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『続・彼ハ、風ニナル』 作者:捨て猫 / 未分類 未分類
全角6397.5文字
容量12795 bytes
原稿用紙約19.85枚







◆this is a strang story. part 2



















――彼ハ、風ニナル



――夢も希望も持てない世界で生きる



――もう、限界が近いことは自分でもわかった。



――しかし、それでも望んだ、



――そう、風ニなることを……。



――彼ハ、風ニナル










1,五年前

 町は人で賑わっていた。駅はとても人が多くぶつからないで歩くことが困難なほどだった。彼女は駅の改札口からやっとのことで出ると、交差点に行き、そして迷わず向かった、そう、白い箱の中に……。
 彼女の名前は、尾崎 綾(おざき あや)。今日から転任してきた、看護師だ。看護師になってからそれほど日はたっていない。だからだろうか、いろいろな場所に移されるのだ。前の病院では特に問題などは起こさず、むしろ好印象を持っていた彼女だが、五年でその職場をあとにした。彼女自身、そこは気に入っていたので正直ショックだった。転任は、突然で職場の人に挨拶をする暇さえなかった。それもかなり悲しいことだ。いつか暇を見て挨拶に行こうと思っている。そんなことを考えながら歩いているとすぐに目的の場所についた。
 ここが彼女の新しい職場である。
「ここが新しい職場かぁ……。」
 彼女は一人呟き、そして気合をいれ、その中に足を踏み入れた。病院はとても広いため、すぐには慣れることができないものなのだが、彼女にはそれがないらしい。転任先の新しいところでも、すぐに慣れることができると信じていた。そして、その自信は崩されることはなかった。
 転任してきて何週間か過ぎて、彼女はふとあることに気がついた。病院では、検診といって患者の様子を見て回ることがある。しかも毎日欠かさずだ。もちろん、どんな患者でも診て回るはずなのだが、一箇所だけ未だに行ったことのない部屋がある。その部屋は、検診では行くのがめんどくさいほど他の患者たちの部屋と離れている。初日は確かにすべての部屋に入ったつもりだったが、どうも行き忘れたらしい……いや、行った。彼女はこの部屋に確かに行ったのだ。ではなぜ記憶がないのか。彼女が忘れている、物忘れが激しい、と言う説はなしと言うことで……。
 簡単なことだった、彼女は部屋に入れなかったのだ。部屋のノブをまわしてもドアが開かない。そして、ここは患者の部屋ではないと判断したのだ。この病院に限らず、病室には普通鍵をかけないものだから、彼女もまさか鍵がかかっているとは思わなかったのだ。そのことを確かめるべく、彼女はその病室に駆けていった。『病院では走らないように By 院長 小林』
……、まぁいいか。そして、問題の病室、彼女はノブに手をかける、まわす、……あかない。鍵がかかっている。まさかと思い、もう一度試す。……、あかない。確かにここには誰かがいるはずなのだ。彼女はナースステーションに戻り仲のよい同僚に聞いてみることにした。病内の地図を広げ問題の場所を指差し、質問した。
「この部屋ってどうして鍵がかかっているの?」
 同僚はどれどれ、と言って地図を覗き込む。そして、その同僚はああ、と頷くと説明してくれた。そこには何でも、生まれた時から植物状態の子供がいると言うのだ。そして、母親が延命機器を抜こうとする、といった異常な行動もあったらしい。しかし、それでは治療もなにもないではないか、鍵をかけて様子すら見えないのなら……。そう同僚に言うと、お見舞い部屋というのがあることを教えてくれた。彼女は早速お見舞い部屋に足を運んだ、今度は駆けないで……。
 お見舞い部屋は、なにもなくただ、ガラス越しに向こうの部屋が覗けるというものだった。そして、ガラス越しに患者を見て、彼女は息を呑んだ。

