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『旅人の狂詩曲』 作者:神威 / 未分類 未分類
全角8573.5文字
容量17147 bytes
原稿用紙約30.7枚
昔から人間としてのあり方がわからなかった。
なんのために生まれ、何でい続けなければいけないのか。
そして・・何のために死にいたるのか
15歳の僕はまだまだ情報がたりず、答えを出すことができなかった。
だから僕は旅に出た。
答えを探し出すための
永遠のたびを。



「…死ぬ…」
気温−30度。おまけに最高に最悪な天気。
周りには集落さえなければ、身を潜ませる洞窟や小屋などまったくない。
これでは明日の太陽を拝む前に凍って死んでしまう。
何とかしなければ絶体絶命である。
しかしこの降雪では視界が悪く、むやみに動けば居場所を見失ってしまう。
頼りになるバイクも、この天気ではお手上げ状態。
…何という災難だ。
「僕は神に捨てられたんだろうか・・?」
「捨てられたんじゃない?普段いいことしてないし。」
バイクの癖に何を言うか
「いいよね。バイクは。寒さなんか感じないでしょ?」
「馬鹿にしないでよ。各パーツ寒さが浸透してるんだよ?!」
「そっか。それは不便だね。」
「それよりさ、今後どうするの?僕はさ、倒れるなら柔らかい砂の上に倒れたいんだけどなぁ・・」
「僕だってそうさ。でも僕はフカフカのベッドの上がいいかなぁ・・。」
そんな他愛のない話をしてるとき
一個の淡いオレンジ色の光がかすかに見えた気がした。
極限状態からの幻覚だろうか?それとも精神的な欲が脳裏に焼きついたとか?
「ねぇラティエル。僕はもぅ危ないのかもしれない。光が見えるんだ。」
「そっか。僕も見えるんだ。イオ、ここが僕らの墓場だよ。」
「でもねラティエル。僕の光はね、だんだん大きくなってね、数も増えてるんだ。」
「へぇ偶然だね。僕にはね家も見えてくるよ。集落っぽいの。どうやら僕らは天国にいけるみたいだ。よかったね。イオは地獄かも……って…イオ?」
ラティエルのいうとおり、そこには集落が広がっていた。
これは…多分僕の予想だと現実だと思う。
家の煙突にはきちんと煙も立っているし、街の街灯がきれいにともっている。
間違いない。ここは街だ!!
「ラティエル!街だよ!天国なんかじゃない!街だ!」
「イオ?寒さで脳までおかしくなっちゃったの?」
「違うよラティエル!見てよ!ほら!あれは門だ!」
「あ…イオ。僕もうちょっとがんばれるかも。」
「ふかふかのベッド♪」
「ちょっとまってよイオ!」
歩いて迷って計5時間。やっと僕らは次の町につくことができた。
そして久しぶりの、おいしい夕食がありつける気がしてたまらなかった。


「すいません。僕ら旅のものですが、このホテルは開いてますか?」
街のホテルのロビーに着いた僕らは今晩の宿を確保するために
受付で空室を探すことに。条件は広くて格安ってこと。
旅をする上で宿泊代を節約するのはかなり至難の業。
せめても一番安くて、いい部屋を見つけなければならない。
「たっ。旅の方?よくこんなところまできましたなぁ・・。外は寒かったでしょう。」
「え…あぁ。かなり。」
「えっと…お部屋はですね…開いてますね。お一人様ですね?」
「僕もいるよ!」
すると店員は驚き辺りを見回す。そしてため息を1つ。
「最近疲れているのか幻聴が…。まぁ気のせいですね。」
「気のせいじゃありませんよ?こいつですよ。こいつ」
イオが指差したのは1台のバイク。店員は鳩が豆鉄砲を食らったような
そんな顔をしていた。
「旅人さん。私は疲れていますがそこまで馬鹿じゃ。」
「失礼なっ。僕はしゃべれるよ!」
「ばっ…バイクがしゃべった?!」
「あ、あぁはい。しゃべるバイクなもんで…。」
やはりどこへ行ってもバイクは乗るもんで、しゃべるものではならしい。
まずいつもここから出来事が大きくなってくる。
そして噂というのはすぐ広がるもので…。
だからいつも街にはそう長くいられない。この前は長居しようかと思った街(それでも5日前後)
であやうくラティエルが盗まれそうになった。
しゃべれて走れて画期的なバイクだからといって…
「あっ…えーっと……バイク・・もですか?」
「あぁ、はぃ、できればそうしてほしいのですが、無理ですか?」
「えっ!あっ!!あ・・あります!扉の広いベッドのあるしかもシャワーつきの部屋が!!」
「よかったねラティエル。今回はあったよ。」
「この前はイオごと追い出されたからね。」
「それで…御代は?」
「あ…いや…御代は……結構です!」
そういって店員は鍵を投げつけるようにカウンターに置き
奥のほうへ逃げるように走り出し、帰ってくることはなかった。
「…御代要らないんだって。」
「やったね。いこうかイオ。僕疲れたし、体温めたいよ。」
「そうだね。えーっと、105号室だって。どこにあるんだろう?」
30分。探しに探して部屋を見つけ出すことができた。
よくよく考えると、ホテルのロビーに確か地図があったっけ。
とにかく今日は疲れた。
ご飯もいい。シャワーもいい。
僕は重い服、ライフル、ナイフを置き
ふかふかのベッドに体を預けた。
そして気がつけば、ラティエルのボディも拭かないまま
僕は夢の心地を味わっていた。


