に持っている男だ。
 このチャレンジ精神、敬典の同級生曰く、ただのアホ、らしいが彼はその言
われ様にも苦笑するのみであった。

 要するに彼は今から社会勉強という、苦行にチャレンジしようと思っている
らしい。

 そこで、何をするのかというと、図書館カウンター前に置かれていた今日の
朝刊を手に取った。
 だが、その横に置かれた『緊急増刊!!』やら、穏やかではない響きの新聞
を見つけ、こちらの方が面白いと感じたのか、そちらの方を手に取る。
 そして、その場で立ち読み。珍しい事件の記事を見つけたので、それを来祭
に見せにいく為、踵を返す。


 だが、来祭が座っているはずの席に、ボサボサッとした髪の中学生ぐらいの
男――普通に来祭の事だが――はいなかった。
(トイレにでもいったか?)
 眉根を寄せ、訝しげな顔を作るのだが、その視界の中に間違い探しの本が、
開かれたまま置いてあるのに気付いた。
 彼は当初の目的など完全に忘れ、先程自分が見損なった――来祭が奪い取っ
たから――本を椅子に座り、読み出した。

 しつこい様だが、中学生なる年頃で、こんな本を熱心に読むのは気が狂って
いる様にも見える。




 ――緊急増刊――
 『謎の失踪事件』
 今日未明、大阪市内の市営住宅内で一人の少女が行方不明になった。
 少女の母親の証言では『朝、娘の部屋を覗いたら、パソコンをつけっ放しに
したまま姿を消していた』とのこと。
 今後警察は少女の行方を探索、新情報が入り次第、報告するとの事。


 敬典が放り出した新聞に書かれていた記事である。いつかは他の記事に埋め
られ、存在を無くす。
 そんな一つの記事である。

☆☆☆☆☆

 体の全ての汗腺が刺激される温度。
 広大な砂漠。砂漠の温度は視界を歪める程。
 その中を一頭の馬が砂に蹄の後をつけていく。
 馬にまたがるのは鎧を着こなした少女。兜がないだけに気品のいい容貌がうか
がえる。

 イオナ・コノンは綺麗な金髪――それは染めたものとは比にならない――を
ポニーテールにしている。
 白い鎧も大変似合っており、その姿は聖なる騎士『ナイト』をほうふつさせ
る。

 イオナは町から町へと、旅する旅人である。
 普通の旅人ではこんな大層な格好はできない。
 彼女は行き着く町で、『魔物』やら『悪しき者』を討伐する事により、報酬
を得ている。

 魔物と悪しき者、どちらを倒した方が報酬が高いかと聞かれれば、迷わず悪
しき者と答えるだろう。

 悪しき者は人間を遥かに越える運動能力、それと人間と同等の知能を持つ。
 姿、格好も人間と同様だ。それ故に中には人間と同じ生活をする者もいる。
 だが、大半は町を襲い、イオナの同業者に討伐されるか、その町を壊滅させ
るかだ。

 そんな凶悪な者を討伐するぐらいなのだから、報酬の高さと同様にイオナの
実力もわかる。

(あ……あそこが『恵みの木』ね)
 イオナの前方に一本の大木が見えた。砂漠の色にはとても似合わない、緑だ。
 そしてその木を中心に僅かだが緑が広がっている。

 この乾燥した地に、一本立つ大木はとても神秘的である。
 どこぞのお偉い学者が聖地と認定したらしく、恵みの木と呼ばれている。

 恵みの木まで馬を歩かせたイオナは、その木の陰で座り込む。
 手にしているのは羊皮紙一枚と、飲料用の水だ。
 水を飲んでは羊皮紙をじっくりと見る。

 羊皮紙は地図であり、その地図によればここから三十分歩けば、砂漠を抜け
れる、と同時にかなり大規模な町に辿り着く。
 何となく一息つき、立ち上がったイオナは、愛馬の頭を撫で、水を飲ませる。

「後ちょっとよ、ストラビ。頑張ってね」

 愛馬の名前を呼び、元気付ける。

 そして愛馬に跨り出発した――

☆☆☆☆☆

(ふぅん、ありがちな異世界移動だな)
 来祭は額に浮かんだ汗を服の袖で拭い取る。
 だが数秒とも立たないうちに、また額に汗が浮かんだ。

 来祭は小説、しかもファンタジーが好きだ。
 それ故にこの状況下に置かれつつも、全くの動揺も見せない。
 寧ろ心の底ではこの状況を楽しんでいる。
 普通の人間なら、いきなり砂漠に放り出されては、何が何だか理解できず、
夢だと信じ込む所を、来祭は瞬時に事実を飲み込んだ。

