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『エンド・オブ・ザ・ワールド 書き直し プロローグ〜第2話』 作者:トロサーモン / 未分類 未分類
全角24237.5文字
容量48475 bytes
原稿用紙約82.5枚
「エンド・オブ・ザ・ワールド」
                                    作 トロサーモン


その日の前日。

地球。それは宇宙から見たらどんな形であろう。きっと青く丸いんだろう。
人々が夢を見ている時、地球の外ではとんでもない事が起こっていた。
まるでそれはジョークのよう、まるでそれは質の悪いマンガのようだった。
しかしそんな馬鹿げた事でも静かにそして正確に事は進められていた。
すべてはその事から2日後の事件のために。

その日、日本は暑く、アメリカは普通の気温で、そして空では流れ星が幾つも見えた。

恐怖 1

その日気温は異常だった。
とにかく暑かった。
僕はベスパに乗っている時当たる風が気持ちよく、このままずっと乗っていたいと思ったほどだ。
とにかくその日は暑かった。
この後全世界を巻き込む大事件の日の気温は暑く、そして僕はその時部屋ではブライアン・イーノの流し、友達が家に来るのをスティーブン・キングの本を読みながら待っていたところだったのだ。

遠くで蝉の声が聞こえる。蝉の声がうるさく、昼寝も出来やしない。
僕は今、友達を家で待っているところ。でもまだ来るのに2時間はかかるらしい。
なので僕はスティーブン・キングの本を読む事にした。
こういう時にちょっと長めの本は役に立つ。
あいにく家にはパソコンもなくテレビもない(テレビは前年画面がバチッとして映らなくなった。後、正確に言うとテレビはあるしかしビデオしか映らなくなってしまった。)家にあるのはコンポとCDと本である。だから今僕はブライアン・イーノをかけながら、本を読んでいるわけだ。
しかし本を読んでいると目が痛くなってくる。
あー痛。
僕は本を置きちょっと休む事にした。
本を置いて気がついた事だが、今日は猛暑であった。それも殺人級の。
僕は冷蔵庫へ行き、冷蔵庫を開けビールがあるかどうか確かめた。
あいにくビールも切らしているようであった。
あーあつい。
僕は畳に横になりながら言った。
すると誰かが家のドアをたたき始めた。
言い忘れていたが家は2階建てアパートで僕はその2階に住んでいる。
部屋は狭いけど、なかなか変な人がいっぱい居て楽しいのだ。
僕は「今開けまーす。」と言った。5時間振りに声を出したので来日したハリウッドスターの喋る日本語みたいになってしまった。
ドアを開けると真鍋トモコさんがいた。真鍋さんは隣人で友達である。真鍋さんはTシャツとジーパンをはいていて僕の顔を見るとお酒のもうと言った。
僕はすぐさまOKと言った。今度は普通の声だった。

飲み会は僕の部屋で行われる事になった。
どっちにしろ友達が来るので上がって貰った。
どうやら仕事先でビンゴをして当たったらしい。
しかし一人では飲みきれない量だったので僕の部屋に持ってきてくれたとかどうとか。
「やっぱりビールはいいなあ。ちょっとほろ苦いところがせいしゅーんってかんじやん。」真鍋さんはすぐ酔ってしまったのかそう言う事を言い始めた。
「ブッシュよ恥を知れー。」
「うん。うん。」
「マイケル・ムーアばんざーい」
「うん。うん。」
「マイケルとみおかー。」
「うん。うん。」
上の言葉の通り僕は話をあんまり聞いていなかった。と言うか胸ばっかみてた。
「マイケルとみおかー。」
真鍋さんはその言葉が気に入ったのか何回も何回も言った。

真鍋さんが「マイケルとみおかー」と1534回言ったところでまたドアが叩かれた。
「はいはい。いま行きますよー。」僕はほろ酔い気分でドアを開けるとそこには友人のきっしんがいた。
「おおきっしん。」
「ビール買ってきたで。」
きっしんは昔からの友達である。いつもTシャツでおしゃれめがねをかけている。そして何故かモテるのであった。一度きっしんと付き合っていた女の子に聞くと母性本能をくすぐらせる人という返答が帰ってきた。
なるほど。その時は思った。
きっしんは真鍋さんを見ると「おいっす」と言った。
真鍋さんは「おー岸田やん。」と言った。
「知り合い?」と僕は聞く。
「うちのサークルの先輩」ときっしんが言った。
僕はきっしんが何のサークルに入っているかを思い出そうとしたが思い出せなかった。
とにかく3人で飲み会を始めた。
やはりみんな飲んでいると酔っぱらいだして
僕は「フー」と言う単語を400回叫び、真鍋さんは「じゃぱねっとたかた」という単語を871回言い、きっしんはスティーブン・キングの本をずっと音読していた。
そんな時だ。
突然外から奇声が聞こえたのである。
「なんや?」と思った人は多く僕がベランダに出て周りを見渡すとどんどん人々がベランダに出てきた。
時計を見ると大体9時頃だった。
そしてもう一度奇声。
「うるさいなあ」と僕が部屋を見るときっしんと真鍋さんはもう靴を履いていた。
「ちょい待って。」と言い僕は急いで靴を履いた。
その間にも3回奇声が聞こえた。
その声は三大テノールのような声であった。




攻撃 1



9時20分 月曜日 アパート
「ラァアアノォオクリイイプ!」隣の家から音楽が聞こえる。オレは今自分のアパートの一室で昼寝をしているところだった。オレがこの世で嫌いな物は三つある。そのうちの一つが寝ているところをじゃまされるって事だ。
「らぁんらぁんらぁんらぁっらあああああああああああああああああああああああ。」
うるせえ。オレは狭い部屋の中においてあるテーブルの上に乗ってるたばこの箱を取る。中身は空だった。ちくしょうとオレは言いながらそのたばこの箱を握りつぶした。オレはあーあと言いながらベットに横になった。天井はヤニで汚くなっている。オレは他にする事がないから寝る事にした。オレはあくびをして目を閉じる。
しかし寝られなかった。理由は二つ、音楽がうるさいのと、音楽がうるさいのだ。同じ事二回書いてしまったがそれほどうるさいって事だ。うるせえかなりうるせえ。いい加減音楽を止めろ。
「ふぉおおおおおおおおおおおおおおおお」オレはこの瞬間決めた。隣人を殴りに行こうと。

オレは今お向かいさんの家のドアの前に立っている。理由はさっき言った通りだ。
殴る。
オレはケンカには自信がある。久しくケンカなんかしていないから分からないけど。まあいいとりあえず一発殴ればオレは十分だ。心が満たされる。オレは人の迷惑を考えない奴は嫌いなんだ。
インターフォンを押す。ドアの向こうからドッタンドッタンと音が聞こえる。慌てているのか?もしかして奴は引きこもりなのか?オレはちょっとだけ殴る気力が失せた。オレは弱い物いじめはしたくない。すると突然ドアが開いた。ドアの向こうには女性がいた。オレは殴る気力は失せ、その代わり一目惚れをした。「どうしたんですか?」その女性はオレに話しかけてきた。
「あ、あ、あ、あのぉ」オレは挙動不審になる。どうしたオレ音量を下げろと言うんじゃないのか?
「コーヒーを飲みます?」女性はオレに進める。
「飲みます!」何嬉しそうにいってんだ。絶対オレ彼女を押し倒すぞ。オレ性犯罪者で刑務所に入れられたらカマ野郎にケツ掘られんぞ。それでもいいのか?
「どうしたんですか?上がってもいいわよ。」女性がすすめる。
「あ上がります。」結局オレは女性の部屋に上がり込んだわけだ。