次の日、久々のベッドの暖かさに、僕は9:00までねてしまった。
旅をしてて、野宿はよくする。そんなときはたいてい7:00には起床するが
やはり睡眠が趣味の僕にとって、ベッドは最高の居場所なのだ。
「ふぁ…よくねた。」
「よく寝たじゃないよ!!僕はこのまま倒されて!おかげにパーツもふかないで!!」
あの晩、拭かないのはよしとして、そのまま倒していたんだっけ。
それは僕がバイクだったらやだなぁ。
「ごめんよ。いまやるからね。」
「んもぉ〜。」


僕らは支度をすませると、1階にあるというレストランに向かうことにした。
今日の予定はこうだ。
まずレストランに行き、僕のおなかをみたす。
次に、機械類を置いてるショップへ行き、燃料と、危ない部分のパーツの購入。
あとはぁ…てきとうにいこうかなぁ・・・。
なんて考えていた。もちろん僕だけの勝手な思考なんだけどね。
「ラティエルここかなぁ。」
「そうだね。でも僕ここきても意味ないんだけどなぁ・・。」
「…それっていやみ?」
なんて軽い痴話げんかをしながら店内に入ると、広々とした店で
インテリアなんかもところどころにちりばめられていて、とてもレトロでお洒落な店だった。
「うわぁ…。」
「お客様。当店は乗り物の立ち入りは禁止です。駐車場においてください。」
「残念だねラティエル。まぁ寒いなかがんばってね。」
「…そっちこそ嫌味でしょ?」
「なっ!バイクが!!しゃべった?!」
「はい。僕の相棒です。」
この街ではやはりこの進歩には浸っていないようだ。
前の街ではすばらしい科学の進歩だと好評を浴びたのに
なんだかこの街ではこのバイクを否定してる
いや…むしろ恐れているような、そんな感じだ。
「残念ですがお客様、今すぐ我がレストランから出て行ってください。」
「「はぃ?」」
返答もないまま、僕らはレストランから追い出された。
やっぱりこの街はおかしい。
たしかにこのラティエルはほかと違ってしゃべる。
でも今まで追い出されたことなんかない。
この街には何かがあるんだ。
「で?どうするの?イオは引き下がるわけないんでしょ?」
「当たり前だろ?ご飯食べさせてもらえなかったんだよ?」
「…食べ物の恨みは恐ろしいね。」
「ん?なんかいった?」
「いや、別に。」