(俺は図書館からここに移動した。こんなこと小説ではよくあることだ)
 そして思案気に顎を親指で摘み――これは彼の癖である――更に思考を巡ら
せる。
(ただ違うのはこれはノンフィクションでありフィクションではない)
 うん、と頷き意味も無く歩き回る。

 彼は表面上の性格柄、馬鹿に見られがちだが、いざ思考を巡回させると、そ
の頭のキレは刃物の様に切れる。
 その冷静な思考が作動するまではただのアホだということは、もうわかりき
っている事だ。

(それにしてもこの状況、危ないな)
 ふと、直に日の光を受ける自分の影を見て思った。

(とりあえずは陰に隠れ、日光を防いで、それと水分補給だな)
 ゴクリと喉を鳴らし、視界を巡回させる。
 その間にもシャツと肌が汗により張り付き、何ともいえない不快感を覚える。
 一点、本当に粒ほどだが、黒い影が見える。
(何だ……、こちらに向かってきているんだけど)
 その粒はこちらに向かっている。規則的に、上下に体を揺らしている。
 だが、かなりの速度が見受けられる。少なくとも人間が走ってきているわけ
では無い様だ。
(嫌な予感――、まさかあれ、魔物とかじゃないだろうな!?)

 その時、来祭の背後で砂が上から下に落とされるような、微かな音がした。

 その音に気付いたのか、来祭が背後の気配を感じ、振り向いた。
 視界が揺らぐ。そして地面が遥か真下に見える。
 何かに体を縛られ、身動きが取れない。
 横目で来祭が見た生物は、キツネ色の大ミミズだ。

(ぐっ――)
 大ミミズは絞める力を強め、来祭に更なる苦痛を与える。

☆☆☆☆☆

「ちっ、図体だけの低級な魔物がっ――」
 イオナは凝視していた人影がいきなり、高々と縛り上げられたのを見て、ス
トラビを促がす。
「ストラビ、スピードを上げて!」
 荒々しい口調で促がしたと同時に、口の中で何やら早口に呟き始めた。
 その言葉、とても聞き取れたものではないが、イオナが普段から使用してい
る言葉とは、かなりかけ離れたものだ。

「ヘイスト!!」
 突如、ハッキリと聞き取れる言葉を叫び、背中の大剣に手を掛け、重量を感
じさせないほどに、軽々と引き抜き、逆手に持った。
 剣の切っ先は、なんと、愛馬、ストラビに向いている。
 剣の腹では、紫色のクリスタルと見受けられる物体が明るく光を放っている。

 そして、その剣をストラビに突き刺す――


 直後、ストラビは剣に刺された事など夢の様に、颯爽と大ミミズ向かって
走っている。
 そしてストラビに跨るイオナさえも、何も無かったかのように剣を引き抜く。
 大剣を右手に持ち、風に対してあおる様にたなびかせる。
 当然ストラビが赤い血を撒き散らす光景もそこにはなかった。

 やはり、変わらず優雅にストラビは大ミミズ向かって疾走する。
 いや、変わらずというのは間違いだ――

 ストラビが地に蹄をつける間隔は、先程とは比にならない程、縮まっていた。

 目が無い大ミミズは、音で察したのか、とにかくイオナの存在に気付いた。
 そのビル二本ぐらいの太さをした頭部で――来祭を捕らえたまま――イオナ
に目掛けて体当たりをぶちかます。
 大ミミズは粉塵と共に、低姿勢から突く様に迫り来る。
「うわぁぁぁぁ」
 勿論、来祭はやかましく絶叫を上げる。

 その悲鳴ともとれる絶叫を避ける様に、ストラビは左方に動く。
 かなり体が傾く方向転換なのだが、それを物ともせず、ストラビは攻撃方向
に沿って走り行く。
 イオナはまたも、口の中でとても早口に何かを呟きだす。
 今度はその柳腰の左側に手を回す。茶色い手の平ぐらいの大きさの箱が、ベ
ルトに引っ掛けられており、イオナはそれを俊敏且つ、器用に開ける。
 そして中から一本の小さなナイフを取り出し、人差し指と中指の間に挟む。