――ナニアレ?
 一言目の感想はそれに始まり、それ以上なにも言えなかった。それは、人間の形をしたものにいろいろと延命機器の数々を繋ぎまくったものだった。本当にまだ生きているのかさえ確認できない。
 いや、心臓は動いているから生きてはいるのか……。気持ち悪くなった。そして、その場にうずくまってしまった。
「うぅ……。」
 本当に人間という保障がない。ただ、周りの説明で人間といわれているだけで、私だけではなんとも言えない。だが少なくとも、顔は綺麗だと思う。なぜ、こんな子供が……。仕事をする上で、この感想は幾度となく持ったことがあるが、今回のはいつもと少し違っている。これが私、尾崎綾と藍川優の初めての出会いだった。

――これが尾崎綾と、藍川優が最初に出会った時だ。







2,終章







 この日もいつもとなにも変わらない普通の日だと思う。別に朝、うなされて起きたからといってよくないことが起きる、などと言う迷信じみたことをいうつもりは、さらさらないみたいだ。いつも通り勤務先に出かけて、毎日の日課になっているお見舞い部屋に向かう。別にそこで何をするわけではないが、部屋の片付けとかでもすればいいものを……。じっと優のことを見ているのだ。ただ、じっと彼女が何を考えているかなんて誰にもわからないだろう。彼女は、なにかを決意したような目で見ていた。しかし、部屋にはだれもいないので、そのことに気づく人は誰一人としていなかった。
 
 転任の話をされたのは、ついさっきだった、そして転任するのは今日、そう今すぐらしい。別に驚かなかった。前も同じような感じで転任させられたのだ。結局前の職場には一度も挨拶にいけなかったから、きっと今回もこれないのだろうな、などと一人思っている。しかし、今回は心残りなことがあった。この少年だ。もう看護師の中でも話題にすらならないような存在。病院側からしてみれば、実験モルモット。この少年を救えなかったことだ。もう残された時間は少なく、とても何かをする時間はなかった。私はもうなにもできないと思うと謝罪の言葉しかうかんでこない。私はここにいることに
耐えれなくなって、帰宅することにした。

 彼女は、その日の夜考えた。ずーっと、飯もろくに作らないでじっとして、考えていた。時計の針はすでに十一時近かった。そして思いついた。彼を救う方法を……。あの苦しそうな環境から逃がす方法を……。彼女はそのまま深い眠りに入った。
 翌日、私は何気ない顔で前の職場に行った。ほかの同僚にはまだ転任の話をしていない。だから、私がいて不信に思うものは誰もいない。そして、私は同僚に挨拶もしないで、彼の部屋、そう、お見舞い部屋に向かった。どうせ誰もいないものだと決め付けていたので、正直おどろいた。一瞬言葉に詰まった。が、すぐに
「あら?お見舞い?珍しいわね。」
と、不信感を持たせないように話かけた。友達かなにかかと聞いたが、いいえと答えられてまた驚いた。しかし、考えてみればそうなのだ、同僚の話を聞く限りでは生まれた時からこの状態なのだ。
「そうよね、生まれてからずっとここにいるのだもの。お友達がいるわけないわよね。」
そして、楽にしてあげたいと呟いてしまった、聞こえたかどうかは怪しい……。しかし、彼女は驚いた顔をしている。聞こえてしまっていた。何言ってるのかしらね、と軽く笑っておく。もう、今日で楽にしてあげれるのだけどね…、今度は絶対に聞こえないように言った。ほとんど心の中で言っただけだ。
 彼女の名前は園崎林檎(そのざき りんご)というのだと言う。彼のことをひどく気にしていたのでいろいろと教えてあげることにした。どうせ、今日が最後だ。
 そして、これ以上ここにいても無駄なので一回時間をつぶすことに決めた。仕事があるからと言って彼女とは別れた。人がいたのは予定外だった。
母親でさえ大してお見舞いに来ないというのに……。まぁ、いい。遅かれ早かれ、今日で彼は救われるのだ。そう思っていた。しかし、午後六時を回っても彼女はいた。そう、園崎という娘はまだ残っていたのだ。私はあきれた、何もしないであんなに長時間ずっと立っているなんて気味が悪かった。雰囲気もどことなく違っている気がする……。結局彼女が帰ったのは夜八時を回っていた。私はすぐに作業にかかりたかったのだが、運悪く急患がきて、そっちの手伝いをしなくてはいけなかった。事故で娘がなくなったらしい、一瞬園崎という娘を思ったが違った。
 仕事が終わったのは、十時過ぎだった……。今日中に救えるのかしら、などと妙にわくわくしながらそんなことを考えていた。そういえば同僚にまだ転任の話をしていなかった。この場を使って挨拶だけでもしようか、と思ったがやめておいた。できるだけ私がいたことは広まらないほうがいい。
 そして、雑談を終えたあと私は彼の部屋に向かった……。クスリをもって……。そう、安楽死だ。このまま人として扱われずに生きるくらいなら、いっそのこと……。点滴にちょっと入れてあげれば、楽にできる、彼を救うことができると思っていたのだ。
 私は軽い足取りで、慎重に彼の部屋に向かった。そして、お見舞い部屋に入った瞬間
「―――――――っ!!!!」
 そこには延命機器のコードが抜かれてしまった優がいた。一瞬頭の中が真っ白になった……。なにもうまく考えることができない……。いったい誰が……。

