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『GAME OVER』 作者:涼風 黎砂 / 未分類 未分類
全角3241文字
容量6482 bytes
原稿用紙約10.9枚
「僕は、DARK BREAKこと通称、DBのR。 所謂、何でも屋さ」

 ここは、ビルの屋上。
 月下の下、妖艶な笑みを口元に浮かべて、女性とも男性とも性別の見分けがつかない儚く美しいその人間は、そう楽しげに言った。
 その人間の目線の先には、恐怖のあまり戦慄し、瞳に怯えの色を見せている複数の成人男性の姿がそこにはあった。
 それを満足げに見届けてから、その人間はふわりと空中に浮かび、そして、

 落ちた。

 後方へとその人間が身体を傾けたかと思ったら、そのまま落ちていったのだ。
 その人間が今まで立っていた場所には、何の痕跡もなく、今までのことが夢なのかと、思わず錯覚してしまいそうになった。
 その人間が落ちていってから数十秒間、その場に居合わせた者達は、その場に文字通り凍りついたように固まったその後、慌ててその人間が落ちていった場所を覗いた。

 けれど、先ほどの人間の姿は、落ちていったと思われる、このビルの下にも、何処にも見当たらなかったのだった……




プロローグ




 これは、ゲーム。
 勝つか負けるかなんて問題じゃない。
 興味本位なわけでもないし、好奇心だけでやっているわけでもない。

 見つけたいものがある。捜したいものがある。
 求めているものがある。だから、僕はDBに入ったのだ。

 今日も今日とて、僕は仕事を一つ完了させた。
 今回の仕事は、ある事故で全てを失ってしまった少女からの依頼だった。
『家族が自分に遺したたった一つのものを、あいつらが奪った』
 とその少女から言われて、あいつらと呼ばれる人物たちを少し探ってみれば、面白いほど出てくる出てくる。
 調べてみれば、ある事故とは、故意的に仕掛けられたものだったのだ。
 全く。
 こういった内情のものが、最近は多い。
 最近の世の中はどうなっているんだよと言ってみても、その裏社会に入り込んでいる僕が言える言葉じゃあないけどね。
 僕ら、DARK BREAKこと通称、DBは、何でも屋だ。
 行方不明の動物探しや人捜しから、盗みなどなど……その名の通り、何でも引き受ける。
 けれど、殺しの依頼は一切受け付けない。これは、DBのポリシーの内の一つでもある。
 そして、依頼料は一切請求しないし、受け取らない。
 でも、依頼を申し込まれても、数ある依頼の中から、依頼は選ばれるのだ。
 だから、全部の依頼を引き受けてるというわけじゃない。

 と、そんなことを考えながら、僕は月の光だけが辺りを照らす、暗い夜道を足音を立てず静かに走る。
 そして、僕は先ほどの任務中のことを思い出す。
 あのおっさんたち、僕が調べた限りのあいつらの罪状を言い連ねたら、顔を真っ青にして怯えてやんの。
 だったら、最初からそんなことしなければいいのにと思う。
 するのなら、完全犯罪を目指すべきだ。
 少しあら捜しをすれば、ボロが出てくるような程度のものなんて、最初からやらなければいい。
 それに、さ。少しくらいビルの屋上から落ちたって、死にはしないさ。
 現に、ここにビルの屋上から落ちても生きている人間がいるじゃあないか。
 というか、これはもう慣れだ。そして、度胸があれば十分だ。
 それがあれば、なんとかなる。……多分ね。
 そして、僕はやっとBDの本部前へと辿り着いた。
 何時も思うけど、こんな堂々とBD本部を建てるなよと思う。
 まあ、安全なんだけどね。
 何故って?ここ一帯には、全く人がいないのだ。……マスターが何かしでかしたと聞いたけど、何をしたのかは聞きたくない。
 だって、きっと碌でもないことに決まってるから。
 そんな事を考えながら、僕はドアノブに手をかけ、ゆっくりとドアを開けた。
 この後、マスターに報告して、依頼主に仕事完了の報告もしたら、しばしの休暇が取れる。
 でも、何時また仕事が入るかは分からないけど。
 あ、先に、依頼主宛の仕事完了メールを送ろうかなと思い、僕は自室へと向かった。
 この家の構造はよく分からないけど、マスターが設計したのは明らかだった。
 なんだって、普通の家にこんな仕掛け扉とか罠とか仕掛けてあるんだよ。
 ますますありえないところだ。
 階段を上り、右の一番突き当たりの通路から左側が僕の部屋だ。
 自室へと入り、電気のスイッチをつける。
 パチっという音を立てて電気がつき、当たり前だが部屋が明るくなる。
 そして、僕は真っ先にパソコンへと向かい、椅子に座って、スタンバイモードからパソコンを起動させる。
 ここには、僕のほかにあと七人、BDのメンバーが存在する。
 そして、その上に、僕ら八人をまとめる、マスターが存在するのだ。
 あの人は曲者すぎて、ある意味こゆい。
 っと、余計なことを考えるのはやめよう。
 そう思い、気を取り直して僕は、メールを書き始めた。
 後で、取り戻したこのペンダントも依頼主の元へと贈っておこう。
 あいつらじゃこのペンダントの使い方が分からなかったみたいだけど、本来の持ち主なら分かるだろう。