 そのナイフにはまたも柴色の――今度は小型の――ダイヤモンドがナイフの
腹に埋め込まれている。
 そしてまた一言、大きい声で、
「ファンタズマルフォース!」
 大ミミズが態勢を立て直し、今度の攻撃に移ろうと図体を振るわせた時、イ
オナは大ミミズから見れば、かなり可愛らしいナイフを投ずる。
 ナイフは円転しながら、大ミミズの身体を横に裂く。
 しかしながら、大ミミズの体に傷を作るどころか、ナイフは粉砕される。

 その様子を来祭は目を丸くし、漠然と眺めた。
(んな馬鹿な……、あのナイフ、そんなに年季が入った物には見えなかったけ
ど)
 正にナイフは砕け散ったのだ。風化した、とかそういうものではなく、文字
の通り粉々になった。
(これじゃあまるで――、いや、これはファンタジーの世界なのかもなって!!)
「うぎゃぁぁぁぁ!!」

 大ミミズが体をイオナに向かって振りぬいた。
 その動きに来祭は驚愕の声を上げる。
 だけど、確かにイオナに直撃したはずなのに、そこには残骸も残っていない。
 無論、視界が暗転しかけた来祭には何が何なのか理解できない。

 と、次の瞬間、大ミミズは真っ二つに切り裂かれた。
 緑色の血潮をふりまきつつ、生命活動を停止した。

 だが、大ミミズに絞められていた来祭としてはミミズの死亡を祝っている暇
等無かった。
 来祭は小型マンション程度の高さから、地面に向かって――いや、死に向か
ってまっしぐらなのだから。

☆☆☆☆☆

「あぁぁぁぁっぁ!」
 砂漠の砂が視界を埋める。頭からさかさまに落ちる最中、来祭は最後にこう
思った。
(あっけない終わりだな、これ)
 ふと耳にさっきの少女――イオナのことだが――の声が聞こえたが、これか
ら天に召される来祭としてはどうでもいいことである。

 頭を地に激突させ、昇天――するはずだったのだが、そうにはならなかった。
(何だか……、あったけぇ)
 何かに包まれたかのように、人肌に似た暖かさをその身に感じる。
 それと同じく、急降下の勢いが和らいだ。というよりも、止まった。いわゆ
る、宙に浮いている感覚を感じた。
 体が勝手に動き、来祭を仰向けにした。
(い……いきてる)
 心の中で胸を撫で下ろす。安息も束の間。
 いきなり暖かさを失い、また急降下が再開された。
 背中から地面に激突。粉塵に視界と共に身が埋もれる。

「いてて……」
 落ちる瞬間に顎を引いて、後頭部に来る衝撃を防いだのは不幸中の幸いとい
う所だろう。
 一度、謎の現象で勢いが無くなった為、さほど高い所から落ちたわけではな
いのだが、やはり痛覚を持つ者として、痛いものは痛い。
 太陽を直視しないように、空を見たまま動こうとしない来祭の顔にふと影が
かかる。

☆☆☆☆☆

 イオナは凛と響く、高めの声を張り上げ叫ぶ。
「プロテクションフロムイービル!!」
 そして例のナイフを、墜落途中の来祭に向かって投げる。

 ナイフは来祭の背中に突き刺さったかと思うと、瞬く間に粉砕される。

 イオナは来祭に保護魔法を唱えた。
 結果、重力が無くなったかのように、来祭の体が宙に浮く。
 そして、頭からの落下を防ぐため、来祭の体を仰向けにしてやる。
 そこで、保護魔法を解く。ここで落としても命に別状は無いとふんだ。

 ストラビを降り、来祭の顔を覗き込む。

☆☆シックル三話〜都合よくいくね〜☆☆

「あんた変な格好してるわね」
 彼女の第一声はそれだった。
 そりゃ、当然。彼の格好はこの異世界では――イオナしか比較できる人物がいないが――奇妙な格好みたいだ。

 多少ムッと来た来祭だが、どうやら彼女は自分を助けてくれたみたいだと思い、黙ったまま、立ち上がる。
 服に付いた砂を手で払って、
「助けてくれてどうも、あと、貶してくれてどうも」

 イオナは来祭を睨み、
「別に、ミミズが邪魔だっただけよ」
 そっぽを向いたかと思うと、そばにいた白馬に跨りだした。
「ちょっ! ごめんなさい、待ってください」
 来祭が哀願すると、イオナが来祭を凝視する。

「はぁ」
 大仰に溜め息をつき、白馬から華麗に降りる。
「あの、質問いいスか?」
「さっきと同じ喋り方、つまり敬語は不要よ、そんなに年離れているわけでもないし」
 イオナはそのしなやかな金髪ごしに頭部をポリポリと掻く。