彼女の部屋はオレの部屋と殆ど同じだった。しかしずっと大音量でロックが流れている。正直オレとしてはきつかったが・・・もともと大音量でロックは聴かない方だからだ。
「あなたの名前は?」彼女がコーヒーを作りながら聞いてきた。
オレは「ジム」と一言だけ言った。そう言ってオレはソファーに座る。
「ジム?」彼女は聞き返す
「ああ・・・そうだ煙草一本貰っていいですか?」とオレは聞いた。
「いいよ。」彼女も煙草吸いながらコーヒーを作っていた。
オレはテーブルの上にある煙草を一本取るとライターで火をつける。
オレはこの瞬間が好きだ。キザでも何でもなく本当に火をつける瞬間が好きなのだ。
「今日は何故ここに来た?」彼女はコーヒーカップを二つ持ちながらやって来た。
オレはありがとうと一言言ってから「大音量を注意しに来た」と言った。
彼女は殆どコーヒーを飲まずずっと煙草を吸いながらオレに「そう。」と言った。
オレはコーヒーを2,3回すすってから煙草を吸ってその煙草を灰皿に押しつけた。
「あなたの名前は何?」オレは聞く。
「私の名前?」彼女は聞き返した。「ケイト」彼女は冷たく言った。
「ケイト?」
「そう」彼女は煙草の煙を吐きながら言う。
こう見ると彼女は可愛かった。オレンジ色の髪が特に可愛い。顔も小さい。胸も普通ぐらい。オレは彼女をまじまじと見ていた。
突然ドキッとしてしまった。彼女の腕に妙な傷跡があったからだ。
自殺痕?リストカット?
「ジム?」オレはハッとする。
「どうかした?」彼女はオレに聞く。と言うかそもそも初対面なのにここまで話がつながるというのが不思議だ。
「いや。何でもない。」オレはその傷は何だと聞きたくなった。しかしそれを聞いたら彼女は怒るだろうな。
「ケイト・・・さん。」
「何?」
「あの・・・その何て言うか。」
そん時だった。ロックが大音量でかかっている部屋でも聞こえるぐらいの大音量ボイスのオペラが聞こえてきたのは。
「うるさいな」彼女は自分も大音量でロックをかけているのを棚に上げていった。
そしてもう一度聞こえてきた。
どうやら外から聞こえるらしい。
オレは彼女に「今から外へ出る?」と聞いた。
「何で」と彼女は聞き返した。
「オペラ歌手を殴りに行く」と言った。
彼女は楽しそうな顔をしながら「ちょっと待って、部屋の戸締まりするから」と言った。
オレはもう一つ煙草を取ると、マッチで火をつけそれを吸い始める。
彼女はその間に部屋の戸締まりをする。
大体、煙草が半分になるかならんかぐらいで彼女は行きましょうと言った。
その間にもオペラ歌手のような声は10回ほど聞こえた。
オレ達は外に出て、声の聞こえる方向に向かって歩き始める。
思えばここから悪夢は始まっていた。




脱出 1

ジリジリと日が差していた。
テレビでは今日の気温はいつもより高いらしい。
別に気温が高くても高くなくてもどっちでもいいけど。

とあるビルの屋上で俺は寝ていた。
俺はひんやりとするコンクリートが好きなのだ。
「ひぃろちゃん」と彼女の声がした。俺は目を開ける、彼女は至近距離で顔を近付けていた。彼女は高校生である。俺は中一。ませガキだ。
「ひろちゃんいつもこんなところでねてんなあ。」彼女は笑いながら言った。俺達は付き合っている。俺は彼女の事が好きで彼女は俺の事が好きなのだ。
「ひろちゃん何でいつもこんなところで寝てんの?」
「ここが好きやねん。」俺は眠い声で言った。
僕は空を見る。空の明るさで言えば大体3時頃だ。
「何で?」彼女は目をまん丸にして聞いた。
「気持ちいいから。」
「気持ちいいから。」彼女は俺の言葉を真似した。それが彼女の癖なのだ。一回言った事をもう一回言う癖が彼女にはあった。
「なあひろちゃん。」「何?」「どっかいかへん。」彼女は唐突に言った。
「なんで?」俺は聞き返す。
「外に行きたい。」彼女は笑いながら言った。
「ここも外やん。」俺は何故って顔で言う。「ちがう。本当の外。」彼女は口に入った髪の毛をのけながら言う。
「本当の外?」
「そう。本当の外。」
そんな時だった。突然オペラ歌手のような声がこの辺一体に響いたのは。
俺は彼女の手を引っ張ってビルから出る。
「ひろちゃん・・・どうしたん?」彼女は疲れながら言う。
「いや・・・オペラ歌手の声がしたから。」
するとまた声が聞こえた。
どうやらこのビルの裏から聞こえているらしい。俺は彼女の手を引っ張りながらビルの裏(正確にはビルとビルの間)に向かった。
「なあひろちゃんどうしたん。」ビルの裏は暗く見え辛い。僕は目を凝らしてみる。
そこには・・・
「あっコロッケや。」コロッケがあった。



第一話

恐怖 2

外は暗く、涼しく散歩するには良い夜であった。
僕らは酔っぱらいながらその声の聞こえるとこまで歩いていった。
前には8人ぐらい人がいてみんな声のする方へ歩いているようだった。
思えば何で外に出る事になったのかが分からない。
「じょんびーちょっぱー」真鍋さんは相変わらず意味不明な言葉を叫んでいる。
それも大声で。
「ぶんぶんさてらいーつー」今はその声に隠れているけど普通の日に叫んだら間違いなく精神病院行きである。
「あんなあ。だからなあ俺は頑張っていってんで。」きっしんは愚痴っている。
僕は「うん。」とだけしか言わなかった。
「頑張ったんやけど・・・まあな振られたし・・・」きっしんは泣き出した。
「そんなんな・・・俺何かよりタムラの方がかっこええやん。な。でもあいつな根に持つタイプやから突然俺呼び出してよー、お前調子のっとんとちゃうぞはげ、とかほざきだしたから一発シメといたわけよ。そしたらあいつ負けたとたんに泣き出して。彼女と突き合わせへんようにしたるとか言ってこんな結果や。」
正直何を話しているのか分からなかった。それでも聞いておく事にした。
「だから付き合われへんかってん・・・」
きっしんはまた泣き出した。
「そりゃ俺はソフトMですよ。ソフトMですよ。」きっしんは泣き叫びながら言う。
すると真鍋さんが「ソフトMなーん。」というときっしんの頭を叩いた。
きっしんは「何するんスか。」と言うと真鍋さんは「ソフトMなんやろー」と言ってもう一度きっしんの頭を叩いた。
すると前から同じアパートの友達のジョン・スミスが歩いてこちらまでやって来た。
「おーいジョン」僕が言うとジョンは「ハハハ、ミスターサムライ!何してるの?」と聞いた。
スミスは英会話講師をしている27歳でアメリカ人である。彫りの深い顔をしている。この前僕が好きな食べ物は何と聞いたらおでんと餃子と返してきた。
好きな俳優はと聞くと彼は中井貴一と答えた。とにかく掴み所の無いのだがとにかく人柄が良くきっしんも真鍋さんもジョンの友達である。
「今からオペラ歌手を見に行くんだけどジョンは?」
ジョンは一瞬考えるとちょっと悲しそうな顔をして「ごめんなさい。まだご飯食べてないの。ホントにネ。」とたどたどしく言った。
「そうなんや。じゃあ後で飲み会しようぜ。」
「イエス!後でビール飲みましょう!!」ジョンは喜びながらアパートへ帰っていった。
ジョンが見えなくなると真鍋さんは今度は僕に向かってパンチをした。
ソフトMじゃないのに。

