- 『『今さらなんて思うけど』』 作者:浪速の協力者 / 恋愛小説 恋愛小説
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原稿用紙約4.8枚
今さらなんて思うけど、俺の彼女の有希(ゆき)は可愛かった。
笑っている顔は勿論、照れた顔、拗ねた顔、俺と喧嘩して怒ってる顔。
全部が可愛かった。
別にただ顔が可愛いってだけで付き合ってるわけじゃない。
少し怒りっぽくて、不器用なところもあるが、何かに取り組む時は常に真剣そのもので、最後までやり通さなきゃ気が済まない性格だし、たまに凄く優しい面を見せる時がある。
俺は彼女のそういう部分も好きだった。
短編小説 『今さらなんて思うけど』
で、今はデート中なのだが、当の有希はUFOキャッチャーの中にある標的(小さいテディベア)をじっと睨みつけながら、格闘中であった。
現在、3回目の挑戦。
先の2回はたしかに惜しかった(そう見せかけて、何度も挑戦させようという、店の策略かもしれないが………)
1度は捕まえて持ち上がるのだが、ゲートに向けて進みだした瞬間に落ちるのだ。
で、3回目の結果はというと………。
「うぅ〜……。」
と、機械を前にしてうなだれる有希。
3回目も先の2回と全く同じ結果。
まるで、機械にバカにされているようだった。
そんな姿がまた可愛らしくて、笑っていると、
「何よ!笑うんだったら、手伝ってよ!」
と、怒ってポカポカ殴ってきた。
「分かったよ。分かったから、こんな所で八つ当たりをするな。」
「八つ当たりじゃないわよ!」
どう考えても、完璧な八つ当たりだ。
「1回で獲れなかったら、あとで奢りだからね。」
何て理不尽な話だ。
あのテディベアが欲しいのは、有希であって、俺ではない。
「………じゃあ、もし1回で獲れたら?」
「今夜の晩御飯を奢るわ。」
どうやら1回で獲れるわけがないと思って、大きく出てきたようだ。
俺は100円玉を入れて、クレーンを動かし始めた。
そして………
「はいよ。」
「………ウソ?」
俺は、先ほどまで機械の中に入っていたテディベアを手渡した。
有希には言った事がなかったが、俺はこのゲームがめちゃくちゃ得意だった。
かつては町内で『UFO名人』と謳われたほどだ。
報酬を手渡された有希の表情は、ポカンとしていた。
「ん?どした?」
「………あ、ありがと。」
「で、晩飯、奢ってくれるんだったよな?」
「あ………。」
「久しぶりのデートだったから、今日はちょっと高い店に行こうと思ってたとこだったんだよな〜。」
「………そ、そんな約束してない!!」
と言って、有希はソッポを向いた。
「ま、そういう事にしといてやるよ。」
俺は有希の頭にポンと手を置いて、撫でてやった。
ソッポを向いていたから、表情まではよく見えなかったが、有希の顔は少し赤かった。
だが、別に撫でているその手を振り払おうとしたりはしなかった。
「さて、スタバでコーヒーでも飲むか?」
「………うん。」
俺たちは手を繋いで歩き出した。
幸せだった。
有希はデート中によく怒ったり、拗ねたりするが、こうやって手を繋いでくれるのは、有希も幸せだからだと思う。
「有希。」
彼女は俺の方を振り向いた。
今さらなんて思うけど、
「好きだぞ。」
Fin
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■作者からのメッセージ
自分で書いててめちゃくちゃ恥ずかしかった、浪速の支配人です///
約1年ぶりの投稿でございます。
実を言うと、これが自身初のオリジナル短編です。
ぶっちゃけ、ほとんど思いつきで書きました(何)
で、書き上げるまでの所要時間は………たったの30分(笑)
次回はもうちょっと考えてから書きますので、どうか逃げないでください!