- 『I am SEAL’s soldier [〜■18]』 作者:貴志川 / アクション アクション
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全角29883.5文字
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■12
上空まで一気に昇ったヘリの上から、道路を封鎖し、波の様に地上戦の兵士達に押し寄せる民兵達を狙う。引き金を引いた。
空気をなぐシャフトのバラバラという重い音に、さらに機銃の重低音が響く。
両手にかかる激しい反動。標準がそれと同時に上下に乱れた。飛び出た弾丸は重力と共に下にいる民兵に着弾、ひどく紅い血を撒き散らしながらぐちゃぐちゃになる民兵達。その間に道路を封鎖されていた兵士達はそこを走り抜けることに成功した。
「ジェームズ! もっと角度をつけるんだ!」
カールは機銃の弾をとりかえながら叫ぶ。装填数二百発であるにもかかわらず弾はすぐに切れてしまう。重く、かさ張るこの銃の弾倉を持ってくるのにてこずり、僅かに四つしか手元にない。すでに三つ使い切ってしまったので残っているのは一つだ。
さらに真下には民兵達が上って来れそうな建物が密集している。そこからRPGで狙われたら一貫の終わりだ。
ヘリの周りに敵がいないかを必死に確認し、ジェームズは怒鳴り返す。
「わかってる! ちょっと待てッ」
操縦旱を傾けて、旋回するように機銃のある側の扉を地面ヘと向ける。
機銃の横で狙撃をしていたトムは、まるで足元から浮いて、地上の建物を見下ろしているかのような光景に、少し足がすくんだ。
「トムが建物から来る奴らを狙撃して、カールが地上部隊の援護だ!」
二人は頷き、すぐに銃撃に移った。
トムはスコープから覗いて狙いをつける。先程の道路の少し横、RPGを撃ち出すことが可能な場所を……道路を挟む建物の屋上を狙った。
しかしこれは援護になっているのか。何人やつらを倒しても敵は数を減らす気はないらしい。まるで昔見たお姫様を奪うために現れるゾンビーどものようだ……いや、ゾンビーならまだいい。奴らは言葉も、知識も持たない。ただの生ける屍だ。その点民兵どもは人だ。
人が、あれだけ殺戮を楽しめるのだ。
恐怖が腹の中に沸き起こり、頭の芯まで駆け上がってくる。
「リロードッ」
振り返って叫び、撃ち切った弾倉を、交換しようとベストに手をかけかけ、止まる。
スコープにRPGをもった民兵達が映っていた。
「RPGッ! 下、八時の方向だッ」
ジェームズはハッとして下を見る。しかしそこは死角だった。どこだかわからない。
「角度をつけるぞ! 狙えッ」
ブゥゥゥゥゥンというシャフトの音、最も早く旋回して角度をつけることが出来るよう動く。……しかしあまりに上空に上がりすぎて旋回が意味を成さない。
「急げ! 撃たれるぞ」
なんとか狙いをつけて撃つが、旋回するヘリの動きのせいでぶれる。さらに
「クソッ! ――ッ! フィックスジャムッ」
弾詰まりによって銃が役に立たなくなった。
その声にカールがトムを見て、動揺して一瞬動きを止めた。そしてその目に民兵達がRPGを打ち出す映像が映る。
バシュッと白い煙が上がった。
「つかまってろッ!」
びゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅと冗談のような音を立てて迫りくるロケット弾を視界の端にやっと捉えることが出来たジャームズは、すぐさま衝撃緩和装置を解除し、操縦桿を左へとむちゃくちゃにきった。
「くるぞ!」
激しい旋回から来る重圧で、トムとカールが機体の壁に体を打ち付けられると共に機体が一気に左へと旋回し、まるで機体頭頂部を中心にコンパスを回すかのようにぐるりと回って、後ろのプロペラが寸前のところでロケット弾を回避した。
「あッ……クソッ! 反撃するぞ! そのままの態勢を維持してくれ!」
トムが何とか体を立て直して、ドアから体を乗り出した。スコープを覗く。
民兵はRPGをいくつも持っているらしく、次のRPGを準備し始めていた。そこを狙う。
引き金を引いた。
肩に来る衝撃から耐えて、さらにスコープを構える。RPGを構えていた男は首から血を豪快に噴出して、周りの仲間にぶちまけていた。
そのおかげで彼らの動きはほとんど止まっていた。
さらに引き金を引く、引く、引く。
次々と敵は体を痙攣させて倒れていった。
スコープを覗くと、もう敵は一人もいなかった。振り返ってクリアを告げる。
「……OKッ! クリアだ」
カールが息を切らしながら銃座に着く。ずれたヘルメットをかぶりなおしてあふれ出た汗を腕で拭い取った。
「……助かったぜ」
ジェームズはそれに同じように息を切らしながらうなずいて返して、疲れたように深くシートに座り込んだ。まったく、神の冗談もすぎるものがある。
汗をたらしながら周りを警戒する。一応は敵がいないことを確認すると、少しだけため息をついた。
と、無線がノイズを告げた。
『キロ23、スーパー64。民兵に囲まれて退却できない部隊がある。援護に向かってくれ』
……いや、やはり神など存在しないのかもしれない。いるのはただ、生死を楽しむ死神だけなのだろう。
ジェームズは頭を抱えて無線をとった。
『……OK、C2。民兵の数はどれくらいだ。RPGの有無も頼む』
『民兵の数は……こちらが確認したので百人ほど。RPGも複数所持している模様』
ジェームズは後ろを振り返った。
トムは何も言わずにこちらを見ていただけだが、カールは首を振った。
「弾がないんだ……もう無理だ」
『……C2。銃手が弾がないと言っている。残念だがこちらは撤退要請だ』
『スーパー64。それは他の部隊も同じだ。四名が取り残されている。救出してもらいたい』
カールはイライラして怒鳴った。
「C2は頭がおかしい奴らばかりだ。言葉が通じない、こっちは一掃射できるかできないかだぞ」
トムから正面に顔を戻して無線と向き合う。
『……C2、できて一掃射だ。俺達には無理だ』
『スーパー64、なんだかんだと理由づけするのは全く構わないが』
一つ息を吸う音。
『襲われているのは君達と同じSEALだという事を忘れないでくれ』
「…………」
がんッと内壁を殴りつける音が機体の中に響いた。カールだった。トムがそれを見て頭を振る。……ジェームズも頭を振りたい気分だった。
それならばお前が行けとは言えない。事実、指揮ヘリが墜落なんかしたら誰が仲間を救うよう指揮を出すのか。
そして仲間を見捨てるわけには行かない。SEALは戦場に仲間を残すわけにはいかない。
「(……死んでも、か)」
『スーパー64、一掃射だけでも頼む。敵に囲まれているんだ』
「狙撃なら弾が少しある。マガジン五つ持って来ているから、百五十発」
トムはマガジンを手に持って呟いていた。
助けるしかない。見捨てる、という選択肢は最初からなかったんだ、とトムは無理矢理頭に突っ込んだ。どちらにせよ、辛いのは地上部隊だという事はヘリ部隊の誰もが感じていることだ。
『……C2、命令に従う。位置を指示してくれ』
それはジェームズも同じだった。
また、銃弾が耳元を通り過ぎた。なんとか体を出っ張りに隠す。流れる汗が体を伝い、顔を伝い、アゴからすべり落ちて地面にしみを作った。
それを見ながら、息を切らす。
「マク! ヘリ要請はしたのかッ!?」
ジョンの叫びに近い声に通信兵のマクは同じく体を隠しながら叫び返した。
「したよッ! C2の連中はすぐに向かわせるといっていたが」
バジャアアッ
音と共に彼の隠れていた壁が吹き飛んだ。叫び声と共にマクが吹き飛ぶ。
「マクッ!」
すぐに体を低くして近寄る。倒れたマクの襟元を掴んで引きずり、必死になって屋上の階段付近まで隠れる。
「マクッ! 大丈夫か!? マクッ」
彼の体にかかった土砂をなんとか払いのけると、マクは自分から体を起こした。ヘルメットにかぶった土をヘルメットごと弾き飛ばすと忌々しげに叫んだ。
「くそったれがッ! 耳がちぎれちまうッ!」
それに安心しながらも、怒鳴る。
「聞こえるかッ!? C2はなんて言ってきたッ」
「すぐに向かわせるが地上部隊はどこも同じ状況だ、持ちこたえろだとよッ!」
ジョンは絶望に頭を振り、目をぶれさせた。「あー……クソ」と地面を殴りつける。どうにもこうにもこのままではやられるのは時間の問題だ。ここに残ったのは僅かに四名。三人も死んだ。そして周りには
「…………」
外を覗き込むと、今だ数百人の敵が残っている。そして手元にあるマガジンは……三十発装填で二つ。全部打ち込んでもこの状況を打破することは出来ないだろう。
ジョンは東と西で防戦をしている仲間を見た。
「OK、ブライアン! ケントッ!」
黒い肌といかつい顔のケントと爬虫類的な顔をしているブライアンがこちらに振り返った。手で、こっちへ来いと振ると敵へむちゃくちゃに銃を乱射しながら、頭を下げてこちらへと走ってきた。
突っ込むようにジョンの横に来ると、ケントが野太い声で怒鳴った。
「ここはもう無理だッ! 退却しよう!」
ブライアンも顔をぶんぶんと縦に振った。
「俺も同意見ッ! とてもじゃないが防戦できそうにねえッ! 機銃のほうも」
ガンガンと手に持った機銃を叩きまくる。
「だいぶイカれてきたッ! 弾切れもしそうだッ」
ジョンは先程マクがRPGを撃ちこまれて吹っ飛ばされた、壊れた壁にグレネードを放り込んだ。バガッという激しい音共に、腹に来る衝撃が来た。下を見ると、敵が内臓をぶちまけながら血だまりを作っていた。そこから人が離れていく。
それを確認するとジョンは向かいの通りにある建物に目を凝らした。手で合図して、仲間達を引き寄せる。
「しばらくはここには弾は来ないはずだ……どうする? ここから飛び降りて走り、向かいの建物に隠れる。そこで一方向に防衛線をはって、耐えるんだ」
マクはしゃがんだ足を組みなおし、ジョンを見た。
「……俺はどっちでもいい。とにかくここを抜け出したい」
しかしケントが彼の肩を激しく叩き、顔を振った。苦々しくつぶやく。
「無茶言うな。ここから飛び降りるだと? 飛び降りれるかどうかもわからないのに、さらに民兵どもの間を通って突っ込むってのか?」
「まったくだ」
ブライアンが「同意」と首を縦に振った。そして
「それにあいつらはどうするんだよ」
死体となった三人を見る。一人は足しかなく、一人は肺に穴が開いている。そしてもう一人は防衛線を張っている途中に眉間を貫かれていた。
「……あとで回収部隊がくる」
ブライアンはうなずいて、親指を死んだ彼らに向けた。
「そのときになったら奴らは包帯でぐるぐる巻きになって、市中引きずりまわされてるぜ」
「じゃあどうするんだッ!」
「切れるんじゃねえよッ! 俺にわかるわけねえだろッ!」
肩を寄せ合い、叫びあい、どうにも喧嘩となりそうだった。
わかっている。そんなこと。でも生き残るにはそれしかない。ここでヘリも来ない、仲間も来ないの状況。こんなの、このままで生き残れるはずがない。
そしてフラッシュバックするマーチンの死に様。
『…ジョ、ジョン……エイバーを……メディックを……』
『グわぁぁぁぁぁぁぁ…………』
――あんな風になるのは嫌だッ!