その声はアパートから400メートルぐらい先の民家と民家の隙間から聞こえているようだった。
その隙間の前には何十という人が集まっている。
そして時々オペラ歌手のような声がその隙間から聞こえてくる。
僕らは後から来たので全く前が見えない。
「うわー何も見えへん」きっしんはそう嘆く。
きっしんはジャンプをする。
そしてジャンプしながら言葉を喋る。
ジャンプ「あと」ジャンプ「もうすこ」ジャンプ「しでみえそ」ジャンプ「う」
すると突然「何しとんじゃわれえ」と前のおっさんがきっしんに向かって怒鳴った。
前のおっさんはヤクザぽかった。隣には女がいてその女は下着のような服を着ていた。
「おのれいてまうぞオラ」ヤクザはそう言うと突然きっしんのほっぺたをひっぱたたいた。
きっしんのメガネが飛んだ。
「ああ殺されとう無かったら帰れ。」
きっしんはそのヤクザの声には答えずにメガネを探し始める。
「あっ、あった」きっしんの声は冷たかった。
きっしんはメガネをかけ直す。
そしてヤクザの前まで行く。
「なんや」ヤクザが殺気を込めて言う。
一瞬の出来事であった。
きっしんの右拳がヤクザの顔面にヒットしたのは。
ヤクザはその衝撃で体がくるくると回った。
そしてそのまま倒れた。
ヤクザの鼻からはおびただしい量の鼻血が出ている。
「俺のメガネにさわんな、殺すぞ」きっしんは冷たく言った。
「は・・・はっむはむはむ」ヤクザはハイと言いたかったらしいのだが何故かはむと言っていた。
きっしんは無用な殺傷はさけると言わんばかりにヤクザに背を向けアパートの方へ向かって歩いていった。
真鍋さんは「あいつソフトMとちゃうんかい。あいつどSやで。」と言っていた。
だから何であなたはそう言うの。

アパートに帰るとジョンとトムとぐっさんとサチコさんがいた。
トムは日本人である。何の仕事をしているのか分からないが何故かみんなからトムと呼ばれている。いつも黒スーツに白ワイシャツ、黒ネクタイに黒ズボンと喪服のような服を着ているがなかなきいい奴である。ちなみに時々肉屋で見かけるので同じくコロッケ好きだと思う。
ぐっさんも何の仕事に就いているか不明だがやはり同じくいい奴である。好きな歌手はロバート・ギルバートで好きな映画はパナソニックトレジャーである(ロバート・ギルバートはギター奏者と歌手でギターのテクニックは絶品である。妻のメグ・ギルバートとのバンドも最高で僕は彼らの出しているアルバムすべて持っている。パナソニック・トレジャーは言わずとしれた映画である。しかし邦題のセンスはゼロである。だってナショナル・トレジャーのパクリ。)
サチコさんはぐっさんの奥さんです。よく分からない。天然らしい。彼女はギターが弾けるのだ。
ジョンは「飲み会ハジメマショー」と言うと自然に飲み会が始まった。
とても楽しい時間であった。
楽しすぎたほどである。
こんな時間が何時までも続けばいいなあと思った。

僕の夢の中では僕は真鍋さんの手を握って真鍋さんの部屋に入って今、えっちぃ事をしている。
とてもえっちぃ夢だ。
こんな思春期が見る夢を僕は見てしまった。
たぶん欲求不満なのだろう。
しかし何故か彼女の肌の体温はやけにリアルだった。


僕が目覚めると僕は自分の部屋にいなかった。
「えっ。」と僕は叫んだ。
目の前には真鍋さんが同じベットで寝ていた。
そして真鍋さんの手は縛られていた。
いやむしろ自分が縛ったのか?
真鍋さんが目を開ける。
まさかこの部屋は真鍋さんの部屋?
「おはよう」真鍋さんは言う。
「おはよう」
その後の言葉が詰まる。
未だに状況が良く飲み込めていない。
「何か食べる?」
「僕ら・・・何かした?」
「・・・うん。てか覚えてないの。」
「・・・・・・」
「まじで!かなり凄かったでっ、てか手のヒモほどいてくれへん。」
僕は手に縛られたヒモをほどく。
「・・・何で縛っているの」
「あんたが縛らしたんやろ。」
「まじで」
「マジ」
「うそやん」
「いやホンマ」
「・・・・・・」
とりあえず僕は立ち上がったすると服を着ていない事に気がついた。
「ご飯食べる?僕作ろか?」
「作って」
僕は立ち上がると台所に向かいながら昨日の事を思い出そうとした。
昨日はあの後飲み会をして、そして・・・えーとそうだ真鍋さんに告白して、てか何で告白したんだ?真鍋さんは嫌いじゃないけど。その後真鍋さんの部屋に行ってソフトSMプレイってどんだけディープやねん。
「はあ」とため息をついた。
そりゃねえ。誰もこんな急展開になると思わないだろうし。
そして窓から外を見た。
思わず何じゃこりゃあと叫んだ。
たぶん僕は夢を見ているのだろう。
僕はほっぺたをつねる。
「いてっ」
ほっぺたをつねるとその痛みはとてもリアルだった。
現実であった。
現実ならどう説明しよう?
夢でしかあり得ない風景。
僕の目の前には家3件分ぐらいの大きさの巨大なコロッケが空に浮かんでいた。



攻撃 2


「煙草、吸う?」彼女は口に煙草をくわえてオレに煙草の箱を差し出しながら言った。
「吸う」オレは煙草の箱から煙草を取って、ライターで火をつけた。
オレは煙草を口にくわえ吸うそして煙を吐く。
煙草の煙は雲一つ無い空へ吸い込まれていった。

人々は公園の中心の芝生を中心に円形に集まっていた。
人々の数は50人を超していた。
オレ達は後から来たから何がそこにあるか見る事ができない。
「何か見える?」彼女は煙草の煙を吐きながら聞く。
「いや。何にも見えやしない。」
そうこうしている間にもオペラ歌手の声が聞こえる。
近くでその声を聞くと、とても大きな声であった。
オレは前の男に「何が見えるんだ?」と聞いた。
前の男は「何かニッポンの食べ物らしいぜ。」
オレは思わず笑ってしまった。そして男に「食べ物?」と聞き返した。
男も笑いながら「ああ、食べ物だ。しかも喋るな。」と皮肉っぽく言った。
オレは訳が分からなくなった。
「えっ?何て言ったの。」彼女はオレに聞いた。
「食べ物が喋っているんだってよ。」オレは気だるく言った。
彼女はえっ?と言うと次第に状況を理解し始め最後には笑っていた。
「食べ物が喋るなんてそんなディズニー映画じゃないのに。」彼女は必死に笑いをこらえながら言う。
またオペラ歌手の声が聞こえる。その声はさっきよりもうるさかった。
「うるせえなあ」オレは煙草の煙を吐きながら言った。
「ホント・・・。」
「なんで食べ物が叫んでいるのかねえ。」
「ホント・・・。」彼女はあくびをしながら答えた。
「あの・・・ケイトさんは仕事は?」オレは聞く。
「仕事・・・・・・辞めさせられた。」彼女は悲しそうに言う。
「辞めさせられた?」
「イエス」
「何で?」
「さあ。」
俺達の間に気まずい空気が流れる。
オレは質問を聞いた事をとても後悔した。
彼女の顔を見る。彼女はポケットから煙草の箱を出し、それを開けていた。
彼女は失望したような目つきになった。煙草が切れたのだろう。
彼女はため息をついた。
「なあメシ喰おうぜ。あのあれええと・・・チャーリーブラウンで。」オレはそう言った。オレは気まずい空気が嫌いなのだ。後、チャーリーブラウンというのはキャラクターの名前ではない。レストランの名前である。場所はアパートの通りを5分ぐらい行ったところにある。そこの目玉商品は何と言ってもプレーンオムレツとコーヒーであろう。オレもプレーンオムレツが食べたいがために毎日通うほどである。
彼女は頷いた。
「でもどうやって?」彼女はオレに聞いた。最初その質問の意味が分からなかったが、ふとオレは後ろを見た。
もの凄い数の人がいた。
「とりあえずここを突っ切ろう。」オレはそう言って彼女の手を掴んだ。彼女の手は冷たかった。
「行くぞ。」オレはそう言って強く彼女の手を握る。
強く握りすぎたんだろう彼女は「痛い!」と言った。そして彼女はオレの顔を殴った。
どうやら当たり所が悪かったらしく水の中に入ってそこでぐるぐると回転させられたようなような気分になった。
「そりい」彼女はそう言う。
たぶんこれは脳しんとう。
脳しんとうです。
オレは痛む頭を押さえながら立ち上がる事にした。
「ああいってえ・・・。」
オレは空を見る。
空は先程と違って雲が出来ていた。
そして風が吹いてきた。
「早く行こう。」そう彼女は言って、先に走り出した。
オレは彼女の後を追う。
一杯人がいたせいかもしれないが距離がみるみる内に引き離されていった。
彼女は思ったより速かった。
オレはとにかく人混みの中を突っ切るだけ突っ切りそこから抜け出すとまず最初に煙草に火をつけた。
そうこうしているうちに彼女の姿は見えなくなっていた。
オレは口から煙を吐いた。煙は黒くなっていく空に吸い込まれていった。

