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『拝啓、窓辺の君 第1話』 作者:アカツキ カナエ / 恋愛小説 恋愛小説
全角1708.5文字
容量3417 bytes
原稿用紙約5.85枚

しがない中学生である僕らにとって、それはなかなか大きな冒険のタネだった。

学校から程近い、高級住宅街の中で堂々と、王者のように、と言うよりは妖艶な女王のように、そびえ建つ優雅な洋館。
広大な敷地は、荒れ放題と呼ばれるのを、ギリギリで免れている感じだ。

そこに、どうやらイギリス人の家族が引っ越して来たらしい。
その一家は、誰が働くでも学校に行くでも無く、ただ紅茶を嗜み読書を楽しんで暮らしているらしい。
どうやら。


どうやら、その一家は幽霊らしい。


「俺が見たのは、オレンジっぽい茶髪の外人だったぜ」
「馬鹿、金髪だって言ってるだろ」

時間を持て余している中学生達が、『探検に行こう』と言い出すのに、さほど時間はかからなかった。
この年頃のオトコノコにとって、探検ごっこは何とも甘い果実なのだ。

そしてそれは、もちろん僕にもぴったり当てはまる定義だった。
陽治から誘われた時、僕は答えを渋りながらも、開ける事のできるかも知れない不思議の国への扉を、乏しい想像力で必死に思い描いていたのだ。

何も無くても良いのだ。幽霊なんか居なくても良いのだ。
いや、そりゃぁほんのちょっと、何かあったって良いけれど。
とにかく、この辺では珍しいネズミを見るとか、屋敷の中で以前の住人のささやかな痕跡を見つけるとか、そんな事で良いのだ。

2、3時間本気で駆けずり回って、結局何も無かったじゃねぇか、と軽口を叩きあう。
そんな無駄な時間を過ごしてみるのが良いのだ。






「懐中電灯、全員持ってきただろうな」
いつの間にかリーダーをしている陽治が、それらしい顔をして僕らの顔を見回した。

煌々と輝く街灯が、2、3立っている普通の街角だ。
広い敷地で、光の届かない所くらいあるだろうが、懐中電灯など、本当は要らない。
神妙なその様子に、隣にうずくまって居たカズがぶっと吹き出し、それに釣られて何人かが続けて吹いた。
陽治が、芝居がかった動作でしッと短く叫ぶと、カズは両手で口を覆ってガクガクと頷いた。
それでもまだ、目元に細かいシワが寄っていて、なんだか妙に微笑ましい。

うん、良い。なんか良い感じだ。
こんな雰囲気が良い。懐中電灯も、要は気分だ。
一人悦に浸っていると、陽治はさっさと歩き出してしまった。
置いて行くなよ、と叫ぶ訳にはいかず、僕は不服を示す為に、ちょっと大袈裟にふて腐れて後に続いた。


まず現れたのは、大きな鉄の門だった。
迎え入れる、という本来の目的よりは、寧ろ拒絶する事に重点を置いたような、そんな門だ。
高く、広く、そして黒い。

僕らは誰が特攻役を買ってでるかと、探る様に顔を見合わせた。
つい先程までは、あんなに澄まして先頭を突き進んでいた陽治は、気圧されたように押し黙り、その背中には一種の哀愁まで漂っている。
カズは、小さい身体をさらにコンパクトにして、僕の顔を見ている。明らかに縋る視線で。
そして気がつけば、カズに釣られたように皆僕の顔を見ている。

やれやれ、だ。
ここで勿体ぶってはいけない事を、僕は知っている。
こういう場面でかけられる期待という物は、焦らす時間と正比例するのだ。
しかも、結構大きな数値で。

わざと大袈裟に溜め息をついて見せてから、僕は目の前の黒いエベレストを攻略しにかかった。
どうせ遅かれ早かれ越えなければならないのだ。これは、まず第一の試練だ。
シレンと口の中で繰り返し、うん、なんか良いな、と僕はまた呟いた。
複雑な紋様は意外に足をかけやすく、大きさの割に早い時間で、僕はエベレストを制した。

普段馬鹿やってる友達に、尊敬を含めた目で見つめられるのは、確かにくすぐったかったが、別段悪い気分では無い。

と、陽治が早速登り始めた。全く持って調子の良い奴だ。
呆れ半分で見上げると、陽治は山頂で一回にぃっと笑ってこちら側に下りてきた。

十分程待てば、残りの仲間も皆、その難関を越える事に成功した。
何事も、最初こそ勇気が要るが、後に続くというのは案外楽で簡単なものだ。
それにしても、まずまずのタイムだ。

「なかなか良いスタートじゃないか」

陽治が満足気に頷くのを見て、カズがまたぶふっと吹き出して笑った。
2005/04/13(Wed)23:05:34 公開 / アカツキ カナエ
http://3w.to/call
■この作品の著作権はアカツキ カナエさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めまして、アカツキ カナエと言います。
サイトのほうではやおいモノで進行しているのですが、こちらではノーマル恋愛モノで進めて行こうと思っていますので、ご安心下さい(笑
未熟者ですが、よろしくお願いします。
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