「よーするにラティエルがしゃべらなきゃいいんだよ。」
「…そうだね。なぞ解決までしゃべらないよ。」
「うんうん」
そうして僕らは燃料の確保のためお店を探した。
街はさほど広いわけではないが、店がずらりと並んであって
迷うくらいの店数だった。
「あー…あ。あったここだ。」
カラン・・・
「いらっしゃいませ。」
ここの街は一見見た感じ、レトロな町並みだ。
そしてここも、木造のハウスで、こんもりとした小さなランプが
ここの店を明るく照らしている。
「すいません。このバイクの燃料なんですが・・。」
「ん?おや・・また古いバイクに乗っているんだね。でもうちはちゃんとあるから心配しないで。」
「ありがとうございます。」
「ちょっと待っててくれ。」
すると店の店長が奥の倉庫へといってしまった。
しかし、なぜここの街はしゃべるものはだめなのか?
そういえば・・この街を探索したが、機械らしきものはどこにもなかった気がする。
掃除は箒でやっていたし、洗濯は手洗いだった。
人々も徒歩だし、そういえば街の門で「街ではバイクに乗らないように」とまで言われた。
ただ単に、環境のためなのか?
「お待ちどうさん。これだね。」
「はい。ありがとうございます」
「御代は…。」
すると、足元で何かが動く音がした。
何かが床の上を移動しているような・・・。
足元を見てみると、そこには一匹のねずみが姿をあらわした。
「ねずみ?店長ねず…。」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁl!!!!!!!!!!!」
声を上げて叫んだのは、店長でもなければ、イオでもない。
そう。それは紛れもなくラティエルの声だった。
「なっ!…まさかあんたら!」
噂というのはとても早く広がるもので・・。
多分これを聞くと、町中に広がったんだろう。
もぅ僕らは危ないお尋ね者になっていた。
「でていってくれ!!あんたらにうるもんはない!!!」
レストランとつづく店からの追放。
あと少しで燃料が入ったのに…。
「もぅ!なんでねずみにこわがるんだよ!バイクのくせに!!」
「僕はねずみが嫌いなんだ!」
「もぅ…。」
大声を出した結果、周りには多くの人がいたのに
一瞬で消えてしまった。
やはりこの街は機械を拒んでいる。
何故?
「でもさぁイオ。こうなったら街を出るしかないんじゃないの?」
「そうだね。でも…」
確かにこのようじゃ街中に僕らのうわさは広がっているだろう。
どこかの路地裏に寝込んだりしても、寝ている間に何をされるかわからない。
かといってもとまるところもない。
いまこの街を出てしまったら、多分。いや絶対
二度とこの街には足を踏み入れることはできないだろう。
「うぅ…。」
「あんたら…うわさの旅人かい?」
途方にくれている僕らに、1人のお姉さんが話しかけてきた。
この街ではありえない光景に僕らは驚くほかなかった。
「あの…あなたは僕らが怖くないんですか?」
「…話はうちでしましょう。ここじゃあんたもあたしもみが持たない。」
確かにメインストリートのど真ん中で、要注意人物と話すのはまずい。
僕らは身を潜めながら、彼女の店へと転がり込んだ。

彼女の店は大人たちが集うバーで、昼間は準備中の札が立てられていた。
「あんたら、ここのルールを知らずにきたんだね。」
そういうとお姉さんは店のカウンターのほうへ行き、僕にミルクを出してくれた。
昨日の夜から何も食べてない僕にとってそれは天使がくれたような気分なわけで・・・
もちろん僕はそれを人前にかかわらず飲み干した。
「あら…ずいぶんな飲みっぷりね。」
「すいません。昨日から何も食べてないもので…。」
「じゃああたしが作ってあげるわ。もちろん御代はいらないよ。」
僕らは砂漠の真ん中から、青いきれいなオアシスに飛び込んだような
そんな天国のような気分にひたりながら、人のやさしさを心身と感じた今日この頃・・。

「はい。できたよ。」
お姉さんが作ってくれたのはトーストと、ベーコンエッグ、さらに
おまけとして野菜サラダと一般的な朝食メニューがならんだ。
僕はたまらず、礼を言わないですぐ、食べ始めてしまった。