公園から歩いて10分ぐらいの所にチャーリーブラウンはあった。
オレが10分歩いている間にも何十人という人々がソレを見に公園に向かっていた。
そこまでしてみたいかねえ。オレはそいつら全員に聞いてみたかった。
彼女はテーブル席に座っていた。
客の数は4人。従業員はシェフとシェフの奥さんとメグがいた。
メグというのはウェイトレスでオレの友達である。メグはこの近所の大学に通っておりアルバイトとしてこの店に働いている。なかなかスタイルもいいので結構モテている。性格も良いが一つ難点がある、それは酒癖が悪い事だ。メグは一度絡んだらずっと絡み続けて罵詈雑言言ったり(ファックとかシットとか)下ネタ言ったり(かなり露骨な。)なかなかいつもの違う性格が出る。とにかくいい奴だ。
オレは彼女の座っているテーブルの席に座る。
「朝ご飯食べた?」オレは彼女に聞く。
「食べてないよ。」彼女は楽しそうにメニューを見ながら答える。
「じゃあ、プレーンオムレツ食べてみ。」
さっきも言ったがプレーンオムレツはまさに絶品なのだ。
「・・・・・・」しかし彼女は黙ってしまった。
「どうしたの」
「私・・・卵アレルギーなの」
「あっ。」と取り返しのつかない事を言ってしまってちょっとだけ自己嫌悪にオレは陥ってしまった。
「いいの。仕方ないし・・・。」
沈黙と気まずい空気。
そこにメグが現れた。
「ハイ。ジム」
メグは挨拶をオレにした。
「ハイ。メグ」
「ジム・・・女の子をまた泣かしたの?」彼女はオレに聞いた。
「・・・メグ、泣かしてなんかいないぜ。」
「本当?じゃあ何でこここんなに沈んでいるのよ。」
「今日が初対面なんだよ。」
「ナンパ?」
「ちげえよ。お隣さんだよ。」
「ふーん。」彼女はオレを信用していない様子だった。
「で、ご注文は?」
「オレは・・・プレーンオムレツとコーヒーで。」
オレは自分の注文を言った。
「私は・・・このウィンナーとコーヒーで。」
「かしこまりました。ごゆっくりどうぞ・・・。」
そう言ってメグは立ち去っていった。
オレ達の間に沈黙が生まれる。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「なあ・・・」
「・・・何?」
「何を聞いていた?」
「なんでも。」
「何でもって何?」
「ロック」
壁と天井の間には小さなテレビがあり、てれびではニュースをやっていた。
「あれ食べ物なの?」彼女は煙草に火をつけながら言う。
「そうらしいよ」
「きもちわるい」
「気持ち悪い?」
「だって食べ物が叫んでいるなんてそんな安物のコミックじゃないんだしそんなみんなが集団で安もんのヤク吸ったみたいな事信じられるわけ無いじゃない。」彼女はそこまで一息で言うと髪の毛を手ではらう。
「ははは。安もんのヤクか。傑作だ。」
「ねえ。あなたの夢は何なの?」
「夢?」
「夢。」
「オレは・・・明日を生きる」
「何を言っているの?」
「明日を生きるって事だ。」
その時メグがはいどうぞと言いながらプレーンオムレツを持ってきた。
「何?またおかしな事を言っているの?」メグは半笑いで言う。
「明日を生きるって言っただけさ。」
「なーにキザな事ほざいてんのよ。明日についてどうたらこうたら言う前に前に貸した20ドル返してよね。」メグはオレを指さしながら言う。
「正確には19ドル63セントだ。」オレはケチャップをプレーンオムレツにかけながら言う。
「どっちしろ同じよ。利子よ。利子」
「分かったよ」
「今週中よ」
「はぁ?無理だよ無理」
「何言ってんのよ。私だってお金ないの」
オレは彼女のその強い調子に負け、ついわかったよと言ってしまった。
「いい。今週中よ」
そう彼女は捨て台詞を吐いて厨房に戻っていった。
「いつも彼女あんな調子?」彼女は灰皿に煙草を押しつけながら言った。
「そういやいつもは違うな・・・」
「いつもは?」
「あいつ男にはすげえぶりっこするんだ」
「じゃあ何故あなたには?」
「あいつとは幼なじみだし男って見られてねえんだよ」
彼女は突然大きく笑い出した。
オレも一緒になって笑っていると突然頭を何者かに殴られた。
オレは映画のようにテーブルに頭を勢いよくつけた。
前を見るとメグがウィンナーとコーヒー2つを運んできている。
メグはオレを睨むとおめえの声厨房まで聞こえてんだよバカと言った。
普段ならメグはいい奴なのにな。

「生きてる事に乾杯」
「生きてる事に乾杯」
オレ達はとりあえずコーヒーカップをコンと当て、つまり乾杯という物だ。それをしコーヒーを飲んだ。
ここのコーヒーはとにかくうまい。
「うまい」
「うまい」
「・・・はぁああああ」オレはあくびをした。
「なあ」オレは質問する。
「何?」
「殆ど初対面の相手とコーヒー飲んだりとかして辛くない?」
「いや。全然苦にならない。ジム、あなたとても面白いよ。」
「そう?」
「うん」
「何故か分からないけど嬉しいなあ」オレは女性に弱いのだ。
「なに笑ってんの」メグはにししししと笑いながらやって来た。
「お前仕事しろよ。」
「客なんて2,3人なのよ。それに今は休憩時間なのそれにジムもようナンパばっかりしてねえ出仕事しろよ。」メグは早口で言うとエプロンのポケットから煙草を一本、マッチを一本取って壁でマッチを擦り煙草に火をつけた。
「あなたなんて名前?」メグはケイトに聞いた。
「ケイトです。」
「ケイトさん。こいつにヤラれちゃだめよ」
「メグさんはやられた事あります?」
「何オレを性犯罪者にしてんだ」
「うん、された」
オレは一回もしてません。
「オレはしてねえぞ」
「高校のパーティの夜にしたじゃない」
「あれはトムだよ。トムだよおめえとやったのはキスぐれえだよそれも5歳の時の」
「うそ・・・。私ジムに手込めにされたってあの後言いふらしちゃった」
「嘘」
「マジ。ってか5歳の時の淡い恋心何覚えてんだよ。だから彼女に振られちゃうんだよ」
「振られたの?」ケイトさんが聞いてくる。この人は結構こういう話が好きそうだ。
「うん。こいつ半年前ぐらいに私に泣きついてきてもうオレ死にそう・・・とかほざいてた。」
オレはなんだか泣きそうになりながら天井をまず見た。その後ニュースを見た。オレはそのニュースを見た瞬間今日はエイプリルフールだったけと考えた。それほどそのニュースは嘘くさかった。
オレが驚いているのと同じぐらいのタイミングで勢いよくドアが開いた。
そこには男が立っていてとても驚いているような顔をしていた。
そして次の瞬間男は叫んだ。
「UFOだ!宇宙人がやってきたぞ。」
オレ達の頭の回転より速く世界は進んでいるようだった。



