- 『俺たち3人』 作者:やじん / お笑い お笑い
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原稿用紙約10枚
…パシン!
「まぁ待て。そんなに興奮するな」
「これが興奮せずにいられるか!」
俺は親友とも呼べる間柄の友人、妹尾 武(せのお たけし)をなだめていた。どうしてこんなことになっているのかというと…。
「まあ…説明すれば長くなるから省略しよう」
「省略するのかよ」
と、冷静なツッコミを入れたのが第三者の三加和 雄二(みかわ ゆうじ)だ。そして俺、小林 重次(こばやし しげつぐ)。
「重次って…嫌に古臭い名前だな」
「雄二、お前は黙ってろ」
「…」
武は雄二を黙らせた。実は俺たち三人は親友と言っていいほど仲がいい。だが、今はケンカをしている。ほら、昔からよく言うだろ?
「仲がいいほどケンカする…ってさ」
「順番逆だろ」
「おい!話がずれてるぞ!」
おっと、いけない。簡単に説明すると、武が怒ってるんだ。
「簡単すぎだろ」
「面倒くさいんだよ」
「…」
あ、やばい。武がマジで切れそうな顔してる。
「あー…まぁ、悪かったよ。まさかこうなるとは思ってなかったんだ」
「俺も上に同じく」
「思ってなかったってなあ!結果的にこうなっちゃったじゃないか!」
「悪い、シゲ。話が見えない」
「雄二…お前、始めからいたのに分かってなかったのか…」
仕方ない。雄二のためにも簡単かつ簡潔に説明しよう。…意味かぶりまくってるけど。武はある女の子のことが好きだったんだ。名前は匿名で…芳子ちゃんとでも言っておくか。
「それ、本名だからな」
「あ、すまん」
ま、匿名で芳子ということで。で、その芳子ちゃんのことが好きだった武が、告白しようと決心したんだ。自称、熱血純情派の武にとって、告白というのは一台イベントらしい。
「漢字違うぞ」
「雄二、ツッコミ上手くなったな」
「そんなことはどうでもいい!早く説明しろ!」
えーっと…そう、一大イベントだったんだ。それで武は俺にこう切り出した。
「俺と付き合ってくれ」
「こら!勝手に話を変えるな!」
「ヒューヒュー」(棒読み)
「外野!黙れ!」
で、俺はすかさずこう言った。
「俺、そんな趣味ないから。だから武の気持ちには答えられない。ゴメン」
「そのネタ引っ張るなー。あはは」
「あはは、じゃねぇ!ちゃんと説明しろ!」
まあ、それは冗談として。武は俺に芳子ちゃんに好きな人がいるのか調べてほしいって依頼してきたんだ。
「迷惑です」
「グサッ!こ、心の傷が!」
「武…案外ノリいいのな」
「…」
親友の頼みだし、俺は快く引き受けたんだけど…。その次の日に早速芳子ちゃんに聞いたんだ。俺は遠まわしとかあんまり好きじゃないから、率直に。
「目玉焼きにはしょうゆ?それともソース?」
「俺はしょうゆ」
「あ、俺も」
「だから話をかえるな!ちなみに俺はソースだ!!」
「えー」
「えー」
「な、なんだよ。ソースでもいいじゃんかよ!」
「邪道だ」
「道に外れると書いて、外道だ」
「う、うるさいうるさい!どうでもいいから早く説明しろ!」
というのはお約束なんだが、とりあえず、
「今、好きな人とかいたりいなかったりする?」
と聞いてみたんだ。そしたら、芳子ちゃんはハッキリと答えてくれたよ。
「『私は頑固一徹のしょうゆ派〜』…とね」
「おー、仲間だ。頑固一徹というのが謎だが」
「俺だけソースか…はぁ…」
まあ、それはどうでもいいんだが、芳子ちゃんはその時ハッキリと「いるよ」って答えたんだ。んで、それを武に報告すると、
「『じゃあ、俺も今度からしょうゆにしようっと』…ってさ」
「それがいい」
「よくねぇよ!俺は頑固一徹ソース派だ!!」
「…」
「…」
話がこれ以上逸れると大変なので、真面目に説明しよう。その報告をすると、武は「せめて誰なのか教えてくれ」っていうもんだから、仕方なく次の日聞いてみたんだよ。そしたら、芳子ちゃんは、「私が好きなのは…重次君」って言い出したからこりゃ大変だ。俺はびっくりして、その場で固まってしまったよ。で、これは武にはいえない!って思ったから、雄二に言ったんだ。
「…って待て。俺は雄二に言ったのに、なんで武が知ってる」
「…」
「こら!雄二!お前が犯人か!」
「いやー、ちょっと修羅場に興味があって」
「待てこら!あれほど武には言うな!…って、言ってないな」
「だろ?」
「言ってないのかよ!!せめてそこんとは気ぃ遣ってくれよ!」
「まー、あれだ。いいじゃん。女の一人や二人。世の中に女は五万といるんだぜ?」
「女は五万といても、芳子ちゃんはこの世に一人だ!!」
「…」
「…」
「な、なんだよ…」
「「クサッ!!」」
「ひどっ!」
「武、お前ドラマの見すぎじゃないのか?今時そんな台詞…」
「プッ」
「…雄二、お前が一番腹立つんだが」
「気にするな。自称、熱血純情派アミノ式」
「なんか増えてる!?」
「武、あきらめろよ。男だろ?」
「そうだぞ」
「…そんなこと言っても、好きな相手がシゲだとなんか納得いかねぇよ」
「どうして」
「シゲはこう見えて、そろばん5級だぞ」
「低っ!」
「ははは。自慢じゃないがな」
「いや、自慢できねーし。…でもまぁ、そうだな。俺も男だ。あきらめよう」
「そうか。わかってくれたか友よ」
「流石は自称、熱血純情派アミノ式+」
「『+』!?」
「さて、じゃあ俺はここで」
「え?もう帰るのか?」
「今日、俺んちに泊まっていけよ。三人でイチャイチャしようぜ」
「…雄二、趣味変わったのか?」
「冗談だ」
「で、なんか用事でもあるのか?」
「ちょっと人と会う約束があってな」
「なるほど…ってまさか!」
「そう、そのまさかだ」
「こ、こ、こ…!」
「ちょっと学校の責任者とな」
「こっ!こ、こ…?…校長か」
「そういえばそんなことも言ってたな」
「では、さらば!」
「おう」
「さらば!」
「…はい、カット!」
パシン!と気持ちいい音が鳴り響く。
「お疲れ様でした〜」
「お疲れ様でーす」
「おつかれ〜」
来春公開の映画の収録がやっと全シーン終わった。このシーンが一番難しかったんだよなあ。
「おつかれさん」
「おっ、おつかれさん。武、バッチリだったじゃん」
「そうか?結構練習したからなぁ」
「うぃーす、おつかれー」
「おう、おつかれ。雄二もよかったぜ。キャラが最高だったな」
「まかせておけ。何せ本名でやってたらそれなりに気合いも入るさ」
「そんなものか?俺はあんまり気にならなかったけどな」
「よっしゃ!祝、収録終了もかねて今日は飲むか!」
「おっ、いいねぇ」
「んじゃ、いきますかー」
「…って夢を見たんだ」
「シゲ…頭、大丈夫か?」
「…たぶん」
俺たち3人は今日も仲がいい。
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2005/03/31(Thu)16:23:41 公開 / やじん
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■作者からのメッセージ
結局オチがぬるすぎる作品に。これで少しで笑ってくれたら…幸いです。
駄作ですが…感想をいただけるとありがたいです。