- 『〜Death penalty ground of desert〜』 作者:シンゴ / 未分類
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グロテスクな場面もございます。ご注意下さい。
巻き上がる砂嵐。照りつける日光。肌が焼けそうになるほどだ。
そのなかに、顔マスクをかぶった男が三人と、その男達に挟まれるように歩く女性。
茶色になびく髪の毛。まだ20歳前後だろう。
「さぁて。ここらへんか。」
手に繋いだ鎖を外す男。突き飛ばされた女性はヨタリとそこに倒れた。
「どうするよ、ここらでおいとけばいずれ逝くだろ。」
女性は泣き出した。砂で汚れた顔に、涙がこぼれる。
「泣くなよ、女。今から泣いたってもう終わりだ。」
女性は声を上げた。
「私はやってない!何度も言っている!…わたしは…。」
ため息をつく男。砂漠の砂嵐は止んできた。
「言い訳はもう聞き飽きたんだよ、女。いいか。ココまでくるまでに裁判は10回行われたはずだ!お前の12人連続殺人事件でな。もちろん証拠はあった。だがお前の証言でひっくり返せたかもしれないだろ?だけどお前が取った行動は…?」
「‥!!」
「沈黙だろう……?!」
重りを地面につき刺す男。足かせが女性の足にはめられた。重苦しい、空気。
「さぁてと。では、執行する。」
砂嵐がピタリと止まる。
そして上空からゆっくりと落ちてくるもの。それは鳥でも岩でもなんでもない。巨大な柱だった。何もない、雲ひとつない青空から、どでかい柱が。
勘のいい人は気づいただろう。これから何が始まるのか。
女の10メートルぐらい上で柱は止まった。そう。始まるのは、死刑。あまりに残酷な。
「あの世で反省して来い!!」
「いやぁぁぁぁぁ!!!」
ヒュッ…
グチャ・・
一瞬の静けさ。柱は落ちた。鎖にも何もつながれていない柱は女性の頭上に。
黄銅色の砂が赤く染まった。そしてつぶれそこねた血まみれの足が柱の下から覗きでている。
その死刑の執行人は、その男達でもない。 神だった。
男は柱に向かって叫んだ。
「神よ!!残虐な悪魔は消え去った!もうこの砂漠には罪人はいない!安心して眠りについてくれたまえ!」
柱はまた宙に浮く。
柱の下にはもう人とは思えない物体が覗き出ていた。ゼリー状の物体と飛び散った肉片と髪の毛。顔なんてぺちゃんこもいいところだ。目玉もつぶれ、頭からは白い液体。
誰もが眼を覆う。
「そして神よ!残虐な悪魔の抜け殻を!二度と眼にしないよう!地中にうずめたまえ!」
死体の周りの砂が引いていく。沈んでいく赤色の砂と体。残ったのは異臭だけだった。
そして異変に気づく男。柱が自分達の頭上で止まっている。三人は全てを悟った。
「逃げろ!落ちてくるぞ!!」 男一人は柱の下から逃れたが、二人は既に手遅れ…。
「ちくしょお!!」
「おい!お前だけでも逃げろ…」
グチャ…。ベキ…。
最悪の音。この世のものとは思えない音。
「ウワァァァァァ!!神…!なぜ!何故!!」
暑い。暑い。日光が暑い。肌が…熱い!
「何だこれ…。肌が燃えてる!」
体中から出火。顔からも。
「グアアアアアアアァァ…!アヅイアアア!」
地面で転がる男。
「アァ…グフゥ…。」
ピクリとも動かなくなった。黒こげたはだ。燃えた服。目がひっくり返っている顔。
柱の下には二つの物体。地獄だった。男三人まで死んだ。神の怒りか。それとも女性の怨念か。
だがこれはこれから始まる悪夢の序章でしかなかった。
無実の罪で殺された一人の女性の呪いの始まり…。
2
高い天井。多くの人が裁判を見下ろす傍聴席。シンとした空気。
「以上のことから、被告には十分な動機が見られます。」
法廷がざわめく。場面を法廷に移そう。
「裁判長。お待ち下さい。確かに動機の筋は通ります!ですが金銭問題がなかったのは近所の住民からの証言ではっきりしています!」
12月。一つの村が赤く染まった。巨大なノコギリを持った青年が住民全員を惨殺したのだ。首を切られるもの。内臓を引きずり出され空っぽの死体。眼に針がメッタ刺しにされている死体まであったという。
「異議を却下します。スクア弁護士。現場に落ちていた髪の毛などから全てそこに座っている被告を指差しています。」
裁判長はジロリと被告を睨んだ。
「被告。顔を上げなさい。」 ランダ被告はゆっくりと顔を上げた。眉間にしわを寄せた表情。ワックスで立っている金髪。生きている顔ではなかった。
「異議はありますか?」
耳が痛くなりそうなほどの静けさ。誰もがゴクリとつばを飲んだ。
「ない…。」静かに行った後ランダはまたうつむいた。
「では、判決…」
「異議ありです、裁判長。」
スクアはゆっくりと言った。
「こちらの書類を見ていただきましょう。ランダ被告の会社の出勤記録です。」
「スクア弁護士。裁判は判決まで来ています。いまさら証拠品を提示されても困ります。受理は認めません。」
「お待ち下さい。この出勤記録。PM5時〜PM9時までランダ被告は出勤しています。」
スクアはその書類を掲げてニコリと笑った。
「さて、犯行時刻は何時でしたっけ?裁判長。」
「PM6時〜7時…。!!」
「そうです!もちろん9時まで会社にいたランダ被告が殺害できるはずがない!」
裁判長のあごの立派なひげがピクリと動いた。
「ですが…」
裁判長が厳しい顔で口を開いた途端。
バァン!!!
勢いよく法廷の中央扉が開いた。
「裁判長!たたた、大変です!砂漠の死刑場に被告を送った係官三名が……!」
「裁判中です!お静かにお願いします。なんですか?」
「係官三名が…!神の裁きを受けました……!」傍聴席がざわめきだした。
被告が絶望の顔で立ち上がる。息が荒くなっていく。
「ランダ!落着け!座るんだ!」 スクアが引き止める。
「係官!それはどういうことですか!」
「女被告の死体は既に地面に沈んでいましたが、係官三人の死体は沈んでいませんでした。女被告の死刑がすんだ後、裁きが下った思われます。」
「なんということでしょう。罪のない係官三名まで裁きを受けるとは!」
裁判長は勢いよく木槌を叩いた。
「裁判は中断します!被告は独房にいれておくように!スクア弁護もきなさい。」
その一時間後。ランダの姿は独房から消えていた。
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2005/05/27(Fri)19:22:06 公開 / シンゴ
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■作者からのメッセージ
始めまして。シンゴと申します。
Death penalty ground of desert。
砂漠の死刑場という意味です。
今までにない小説が書きたかったのです。
こんかいはグロテスクな場面に挑戦してみました。神の裁きが降りる死刑場と女性の怨念という感じで突っ走りたいと思います。第二章の修正をしました。内容が変わっているので改めて読んでいただけたら幸いです。