脱出 2

「コロッケや。」彼女はにこにこしながら言った。
「何もおもわへんの?」俺は彼女に聞く。
「だってコロッケやん。」
「いやだって声にしてきた方向はここやで」
「でもコロッケやでコロッケは平和の象徴やねんで。」彼女はにこにこしながら答える。
彼女には悩みという物がないのだろうか。それぐらい脳天気な答えだった。
俺は彼女の言葉を一言一句理解していく。
またコロッケは叫んだ。それも大きな声で。そしてオペラ歌手のような声で。
「ほら。やっぱりこいつやってこいつがあの声やねんって」
「ひろちゃんはなあ子どもやのにな難しい事考え過ぎやねん。」かのじょは無邪気に答える。
お前はほんまに高校生なんか。言葉が出そうになるけど言葉に出さない。
「じゃあコロッケって喋る?」
「しゃべらへん」
「このコロッケは?」
「喋ってる」
「ほらっ、おかしいやん。狂ってるやん」
「世にも奇妙な物語みたいやな」彼女は鼻歌でテーマソングを歌い始める。
するとその鼻歌に反応するようにコロッケはもう一度叫んだ。
遠くの民家からうるせえぞバカヤロウと声が聞こえる。
「うっさいぞーはげー」彼女はいつもと同じトーンで言う。
「あんま叫ぶな」
「なあ。このコロッケってメシ喰うかな?」そう言って通学鞄からグミを出す。
「叫ぶから喰うとちゃう?」
彼女はそやなと言ってコロッケに向けてグミを投げた。すると突然鉛筆ぐらいの大きさの何かが飛んできて彼女の持っていたグミの袋を取った。
どうやらそれはコロッケの手だった。
手?
こんなのマンガの世界じゃないか。俺はもう訳が分からなくなっていた。
彼女は明らかにキレていた。
付き合っているから分かる。
彼女はキレている
彼女は通学鞄からエアガンを取りだした。
18歳未満禁止タイプのようだった。
彼女はコロッケに向けて4発撃つ。
コロッケの表面が凹んでいく。
するとコロッケは突然金属と金属がこすれあうような声を出した。
オレ達は耳を塞いだ。
コロッケはそう様子が見えているのか分からないがこちらが攻撃していないと分かるとこちらに向かって一直線に走ってきた。
コロッケに足はあった?
コロッケは四本の足のような衣で走ってこちらまで来ていた。
そしてコロッケは彼女に飛びかかってきた。
それはスローモーションのようだった。コロッケは彼女の顔狙いで飛びかかってくる、しかしその前に彼女は制服のポケットからスタンガンを取りだしていた、彼女はスタンガンをONにする。そして顔に当たる03秒前彼女はコロッケにスタンガンを当てた。
コロッケは言葉にすればぴにゃあああと言う叫び声を上げながら何故か爆発した。
彼女の顔にカニクリームがつく。
俺は一瞬何が起きたか分からなかったが徐々に理解していくうちに彼女はただ者ではないと思った。
しかしこんな異常事態の後でも彼女はいつもと変わらぬにこにこ顔で俺にこういった。
「もう一度あのビルの屋上に行こう」と。
訳が分からなかったけど、とりあえず俺もそれに従う事にした。
どうでもいいしね。

帰宅すると夜の8時だった。
アルコール中毒の父親は禁酒二日目というわけで今気を紛らわすために片っ端から映画を見ている。今見ているのはシックス・センスだった。父親はこれでも仕事をしている。
結構まともな仕事らしい。
ギャンブルもしない。
親父は酒が切れると息子を殴るという事はしなかったがなぜか母さんの遺影の前で手を合わせてごめんよ、ごめんよと泣き続ける。

母親は数年前に亡くなった。いい母さんだった。

俺にはじいちゃんとばあちゃんがいて両方ともあんまり離れてないところにすんでいる。
とてもいいおじいちゃんとおばあちゃんで俺は両方ともとても好きだ。

父さんは俺の姿を見ると「またデート?」と聞いてきた。
「ちげえよ。ボランティアだよ。」
「ああ、そう・・・」父さんは期待はずれだと知るとシックス・センスに釘付けになった。
「なあ」俺は父さんに言う。
「何?」
「それな」
「何?」
「ラストなブルース・ウィルスが実は幽霊だったッておちやで」
「・・・・・・」
父さんは黙った。そして父さんはこういった。
「何で言うよ?」
「だって面白いから」
よく見ると父さんは泣きそうになっていた。
あんまり可哀想なのでなので俺は自分の部屋に行く。
俺はベッドの中にはいるとすぐさま寝てしまった。

「大変や!大変や!」父さんの声が聞こえて俺は目覚めた。
「どうしたん?」
「これこれ。」そう言って父さんは新聞を見せた。
そこにはこう書かれていた。

全世界にコロッケ型UFO現る。

第2話

恐怖 3

僕はちょっとの間、放心状態だった。
大きなコロッケが空を飛んでいるなんて生まれて始めて見たからである。
僕はまだ布団の中にいる真鍋さんを呼んだ。
真鍋さんは「えー」といいながら渋々こちらにやってきたがコロッケを見るなり硬直してしまった。
外でも既に群衆が出来ていて、ワイワイガヤガヤと騒いでいる。
僕は真鍋さんの部屋にあるテレビを付けるとそこには全世界でで巨大コロッケ出現と大きくテロップが現れた。
僕は次々とチャンネルを変える。しかしどうやらどの局もこのニュースをやっているらしく普通の番組はやっていなかった。
僕はとにかくまず服を着ようと思い外のコロッケを見ながら服を着替える事にした。
僕が服を着替えている間コロッケはずっと宙をふわふわと浮いていた。
真鍋さんはブラジャーのホックを前で止めながら僕に腹減ったなあと言った。
僕もおなかが空いている事に気が付いて僕は朝ご飯を作る事にした。

とんとんとんとんとネギを切る音が部屋中に響き渡る。
僕はネギを切る音が好きだ。そう思っているとネギの切る音に混じってテレビの音声が混じってきた。
とん「向井さん」とん「あれはなんでしょうか」
とん「あれは」とん「ばかばかしい話」とん「ですが」とん「UFOではない」とん「でしょうか」
真鍋さんはUFOやねんてと楽しそうに言う。
UFO?UFO何て単語久しぶりに聞いた。子どもの時以来じゃないだろうか。
と言うかUFOの形がコロッケ?あほらしい。
とん「この形の」とん「UFOは」とん「全世界の至る所で」とん「も見られています」

真鍋さんと一緒に朝ご飯を食べながら、僕はずっとテレビを見ていた。
言っている事は全て同じ。
ころっけ、ころっけ、UFO、全世界、ころっけ、ころっけ。
「はあ」と真鍋さんはみそ汁を飲んでため息をついた。
「結構おいしいなあ」
凄く嬉しい。僕は思わず顔がにんまりとなった。
真鍋さんは僕のにんまりとした顔を見て「アホ」と一言言った。
「でもあのコロッケほんまにUFOかな」真鍋さんはそう質問してきた。
「ちゃうと思うで」僕はみそ汁を飲みながら答える。
「じゃああれは何?」
「・・・コロッケ?」
「コロッケ?そのままやなあ」
「ええやん」
「ええけど」

真鍋さんはその後もニュースを見ていたがいい加減飽きたのかチャンネルを変え始めたが何処のチャンネルも上空に浮かぶコロッケの映像しか流れなかった。
「あきひんのかねえ」真鍋さんはチャンネルを変えながらそう言った。
「しゃあないやん」
「でもなあいいとももやってないねんで」
「いいともは仕方がないやろう」
「いやこんな時ほどいいともやで」
「そんなもんなん」
「そんなもんや」
そう言うと真鍋さんはあくびをした。そのあくびはとても長かった。ただそんだけ。