 その日彼女はまっすぐ家に帰った。何も考えずに。そして、ただひたすら泣いた。なぜ涙が出てくるのか。彼女は気づいた。彼を救うのは彼女でなければいけなかっただ……。彼女にとって彼を救うことがいつの間にか生きる目的になっていたのだ。その生きる目的を誰かに奪われた彼女はもうすべてがどうでもよかった。翌日、ニュースで自殺などと言っているが本当かどうか怪しいものだ。
 そういえば優は、どんな顔で死んだのだろう。コードに目を奪われて顔までみる余裕がなかったな、と彼女は呟いていた。まったく、人間というものは肝心なものを見忘れることが多すぎる。
手に負えないな……やれやれ。

 彼女はそれから、なんとか自分を取り戻し、今日も新しい職場で働いている。





           

1, 小林 仁




 ――彼ハ、風ニナル――


 ――すべての謎を解き明かし――


 ――彼ハ、風ニナル――


 ――狭い空間から飛び出し――


 ――彼ハ、風ニナッタ―ー






 1,小林 仁


 彼、小林 仁(こばやし じん)は、この病院の院長だ。背丈は、すこし高めで、髪は七三分けのような感じでしっかりしたイメージを持つ。見た目はまだ三十台なりたてだが、実際は見た目とは裏腹に四十ちかい。堂々としており、頼りがいのある印象だ。彼がこの病院に勤務するようになって、もう十年が過ぎようとしている。
 仁は病内では信頼されていて、患者とも仲がよい。ただ、最近仁は人目を避けて行動することが増えた。理由はきっと三年前に運ばれてきた、藍川 優(あいかわ ゆう)と言う少年のせいだろう。藍川は運ばれてきてからずっと意識不明なのである。藍川という少年は生まれてからずっと意識不明だと言われているが、実際は違う。藍川の父にあたる人物、藍川 恒(あいかわ ひさし)の仕事である生物実験の実験台としていろいろと試されて、そして意識不明となっただと言う。わが子を実験台にする親の神経も信じられないが、さらに今もまだその実験を続けている(監視中)、しかも病院ぐるみでということだ。仁はそんな可笑しな話に協力する気には到底なれなかった。仁は彼を救いたいと願うようになる。そして、仁は――消されることになる。


 尾崎 綾(おざき あや)がこの病院に来たのはそのあとすぐのことだ。彼女は小柄で、一見高校生のようにも見えるが、かなりしっかりしている。髪は短く切っており清潔感溢れる看護師だ。綾は藍川優の存在を知ったとき、仁のところに行きいきなり怒鳴り散らしたことがあったという。仁は院長という立場なので、本当のことを綾に教えるわけにはいかないのだが、つい教えてみたくなってしまうほど綾は藍川のことを――愛していた。時折、本当のことを教えたら彼女がどういう反応をするか興味深いものだが、怒ってなにをしでかすかわからないな、と一人で考えていたりした。