「おいッ! 聞いているのか!」
マクの声にハッとして我に返る。今まで何をしていたのかと考え、一度頭を振った。
「アレを見ろッ」
マクの指先にを見ると、そこには待ちわびていたものがあった。
「……やっ……た」
そこにはバラバラという重低音と共に真っ黒な、見慣れたそれがあった。
ブラックホーク。
見上げたヘリからは機銃が連続して発射されていて、守りきれなくなった南ブロックへと注がれていた。
『キロ24、スーパー64だ。救出に来た』
『助かったッ! 頼むから早く降下してきてくれッ 状況がかなり厳しいんだッ』
『すまない、すぐには着陸できない。敵があまりにも多すぎる。周辺をクリアしてからでないと……』
『……なんだって?』
マクが苦々しい顔で舌打ちをした。
「……どっちにしろかわらねえじゃねえか」
それを見て、ジョンはため息をつきそうになりながら無線に口を近づけた。
『スーパー64、とてもじゃないが安全の確保など――』
バガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ
いきなりの銃撃音。ジョンの頭のちょうど上に当たるところに着弾して甲高い着弾音を立てる。
「うわあッ!」
「テクニカルッ!」
見ると、機銃を設置したジープが先程の穴へ向かって、下から撃ち込んでいた。さらに撃ってくる。
ジョンはビクリと体をはねさせて、必死になってはいつくばる。その彼の近くにも弾が着弾して、彼の耳元へ裂いた空気音を投げ込んでくる。
「うわあああああッ」
「撃てッ! 援護だッ!」
マク達が必死になって引き金を引く。連続した銃撃音が響いて、さらに耳元へ空気を裂く音が響いた。
『援護だジェームズ! テクニカルッ六時の方向!』
無線から漏れる音を聞くと同時にぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅという音が上空から響いた。直後にテクニカルに閃光が走る。銃手が叫び声をあげて吹き飛んだ。ヘリの機銃に撃たれたのだ。
ジョンはテクニカルが逃げていくのを確認すると、なんとか立ち上がった。無線を入れる。
『……助かったスーパー64。そちらの要請にしたがって周辺の安全を確保する』
『そうしてくれると助かる』
マク達が何か言いたそうだったが、それを手で制した。
どちらにせよ、ヘリが来なければ自分たちは助かることが出来ないのだ。文句を言うより先に周辺をクリアしたほうが早い。最悪、多少の危険を冒してでも着陸はしてくれるはずだ。
しゃがんで、周りの建物を確認しながら無線を入れる。
『OK、スーパー64、そちらは西側を――』
その目に何かが映った。赤くて、なにか、長い…………?
それが何かわかったとき、彼の目は恐怖にぶれた。
『――ッ! スーパー64! RPGだ!』
『何ッ!?』
叫んだときには、白い煙を上げたロケット弾が飛び出していた。
■13
「援護だジェームズッ! テクニカルッ! 六時の方向ッ」
カールが身を乗り出して下を見下ろしていた。確認する暇はない。すぐさま操縦桿を動かして機体をいわれた方向に傾ける。
重い重低音。カールが撃ち込めるだけの銃弾を、緑色のジープの上で機銃を乱射していた男にぶち込んだ。弾が彼の肉を引き裂き、目玉が飛び出るのが見えた。
撃ち終わると、カールは息を切らしてジェームズを見た。
「今ので最後だ」
ジェームズは、その彼に何をいうことも出来ずに、ただ黙って顔をこわばらせた。
そこに無線のノイズが来た。引き抜いて、なぜかカールから目を放さずに耳に押し当てる。
『……助かったスーパー64。そちらの要請にしたがって周辺の安全を確保する』
『そうしてもらえると助かる』
『OK、スーパー64それじゃあ西を……』
下を見ると、ジョンが辺りを見回しながら状況を確認していた。
「ジェームズ、そろそろ狙撃の方も弾が無くなって来た」
トムが機内を移動して、操縦席にまで来た。ジェームズも既に限界を感じていた頃で、 そろそろだろう、と操縦旱を握った。
と、その時だった。
無線ノイズが走る。
『スーパー64ッ! RPGだ!』
「何!?」
しかし確認しているような暇は無い。発射音が聞こえた。
トムが先程狙撃していた場所だろうと見当をつけて体ごと左上へと操縦旱を押し込む。
「うおッ!」
トムがバランスを崩したのが後ろから感じられたが、それどころじゃない。さらに押し込む。機体は左下へと体を倒しこむ。
きゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ
直後に白煙をあげて機体の横をロケット弾が通り過ぎていった。
「(よしッ)」
しかし安心などしている暇など、死神は与えてはくれなかった
「トムッ!」
『何!?』
叫び声にカールはジェームズを見た。振り返ったときには、かなり焦った様子で、いきなり操縦旱を切っていた。
バタバタという重低音が違う音に変わるとき、直後に今までドアであった所が回転して地面になり、カールはバランスを崩して激しく体を打ち付けた。九十度左へ回転したのだ。
必死になってドアの端を掴む。しかしスライド式のドアは不安定に動き、うまく体をささえきれない。
眼下に広がる光景。薄茶色の地面が広がり、今だ百人はいようかという民兵達が、十メートルはゆうに越える地面から雄叫びをあげてAKを乱射してくる。甲高い着弾音に頭を低くするも、落下の恐怖の方が勝り体が動かない。
「うおッ!」
そこに何かが滑る音がした。
そうだ。忘れていた。この機内で立ち上がっていて、もっともバランスを崩しやすい男がいたことを。
横を見る。倒れ込み、機内を滑ってドアへと近付くトムが見えた。このままだと、確実に落ちる。
腕を延ばす。今なら間に合う……!