その後、僕は部屋から読みかけのスティーブン・キングの小説とCDを持ってきた。
CDはロイクソップとか言うノルウェーのひとのCDである。僕はこのCDの2曲目のEPLEと言う曲が好きなのだ。
とにかく真鍋さんの部屋にそれらを持ってきた。
真鍋さんはずっとテレビを見ていた。僕は真鍋さんの着ている服を時々みながらスティーブン・キングの本を読む事にした。
これしかなかった。そう言って真鍋さんは花柄のブラウスを着ていた。
僕はブラウスを見ながら顔がにんまりしている自分に気が付いた。
真鍋さんは僕の顔を見、アホと一言言った。

テレビのニュースはずっと同じ映像を流していた。
何も変わらない映像。アナウンサーはずっと同じ事しか喋っていなかった。
段々外は暗くなってきて、もう7時ぐらいであった。
僕はスティーブン・キングの本を400ページ程読み終わり今はクライマックスってとこだった。
真鍋さんは最初はテレビを見ていたが、やっぱり面白くないので「ちょっと寝るわ」と言って昼寝をし始めた。
テレビからカメラのシャッターの音がしテレビの方を向くとテレビでは首相がインタビューを受けていた。
「あのコロッケのような物についてはどう思います?」
首相は斜め上に目をやりながら「うん・・・まあね。やっぱりねこう言うところは慎重に行かないとね。宇宙人かもしれないんだろ?やはりね。遠いところから来た人には敬意を表さなくちゃね。うん。」と言った。
「首相もエイリアンだと思うんですか。」
また斜め上に目をやりながら。
「うん。エイリアン。まあ宇宙人でも良いね。やっぱりねあんな物人間には作れないから。やっぱりねエイリアンだと思うんだよ。まあそこは人もいろいろ、会社も色々、社会も色々考え方が違うと思うんだよ。うん」
僕がふと窓の外へ目をやると、先程のコロッケは姿、形もなく、あるのは真っ暗闇の空だけだった。
いつの間にと思っていると突然チャイムの音が鳴りきっしんの声が聞こえてきた。
僕がドアを開けるとまだスーツ姿のきっしんが居た。
「どうしたん」と僕が聞くと、「なんか仕事今日無かった」と言う返事が返ってきた。
「何してるん」きっしんは僕に聞いてきた。
「とりあえず入れ」と優しく僕は言いきっしんを部屋の中に入れた。
きっしんはおじゃましまーすと言った。
「何してるん」きっしんは背広を脱ぎながら言った。
「いや、真鍋さんの部屋で本読んでた」
「何で?」
「何となく。いやだからスティーブン・キングの本まだ読んでなかったやろ」
「いや知らんて」
「読んでないからずっと此処でニュース見ながら読んでてん」
「へえ。いやてっきり性犯罪者になり下がったんかなと思って」
「地味に酷い事言うなって」
「まあええやん」
すると突然真鍋さんがアアアアアアア!と叫びながら(もし映画のパルプフィクションを知っている人ならあの映画のユマ・サーマンの起き方、もしくはキルビルボリューム1の時のユマ・サーマンの起き方みたいな感じ)起き、はあはあと方で息をしながら先ずは僕の顔を見、その次にきっしんの顔を見た。
「おじゃましてまーす」
きっしんが言い終わる前に真鍋さんはきっしんの顔めがけてパンチをした。
「けだもの!人間のくず!」真鍋さんは泣きながらきっしんを何回もパンチした。
きっしんは「えっちょっとっちょちょっとっっと」と口から血を流しながら目からは大粒の涙を流していた。
僕は止めようと間にはいると今度は僕が殴られる羽目になった。
真鍋さんは顔面ばかりねらってくる。
「けだもの!女の敵!」
大体何で真鍋さんが僕らを殴ってくるか分かった。
真鍋さんは寝ぼけているんだ。ただそんだけなのだ。
でも顔面を殴られて痛くないわけがない。
でもここはちょっと押さえる事にしよう。

真鍋さんが僕らを殴っている間にも世界は動いていた。
そんな風に書くと学者のようだが事実動いていたんだから仕方ない。

先程まで家の近くにいた巨大コロッケはゆっくりゆっくりとした動きで都市部までやって来てちょうどそこで止まっていた。
都市部に止まったコロッケの数は30を超えていた。
着実にその瞬間に向けて準備は進んでいた。

僕は殴られている間真鍋さんのブラウスをずっと見ていた。
花柄でとても可愛いブラウス。20代超えた男が言うのも何だが本当に可愛かった。
今何をしているのかというと、みんなでお酒を飲んでいるところである。
あれからどうなったのかというと、この騒ぎを聞いたジョンが真鍋さんの部屋に入って真鍋さんが僕らを殴っているのを止めたのである。
そして真鍋さんはやっとの事で正気に返り、僕もやっと殴られる事から解放されたのである。
まだ顔に何回も鞭を当てたように痛いがこれぐらいは我慢できる範囲である。
ジョンは「もー日本のコトワゼであるでしょうケンカイズリョーセーバイって」
僕は「ことわざやで」と言った。
ジョンは「WHAT!?コトワゼじゃなくてコトワザ?おーすいまそんねー」と言った。
真鍋さんは必死にきっしんに謝っている。
きっしんも根に持つタイプじゃないのですぐに許したようだった。
何はともあれ全て良い方向に進んだので良かった。
ジョンは「オーイェ!!今から飲み会しましょう」
僕も真鍋さんもきっしんもおーけーと言った。

僕らはテレビのニュースを見ながら今、飲み会をしている。
ジョンはずっときっしんに自分の話をし、真鍋さんはお酒を飲んだため僕にずっと絡んでいる。僕はジョンの持ってきた餃子を食べながら真鍋さんの絡みに付きあう事にした。
「あんな・・・。私な、ホンマに信用してな。」
「何?」
「ほんまな、一回も万引きとかした事ないで。」
「うん。」
「殺しも、放火も」
「うん」
「あと、地下鉄のホームでようやってるやんあのこうー何て言うやろあのあれあれあれあのようカップルとかがちちくりあってるとか、いちゃついてるとかホンマにやった事ないで」
「うん。」
僕はいつものように頷くだけだった。
僕はテレビを見た。
テレビではコロッケ達に向かって屋上から手を振っている人の映像が入った。
何十人という人が屋上でコロッケに向けて手を振っている。
レポーターも興奮して「そう!世紀の一瞬が今始まるところです!」と叫んでいた。
「あれなあ映画やったらみんな死ぬな」きっしんはそう呟いた。
僕もその意見に賛成である。
コロッケの一台がその人がいっぱい居るビルに向かってきた。
「この後コロッケからビームが出るんですよ。ビームがね。こうバウ!バウ!って」ジョンは興奮しているようだった。どうやらジョンはSF好きらしい。
「バウバウ!」ジョンはもう一度ビームが出る時の音声のモノマネをした。
その瞬間コロッケから青白い物が出てきて次の瞬間にはそのビルは音が割れるぐらいの爆音を発しながら爆発していった。
僕は一瞬チャンネルを変え映画でも見ているんじゃないかと思ってしまったが違うかった。テレビに映った事は本物だったのである。
次にはそのコロッケが地面に向けて青白い物を撃っている映像が流れた。
テレビの画面からは叫び声と爆発音とコロッケから発射されるビームの音しか聞こえなかった。
まるでそれは映画のようだった。


脱出 3

俺は日付を確認した。
日曜日。そして4月一日ではない。
俺は新聞を読む。
何処を読んでも嘘とは書いてない。
テレビを付けるとどのチャンネルでもそのニュースばかり放送している。
俺はいい加減退屈になった。
朝から同じニュースばかり。
NASAでも米軍でも良いからあのコロッケを打ち落とせばいいじゃないか。
俺はそう思い始めた。
すると電話がかかってきた。
相手は彼女だった。
彼女は言う。
「コロッケを見に行こう」
あんまり気乗りしなかったが俺は行くと言った。

