- 『色のある世界』 作者:Town Goose / ショート*2 ショート*2
-
全角1282文字
容量2564 bytes
原稿用紙約4.1枚
目に映るものは総て無虚、
黒と表さないのは色なんてものを視た事がなかったからだ。
彼の名前は佐々木 創玄(ささき そうげん)盲目と言う先天的な位置づけをスタート地点に置かれてしまった現在中学3年生である。
別に、目の見えないことに不満を感じたことは無い。もちろんそれは、眼が見えては見えないものが視えて来たからだ・・・・・なんてことは無い。
ただ、どうでもよかった。果てしなく、どこまでも、気にする以前に気にする理由が見つからなかった
それは彼の意識が果てしなくプラス思考だったからであろうか?
否、ただ、先天的なものであったから、色のある世界を羨む前に存在を知らなかっただけだ。
「そんな時、俺は不良に絡まれたとさ…」
そんなことを考えている場合ではないのが今の自分です、はい。道を歩いている途中、何故だか自分の周りは囲まれていた。この柵が不良だと気づいたのはいちゃもんを付けられたからだ。
『…どこ見てんだごらぁ!!…』
俺は、どこも見えない。そんな事言ってもこの人たち馬鹿だから分からんでしょうが…第一気付けよ、何で白い杖を持ってるのか、それ位分かるでしょうが。
次の瞬間、意識が飛んだ。何が起こったかなんて分かるはずがない。無眼(め)を覚ました瞬間、激痛が走った。
胸にあった財布の圧迫感が消えている。
何も出来ないのは知っていた。眼が見えないと、相手の危険度が分からず、その大きさを限りなく過小評価するか、限りなく過大評価することしか出来ない。
だから、受け入れるしかないのだ。どんな過大のものでも、どんな過小なものでも、危険が分からない以上、受け入れるしかないのだ。
「畜生…いてぇな………」
それでも、佐々木創玄は眼の視得ない事を呪わない。
「何か、カッコイイかも、俺」
そんな嘘孤自賛(じがじさん)を真に受け、ニヤリと顔を歪ませながら家へと帰る。
―――――ひた、ひた、ひた、ひた
杖は折られてしまったが、ここから家までなら何とか壁を伝って帰れるだろう。
―――――ひたひたひたひたひたひたぁ
――――――愚著っという何か変な音
「あれ…?」
何か、硬いものが後ろから前に押し出された。
抵抗は無い、そうなるのが当然のように光沢の帯びたモノが背中と胸を繋ぎ合わせる。まるでところてんの様だ、なんてことを考える自分は…
視界が一気に白くなる、否、分からないそれは白と言っていい色なのか、それは青かそれは赤か、もしかしたら群青色とか言うものかもしれない。
視得る、色の世界が。其処にあったのは道路と呼ばれるもの、灰色の平らで太い線が目の前にある。
そして、自分の胸から溢れる血液、ならば今、目の前に移っている色が赤色というものだろう。
そして、後ろにある何色か分からないジャケットに赤いTシャツ、そして何色か分からないズボンをはいた男。
目の前が暗くなっていく、そして、虚無へと戻る…いや、虚無ではない、それは黒色。
「畜生、・・・・・・・・・・・」
其処にあった無念は
「畜生、眼が見えねえ……」
完
-
-
■作者からのメッセージ
素晴らしく突っ込みどころの多い作品です。批判をよろしくお願いいたします。
自分が今視ている色が確かな赤色であるという確証は無く、他の人が言う緑色が赤色という世界の定義となっているのか。もしかしたら自分以外の人と眼を交換したら色の変な世界が広がっているのではないか。そんなことを考えて書いてしまった作品です、はい・・・