しかし機体はさらに角度をつけて回転する。
「トムッ!」
加速がかかるトムの体。
そして彼はカールの手から僅かに離れて、ドアから落下した。
腕を必死に延ばして機体を掴もうとするトム。その顔は、驚愕と恐怖に
ドガッ
「………マイ…ゴット」
機体はなんとかバランスを立て直した。
後に残っていたのは、静かに聞こえるヘリの回転音と
――ドガッ
「トムが……」
救出するメンバーのいる屋上へと落下するトムの姿。
ジェームズが振り返る。
「もうダメだッ! 上がるぞ」
そしてカールを見て、動きを止める。機内を見回し、つぶやいた。
「…………トムはどうした」
最悪の状況だった
「何やってんだアイツ等は……!!」
ジョンはヘリから人が落ちるのを呆然としながら呟いていた。
そしてすぐにそれどころではないことをに気付いて頭を下げながら落ちた男の所まで走り出す。
「マクッ! 手伝えッ!……持ち上げるぞ、一、二、三!」
二人がかりで抱え上げて走り、また階段の近くの出っ張りへ身を隠した。
顔を見ると、意識がないらしく目は見開かれたまま、口の端から血を垂れ流していた。
外傷が無いかどうか服を脱がせる。その間にヘリを見ると、混乱しているのかまだ同じ所に停滞していた。
舌打ちをし、一瞬自分の銃を握る。だが目の前にいる二人が無茶苦茶に下へと撃つのを目に入れると
「ブライアン! ケントッ! ヘリを狙った奴らを撃て!」
自分の銃をブライアンに渡した。ブライアンは反射的に受け取った。
「マガジンを取って持っていけ」
二人は頷き、頭を引っ込めた。伏せて体を隠しながら、隣のこちらより少し高い建物の屋上で、RPGをもう一本取り出している民兵に銃を構える。
ブライアンは適当に引き金を引く。弾は無駄にはしたくないが、狙っている間にRPGが撃たれる可能性の方が恐かった。
民兵達は近くを通り過ぎる銃弾におののき、体を低くしながら角度的にこちらから撃ち込むことができない所まで引っ込んだ。
「ケント、グレネード」
ブライアンが撃ちまくりながら呟くと、ケントは舌打ちしながら擲弾発射器の照準を起てた。
「最後の一発なんだがな」
言うと同時に引き金を引き、ビーンという間抜けな音をたてて飛び出したグレネード弾の行方を目で追う。綺麗な曲線を描いて、民兵達の引っ込んだ場所へと飛び込んでいった。
バガッと黒い煙か上がると共に手足が空に舞い上がるのを見て、二人は体を引っ込めた。
「あと一個」
ブライアンはマガジンを交換して、つぶやいた。この状況では仕方ないが、少々無駄に使ってきたことを後悔し、ジョンにどうやってマガジンを渡そうか悩んだ。
どっちにしろ、この状況ではあと一回戦闘に巻き込まれたら終わりだろう。……すでに巻き込まれているといえば巻き込まれているのだが。
『すまないキロ24ッ! 容態を知りたいッ!』
無線から響く声に、ジョンは何とかこたえる。
『俺は軍医でもなんでもないからな、詳しいことはわからないが……胸骨が骨折、肩の骨もイカれてる。それに背中の骨も折れているかもしれない。そうなると脊髄が……最悪なのは意識がなくて吐血してることだ。おそらく内臓系統がどこかやられてるんだ。俺が見た限りじゃすぐにでも運ばないとここで死ぬことになるぞ』
「ジョーダンじゃない、トムをこのまま死なせれるかよ」
カールに伝えるとやはり思ったとおりの答えが帰ってきた。……目の前で落下した仲間に多少混乱状態らしい。少し呆然としている。正直彼がこの状況を正確に把握しているとは思えないが、思っていることはジェームズ自身も変わらなかった。
それに相変わらず止まっている状況ではなかった。数は多少は減ったが、それでもかなりの数の民兵達が残り、こちらにAKを撃ち込んでくる。一発で墜落するということはないが、それでも要所要所に当たると墜落の危険性がある。すでにローターの部分からは僅かだが煙が上がっていた。
そして最悪の状況の弾。機銃は使えず、スナイパーであるトムも負傷した。ここにあるのは墜落時に使用する小型マシンガンと、カールが持っている拳銃しかない。
この状況で、死神はどうするのとか彼にささやくのだ。
どれほどまで死神は残酷になればいいのだろう。
『……キロ24、強行着陸を開始する。周辺に極力警戒線を張ってくれ』
額には、確実に暑さから来るだけではない、汗が浮かんでいた。
それを拭い取ると、ジェームズは操縦桿を押し込んだ。
■14
C2からの眺めは最悪だった。
作戦指揮ヘリ……正確には作戦本部と連携して、現場指揮をとるヘリに乗り込むクリス大尉は、作戦の状況に強く爪を噛んだ。
「(なんだこの状況は……!!)」
部隊はバラバラ、作戦なんてどこへやら、ヘリはまともに援護もできていない。
『C2ッ! なんとかしてくれッ! まともな状況じゃ……』
『キロ部隊が取り残されている、援護をしたいが弾が……』
『エンジンから煙が上がっている、テールローターもおかしくなって……』
『重傷だッ! 下腹部を撃たれてるッ、このままじゃ動脈が……』
次々と報告される無線の声、それら全てがこちらに不利な状況だった。
ため息なんてつきたくてもそれどころじゃない。なるべく冷静に、後気を強くしないよう全てに答える。必死に頭を回転させる
『C2、作戦本部だ。状況を知りたい』
作戦本部からだ。先程から何度かこうやって状況報告を要請する通信が入ってきている。もしかしたら、作戦本部も状況をうまく認識できていないのかもしれない。
『第一部隊が第二部隊の援護がなくて敵に囲まれています。それにヘリ部隊が墜落はしてませんが……損傷が激しい状況です。』
『負傷者はどうだ』
『キロ部隊から続発しています。ほとんどが重傷です。とりあえず応急手当を行わせていますが、出血や骨折が酷い状況で……それに、退却をさせたくても民兵が多すぎてヘリを着陸できない状況です』
『わかったC2。ありがとう』
無線を切って振り返ると、大尉がコーヒーを片手にたっていた。
「どうですか?」
「……いや。遠慮しておくよ」
少将は軽く手を振ってそれを断った。そしてまた衛星からの映像に目をこらす。
薄ぐらい部屋には青白い映像がぼんやりと映え、C2から聞いている要所要所を映し出している。地上をちょうど真上から見た映像で、四角い屋根と道路が明確に写っていた。
「映像がバラバラだな……どこがどこだか判別できない」
ヘリで掃射する映像、地上部隊が防衛線をはる映像、兵士達が退避する映像、各々が各々の場所で戦っていた。だが、彼等に画一した動きはない。場所が全く違うのだ。もともとの配置場所が無茶苦茶であるから、それもしょうがないのだが。
「地図で再確認しますか?」
そう言いながら大尉は白地図をとりだした。本部の、それ程大きくないデスクにそれを広げると、大尉はペンを持った。
地図の中心からやや右上よりにある建物に丸をうつ。
「まず最初の作戦では第一部隊がここ…目標の建物に突入し、第二部隊は……この主道」
丸をうった場所から左へペンを移し、建物の前の道と交錯する、下から上へはしる大きな道路を囲んだ。
「ここをクリアして、その後に第三部隊が突入、目標の建物へ向かうはずだったんですが」
矢印を主道を下から上へ、交錯する場所で右へ曲がって目標の建物へ。
そして主道全体にバツを打つ。
「ここで第二部隊は足止めを食らいます。民兵が報告よりもかなりの数集まっていましたので。理由についてはわかりませんが、おそらくカフジ攻略作戦の流れの民兵達がこちらに来たのではないかと」
少将はうなずいた。それは自分も予想していたことだ。この作戦は大規模作戦であるカフジ攻略作戦を隠れ蓑にした小規模作戦。だが、それが逆に不利に働いたのではないかと。つまりカフジで敗退してきた民兵達が『せめてここだけでも』という気持ちでここに攻め込んできた……無い話ではないだろう。
「作戦を強行することにしたわれわれの指示に従って、第二部隊は当初の『直上降下作戦』から『包囲作戦』へ変更し、主道を取り囲むように配置しましたが」
大尉は先程バツをつけた通りの周りに小さな点を左右に三つずつ打った。
少将が確認すると、大尉はそれらにバツを打った。
「しかし数の問題から防衛は失敗。通りには敵が数百人いる中に第三部隊が突っ込んできました。最悪第一部隊が拘束に失敗した場合、第三部隊が拘束を行う予定でしたため、機密性を重視して彼らの無線は切っていました。……それが仇となったわけです」
大尉は今度は青いペンを持って、通りに一本の線を引いた。その上にもバツをつける。
「第三部隊は全部で八チームいましたが、猛攻にあって数が減っている、という報告もあります。それが何を指しているのかわかりませんが、おそらくはRPGで……」
「…………」
「そして第一部隊は目標を見つけることが出来ず、現在目標の建物で籠城戦を行っていますが、状況は悪くなる一方です」
少将は説明を聞き終わると、しばらく黙り込む。
状況はわかった。しかし兵士の状況はどうなのかわからない。せめて負傷者と死傷者の数を把握できなければ。少将はチラリと大尉を見て、口を開いた。
「負傷者は?」
目を合わせた大尉は、手に持っていたコーヒーを机の上に置き、ひどく無機質な目で少将を見た。
「……おそらく、あそこにいる誰もが負傷者です」
「…………」
そうか。たしかに報告を聞くかぎり確かにそうとしか受け取りようが無いのは確かだ。二人の間に奇妙な沈黙が流れた。