「じゃあタメ口で、まず質問だけど、ミミズはお好きで? ――ゴガフッ!」
 イオナに剣の鞘で鳩尾を突かれ、数秒悶絶する。
(ぼ、暴力反対)
 心の中で訴える。
「ふざけるんなら、いくわよ?」
 腹部を抑えたまま来祭は、弱々しく立ち上がる。
「え、えと、まず名前は?」
「イオナ」
 無愛想に即答。
「俺は来祭」
「聞いてないけどね」
 イオナの呟きに苦笑しながら俺は質問する。
「さっきのミミズって何? あんな生物、仮想でしかしらないんだけど」
「ちょっとまって、ライサイ――? 格好も変だけど名前も変ね」
 先程呟いた時にはそんな事歯牙にも止めてなかったのだろう。
 遅れて、来祭という名前の可笑しさに気付いた。
(まぁ、元いた世界でも変な名前だけどね)
 心の中で突っ込みを入れる。ふざけるな、と言われているので、口には出さない。

 ここで来祭は思案を深くする。顎を親指で掴み、考えた。
(彼女に俺の正体を明かすか――否か)
 どちらの方が後々、良い結果となるのか来祭は必死に考えた。

「ちょっと、どうしたの? いきなり黙り込んで……」
 来祭の思案はイオナに破られた。
 結果、来祭はとりあえずは黙っておく事にした。
「ああ、変わった名前だろ? 『イ』が二つで語呂も微妙に悪い」
「うん」
 イオナが生真面目に頷く。
「それより、俺の質問、さっきのミミズって何?」
 その欠点さえ見つからない顔を曇らせ、
「やっぱりあんた可笑しい、『魔物』も知らないの?」
 まるで異端者を見るかのような目つきで、来祭を見つめる。
「あ、魔物ね、思い出した……、何だかあのミミズに振り回されたせいで、記憶が一部すっとんでいるのかも」
 悲痛に顔を歪ませ、弁解するが、それも演技。
 別に振り回されて、記憶喪失になったわけではない。
「ふーん」
 イオナは特に疑った様子も見せず、適当に相槌を打つ。
「あ、そういえば、その馬に剣を刺していたけど、何がおきた?」
「ストラビよ」
 と、ストラビの頭を優しく撫でた。
 そしてまたも、目測、イオナの身長、三分の二程度の剣を軽々と鞘から引き抜いた。
「この剣は特別なのよ、魔法剣っていって、魔法を込めると、この紫のダイヤモンドが光って、剣に魔法の効力を移せるのよ」
「ほぉ」
 表では感嘆、心の中では
(何回も出てくる小説を見たことあるけどね)
 では何故質問をしたんだ、となるが、やはりファンタジー好きとしては現物を目にしたら、がぜん興味が湧いてくる。
「てことは、あのナイフも魔法を移せる?」
「そうね、でも使い捨てなのが難点ね」

 何気ないように会話している、非日常的な会話。
 その事に来祭は喜びを覚えた。

(突然、こんな砂漠に追いやられたのは謎だが、無類のファンタジー好きにとってここは天国なのではないだろうか?)

「もう質問はない? じゃあ時間の無駄だから……バイバイ」
 さっきまで親身に質問に答えてくれたイオナがいきなり、バイバイとか言い出したので、来祭は唖然とした。
「何だか冷たいなぁ」
「質問には答えたでしょ?」
 当然のように答える。
「確かにそうだけどさぁ……」

 ここでイオナに立ち去られると危ないのは、来祭は身に染みていた。
 第一にこの広大な砂漠を抜けれる自身が皆無だ。
 第二にまた魔物と遭遇するかもしれない。

 来祭が必死に食い下がる。
「俺、記憶が抜けてて、帰り道もわからないんだけど……、どうか哀れな子羊をお助け――」
「やだ、利益にならないもの」
 イオナは即断した。
「こ、この鬼!」
 来祭は罵倒を浴びせるが、
「鬼で結構」
 イオナは眉一つ動かさず、ストラビに跨った。
(ぐむむむむむ……、どうすれば、イオナを引き止めれる……)
 来祭はいつもの如く、考え事をする時の癖、顎を親指で掴んだ。

