- 『紅い華』 作者:森川雄二 / ホラー
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はいはい……今出ますわ。ちょっと待ってや。
……どちらさんでっか?へえ……中川さん?聞いたことあらへんなあ……。……はあ、佐川さんの?……ああっ!あんたが佐川さんがゆうてたっ。へえ、あんさんがねえ……。兄さんあれ見たいんやて?物好きでんなあ。あんなもん見にわざわざこんなとこくるやなんて。
ま、とりあえず中入りなはれ。きたない家でっけど。男の一人住まいやからしゃあないですけどなあ、アハハハハッ。兄さんどこの人?……へえ、東京でっか。東京からわざわざ?そりゃ、ご苦労様やな。長旅で疲れましたやろ。
兄さんは結婚してはんの?……へえ、してまへんのか。ハハハッ、まあ結婚なんてするもんやないですわ。
わても結婚して、妻も娘もいてましたんやけどなあ、いろいろあっていなくなってしもうたんですわ、ハハハハッ。……え?何があったんやて?ハハハ、まあいろいろですわ、いろいろ。兄さんには関係あらへん。あっ、そのへん適当に座っててくれたらいいですわ。今コーヒーでもいれるさかい。兄さん砂糖はいるか?……ブラックがいい?ハハハ兄さんわかってんなあ、やっぱコーヒーはブラックにかぎるわ。
……はい、コーヒーできましたで。安物やけどなあ、ハハハハハ。兄さんここくるまでだいぶ時間かかったやろ?ハハハ、ここド田舎どころか山奥やもんなあ。人っ子一人おらへん。……え?寂しくないかって?ハハハ実はわい、こう見えてもけっこう人付き合いとか苦手なんですわ。だから別に寂しいことなんかあらへんのですわ。それに時々客も来ますしなあ。
……それより、「紅い華」はホントにあるんかって?ハハハちゃんとありますがな。それにしても兄さんもマニアックでんなあ。あんなん男がひたすら女の子切り刻んどうだけでっせ。あんなビデオに大金出すやなんてなあ。……え?あの噂はホントかって?ああ、あれでっか?映像があんましリアルすぎるから本当に殺しているところを撮ってるんちゃうかってやつでっしゃろ?ハハハ確かにそんな噂ありましたなあ。まあ、そのへんは実際に見て確かめてや。わいもあんまし詳しいこと知りまへんしなあ。
……え?そのビデオをはやく見せてくれって?まあまあ、ちょい待ちいや。その前に金の確認さしてもらわんと。ちゃんと現金で持ってきましたんやろな?
……へえ、確かに約束の分ちゃんとありますなあ。ああ、ビデオならそこのテレビの上に乗ってあるやつですわ。……え?中身の確認がしたい?兄さんも心配性やなあ。それとも家つくまで我慢できへんとか?ハハハハハ、まあええわ。適当に見といてや。わいはちょっとトイレいってきますわ。年取ると小便が近なってあきませんなあ。
ふう、すっきりしましたわ。……ん?兄さんどないしましたん?顔真っ青でっせ。リアルでっしゃろ?なんせほんまに殺してますからなあ、ハハハハハ。……え?この映っている男がわいにそっくりやって?ハハハそりゃそうや、それわいですもん。なかなか男前に映ってますやろ?何や兄さんえらい汗かいてますなあ。今日はけっこう涼しいほうでっせ、ハハハハハ。
兄さん、逃げようとしても無駄でっせ。体思うように動かへんやろ?さっきのコーヒーの中にちょっと薬入れさしてもろうたんですわ。なあ、兄さんあのビデオに映ってる子。あの子わいの娘ですねん。かわいいでっしゃろう?たしか小六のときやったかなあ?殺したんわ。いやあ、あん時は興奮しましたなあ。もうこの世の中でこれ以上の快楽はないと思いましたわ。
……兄さんそんな泣き叫んでも無駄でっせ。兄さんもわかってるやろ?このへん人っ子一人いまへんからなあ。誰も助けになんか来ませんわ。……わいうるさいやつって大嫌いですねん。わいは初めて人殺したんが女房なんですけどなあ、あんときもあの女泣き叫んでほんまイライラしましたわ。いやあ、やっぱ女っちゅうのは死んでるほうがいいもんですわ。静かやし、それに何より美しいですわ。
兄さん、あそこにビデオカメラあんの見えまっか?あの植木鉢んとこ。ほら、ちょっと隠れてて見えにくいけど。これなあ、佐川さんに頼まれたんですわ。知ってまっか?あの人ホモなんですわ。兄さんのことえらい気に入ってましたで、ハハハハッ。わいもけっこうな変態でっけどあの人には負けますわ。あの人死体相手やないとたたんらしいんですわ。ネクロフィリアっちゅうんでっか?あれですわ。しかもきれいな死体やのおてグッチョグチョのえげつない死体やないと興奮しないらしいんですわ。
それで、殺してるときのビデオと死体がほしいって頼まれましてなあ。まあ、こういうわけなんですわ。……で、兄さんどっから切り刻んで欲しいでっか?足?腕?両方切り落として芋虫みたいにしまひょうか?それとも耳切り落として耳なし芳一みたいにしようか?とりあえず、そのうるさい口裂いてみましょうか?……ハハハハ兄さん、口裂け女みたいやなあ。あっ、男やから口裂け男でんなあ、ハハハハハ。苦しいでっか?痛いでっか?怖いでっか?ハハハハハハハ。楽しいでんなあ。愉快でんなあ、ハハハハハッハハハハ。兄さん、きれいな紅い華咲かしてや……ハハアハハハハハハハハッハハ。
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2005/05/18(Wed)20:44:42 公開 / 森川雄二
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■作者からのメッセージ
ちなみに紅い華は実際にあるそうです。
作品についてですが、やっぱり力量不足。
こうゆうホラーはけっこう好きなんですが、難しいですね。