『C2から本部へ。定時連絡。スーパー64がキロ24を救出に向かうため強行着陸を行っています。援護を送ります。どこのヘリ部隊が手が空いていますか?オーバー』
しかし沈黙は長くはつづかなった。無線からの声が彼らの、作戦本部での戦場の空気を打ち壊した。
大尉は地図から離れると、無線を手に取った。
「C2、こちらの衛星からの映像を見る限り手の空いている部隊はない。すべての部隊が応援を要請している状況だ」
『強行着陸を行っている場所は民兵が集中しています。この状況で援護もなしで強行着陸を行うのは危険すぎます』
大尉は衛星からの映像をスーパー64へあわした。第二部隊であろうか、目標の建物に近い場所で取り残された兵士達を救助しようとしているらしい。だが、銃弾も尽きたのだろうか、ヘリからは機銃を行うことはせず、拳銃なんてもので周囲を確保しようとしている。
大尉は無線を再び口に近づけた。
「こちらでも把握している。この状況では……」
無線に集中しようとした大尉は、え、と再度映像を見た。いや、スーパー64の映像ではなく、その上のディスプレイに写りだしている目標の建物の映像。
……これは、まさか……
よく目を凝らす。そこに写るのは、第一部隊が籠城している建物の前にある道路をはさんだ、向かい側にある建物。その後ろのドアから、何人もの褐色の肌を持つ男が抜け出してきている。その数は
「少将いました! 戦犯達です! 24名全員そろっています!」
少将は地図から目を離し、大尉を見た。そして彼の指差す映像を見る。そしてすぐさま先程の地図に指を這わせて位置を確認した。いける。あの場所なら。
「……大尉、作戦変更だ。撤退から確保へ命令を戻すぞ。第三部隊を確保に向かわせるんだ」
少将はうなずき、無線を手に取った。
「C2、作戦を変更する。第三部隊に今から指示する場所へ向かわせろ。目標の建物から一ブロック北の建物の裏、そこに戦犯者たちを発見した」
『……作戦本部、スーパー64はどうするんですか』
「どこの部隊も不利な状況に変わりは無い。持ちこたえさせるんだ。それしか方法がない」
『…………』
C2の眺めは最悪だった。
だから、ヘリの中で彼は苛立ちを吐き出した。
なんなんだ。わかってはいるが、この状況。ひどすぎる。まだ作戦を展開できると思っているのだろうか。現場から見ればわかる。こんな状況、普通じゃない。道路には死体の山が築かれて、それでもまだ民兵達は向かってきている。
「……くそったれが」
でもこいつは任務なんだ。
『命令には逆らうな』
海兵隊の教えだ。命令は絶対だ。兵士達には、それを信じるしか道はない。聞き分けの無い兵士など、戦場では不必要なものだ。
そうだ。命令は守るしかないんだ。彼はぐっと奥歯をかみ締めた。手に持った無線を、口に近づける。なぜかはわからないが、額の汗が今頃になって気になった。きっと量が増えたのだろう、と彼は無意識のうちに理解していたが。
『作戦本部から緊急通達。第三部隊は戦犯者の確保を優先。こちらの指示通りに移動を開始してくれ。繰り返す、命令を変更する。第三部隊は、確保を優先しろ……』
『……なお、スーパー64は独自の行動で状況を打破せよ……』
■15
『C2より先頭を行く三台のハンビー、後ろのLAV戦闘車が遅れている。スピードを落とすんだ。スピードを落とせ』
ハンビーがバリバリと音を立てながら、列を連ねて進んでいく。その中で、ウィルソンはアクセルを全開にしたまま無線を引き抜いた。
『上から見てわからねえのか!? スピードなんか落としている場合じゃないんだよッ! ……うおッ!?』
ウィルソンは無線を握ったまま、飛んできた弾丸から頭を下げた。
『援護のヘリをよこしてくれッ! 数が減ってるぞ!』
『すまないがそれは部隊長とする話し合いだ』
『だったら早く話し合えッ!』
ハンビーは全部で六台いた。そして後ろを行くLAV戦闘車は、真ん中と最後尾に一台づつ二台。そしてそれを取り囲むように建物があり、その上には民兵の海が展開されていた。
民兵達は口々に何かを叫びながら下へと……つまり主道を全速で走るハンビー達へと撃ちまくっている。ハンビーも上部にある機銃と、窓から突き出した銃で応戦するが、とてもじゃないが反撃しきれていなかった。
さらに上から見ると、一列に並んだハンビーたちは真ん中からぶつりと千切れるように離れてしまっていた。真ん中にあるLAV戦闘車が先頭三台のハンビーに追いつけていないのだ。さらに最後尾のLAV戦闘車もついて来れていない。
先頭から二台目を走るハンビーの中、ガキンッとフィリップの足元から激しい音がした。一瞬体をビクリとさせて、下を見る。そこにはなぜか、穴の開いたアルミのドアと銃弾のめり込んだ床。それが何なのかしばらく硬直して、理解した瞬間には叫んでいた。
「――うわッ!? 貫通してきたぞ!?」
「ああ! コイツの装甲は大したモンだ!」
後ろを振り返りながら叫ぶと、チャーチルがリロードをしながら叫び返してきた。
「なんたって長いこと撃たれてると貫通するからな! あんまり頼りすぎるなよ!」
「……なんだって!?」
頭を下げながらチャーチルを見ると、また後ろから貫通した弾が飛んだきた。耳元を甲高い音が通り過ぎる。
「うわッ」
「フィリップッ! 大丈夫かッ!?」
エバンスが機銃を上へと向かって乱射しながらフィリップへと怒鳴った。エバンスはほとんどけん制に弾を使っていた。いや、むしろ狙っている暇が無いのだ。弾は確実に上にのっているエバンスに向かって飛んできている。けん制をしなければ間に合わない。
フィリップは銃を肩に担いでエバンスに叫んだ。
「大丈夫です! 軍曹こそ……変わります!」
そんな彼にエバンスは片手を一回だけ振って怒鳴り返す。
「バカ野朗! そんな暇ねえんだよ!」
エバンスはバズズズズズズッと二百発ある弾をものの二、三分使わずに撃ちまくっていく。弾切れは近かった。リロードに時間をかけている暇はない。敵の数は最初より増えていた。
「ウィルソン! どうするんだ! 弾が無くなってきてる!」
「でかい交差点がみつからねえんだ! ……クソッ」
ウィルソンは先程まで左右に車体をずらして弾から逃げようとしていたが、隊が激しく乱れるのを見かねたC2からの連絡でそれも止めている。代わりにとにかくスピードを上げて逃げようとしていたが、どうにもそれもうまく行きそうにない。
「クソッタレッ! まだかよ交差――」
叫ぼうとしたエバンスのその目に、左側の通路から現れた、何かがちらついた。緑色で、……ジープ? ……いや! 違う、アレは
「エバンス! 正面にテクニカルだッ」
正面にはおそらくロケット弾の発射台を取り付けたと思われるテクニカルが、数人の民兵達を引き連れて現れていた。先頭の車両から、三百メートルも無い。
先頭のハンビーはその存在に気づいて、機銃を向けて撃つ。しかし直後に上方からの銃撃に銃手が撃たれた。
『ジョセフ二等兵がやられた! 援護をしてくれ!』
「――クソがッ! フィリップッ チャーチルッ! 援護だ!」
エバンスの機銃がテクニカルに向けられる。直後に激しい銃撃音が響いて、轟音がチャーチルの耳の鼓膜を破るかのごとく揺さぶる。しかしそれには頓着することなく、すぐにエバンスを狙う敵に向けて引き金を引き続ける。
「アァァァァァァッ」
「ウハッァァッ」
「オグッ!」
何人もの人間が彼に撃たれて落ちていくが、それでもカバーしきれない。
「フィリップッ! お前も手伝え!」
反対側を撃っていたフィリップは、その声に振り返って狭い社内をチャーチルのカバーに回る。チャーチルが場所を空けて少しあいた空間に入れると、すぐさま上に向かって撃ち始めた。……少しは成長した。とチャーチルは嬉しく思ったが、それどころじゃない。自分もすぐに狙いをつける。
一方ウィルソンは一瞬の余裕すらない。目に入るのはテクニカル。そしてその横からカバーするように回り込んでくる民兵を見つけて、頭を下げた。
「撃ってくるぞ!」
その声にハッとして、後部座席のチャーチルとフィリップは頭を下げる。すぐにその耳元を弾が駆け抜けていき、さらに何発かがフィリップの真横に飛んできて座席のシートカバーを吹き飛ばす。
「うわぁぁぁぁッ」
「叫んでる場合じゃないッ!」
チャーチルはフィリップの頭をぶん殴って銃を前に向けた。耳元を通り過ぎる銃弾を無視して、照準を覗く。狙いをつけて、テクニカルの横で銃を乱射している男に向かって引き金を引いた。
「うおッ!?」
「アアァァァァァァァァァァァッ」
弾はウィルソンの頭の横を通り過ぎて窓を貫通し、正確に男へと飛び込んでいった。男は胸に銃弾を受けて吹き飛ぶように仰向けになった。
「よし」
「よしじゃねえバカ野朗!殺す気かよ」
ウィルソンの文句にチャーチルは少し口元を緩めた。そしてもう一度テクニカルに向かい照準を絞る。
テクニカルでロケット弾を用意していた男は、エバンスの銃撃で手間取っていた。弾は 当たってはいないが、耳元を通り過ぎる銃弾は無視できまい。
この勢いなら、やれる。
「俺がやる……」
右肩に銃尻を押し付けて、照準のブレを減らしていく。息を吸い、そして止める。ゆっくりと引き金に指をかけて……
「チャーチルッ! 何してるッ上にRPGだ!」
エバンスの叫びにハッとして、チャーチルは窓から顔を出した。しまった、調子に乗りすぎた。興奮して命令を忘れていたッ。銃口の先をみると、民兵の男が一人、すでに完全に構えてこちらに引き金を引こうとしていた。
――ッ、間に合わないか!?