☆☆☆☆☆

(全く今日はついていない、変な男を救ったと思えば、いろいろ質問されるし)
 イオナは来祭の眼前から速やかに消え去りたいが為に、ストラビに少し走ってもらうことにした。
 来祭の抗議の声は聞こえてこない、厄介な事を言い出さない内に、次の町へ向かうことにした。

 ストラビが駆け出そうと、砂地を蹄で蹴り、粉塵を巻き上げた――
「さっき利益にならないことはしない、って言ったよな」
 イオナは眉を寄せつつ、面倒くさそうに来祭に視線を移す。
「なら、俺を連れて行ってくれ、まだ家の場所までは思い出せないんだけど、俺は小貴族の子息だ。報酬ならそれこそたんまりと出せると思う」
 無論、そんな来祭の突飛な発言なんて、信じない。
「どうだか……」
 呆れ果てたイオナの目に赤い羽根が映る。
「これを見ても疑うか? この服だってあんたには変だと言われたけど、俺の家では由緒正しい服だ」
(む、確かに貴族の服というのは皆、私には理解できない様な服だ。それにあの赤い羽根も見たことがない)
 来祭は合掌しイオナに頼み込む。
「頼む、家の場所を思い出したら、絶対に報酬を渡すから」

☆☆☆☆☆

(どうだ? いけたか!?)
 来祭は心の中でも、外見上でも合掌している。
 小貴族の子息――こんな嘘をすぐ思い付ける自分に恐怖していた。
 すぐ思いついたといえど、薄っぺらい計画ではない、赤い羽根という切り札――とはいえ、図書館に行く途中に赤い羽根募金に募金しただけ――も用いた。

 来祭は特別喧嘩が強いわけではない、だが、どんな状況であってもその頭の柔軟さで切り抜けれる、強さがあった。

☆☆☆☆☆

「はぁ」
 イオナは嘆息をついた。
 正直、目の前の男――来祭――を完全に信じたわけではない、だが、
(もし、嘘だとしてもここまで、頭の回転が速い奴を見つけれた事に喜ぶべきよね)

 両腕で頭を抱えるように、前髪を掻きあげた。
「後ろに……乗って」
「じゃあ……」
 来祭は顔を輝かせた。
「速く」
 言われたとおり来祭が後ろに乗ると同時に、イオナはストラビを走らせた。
「おぉぉぉ!」
 ストラビの速さに、来祭の体が後ろに反れ、転倒しそうになる。
「何してるの? 私につかまって!」
「え、えぇ、で、でも!」
 来祭は、上半身を後方に反らせながら苦しくも答えた。

 来祭がイオナにつかまるのに抵抗があるのは、思春期である男子ならわかるだろう。
 要するに恥ずかしいのだ。
 だが、そんなことイオナは気にしないから、これは大変。

「そのまま落ちて、また記憶ふっとんでもいいの!?」
 実際、落ちても咄嗟に保護魔法をかけれる自信をイオナにはあるが、落ちないに超したことはない。
 来祭が頬を朱色に染めながら、イオナの細い柳腰をつかんだ。


 しかし、砂漠を白馬に跨り、二人の男女が町を目指すのは中々、いい感じであった。

☆☆☆☆☆

 水の町。
 そう呼ばれる町は砂漠の近くにあり、砂漠のド真ん中程ではないが、中々熱帯である。

 ここは水の町『ジヴァヤ』。
 所々に設けられた水路の水はとても透き通っている。
 主に橋が多く、所々に石作りの大地が敷き詰められている。

 そしてこの町でも一番大きい橋、その真ん中付近にある看板。
『水を汚すものには処罰を与える』
 下に発行元も書いてある。

 その看板の前で、周りに視線を向ける少年がいた。
 挙動不審の男の子だ。
 短いスポーツ刈り、如何にもスポーツマンである彼、中崎智明は挙動不審に陥っていなければ、爽やかな少年に見えた事だろう。
(なんだなんだなんだなんだ、俺は確かゲームセンターでゲームを……)
 今まで、何回も出来事を整理しようと試みる、智明であるが、その次が思い出せない。
 何故か、気を失ったと思ったら、ここに立っていたのだ。
 そして、それから数十分の時間が過ぎたのだが、未だに周囲の状況が把握できない。
(把握できた事といえば、この町は水を汚す者に処罰を与えるらしい)
 と、この一言しか断言できない。

 だが、智明がここで挙動不審の少年になっているのも、もう終わりみたいだ。
 彼の短絡思考が告げた。歩いてみようと。

(心なしか、周囲の視線が自分に痛いほど向けられている様な気がする)