 カタカタッと、キーボードの音が静かな部屋一帯に響く。
 これで、かんりょー……うかな?うん。メールも送信したし、あとは遅い夕食を食べるだけだ。
 そう思い、椅子から腰を持ち上げようとしたら、後方……つまりドアからけたたましく開け放たれるドアの音が聞こえた。

「りゅーう!!! 仕事、終わったんだってねぇー? お疲れさまッ!
 あ、そうそう。 マッチャンはね、今日もまた、繁華街のお姉様方に捕まってるらしいから、帰ってこないから、マッチャンへの報告は明日にすればー?」

 そう僕の名前を呼びながら、勢いよく僕に抱きつくこの少女……コードネームMこと、鳳 海音(おおとり・まりん)はニコニコ笑顔でいつものようにゆったりとした間延びした喋り方をしながらそう言った。
 海音はマスターのことを、「マスターだから、マッチャンねぇーきっまり!」とかなんとかって何時もののほほんとした笑顔で言っていたのを僕は思い出す。
 それ以来、海音はマスターをマッチャンと呼んでいた。
 というか、またマスターは捕まったのか……
 要領がいいのか悪いのか。
 きっとおそらく、臨機応変なんだろう。

「うん、今さっき終わったんだ。 って、またなのかい? あの人もいい加減懲りないね。 まあ、いいや。 報告は明日するね」
「でしょー? ばっかだよねぇー 自分だけ楽しようとするから、バチがあたるんだよねぇー」

 ……相変わらず、見た目に似合わず辛辣だなあ、海音って。
 見た目は、砂糖菓子のような可憐で可愛らしい容姿をしているのに。
 勿体無い。
 だからどうのってわけじゃないんだけどね。
 このDBのメンバーに普通を求めようっていうのが、無理なんだ。
 一般常識でいう普通というものを、軽々と超えていく人間がここには集まっている。
 つまりは、僕も普通じゃないってことで。
 ……自分で言っておきながら、虚しくなってきた……

「なーに、トリップしてるのさー? はやく、いっくよ! 夕食、みんなで食べるんだからねっ!」

 と、いきなり海音に腕を強く引っ張られて、飛べしていた意識をこちらに強制的に戻された。
 そのまま海音に引きずられるようにして、僕は自室を後にした。
 いつの世も、女性が強いというけれど、実際にそれは的を得ているなどと、海音に引きずられつつも、そんなことを考えていた。





 この遊びが終わるのは、まだ早い。


 捜そう、見つけよう、求めよう。


 それは、どこにあるものか分からないけれど。


 散らばったピースを、それぞれのパーツごとに当てはめていく。


 目に見えるもの、見えぬもの。


 そこに在るものが、決して全てではない。


 さあ、君にはこの鍵を見つけられるかい?


 見つけられるものなら、見つけてごらん。



 遊びはまだ始まったばかりなのだから……



 僕は、麻都燐遊(あさと・りゅう)。ゲームオーバーには、まだ早い――……
2005/04/27(Wed)18:32:11 公開 / 涼風 黎砂
■この作品の著作権は涼風 黎砂さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めまして、こんにちは。
涼風 黎砂(すずかぜ れいさ)と申す者です。
ここに投稿させて頂くのは、初めてかと思います。

私の趣味満載のお話になってしまいました;
プロローグなので、取り敢えず、主人公視点の主人公語りです。
色々と詰め込もうとしたら収拾がつかないことになり、色々と文法が可笑しくなっていたりするかと思いますが、すいません;
あと、主人公の名前など、これから登場してくるキャラの名前は、私の趣味で当て字が多くなるかと思います。
そして、何故だか、恋愛物のファンタジーを書きたいなぁと思ったのですが、何時の間に現代物の分類不明なものに;
それにしても、私は自サイトの方を持っているのですが、そこではもっぱら二次創作物を書いていますので、オリジナルは本当に久々に書きました^^;

それでは、よろしければ、いちを連載物なので、最後までお付き合い願えたら、とても嬉しく思います。
ご意見・ご指摘等、ありましたらお気軽に、遠慮なく言って下さって構いませんので^^
まだまだ未熟者ですが、よろしくお願いします。
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