俺はチャリに乗って彼女と待ち合わせをしている駅まで行こうとした。
しかし大勢の人で駅までの道はごった返していてなかなか前に進めなかった。
どうやら野次馬どもがいっぱい居るらしい。
俺はため息をつきながらゆっくりゆっくりと自転車を漕いだ。

駅までどんどん近づいて行くうちに拡声器を使った声が聞こえてきた。
「神が降りてきましたー」よくあるカルト教団がパフォーマンスをやっているようだった。
吐き気がする。俺はそう言うのが嫌いなんだ。
人は駅に向かうにつれてどんどん増えてゆき今では自転車を押していかないといけないくらいであった。
俺は腕時計に目をやる。
彼女の待ち合わせの時間まであと5分であった。
無理だ。
俺は一人呟く。
こんな人混みじゃ無理だ。
俺は空を見る。
とても青い空だった。
俺はふと思いついた。
ここの中をチャリのベルならしながら行ったらいいとちゃうのかと。
俺は考える。
しかしヤンキーに絡まれるのがオチである。
俺はもう一度ため息をついた。
「おい速く前行けよ。」
後ろからはヤンキーカップルが俺を急かす。
今の現状を見やがれバカヤロ。速くも何もねえだろうが。
ふぁっきん。ふぁっきんやんきー。
俺は心の中で中指を立てる。結局俺は弱い。心の中でしかこんな事を言えない。
結局、俺はこのゆっくりとした人の流れにはいる事にした。

彼女はそこにいた。彼女はいつものように制服を着ていて左手に鞄、右手にはゲームを持っていた。
彼女は俺の姿を見るとここと言わんばかりに手を振った。
しかしなかなか彼女の場所までたどり着く事ができなかった。
まだ人の流れが続いていたからだ。人の流れは駅の方へ向かっていた。
俺は強引にその波を割って彼女の方へ向かった。

彼女は俺に言う。
「後ろに乗せて」
そう言って彼女は勝手に俺の自転車の後ろに乗った。
俺は6秒人の流れを見、その次に彼女の顔を見た。
「何処へ行くん?」
「近づけるところまで」
「何処に?」
「街、コロッケを見にいこ」
「何で?」
「自転車」
俺は解答に困った。
ここから街までは自転車で30分弱かかるのだ。
「その間、ずっと後ろ乗ってるの?」
彼女は即答でうんと言った。
俺はため息をついた。
今日はただでさえ人が多いのに30分かけて街まで行くのだ、しかもその間ずっと彼女は後ろに乗っている。
「正直俺しんどいよ」
「うん」
「なあ俺の話聞いてる?」
「聞いてない」
彼女は天然でストレートだ。思った事はすぐに口に出す。そこが彼女の長所であり短所なのであった。
まあどうこうしてもラチがあかないのでとりあえず出発する事になった。

俺が必死に自転車を漕いでいる間、彼女はらーらららららと歌を歌い続けていた。
「らーららららら」
「その曲何?」
「知らない。ラジオで流れてた。たぶんアメリカの人だと思う」
そしてもう一度彼女は歌い始めた。
らーららららら

俺らは国道沿いをずっと自転車できていた。
俺は道路を見た。何十台もの車が渋滞を作っていた。
どうやらコロッケを見るためらしい。
俺はもう一度ため息をついた。
彼女は俺に言う。
「コロッケってうちゅうじんなんやろ」
「そうやな」
「じゃああれは?」
彼女は空を指さした。
ウスターソースの容器のような物が空を飛んでいた。
そしてそのスピードはとても速かった。
「あれは戦闘機かな」
彼女は少し楽しそうに言った。
「さあ」
俺は曖昧に答えた。
思えば、彼女の言っていた事は殆どあっていたのかもしれない。

どんだけ漕いでも漕いでも街は見えてこなかった。
汗が至るところから流れ出ている。
彼女はアジカンの「君という花」を何回も何回も歌っている。
「どぅっとわっふっふー、らいるららーい」
最後の奇声の所がお気に入りらしく大きな声で歌う。
俺は彼女の間延びした声が好きでその声を聞くだけで顔がほころんでしまう。
「なあ」
彼女が俺に話しかけてきた。
「何?」
「良い事教えてあげるわ」
俺はちょっと期待してしまった。下心でだ。
「何?」
「この前な―」
期待はずれ。
「マイケルジャクソン見たで。と言うかおった」
「何処に?」
「学校に」
俺は訳が分からなくなっていた。学校にマイケルジャクソン?クレイジーだ。
「それ夢とちゃう?」
「ちゃうちゃうほんまやって」
「マジで?」
「うんマジで」
否、ぜってえ嘘だ。
賭けてもいい。
「で何したん」
「歌歌った」
「シンギング?」
「イエス、アイドゥー」
「それそっくりさんやって」
「でもそっくりさんでも凄いやん」
「まあそれはなあ」
ちょうどその言葉を言い終わる前に信号が赤になり俺らは止まった。
歩道にはあんまり人がいなくて逆に車道は渋滞を起こしている。
車もいろいろあり、明らかに逃げようとしている車、中で大騒ぎしているのが分かるような感じに揺れている車、仕事の途中で渋滞に引っかかってクラクションを鳴らしている車。
人間模様だねえ。
「でもそれやっぱりおかしいで」
「そうかな」
「そうやで」
信号が青になった。
俺は勢いよくペダルを踏む。
きーこきーこと言いながら自転車は進んでいく。
「でもな、サプライズライブやから」
「サプライズライブ」
俺はもう一度そう言った。
すると彼女も面白がってまた「サプライズライブ」と言う、てか叫ぶ。
俺もまた叫ぶ。
とりあえずまだこの時は平和だった。

それから20分ほど自転車を漕いでいるとようやく街が見えてきた。
街にはかなりの人数の人々がコロッケ見ようと集まっていた。
俺らはまず時計を見て1時になっているのを確認し、まずは腹が減ったのでコンビニに行く事にした。俺はまずそこでミートスパゲッティを買い、彼女はサンドウィッチを買った。
そしてそれらを僕らはコンビニの前で食べる事にした。
コンビニの横にはでっけえ商店街がある。そこを抜けていくとJRの駅があり、そして高層ビルが建ち並ぶ場所へと行き着く。俺はそのルートを頭で想像しながらミートスパを食べる。
彼女はにこにこと幸せそうにサンドウィッチを食べている。
相変わらず人は多い。みんなコロッケを見に来ている。
俺は時計を見た。まだ1時半である。
空を見た。
コロッケは1機ぐらいしか見えなかった。
彼女は言う
「ちょっとだけ膝の上で寝させてな」
俺がまってと言う前に彼女は俺の膝の上に寝っ転がっていた。
彼女は早速寝てしまっていた。
空にはコロッケ、地上には大群衆。そして彼女は一人だけほのぼのと寝ている。
俺は彼女の背中を優しく叩きながら俺もいつしか眠りに落ちるのであった。


目を覚ますと6時であった。
今度は俺が彼女の膝の上にいた。
そして寝ている場所は先程のコンビニではなかった。しかしラブホって訳でもない。
ビルの屋上だ。
適当なビルの屋上で俺は寝ていた。
彼女は俺が起きているのを確認すると「おはよ」と言ってくれた。
俺は頭を頷かせる。
「大変やってんで。だってひろちゃん寝ぼけてるから」どうやら彼女は俺をここまで運んできてくれたらしい。俺はありがとうと一言言うと周りを見渡した。
俺の3メートルぐらい先には俺の自転車があった。
「ひろちゃん。こっからやったらコロッケも見えるとおもわへん?だって人おうへんし。」
彼女の言う事も一理ある。
俺は彼女に従ってここでコロッケを待つ事にした。