「エバンスッ! 銃座から離れろ!」
エバンスはその言葉に反応して後部座席へと頭を引っ込めた。
チャーチルは叫んで、けん制と共にその男へと銃を乱射する。
バズズンッバズズンッバズズンッ
そして四回目を引こうとしたとき、チャーチルの目に男が後ろに倒れこもうとする映像が写った。
――よしッ! 殺ったッ
確信し、振り返る。
「殺ったぞ! エバンス銃座に――」
そう、確かに男はその瞬間死んでいた。
しかし、その男が手に取った武器は、狙いは不明確ながらも痙攣によって引かれていた。
振り返ったチャーチルの目には、驚愕にゆがむフィリップとエバンスの姿。
「チャーチルッ! 伏せるんだ!」
チャーチルはそれの意味がわからず、振り返った。
ジュガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
「グッ!」
「うわッ!」
ハンビーの真横で、そしてフィリップとエバンスの目の前で炸裂したロケット弾は、真っ 黒な煙と、火柱を上げた。その直接胸をプレスにかけられたような衝撃に、二人は反対側のドアまで吹き飛ばされ、背中を強打する。
エバンスは激しく重い咳を咳き込みながら、叫んだ。
「ガッハ……チャーチル……チャーチルッ!」
そして目の前にいたチャーチルの肩を掴んで揺さぶる。
ボロッとそれは落ちた。
その時、フィリップも何とかエバンスに続いて体を起こすことに成功し、目を薄く開けた。
そして、フィリップは初めてそれを目にした。
「チャ……チャーチル…………?」
首が無くなった人間を。
「チャャャチィィィィィィィィィルッ!!」
ハンビーは走った。それでも。
どこへ向かっているのか、乗っている彼らにはもうわからなかった。任務のために目標に向かっているのか
それとも地獄に向かっているのか
■16
C2のヘリから下を見下ろす。相変わらず囲まれている第三部隊は、必死に逃げ回るゴキブリのような惨めさを漂わせながら、目標への移動を続けていた。
先程、そのうちの一台……先頭から二つ目の車両が上からのRPGの攻撃にあって大きく左にそれた。
『あッ!』
しかしなんとか建物に突っ込むようなことはせず、無理やりにハンビーをまっすぐ向ける。テクニカルにも危なげながらも当たらずにすむが、よく見るとその車体のドアは吹き飛んでしまっている。先程のRPGにやられたに違いない。
地上部隊の隊員達は出発前、口々に「コイツの装甲はないのと同じだ」と言っていたのを思い出した。今彼らはそれをどう思っているのか。
……そんな余裕ないか。
彼はさらに目を凝らす。ハンビーのうち、先頭二台はテクニカルを避けて通り過ぎることに成功したが、三台目から遅れているためにテクニカルのロケット砲の標的にあっている。おそらく二台目がRPGで攻撃を受けたことで、巻き込まれることを恐れた三台目からがスピードを下げたせいだ。
と、そこにヘリの運転席から声が飛んできた。
「クリスッ! テクニカルに民兵がついてるッ!」
「…………なに?」
下を覗き込むと、ロル23がけん制をしていたことで一度は離れていた民兵達が、またテクニカルに舞い戻ってロケット弾を用意している。まずい、ハンビーのほうは上部の敵にばかり目が行ってしまって気づいていない。
『第三部隊、どの部隊でもいいからテクニカルに攻撃を加えろ。民兵達が近づいているぞ』
しかしどの部隊からも返答は無かった。見るとテクニカルには既にロケット弾が差し込まれている。
「……どうする」
クリスは無線に口を近づけた。
『C2から本部へ。第三部隊がテクニカルの攻撃にあいそうになっています。ロル23のけん制で攻撃は避けていましたが、現在どの部隊もテクニカルに攻撃をかけれる状態ではありません』
『……了解C2。ヘリをそちらに送る』
『了解。オーバー』
『オーバー』
通信を切ってから周りを見ると、北の方向からヘリが現れた。第一部隊を降下させたヘリだろう。
間に合うか……
「……ッ……あ」
フィリップは目の前に転がる首なしの死体に、全身が震えるのを抑えられなかった。咽が痙攣して、勝手に声が出る。さらに歯が鳴り出すのをこらえるために、あごに力を入れて食いしばらなくてはいけなかった。
いったい、これはなんなんだ? 黒い、こげた肉片か? 銃を必死に握り締め、首からは血を垂れ流す。……死体から出る血は鼓動にあわせてリズムよく噴出すんじゃなかったのか? これはただただ床に血が流れ出るだけじゃないか。 ……いや、そうか。これであっているんじゃないか。そうだ、なぜならこれは死んでいる。鼓動なんて、あるわけがないじゃないか。これはそうだ、チャーチルの
「フィリップッ!! なにしてる!?」
ウィルソンの激しい怒声にハッとしたフィリップは、運転席で片目で自分を睨みつける彼に目を向けた。
フィリップの顔はひどい状態だった。蒼白で、唇をかみ締めていて、……彼自身が気づいているかどうかはわからないが、頭からの出血もあって、まるで彼自身が死体であるかのようだ。混乱しているのか……それはそうだろう。なぜならベテランであるウィルソン自身が混乱しているのだ。そしてフィリップの横でエバンスも目を見開いている。
――戦友、だった。俺達の。
その時無線がノイズを告げた。耳障りな音、そしてその後にC2からの指示が飛ぶ。
『第三部隊、どの部隊でもいいからテクニカルに攻撃を加えろ。民兵達が近づいているぞ』
「ウィルソン。指示は?」
見るとエバンスが頭を振って、銃を握っていた。チャーチルのマガジンをチョッキから剥ぎ取り、自分のチョッキへねじ込む。冷静さを取り戻しているようだ。
「さっきのテクニカルが俺達の後ろの部隊を狙ってるらしい。叩かないとヤバイ」
「わかった。俺が上のやつらを機銃で狙う。……フィリップ」
エバンスの呼びかけにフィリップは反応しない。ただ、目を見開いてチャーチルの死体を眺めるだけだ。
「フィリップッ!!」
エバンスは彼の肩を掴み、強引に自分のほうへ顔を向けさせた。
「死体がそんなに珍しいか?」
「軍曹……これは…チャーチルです。わからないんですか!?」
「今は違う。俺達は戦うことを優先するんだ」
フィリップは目はエバンスから離さないが、それでもその目には意識がない。ただ、向けているだけだ。
彼は頭を振った。
「嫌だ……こんな……嫌だ! こんな風になりたくないッ! 戦ったって、死ぬんじゃないかッ! こんなのは嫌だッ! 軍曹……逃げましょう! ウィルソン、キャンプにむかって――」
エバンスはフィリップを殴りつけていた。
ゴキリッ、という固いもの同士が立てる音がフィリップのこめかみから脳へと激しく流れる。頭から垂れていた血が反動で回りに飛び散り、車内とエバンスの顔に飛びかかかった。
フィリップはエバンスを見た。
周りに銃撃音が響く中、対照的にシンと静まり返ったハンビーで、エバンスはフィリップの目を覗き込んだ。
「生きて帰るんだろう」
その目はひどく青かった。ひどく。青い。
「どうすればいいか自分で考えろ。そのまましゃがんでるのか」
エバンスはマガジンを叩き込んで、チャーチルの使っていた、カスタムされた銃をフィリップの胸に押し込んだ。
「コイツを握るか。お前に任せる」
エバンスはそう言うと銃座に着いた。ゴーグルをかけて、機銃を握りこむ。そして上からハンビーを狙う民兵達に、再び引き金を引いた。
ハンビーの走る音に加わって、機銃の重い重低音が響く。
それを聞きながら、フィリップは体を丸めた。怖い。死ぬのなんて、一瞬なんだ。俺はまだ、何もしていない。やり残したことばかりなんだ。こんな、狭くて血の臭いばかりの所で死にたくない。
「フィリップ。お前は兵士だろう」
ウィルソンが前を見たまま口を開いた。
「お前が戦うことで救うことができるものがある。信じろ、お前は守っているんだ。命を張って戦うことで、何かを守ることができているんだ」
フィリップは奥歯をかみ締めた。わかっている。そんなこと。それでも怖い、死ぬのは怖くてたまらない。チャーチルの死体を見ていると涙が出そうになって、さらに奥歯をかみ締めた。わかってるんだ。戦って、救わなければいけないものがある。……それでも俺には出来ないんだ……!!
「エバンスを見ろ」
フィリップはのろのろと顔を上げた。そこには無表情に機銃を上に向けて撃ち続けるエバンスがいた。
「エバンスは今、お前を救うために一人で戦ってるぞ」
エバンスの『表情』は何も浮かべてはいなかったが、その額には汗がいくつも、流れるように浮かんでいた。いくつも、いくつも、いくつも。そしてよく見ると、彼のあごの筋肉は異様なほど浮き上がっていた。
フィリップとまるで同じだ。
恐怖で汗が浮かび、悔しさと卑屈で奥歯をかみ締めるフィリップ。
同じだった。
「エバンスだって怖い。俺だってそうだ。誰だって怖い。だがエバンスは戦っているぞ」
と、その時エバンスの近くに弾丸が着弾した。
「――ッ!」
それでも彼は頭を引っ込めずに機銃を上に向ける。歯をかみ締め、上へ上へと弾を撃ち込んでいく。
「ッぅがあああああああああああああッ!!」
何の意味もなく叫び、頭を引っ込めたい欲求と必死に戦って引き金を引く。
フィリップは銃を握り締めた。
体は震えていた。奥歯はかみ締めたまま。
それでも俺には銃を握る資格があるだろうか?