「ふぅ〜おいしかった。本当にありがとうございます。」
「いいんだよ。」
助けてくれて、ご飯も食べさせて・・ましてや片付けまで・・全部
彼女はいったい何者なんだろう?
本当にこの街の住人なんだろうか・・。
そして・・彼女は真実を知っているのだろうか?
「すいません。あの…」
「私はキール。あんたが知りたいのはこの街について・・そうだろ?」
「あ…はい。」
「それは…もう15年前かな…。」
キールの話によると、昔この街は機械ですべてが構成されていたらしい。
もちろんラティエルのように、しゃべる機械もあったといわれている。
いまの街では考えられないような、そんな街だったと彼女は言う。
しかし事の発端は15年前のこと
あるホテルの接待ロボットが、原因不明の故障により
客に暴行を加えて、その客を九死に追いやったらしい。
しかしそれはただたんに、ホテル側の扱いによる不注意として片付けられた。
だが・・それは悲劇への幕開けにしか過ぎない出来事だった・・。
街のすべてのロボットたちは次々に人間に危害を加えるようになり
人々は日々、ロボットを恐れながら生きていく。
そんな街になってしまったそうだ。
しかし人間達はこのままではいけないと、街中にマイクロチップをまき、彼らを制御したそうだ。
ロボットたちが暴走した原因はいまだ不明だが、最後に残ったロボットは
『我らは…いつ…。』
そういい残し、この街から消えていった…。
それ以来、この街は機械をこばんだという。
しかし、この街にも特例があって『ロボット』その物の立ち入りは断じて禁止されているが
旅人の乗り物や、情報収集用の機械類は1日限定の許可があるらしい。
そのため、街にある機械関係店は、旅人がどうしても、という強い願いから生まれたそうだ。
しかし毎年行われる街の町会では、その特例はいかなるものかという
町民からの苦情が殺到していて、この特例は今年度を持って撤回されるそうだ。
「そうだったんですか…。」
でも・・それなら何故彼女は僕らを拒まないのだろうか?
15年前なら、彼女もその事件に巻き込まれただろう。
「あなたはなぜ僕らを?」
「…過去におびえて何があるのよ…。」
このとき、よくわからないが、彼女のそのせりふに僕は胸をつかれた思いがした。
この苦しい気持ちはなんなんだろう。
そんな時、彼女の店に訪問者が現れた、1・2・・・いやもっと大勢の。
「あんたら奥に隠れてて、そうだ、地下室にいきなさい!」
キールの指差すほうへ僕らは走り去った。
きっとあれは街の長。もしかして僕らの存在に気がついたのだろうか?
地下室に入っても、床が薄くなっているため、キールたちの声が聞こえた・・・
「あら…まだ店は準備中よ。」
「この店にがきはいるか?バイクと一緒の。」
「ここは大人のバーよ。餓鬼なんてお断りだわ。」
「…まぁいい。みつけたらわしらに報告するように」
「えぇ。協力するわ。」
会話はここでなくなった。ただ聞こえるのはドアを勢いよく閉める音と
彼女の深いため息だった。
「…キール…。」
「あら聞こえてたの?」
「イオ。僕ら出て行ったほうが…。」
「そうね。命を失いたくないならそれがいいわ。でもいまはだめ夜…いや早朝に。」
僕にはどこかしら、罪悪感というものがあった。
僕らが悪いのに、彼女をことに巻き込んでしまった気がして
そして僕の胸騒ぎが…
どうか…彼女に不幸が訪れませんように…。

「あなたたちは何故旅をしているの?」
「…答えを探して。」
「答え?…じゃあ答えを見つけたらあなたたちのたびは終わっちゃうのね・・。」
「はい。」
こんもりとした、ランプのもと、僕とキールはバーで話し合っていた。
ラティエルはもう寝ていて、いびきをぐーと鳴らしている。
しかし僕は眠れなかった。
なんとなく・・彼女との時間をもっと作ったほうがいい気がしたから・・
それに彼女から誘ってきたのだから断るわけにはいかないしね。
「その疑問って何?」
「…人は何故生きながらえ、何でいつづけなければならないのか、そして・・何のために死ぬのか…。」
「…なら…。」
そこで彼女は言うのを拒んだ。
そしてふっと息を吐き、くすっとかすかだが笑った。
「何?」
「…いいわ。やっぱりやめとくわ。」
「…何故?」
「もし答えだったら困るじゃない。」
「…ずいぶんな自信家だね。」
「…そうね。あたしの短所よ。」
このときいったい彼女は何がいいたかったんだろう…
その答えを聞かぬまま、僕は気がつけば、深い闇に迷い込んでいた。