俺らはその間にまたコンビニで弁当を買った。
今度は牛丼を二つ買った。
そしてそれをビルの屋上に持って行ってまた彼女と一緒に食べた。
彼女はずっと幸せについて語っていて、俺はずっとそれを聞いていた。
もう少しでこんな話もできなくなる。

大体8時頃になっただろうか、突然風が吹いてきた。
俺はまさかと思い空を見た。
何十ものコロッケがこの街に向かってきている。
彼女は興奮して写ルンですのシャッターを何回も押す。
よくよく考えたら彼女はケータイを持っていないのだ。
下からフラッシュが何十も見える、みんなコロッケを撮ろうとしているのだ。
俺らも興奮して急いでビルを降り、下の道路でコロッケを見る事にした。
「わあすごいなあ」彼女もそう言った。
確かに凄かった。
なぜなら日常最も飛ばないであろう物が飛んでいるのである。
彼女はこちらを向いて口を動かした。
ざわついているので何を言っているか聞こえない。
彼女は何回も何回も口を動かした。
でも聞こえない。
彼女は突然俺の頭をつかみ俺の耳元を彼女の口元まで引き寄せると彼女は優しく「すごいな」と言った。
俺は頷いた。
しかしそれにしてもこの状況は何なのであろう。と老人口調になってしまった。
それほどこの状況は酷かった。
なにしろ1センチも動く事ができないからだ。学校で習った人口密度の計算をしたら今は100メートル当たり何人いる事になるのだろう。
なにしろ人の数がハンパじゃないからだ。
360度全て人がいる。人々はぎっしりと詰め込まれている。
なので俺は今、彼女の手をぎゅっと握っている。彼女と離ればなれになるのが嫌だからだ。
俺は強く彼女の手を握る。
彼女は顔をしかめた。そして俺の耳元で今度は怒った口調で「痛い」と言った。
俺は彼女の耳元で「ごめん」と言った。
そう言うと彼女は笑顔になった。俺は嬉しくなった。
彼女は俺の耳元で今度は「コロッケ何処いったんやろ」と言った。
俺は空を見た。
確かに先程まで何十とあったコロッケは今や一つ(一つでいいのだろうか?)しかいない。
「アイドントノー」俺は吐き捨てるように言った。
あんなにいたコロッケは今何処にいるのだろう。何処にいるのだろう。
ふと思った。
こういうの映画で見た。
この後、あのコロッケに攻撃されるんや。皆殺しや。
俺は頭の中で全てを否定する事にした。
映画の見過ぎだ。大体何処の映画にコロッケが襲いかかってくる映画がある?
みんなが死ぬ。そんな事は考えたくないのだ。
彼女が俺の顔を見る、そして心配そうな顔をして「大丈夫?」と聞いてきた。
俺は頷いた。
「大丈夫―」突然背後で空が光った。
そして良く映画で見るような感じの爆発音のような物が聞こえた。それと同時に地面が揺れた。
一瞬、全ての時間が止まったように先程までざわついていた声は全て止んだ。
しかしもう次の瞬間には何千、何万という人々が我先にと叫びながら爆音のした反対の方向へ逃げようとしていた。
俺は彼女の手を必死に掴みながら走った。
またもや爆音が聞こえた。そして次々と爆音は増えていった。
先程コロッケがバラバラに別れたのはこのためだったのだ。
全ては計画済みだったのだ。
俺は必死に走っている時にぐにゃっとした感触が足に伝わった。
それは人だった。
たぶん彼は転けてそして人々に踏まれたのであろう。たぶんもう生きてはいない。
そこら辺にそのような死体は転がっていった。そして彼らは次々に無数の足によって踏まれていった。
突然前方が光った。それはカメラのフラッシュを1000個ぐらい焚いたよりも明るんではないんじゃないかと思うぐらい明るかった。
光った瞬間人々の足が止まり反対方向に逃げようとした。
コロッケの先端から青白い物が出て地面に当たる。地面には何百もの人々がいたが次の瞬間には全て蒸発して見えなくなっていた。
地面が爆発していく。
人々はそれに巻き込まれる。
一旦人は爆風によりちょっと浮かぶ次の瞬間には炎によって人の姿は蒸発して見えなくなっている。
俺は必死に前方の爆風に逃れようと反対の方向へ逃げる。
もちろん彼女の手を必死に掴んで。
反対側を向いて分かった事はコロッケが至る所を破壊している事である。
遠くの方でビルがガラスをまき散らしながら崩れ落ちていく。
俺はずっと走っている。時折彼女の姿を見ながら。
彼女の顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。
今、走っているところはこの街の大通りである。左右にはいろんなビルが隙間無く建ち並んでいる。
何千といった人が走っている。
俺の前方100メートル前で俺の左側にある数件のビルが炎を上げて爆発しそのままビルの破片と炎が何百といった人々を包んだ。
人々は断末魔の叫びを上げるがあんまりにも高温なためすぐに蒸発してしまう。
俺はここで爆風で転けてしまった。彼女も一緒に転ける。
俺は立ち上がろうと顔を上げるが前方でまた強い光が発せられたためまた顔を引っ込めた。
鼓膜を破るような、物体の内側から割れるような音がした。
男のような叫び声がこちらに向かってくる。
叫び声の本人は空にいた。
数台の車と一緒に飛んでいた。
俺は至る所を見渡した。至る所で光りと破壊と火災が起こっていた。
ここから駅が見える。駅が3階建てだが、その3階建ての駅はいとも簡単に崩壊した。火のついた電車が駅から落ちて地面に叩きつけつけられる。
彼女が俺の服を掴む。
俺は彼女の手を強く握る。
俺は立ち上がって、急いで安全なところを探す事にした。
しかし安全な所など何処にもないのだ。
また後方で爆発音がする。
耳はもう慣れてしまっているようだった。
俺は彼女の手を引っ張りながら全速力で走った。
空で爆発音がした。
マスコミのヘリが攻撃されたのだ。
マスコミのヘリは機体を火だるまにして落ちていく。
適当なビルにヘリは当たった。
そしてそのままその直下にいる人々を押しつぶしていく。
ガソリンに引火したのだろうか、次の瞬間ヘリとそのビルは爆発していた。
俺らは走る。周りには何百と人がいる。
前方に橋がある。
そこに人々は密集していた。そこをコロッケは狙ってきた。
攻撃される前、人々は逃げようとするが、人々は攻撃に当たって蒸発し橋は落ちた。
俺はその橋の下で避難しようと思った。もうそんなところしか避難する場所がなかったのである。
その時、今までで一番大きな爆発音が聞こえた。
それは町の中心部からどんどんその周りにある物を跡形もなく破壊していった。
俺は急いで彼女の手を引っ張って橋の下へ行こうとした。
振り返ると炎は目の前に向かっている。
俺は傾斜を滑り降りていきその傾斜にピタッと寝っ転がった。
目の前で女性が同じ思いで降りてきている。
女性は後ろから炎に包み込まれる。
女性は体中に火がつきコマのように回って絶命した。
それと同時に炎が俺達の上を通過する。
その間もずっと彼女の手を握っていた。

一時間後。

目を開けると、そこには彼女が立っていた。
彼女は街を見ているようだった。
いや彼女どころか今ここにいる人、生き残った人々全てが見ているであろう。
街は跡形もなく消え去っていた。
そこに残るのは瓦礫と黒く焦げた死体だけであった。

2005/05/22(Sun)04:01:42 公開 / トロサーモン
■この作品の著作権はトロサーモンさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ひえー疲れた。
でもやっとここまで行きました。
一気に書き上げたから疲れたわ。

暑いです。

もう眠たいので何も言いませんが、とにかく読んでくれた方嬉しいです。
まだ全然終わっていませんが。

今日の一曲
ケミカルブラザーズ ザ・テスト

アジアン・カンフー・ジェネレーション
君という花

ドゥットワッフッフッフ!!


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