フィリップはチャーチルの肩に触れた。震えた手を、ゆっくりと。血と土と炭にまみれた体に。温かかった。ひどく。
その瞬間、フィリプは奥歯の力を抜いた。そして、そうすることでこらえていた涙がほほを伝った。
「……チャーチル、俺は……」
顔中から涙や鼻水やらが飛び出している。声は震えている。それは決して死んだ戦友への哀悼でも哀れみの表れではなく、ただ恐怖からきたものであったが、フィリップはそれを恥だとは思わなかった。
――『レンジャーのチャーチルだ! よろしくフィリップ! SEALと組むのは始めてなんだ!』――
会ったばかりの友だった。親友ではなかった、友情なんて深める暇もなかった。それでも、戦友だった。
そして目の前には自分を守るために、戦友を守るために銃を握る男がいた。
フィリップは銃を握り締めた。そして勢いよく振り返り、エバンスへと発砲している民兵達へと照準を絞る。
「守ってやるッ! 俺は……」
引き金を引いた。聞きなれた連続音が耳に飛び込んできて、それと同時に民兵達は倒れていく。
「戦ってやるッ! 俺を殺してみろッ! 俺はどうやっても生きて、仲間を守って帰ってやるッ! さあッ!」
フィリップは叫びながら引き金を引き続けた。何度も、何度も。
「殺してみろッ!」
渡された銃は、チャーチルと同じように温かく感じた。
■17
エバンスはとにかくハンビーを守ることに集中していた。
扉は吹き飛び、側面は黒こげ、おまけに機銃手しかいないような状況だ。どう考えても狙わないほうがおかしい。ハンビーは集中狙いされていた。
「殺してみろッ!」
「……ああん!?」
突然の叫び声に、エバンスは一瞬だけ片目を下へ向けた。
「やってみろクソ野朗! 俺は絶対死なねえぞッ!」
フィリップが声高に銃を撃っていた。上へと向かってエバンスを狙う敵を撃っている。おかげでエバンスに対する攻撃は弱くなった。
「…………」
その勇ましさに笑うべきか、それとも挑発によって敵がこちらを狙ってくるのに頭を抱えるべきか一瞬悩み、
パキュンッ
「うわッ……くそ!」
直後に横へ飛んできた銃弾に最終的に頭を引っ込めることになった。
すぐにフィリップがそのカバーに入る。三十発の弾倉をすべてけん制に使いながら、ドットサイト……カスタムされた照準をつかって狙えるだけ狙う。エバンスが頭を上げるときには、かなりの数が落ちていた。
「リロードッ!」
フィリップが車内へ引っ込み、チョッキからマガジンを銃に叩き込む。それを見て、ウィルソンはハンビーの後ろを親指でさした。
「フィリップッ……テクニカルを狙えッ! スピードを一時的に抑えるぞッ!」
フィリップが後ろを見ると、ロケット砲を備え付けたテクニカルへ、民兵達が後続の部隊を狙うためにロケット弾を装填していた。
「軍曹ッ、後ろ狙いますッ!」
照準を構えて、テクニカルを動かす敵を狙う。引き金を引き続ける。
――使いやすい
チャーチルの銃は妙に手にしっくりきて、撃つときの反動もしっかりクッションが支えていた。さらに一番使いやすいのは照準がサイトであることだ。スナイパー並みの正確さで撃つことができる。
とはいってもほとんどがけん制だ。けん制のついでに当てることができるだけで、正確に狙いをつけているような暇はない。
引き金を引く。テクニカルの右からロケット弾を持ってきた男が倒れた。
引く。左から銃を乱射していた男が倒れた。
次は発射しようと銃身の陰に隠れる男へ
チュインッ
「――ッ!」
しかし引き金を引く前に銃弾が耳元をかすめて、思わず顔を引っ込めてしまった。まずい、さっき見たときにはもう発射しかけていた。急いでもう一度頭を出す。
そこには既に後続の部隊に砲身を向けて発射しかける民兵達の姿があった。
「後ろの奴らが撃たれますッ!!」
サイトを覗くのもわずらわしく、目測で引き金を引きまくる。しかしテクニカルの周りに集まってきた民兵達がAKでこちらに撃ち込んできた。
それをもろに後ろから受けそうになったエバンスは、機銃を離して体を車内に入れてしまった。
すぐにガキンッと音がした。その音に一瞬何だ?とフィリップは上を向いて、すぐに頭を下げることとなる。
先程の音が頭の上を何度も、激しくたたいた。
「うわああああッ!!」「ぐおッ」
上からの防衛がなくなって、甲高い音と共に銃弾がまさに雨のように降り注ぐ。
足もとに穿たれる銃創、装甲を貫通し、足元に穴が開き、さらにフィリップの首元を銃弾が通り過ぎた。おもわず下げた頭の皮膚の神経がゾワッと騒ぎ出し、あまりの恐怖感に頭を抱えてしゃがみこむこととなる。
エバンスは腰から拳銃を引き抜いて、少しでも銃撃が弱まる事をいのってとにかく撃ちまくった。しかし銃撃は収まらない。さらに吹き飛んだドアへと銃撃が飛んできて、拳銃がそれに当たって飛ばされてしまった。
「――クソッ! ウィルソンッ下がるぞ!! やられるッ」
「わかってるッ!」
ウィルソンはアクセルを思いっきり踏み込んだ。正直、ここまで撃たれてまともに動くわけがないと思っていたが、ハンビーは素直にぐんぐんとスピードを上げていく。スピードを上げることで、猛烈な攻撃は少しづつ和らいでいった。
フィリップは何とか頭を上げると、体の各部を調べた。よかった、なんともなってはいない。エバンスとウィルソンを見ても、どちらも何かしらの怪我をしている様子ではなかった。ほとんど奇跡としか言いようがない。アレだけの猛攻撃を受けて、誰も撃たれていないなんて、できすぎているな。と考えてからハッとした。
しまった、テクニカルはどうなったんだ。
「ウィルソンッ! テクニカルは!?」
フィリップが頭を窓から突き出して、後ろを覗き込む。
と、そこにとてつもなく重く、騒がしい重低音が響いた。
『キロ24、ボブ軍曹だ。テクニカルの掃討を開始する』
上から一気に降下してきたブラックホークから、機銃が連射される。テクニカルの上で発射をしようとしていた、フィリップが撃ち損ねた男も吹き飛んでいった。さらに周りにいる敵たちも一掃される。シャツにズボン、まるでラフな格好をした男たちが、手に持ったAKと共に機銃を受けて血をまきちらしながら倒れていった。
それを見てからフィリップは少しだけ安心で小さなため息を吐き、銃を再び上へと向けた。エバンスを狙う敵を撃つ。
「よし……見ろ。交差点だ」
ウィルソンが希望の声を上げた。数百メートル先に十字路がある。
「あそこを右に曲がればすぐに目標の建物だ。C2からの連絡じゃあ一応安定しているらしいからな。そこで部隊を立てなおせれる」
ウィルソンはさらにアクセルを踏み込んだ。もう最高まで押し込んでいるから、これは気分の問題だが。
ありがたいことに十字路に向かうほどに敵は減っていた。ブラックホークがテクニカルを駆逐したことが敵の戦意を削いだらしい。敵は引き波にはいっていた。
「よしフィリップ、お前が前を担当しろ。進む先に敵がいたら撃て。俺はハンビーの周りを防衛する」
「イエッサッ」
フィリップは短く返事をすると、サイトを前に向けた。進む先は十字路。十字路までは相変わらず一直線の道、十字路は向かいの左斜め前に建築途中か何かの鉄骨の建物、右斜め前には学校並みに大きな薄茶色の建物がある。
自分がスナイピングするならどこからかを考える。鉄骨か、建物の窓からか。
高い鉄骨……いや、窓からだろう。自分の身を守るなら窓からのほうがやりやすい。撃たれたら引っ込めばいいからだ。
サイトを覗いて敵がいそうな窓を覗いていく。建物の窓は上下に二つ、左から右へと見えるだけで六つほどある。そこを一つ一つ目を細めて覗いていく。サイトはあくまでも狙いをつけ易くするためのものであって、スコープのように倍率があるわけではない。遠くのものは当然小さく見える。
――けん制するか? いや……
けん制をすれば驚いて出てくる可能性はあるが、逆にこちらの位置を把握して、狙いにくいところまで移動するかもしれない。そうなるとやりにくくなる。
息を吸い、ゆっくりと吐く。
ハンビーがスピードを上げて十字路に近づいていく。それと同時に、角度的に死角となっていたところも見えてくる。
一つ見える窓が増えた
二つ……
三つ……
四つ……
ピヒュンッ
「――ッ!」
耳元を通り過ぎた何かに頭が反射的に引こうとしたが、フィリップはそれを無理やり引き止めて、サイトから見えたバンダナを巻いた男へと引き金を引きまくった。
男は近くに着弾する弾丸に驚いて、身を隠した。それにフィリップは舌打ちをする。
「今度はどこからだ……!」
一つ目か、二つ目か、それとも建物から降りてくるのか、どうするのかまったく予想がつかない。サイトを左右に振る。しかしどこにも見当たらない。
窓は全部見えて、十個あった。そのどこから撃ってくるのか。
そうこうしている間にハンビーは十字路に二百メートルほどにまで近づいていた。ウィルソンが叫ぶ。
「大丈夫かッ!? 待ち伏せはないんだろうなッ」
「今一人見つけましたが逃げられましたッ! 仲間を呼んでくるかもッ」
ウィルソンは歯を食いしばって、進む先を見た。見かけには何かがいるとは思えない。後ろの喧騒とはまったく対照的で、それが逆にウィルソンの恐怖心をあおる。ウィルソンは気持ちスピードを落とした。上から狙ってくる民兵の数はかなり減っていたから、大丈夫なはずだ。
「どこにいた」
「右の建物です」
フィリップはサイトを覗いたまま答えた。つまり曲がるためにはドアが吹き飛んだ側面を向けなければいけないと言うことだ。ウィルソンもそれがわかったのか、さらにスピードを落とした。
どこだ。どこから出てくる。
フィリップのこめかみに汗が伝い、それが彼の集中力を奪う。どこだ、どこなんだ。気持ちばかりが急いて視線が浮ついてしょうがない。
自分ならどうする?