 綾が藍川のことを殺すかもしれないと思ったのはごく最近だ。お見舞い部屋という、藍川を監視するためにつくられた部屋から綾は藍川のことをよくみていたが、最近はなにかを決意した目で藍川を見ているのだ。仁は監視役として、この病院にいるわけだからもちろんこのことを上のものに報告しなくてはならなかった。そして、上の見解はあっさりしているものだった。転任させろ。それだけだった。仁はそれをすぐに実行に移した。そして綾はこの病院から去った。だが、綾とともに藍川もこの病院から去ってしまった。世間には死んだことにして……。仁はそのことで上に何度も抗議した。生きている人間を世間的に殺してしまうなどということを認めたくなかったのだ。しかし上はこの意見を無視、さらにしつこい仁のことを消してしまった。



 2,藍川恒

 藍川 恒(あいかわ ひさし)は人を人としてみない男だった。物静かで、誰とも有効関係を築かないような印象だ。妻、藍川 裕子(あいかわ ゆうこ)とも子供のサンプルが欲しいからという理由で結婚したのだ。そして、無事サンプルを手に入れることができた恒は早速いろいろと実験を開始した。そして、優は意識不明となった。

 尾崎という看護師が、優のことを殺そうとしていると聞いたとき正直今までそのような考えを持った人間が出てこなかったことに驚いていた。一人身近なところにそんな考えを持った人間がいたのだが、もう二度とそのようなことができない体にしてしまったので、恒はその人間を忘れていた。自分の妻、裕子を……。
 恒は、その看護師を転任させるように監視役の小林に命じた。そのときの小林の様子を観察したところ、小林にも尾崎という看護師と同じものを感じた。まぁ、そういうことだ。つまりは、殺そうと考えるものは数多といるわけで、しかし実際行動に移すものがいないからいないように錯覚してしまっていただけなのだ。もはやこれ以上この病院に優をおいといても意味がないと恒は判断した。そして――回収した――。
 自殺という形で世間的にはけりがついた。




 3,藍川 裕子


 藍川 裕子(あいかわ ゆうこ)は、おとなしくて、なにか後ろめたいものがあるかのように振舞うタイプの人だった。
 自分の夫を人とは思えなくなってしまった。子供が生まれるというのにお見舞いひとつろくに来ないで、生まれたら生まれたで何処かに連れって行ってしまい、そして
 「お前には関係のないことだ」
 とあっさり言ってくる夫の行為が信じられなかったからだ。終いには、
 「意識不明になった。あとは任せた」
 と言って連絡が取れなくなってしまった。裕子はもうなにがなんだかわからなかった。病院に行ってみたが本当にそれが自分の息子であるか判断できないほど、息子は変わってしまっていた。機械やコードに無造作につながれて、顔をなんとか確認することしかできないのだ。もう息子の体に触れることも、話しかけることもできないのだ。裕子は当時の院長に頼んで一度だけ息子に触ることができた。そのとき裕子は息子を殺すしかない、と思って、実行した。突然の行動に院長は慌てたが、その場はなんとか収めることができた。そして、それ以来裕子がお見舞いに来る姿は確認されていない。――今もまだ行方は確認できないが、警察は動こうとしない。



 4,終わり

 探偵が、この事件を不信に思い、捜査を開始したのだが、有力な証言、証拠は一切得られず、今もその調査を続けている。しかし、探偵がこの事件の真相をつかむことはない。

 


    fin
2005/04/16(Sat)23:16:08 公開 / 捨て猫
■この作品の著作権は捨て猫さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
いきなり、ごめんなさい。本当にこんな作品にしてしまい申し訳ないです。意味がわからないし、話も全然関連性を感じないし、とにかくごめんなさい。連載ものを書く資格なんてありませんね……。
勉強し直してきますので、どうかお許しください。連載ものはもう少し、ちゃんと文章を書けるようになってから挑戦します。

 ご意見、ご感想、アドバイスを書いていただけるとうれしい限りです。又、メールでも受け付けれるようになったので、メールもいただけるとよりうれしいです。メールでは、文句などもどうぞ。

 それでは、失礼します。
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