「…っ…!!!」
なにやら騒がしい…朝?
気がつけば、4:00出発時間になっていた。
しかし彼女はいなく、なにやら玄関のほうで彼女の声がした。そして、昨日の長の声も
「キール。何故ここにオイルのにおいがする?」
「ガスじゃないの?」
「昨日店を閉めたそうだな?定休日でもないのに。」
「それは…気分よ。気持ち悪かったの。」
確実に彼女は怪しまれていた。これでは出ることはできない。
もし…もし僕が今出たら、彼女はどうなるだろう?
共犯として罰則を与えられるだろうか
いや…もし僕が無理やり止めさせたとすれば?
「マチオサさん。」
僕は片手をラティエルのハンドルに、そしてもう片方に銃を握り締めた。
「なっ!やはりここか!!」
「!!」
「僕は彼女に銃を押し付け、無理やり止めさせたんだ。彼女に罪はない。」
僕は止め具を抜き、長の心臓にめがけた。
一歩間違えれば犯罪。でも彼女を救いたいから…。
「やめて!長きいて!ロボットたちはあたしたちに思いを伝えたかったのよ!!」
キールが叫んだ…それは真実を知っての行動。
彼女はまだ何か知っているのだろうか?
「ロボットたちは最後にこういったわ『我らはいつになったら人間の友達になれる・・?』」
「…。」
「彼らは私たちと友達になりたかった!でも…やりかたがわからなかった。だからお互い同じことをし、わかりあおうとした!!一番最初の客が死にそうになったのは、ロボットのせいじゃない!客の上から落ちてきた花瓶に気づき、からだをはってかばってくれたのよ!」
「そんなのでっちあげにすぎん!キールわれわれと来てもらう。」
「おっと・・僕を忘れないでください。長。僕はこのまま何もせず街をでます。だから彼女に危害は加えない…そう約束してください。できないのならばこの引き金を引いてもかまいません。僕は本気ですよ。」
「…わかった。」
交渉は成立したらしい。僕は止め具を直し、銃をベルトのケースにしまった。
しかし、そこで僕は気を抜いてしまった・・・長に・・・だまされたのだ。
「がきめ!所詮お前はがきでしかないのだ!わが街に足を運んだのが不幸だったのだな。わしに銃を向け威嚇したんだ。そして、機械をもちこんだ…立派な犯罪だ。」
いま銃をもったところで、僕は引き金を引くことはない。
かといってナイフも無理だ。手を後ろにした瞬間殺される
つめが甘かったか、ここまでか…。


バァン…。


銃声が鳴り響くのを、僕は目を丸くして…そして我を疑いながら…耳に入れた。
僕の目の前にはキールの姿があった。
「キール!!」
彼女の腹部には銃弾が一発、そしてその傷口からは大量の出血が。
彼女は僕の身代わりになってくれた…何故?
「キール?!どうして!!僕はただの他人だよ!?」
「…あなたには…旅をしなければならないでしょ…?」
「でも!!!」
キールは精一杯の力で手を僕の頬に置いた
そして…ないていた。
「昨日の…疑問…あたしは…」
「おねがい。言って…ぼく聞きたい。」
「…何故…生きる理由が…死ぬための理由が…必要なの?」
「えっ?」
「いちい…ちそんなのに理由が…必要なの…?それは…あなたがそれに…すがりたいから…そうじゃない…?」
「キール…ぼくは…」
「…よかったわ…答え…違うのね…それじゃ…旅…つづけて…。」
すると、キールの声がだんだんかれていくのがわかった。
それはまるで、役目を果たした花のように、美しく…はかなく…
そして…彼女が再び目を覚ますことはなかった…。
「キール…。」
「さて…わしらにそのバイクを…。」
「ラティエル!」
「あいよ!」
ぼくらは窓めがけて逃げ込み、この店を後にした・・。
キールがぼくらに残したもの…それはたった1日だけなのに、すごい重い何かを残した。
ぼくには…受け止められないくらいの…。
「何…ないてんの?」
「違うよ…。」
街をでたら、ぼくらに冷たい雨が舞い降りた…
悲しみを包む、ちょうどいい口実の天候で……
ぼくはラティエルに気づかれることなく、かすかながら、大粒の涙を流した。



人は何であって何でいなければならない…
そんな固定的なルールなんてこの世に存在しない。
人は何のために生まれ、何のために死ぬのか。
そんなのぼくの知ったことじゃない。
そんなこというのなら死ねばいい。もし勇気がなくてそれができないのならば
勇気が出るまで生きながらえばいい。それがその人の生きる理由になるだろう…。
何故人は正確な、切実的な答えを求めるのだろう…?
それは何かにすがりたいからだと思う。
生きるための理由にすがり、死ぬための理由に納得して死んでいく。
ただの自己満足にしか過ぎないのではないだろうか?
大切なことは理由とかじゃなくて
その一生をどこまで自分なりに有意義に過ごせるか…
そしてやるべきことを成し遂げられるか。
ぼくは彼女に言われた
『旅を続けなさい』と…
だからぼくは旅をする。
それがぼくの成し遂げなければいけないことだから…。


人は醜いものだ…
だからきれいになっていくのが…楽しい。
2005/03/25(Fri)18:35:30 公開 / 神威
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■作者からのメッセージ
お初にお目にかかります。神威と申します。今回、初めて人の前に出した作品なんですが・・率直な意見、感想ほしいです。なので、私にかまわず、ズバズバいってほしいです。感想、意見、お待ちしてます。
この作品に対する感想 - 昇順
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この作品の投稿者 及び 運営スタッフ用編集口
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