とにかく撃たれた場所からは離れるはずだ。そして二階からは離れる……か?
ならどうする。近づいてくるまで待ち伏せして……どこからがいい。狙うなら一階か。
サイトを一階の窓に合わせる。いや、もしかして入口に? 銃口を動かそうとし、しかしそのサイトの先が震えていることに気づいてそれすら考えてしまう。
息を止める。ハンビーは十字路に到達した。
「抜けるぞ」
ウィルソンが周りを見渡しながらハンドルをきった。ハンビーがゆっくりと角を曲がる。周りは喧騒が遠くに流れていて、相変わらず静かだ。ウィルソンの心臓が高鳴る。建物は真横だ。ドアはない、そして運転席は左側。ウィルソンは撃たれたらどうすることも出来ない。つまり彼の命はフィリップしだいということだ。自分ではどうしようもない所で自分の命が握られている。そのことに言いようもない恐怖が湧き上がってきて、どうしようもなく体に力が入ってきた。
指が震えて、足が今にもアクセルを踏みたがる。息も、上手くできなくなってきた。
呼吸を思い出すためにゆっくりと息を吸い、そして
バガッ
「うぉッ!」
突然の発砲音にウィルソンは頭を引っ込めた。
「殺りました」
「……撃ったのか?」
フィリップが銃を引っ込めて頷いた。
「でも、一人だけでした。……それに、敵がいつの間にか引いています」
フィリップはもう一度建物を見て、サイトを覗いた。敵の姿はない。それどころか、銃撃の音すら遠くに聞こえる。上でエバンスがため息をついた。
「どうなってる……」
何故一人だけしかいない?
確かに理屈から言えば戦意喪失、第一部隊よりも派手に動き回る第三、第二部隊への追撃、義勇兵は一匹狼なんて珍しくもない。しかしどうして……第一部隊を狙うでもなく、第三部隊を狙うのにも適さないこの場所で何を?
「ウィルソン、何か――」
バシュッ
エバンスの視界の端で白煙が上がった。それはフィリップが確認するのを避けた場所
「鉄骨からだ……!!」
ロケット弾が空気を荒々しく切り裂き、音を立てながら飛んで来ている。
「出るぞッ」「狙いますッ!」
ウィルソンとフィリップが同時に怒鳴って、それぞれアクセルと引き金を押し込んだ。ハンビーは一気に後輪を回転させてその場を離れる事に成功した。
しかしフィリップの方は敵を捉らえられずに牽制で終わる。
しまったッ! 当たるッ!
反射的に頭を引っ込めたフィリップにエバンスが怒鳴った。
「違うッ! 俺達を狙ったんじゃないぞッ!」
エバンスはロケット弾が飛ぶのと合わせて機銃をハンビーの後部へ向ける。そしてそこには
「ハンビーが……」
後続のハンビーが黒煙と火柱の爆風と共に吹き飛んだ。横転し、屋根を地面に擦りつけて先ほどまでフィリップが狙っていた建物へ突っ込む。轟音が響き、さらに建物の一部が壊れて崩れ落ちる。
「ウィルソン離れろッ 爆発に巻き込まれる!」
ウィルソンは言われるがままにアクセルを踏み込んだ。一瞬動きを止めていたハンビーがまた急速に走り出す。
と、そこへ無線が入った。
『後続の戦闘車だ。火柱が見えた。どこから撃たれてる』
ハッとして振り返ると、戦闘車が急速に建物の前へと飛び出して来ていた。無線をにぎりしめる。
『やめろ!』
しかしウィルソンの警告は意味を成さなかった。
『ウワッ!』
横転したハンビーに戦闘車は突っ込み、それに足をすくわれて戦闘車まで横転する。しばらく片輪で走り、そのまま横に倒れて、さらにハンビーと同じ様に屋根を下にして倒れ込んだ。
「クソッ」
エバンスはハンビーの屋根を殴り付けた。
「どうすりゃいいんだッ! 助けるのかッ! 目標へ下がるのか!」
周りは狭い道。道の半分を横転した二つの車両が塞ぎ、だがしかし後ろには退避場所である目標がある。
なんで……目の前まで来たのに……!!
フィリップは銃をにぎりしめた。
「どうすればいいんだ……どうしろってんだッ 畜生ッ!!」
死神はきっと、笑っているだろう。
■18
ヘリの轟音が近づいてくると、ジョンの顔は自然とほころんだ。
「……? 何やってんだ俺は」
これは強行着陸なんだ。彼らをサポートして、何分の一かの確立で成功してやっと俺達は帰れるんだ。期待するな、ただ、目の前の敵を淡々と倒すんだ。そう言い聞かすが、やはりこの地獄から脱出することばかりが頭をよぎって、集中して考えることができない。
だんだんと銃撃が雑になっているのがわかる。周りへと警戒をかけることも怠っていた。
ヘリは自分たちの頭上に来ていた。あそこから一気に降下して、自分達を回収、そしてまたすぐに上昇してここを脱出する手はずになっている。今のところ民兵達はこの作戦に気づいていないようでRPGはすべてジョンたちへとむかって撃ってきている。とにかくジョンたちの仕事は周辺のRPGを持った敵を倒すこと。そうしなければ万に一の確立が億に一、いや、確立なんて物自体存在しなくなってしまう。
だからこそ敵は集中して倒さなくてはならないのに……これはなんだ?
「クソッ……なんだって俺は」
俺はこんなにもワクワクしてるんだ?
何が嬉しいんだ? 帰還できることか? まだ、生きて帰れるなんて保証も無くて、自分が努力したってそれは変えられることなんかではないのに。どうなってんだッ 体が動かないッ!
「ジョンッ 何してるんだ! 早く撃て」
マクが頭を下げながら走り寄ってきた。崩れた北の壁を這い上がろうとする民兵から、屋上を防衛をしていた彼は、ジョンが弾をブライアンにもらいにいってからなかなか戻らないことに気づいていた。
「マク……俺は……」
「下のRPGの連中を何とかしないと、俺達は帰れないんだぞ? 落ち着け、行くぞ」
マクは無理やりジョンを立たせようとしたが、ジョンは中腰の姿勢で体を止めてしまった。マクが目を向けると、ジョンはまるで信じられないと言うかのように、自らに驚愕して目を見開いていた。
「なんなんだこれは……クソッ。だめだ、酔っ払ってるみたいだ。頭が使い物にならない……どうなってるんだ」
彼自身は気づいてはいなかったが、それは戦場に出た極少数の兵士達が起こすパニック障害だった。気分が高潮し、ハイになって頭が冷静に判断することをしなくなってしまう。まるで酒でも飲んだかのようにぼんやりして、状況によっては暴れだしたり、情緒不安定になって泣き出したり、そして今この状況で最悪なのは
「クソ……意識が飛びそうだッ」
ジョンは歯を食いしばりながら額から流れ出る冷や汗が地面にしみを作るのを見ていた。その目は先程と変わらずカッと見開かれており、誰の目から見てもまともな状況ではないのは明らかだった。
マク一瞬、その表情に息を引きつらせるように吸い込み、留め、しかしなんとか頭をフルに回転させてジョンの腰からマガジンを取り出して彼の手に握らせた。
「……よし、いいか。お前はここで待ってろ。ヘリが来たら真っ先に乗り込んで、俺達の援護をするんだ。それまでここで休んでいてもいい。いいな?」
ジョンは少し頭を上げてマクを見た。その目は何を写しているのか底が知れず、そしてやはりぼんやりしているのかゆっくりと頭を振る姿は、マクに「まともじゃない」と印象づけるには十分だった。そして戦場というこの状況の中で彼は『しょうがなく』置いてけぼりにされているのに気づき
「……すまん」
それだけしか言えない自分がとても迷惑な存在だと言うことは、彼自身が認識していた。
「いや、それよりも間違っても俺達を撃つなよ」
マクはそれだけ言うと走っていき、這い上がろうとしていた民兵を撃ち殺した。彼はどうやってジョンを立ち直させればいいか考えてもいたが、視界の端で白煙が上がったのを見たときには彼は考える事なんかしなくなっていて、その身を地面に投げ出していた。
激しい爆発が近くでおこり、爆風と飛んできた土砂となった壁が直撃し、ノドの奥から空気が叩きだされた。
「ぐぅえッ!」
「マクッ!」
その様子を建物の西側を防衛していたブライアンは見た。ロケット弾は勢いを付けて北の壁……ひいてはそこで防衛線を張っていたマクに飛んで来た。しかし狙いはそれて、はい上がって来ていた民兵に直撃。その身を肉塊に変えて、さらに土砂を被せてマクを襲ったのだ。
手榴弾を民兵どもがへばりつく足元に放り込み、敵を遠ざけると、マクの方へと駆け寄る。
「大丈夫か」
「あ……ッ! 俺はいいから、撃てッ! 次弾が来る前にッ 二時の方向ッ」
ブライアンはマクの指差した方向へ膝を折って銃を向けた。そこには二人、RPGを持った民兵達がこちらを狙っていた。すぐに引き金を引くと、一人は撃つことに成功し、しかし一人は撃ち損ねる。
だが、そんなことを気に留めるような暇は無い。マクを引き上げる。
「ヘリはまだ来ないのか!?」
マクも頭の中を流れるゴーンという音から逃れようと頭を振り、こたえる。
「よし、仕留めたな……」
しかし口を開いた彼自身の声が聞こえないことに気づき、舌打ちする。
「……耳がおかしい。ダメだ、お前が連絡を入れてくれ。ヘリに『周辺を確保した』と言えばくるはずだ」
その言葉にブライアンはうなずき、肩につけてある無線機に口を近づけた。
「ただし」