 他人から見れば、智明はかなりの奇人である。
 服も、奇妙な服であるし、何より、さっきまで挙動不審で警察に通報されてもしょうがなかったほどだ。

 だけど、ここは幸い、智明はあまり周囲の視線は気にしない。
 まだ、状況が不明にあるにも、短絡思考が勝手に自分を動かしてしまう。
 ポケットに手を突っ込み、お気に入りの曲を口笛で演奏する。
 これで、更に奇人となった智明、ブラブラと歩いて五分。

(うお、闘技場!? ゲームとかでよくみるけど……)
 案外小さな、円形の建物が見えた。
 入り口の手前では粗末なカウンターに受付嬢が立っている。
(駄目だ、短絡思考が告げる、あそこにいけ……と)

 気が付くと、智明は受付嬢の目の前にいた。
(馬鹿! 何やってるんだおれ!)
 受付嬢は張り付いたような笑顔を顔に浮かべている。
「あの〜、ここってなんかやってるんですか?」
「はい、ここでは格闘技の大会が行われております」
 智明の口が勝手に動いた。
「対象年齢は?」
「貴方なら、ジュニア部門に出れますよ、まだ受付は終了していませんが、どうします?」

☆☆☆☆☆

「やっぱり、こりゃ俺目立ちますわな」
 町中の人々の服装を見て、おどけた風に来祭が言う。
 イオナが指摘したとおり、来祭の様な服を着ているものはいない。
「当然、サッサと行くわよ」
 冷たく言い放ち、先へ先へと進んでいく。
 そんなイオナの姿を見て、町の様子を観察していた来祭は慌てて、追いかけていった。

 来祭がイオナに追いついた頃、イオナは円形の建物の前で立っていた。
「闘技場?」
「そう」
 素っ気無い会話をしているが、イオナの方は闘技場を見ながら滅多に見せない、自然の笑顔を露にしている。
「そっか、ここ大会とかあるんだ」
「へぇ、イオナみたいな無愛想人間が興味を示す事なんて、勉強と勉強と勉強ぐらいだと思っていたよ」
「ちょっと寄っていくかな」
 イオナが受付嬢に見学したいと申している間、来祭がイオナの裏拳を喰らい、体を折り曲げ、悶絶しているのは必然であった。

☆☆☆☆☆

 そんなに広くない闘技場に大人数の人間が集まれば、熱気を催すのは当然だった。
 真ん中に設置されるフィールドを四方から囲むように、観客席が配置されている。
 イオナは出来るだけ、前の方を目指した。その後ろから、腹部を抑えながら、顔を引きつらせている来祭がついてくる。
 結果、前から五番目――十列ある内の――に定着できた。
「先ずはジュニア部門からね」
 イオナが売店で買ったパンフレットを無邪気に眺めながら言った。
「ジュニア部門って最低年齢で何歳ぐらい?」
「あんた、良い質問するわね、最低年齢は10歳、最高で16歳よ」
「えっ!? じゃあ、俺らよりも年下の子とか出れるの?」
「実はこの大会、ジュニア部門がかなり見物らしいわ」
「そりゃあねぇ、まぁ、イオナが出れば優勝はかぐじ――」
 来祭が皮肉を言い終わらない内に、イオナに肘で脇腹を小突かれた。

 フィールドの傍らに大きな紙が貼り付けられた。
 試合表らしい。当然ながら並べられる名前は全てカタカナだ。
(まぁ、期待はしてなかったけど……)
 来祭は心の中で呟きながらも、少しガッカリしていた。

 大会の始まりである、拳銃が鳴らされた。
 と、同時にフィールドに対照的にある、扉が開かれる。

 一回戦はトキワという少年と、ライテイシーという少年、だが、ライテイシーの図体はジュニア部門とは思わせないスケールだった。

☆☆☆☆☆

(うっひゃぁ、出場しちゃったよ)
 受付表を見たとき、他の面々が、カタカナで名前を書いていたので、智明も見習ってカタカナで名前を書いておいた。
 『トキワ』と。
2005/06/04(Sat)02:30:56 公開 / エイル
■この作品の著作権はエイルさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
二度目の投稿であり、初めての更新です。

今回も、読んでくれる人がいるのだろうか、と不安になりながらも、投稿です。

タイトルの由来は一応考えがあります。

途中で読む気を無くしたのならそのように感想をいただければ幸いです。

ついでに途中で出てくる魔法の詠唱、TRPGの魔法名を参考にしております。

お目汚し失礼しました。
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