と、そこをいきなりマクに引っ張られる。無理やり顔を合わせるように向かわされ、鼻先で睨まれた。
「チャンスは一回だけだぞ。二回目は無い」
「わかるか、きこえるか」と続ける彼にうなずき、しかしブライアンは逡巡していた。うなずきはただの返事でしかなく、彼の決断なんてものはほとんど無いも同じだった。
周辺の確保。つまりRPGを持った敵はいない、ということか。そうなるとその質問には必然的に『NO』だ。先程逃がしたばかりだからだ。
しかし、周りの状況は彼にヘリを呼ぶことを強要していた。
「……ッ! 鼓膜がやられたのか……!?」
マクは耳を押さえ、
「…………ガァ……」
息を荒くし、目を見開くジョン、
「弾切れだッ! もたないってッ!」
弾切れで拳銃で反撃するしかなくなっているケント。
そして
「……ヒュウ……ヒュウ……」
ヘリから落ちた、虫の息のトムとかいう男。
すべての状況をがこれ以上の確保は不可能だとしか思えなかった。すでに今まで自分が防衛していた西側から敵がよじ登ろうとしている。ブライアンはもう一発手榴弾を投げて敵を遠ざけたが、あの勢いならすぐにここまで這い上がってくるだろう。奴らはもう、『死』なんてものを建前すら乗り越えて恐れてはいない。
ブライアンは歯噛みした。
『……スーパー64、キロ24だ。周辺の確保を完了した。着陸を要請する』
もう、どうにでもなれ。なんて少しも思わなかったが、この行動自体はそれを現してるとしか思えないよな、と彼は少しだけ頭をよぎらせた。
ヘリは降下を開始した。急速に、まるで墜落でもするのではないのかと思うほどの劇的な勢いで直下してくる。
「ムジャヒディアムッ! アディオーサッ!」
薄汚れた白いシャツに、さらに薄汚れた茶色のズボン。そして褐色の肌。それだけ見れば、確かに階段を駆け上がる彼らの姿は、まったくの「普通の服」を着た「普通の人」であった。
しかし彼らが手に持つものは決して普通のかばんや持ち物なんかではない。戦い、そして「壊す」。それに特化した存在であった。
それは名前を『RPG』と名づけられていた。
しかし彼を持つ男たちは彼をそんな名前で呼ぶことはなく、彼らでいうところの「神に与えられた聖なる戦いのための武器」と彼をよんでいた。だが、名前は違えど彼はその存在にになんの不満もいだくことはなかっただろう。
「スカラアッラーイッ! メデュウッ」
なぜなら彼はその地の戦士たちに、その「壊す」という存在意義を存分に発揮してもらっていたのだから。
褐色の肌を持つ、その地の戦士、民兵達は階段を駆け上がるとすぐさま向かいの建物へと降下しようとするヘリへとRPGを傾けた。
その数は四人。
彼らの後ろには指揮をとるサングラスをつけた男……エイバーがここにいれば、「俺をRPGで狙わせた男だ」というだろうが……が一人ひとりに肩を叩きながら指示を出す。
口元には、やはり笑顔が張り付く。
ヘリの中で最初にその異変に気づいたのは、弾切れとなった機銃を手放して、墜落時に使用するマシンガンを撃って周辺の敵を掃討していたカールだった。
最初カールはそれが何か……赤と白の混じった布か何かのように感じていたが、しばらくそれに目を凝らしたとき、その「何か」が棒状の形をしており、そしてその先に自分達の乗るヘリがあることに気づいて息を引きつらせた。
「――ッ! ジェームズRPGだッ」
操縦席で地上部隊からの通信を受けていたジェームズは、どこだ、と聞き返す時間が惜しくてその声に自ら回りに目を配った。そしてちょうど五時の方向にそれを見つけると、すぐさま回避行動を開始する。大丈夫、この距離なら……
しかし操縦桿を倒しても、そこには重い感触しかなかった。え? とあせって左右に動かすが、ヘリは鈍く回るだけだ。
「急げジェームズッ! どうしたッ!?」
カールはマシンガンで何とかけん制しながら、動かないヘリに冷や汗を流してジェームズに叫んだ。
「撃たれちまうぞッ!」
下にいる民兵達は目標となる建物の向かい側で、すでにしっかりとRPGを構えており、おそらくはその後ろに指揮官となる「誰か」がいることを感じさせている。当然その指示の中には「絶対にはずすな」というものが含まれているのであろう、民兵達の持つRPGは今までとは比べ物にならないくらい正確に狙いを……つまりヘリを捕らえていた。
「ダメだッ ヘリがまともに動かないッ!」
ジェームズが後ろを振り向くと、そこには不気味に黒煙を上げるテールローターがあった。先程無理に降下して撃たれたのが響いたらしく、そこが上手く動いていないらしかった。
しかし原因がわかったところで何の助けにもならない。
「来るぞッ!」
カールの視線の先でバシュッと白煙が上がった。
「左だッ!」
カールの怒鳴り声を聞いて必死に操縦桿を傾ける。機体は鈍く、あまりに遅く斜めに傾く。
「伏せろッ」
ジェームズの叫びと、ロケット弾がヘリの横を通り過ぎるのはほぼ同時だった。
空気を裂く甲高い音、そして白煙が軌道を示すのを、信じられない気持ちで見送る。
「次が来るッ!」
しかし助かったのか……などという下らない、一瞬の安息など二人には与えられることは無く、さらに次のRPGの引き金を引こうとする民兵の姿が見える。
並んで四人いるらしく、こちらが避けて不安定なところを狙おうとしている、という意図が感じられる。そしてそれは向こうが知らないことだが、こちらの操縦が鈍くなっている以上、もっとも有効な方法であった。
カールはマシンガンを突き出し、さらに弾が当たることも、落ちることも考えずにマシンガンの引き金を引いた。バラバラバラと連続した、まるで人を殺す道具とは思えないほど気の抜けた軽い音が響き、さらに音とは比べ物にならない衝撃がカールの肩を叩いた。
その衝撃が僅かに一秒半ほど響いたとき、構えている民兵のうち一人が頭から盛大に血と、そして脳しょうを撒き散らしながら倒れこんだ。
「一人殺ったぞッ」
しかし、残った二人はまるでそんなことを気にする様子は無く、身じろぎせずにじっと構えていた。
――死ぬことも怖くないのか!?
そして、カールの弾が切れた。
「ダメだジェームズッ! つかまれッ!」
叫びに近い声で怒鳴り、カールは神に祈った。
それは彼の、22年という短い人生の中で初めてのことだった。ここで死んでも、俺は勇敢に戦ったよな、そうだよなあ! 神様よぉッ! 俺は戦って、戦って死ぬんだッ! 俺は……俺は……
しかしいつまでたってもヘリにロケット弾は来なかった。
ジェームズは瞑っていた目を開き、恐る恐る外へ頭を出し、先程の民兵達のほうへと頭を向けた。
そこには、生きているものが誰もいなかった。皆、一様に同じ方向から撃たれたのか、体をくの字に曲げて、壁にもたれかかるように死んでいた。
まるで時が止まったかのようにジェームズはそこを見つめていた。信じられない。いったい、どうして……。安堵よりも先にそちらのほうが先に立ち、動きを止めて凝視してしまった。
そして答えは簡単だった。
『スーパー64、キロ23ジョンだ。周辺の確保を完了した。すまない、遅れた』
ジョンは膝を立てて、隣の建物を狙っていた銃を下げた。視線の先にはヘリに撃ち込まれる寸前だったRPGと、もう何も写していないであろう民兵達の肉塊の中にある目。
額に伝っていた汗を拭い去った。
もうあのわけのわからない焦燥感とも、高揚感とも言いようのない気持ちはない。そうさ、そう。生きて帰る。そのためにだった何でもしてやる。あんな、『民兵を殺しすぎておかしくなる』なんてこと、もう絶対にない。
彼はつまり、『腹をくくっていた』。敵とはいえ、殺すことに慣れているわけではない彼は、後悔とも、殺しすぎたという恐怖ともつかめぬ感情に無意識のうちに支配されていたようだった。
だが、もう大丈夫。俺はもう、殺すことに『後悔』も『恐怖』も感じない。
だからそう、大丈夫だ。
この屋上へと『階段を使ってやってくる奴ら』なんて、楽勝だ。
そうして彼は、複数の足音が響く、屋根つきの階段へと銃を向けた。
これがこの腐った闘いの中に置かれた自分達の、最後の戦いとなることを肌で感じながら。
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2005/04/21(Thu)22:17:33 公開 /
貴志川
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■作者からのメッセージ
■18UP……死ぬカモ……。ちょっと展開を早めに。でもまだまだエンディングは遠い……次回からは新規投稿になりそうです。
規約読め!とかいわれたらいやだなあ(汗
この駄文はいつもブラックホークダウンを聞きながら(見る余裕は無い→汗)書いていて、今ちょうど話が終わりました。この映画も、もう何回見たのだろうか。そしてこれから何回……? どちらにせよ、いい作品だなあとは思ったりして。アメリカよりですけど。
しかしカキョウも折り返し地点突入です!もう少しの辛抱お願いいたします!
……そして辛口意見もお願いします。
また新しい週の始まり 月曜日だ
と、明日は木曜だよ? とかいう突っ込みはパスさせてください【笑