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『未知の危険生物 T〜W』 作者:与那覇陽光 / ホラー ホラー
全角7909文字
容量15818 bytes
原稿用紙約28枚
「ううっ」
私はのそりと起き上がった。
「?」
なぜこのようなところで寝ていたのだろうか。いや、その前に私は何者だ?なぜ記憶が無い?
私はあたりを見回した。
どうやらここは何らかの施設の廊下らしい。
それにしても薄暗い場所だ。
ん?
私は気づいた。
右手に懐中電灯、左手にジュラルミンケースを持っている。
懐中電灯・・・つく。ジュラルミンケース・・・かぎがかかっていて開かない。
そして、格好をよくみると、私は防護服を着ていた。
鉄が剥き出しになっている廊下には、血が飛び散っていた。
私は立ち上がった。
どうやら右足をひねっていたらしく、痛い。
目の前にロックされていない扉があった。
開けてみた。
休憩室らしい。
あまり広くない部屋の中央にテーブルと椅子が置かれている。
椅子は二つあり、触ってみると冷えていたので、この椅子に座っていた人は何時間前にどこかへ行ってしまったらしい。
テーブルを見ると、マグカップが置かれており、その下に書類が挟まっていた。
手にとって読んでみた。
『四月二十日にVIPが視察に来る。各員担当の生物を丁寧に扱い、VIPを満足させるように。 国際生物研究組織南極支部局長』
「?」
なんのこっちゃ。
てか、ここ南極かよ!?それに研究所!?
ん?下に何か書かれている。
それは赤ペンでこう書かれていた。
『我々を殺す気か!俺は帰りたい、故郷に!』
なぞめいた書類だ。
生物?
・・・・この防護服からして私はどうやらここの職員らしいな。
私は休憩室を見回した。
カビが壁のいたるところにぽつぽつと発生している。
不衛生な所だ。
よく見ると、マグカップにも発生している。
で、もっとよく見ると、私のきている防護服にも発生している。
どうりでかび臭いと思った。
「はあ、・・・・私は何者なんだ?」
私はそう呟くと、休憩室の外に出る扉へと向かった。

              T


もう一つあった扉から出ると、そこは薄暗いオフィスだった。
中央に職員用のデスクが何台もあるが、そのデスクを使用していた職員達はあわてていたらしくデスクの上に物が散乱していた。
やはりここにもカビと血があった。
床に血がべっとりとついた茶色のファイルが落ちている。
開いてみると、そのファイルには書類がはさんであり、奇妙な事が書かれていた。
『  生物004は死亡。  は育成強要剤が強すぎたようだ。危険  043は育成強要剤の効果で順調に成長している。同じく  生物188は日に日に知能が高くなっている。』
ところどころ血で読めなくなっていたが、なんとなく内容はわかった。
「要するにここは危険生物を研究している施設ってことか。・・・休憩室にかかれていた言葉の意味が飲み込めたぜ。」
私はファイルを適当な職員のデスクに置くと、奥のほうにある扉へと向かった。
ウィーン。
扉が開く。
廊下だ。
やはりこの廊下にも血が飛び散っている。
カンカン・・・・私は廊下を横切った。
突き当たりにまた扉がある。
開けた。
また廊下だ。
おや?こんどは扉が二つある。
廊下の突き当りと右側。
とりあえず一番近い場所にある右側の扉をあけた。
その部屋には椅子が一つにその椅子の上に雑誌が一冊。
椅子のそばには焼却炉らしいものがある。
私はケースと電灯をおいて、雑誌を手にとった。
「『目撃!宇宙人』?」
ぱらぱらとめくる。
「NY郊外在住マイケル・デモスト(二十)・・・・街に向かう途中彼女が、あ!といって空を指差したので見上げると、光りが横切っていく所だった。私は天文学をとっているので、最初は流れ星かと思いましたが、あの大きさやうごきからしてUFOではないかと・・・・くだらん。」
私は雑誌を椅子にたたきつけた。
ばしん!という音が静まり返った研究所に響き渡る。
私は次に焼却炉を見た。
錠はついているが、鍵はかかっていない。
私は錠をはずして焼却炉の扉をひらいた。
「っわ!?」
いきなり台が飛び出てきた。
しかもその台の上には焼死体がのっている。
「・・・・!?」
私は気持ち悪くなってケースと電灯をひっつかむと急いでもう一つの扉の方に走っていった。

       U

廊下の突き当たりにあった扉を開くと、そこは研究室のようだった。
パソコンが三台あり、一台は壊れていたが、あとの二台はモニターがついたままだった。
私はモニターを見てみた。
ウィンドウが最小化してあった。
「?」
私は開いてみた。
『もし、生き残っているものがいたのなら警告する。生物を捕らえるよりも逃げる事を考えろ。』
「は?」
私はこの言葉を理解できなかった。
「生物?」
成り行きからして危険な生物が逃げたのは確かだが、そんな危険な奴らを捕まえようとする奴なんてまずいないだろう。
私はもう一台のパソコンに同じくウィンドウが最小化してあるのを見つけた。
開いた。
『キングに気をつけろ。キングは完全に獣化してしまった。奴は食べるということしか頭にない。』
「・・・キング?」
私は不安におちいった。
獣化?食べる事にしか興味が無い?キング?
私はその場に座り込んでしまった。
歯はかちかちと音を立て、体はぶるぶると震えていた。
もし、キングがこの部屋にやってきたら?この部屋を出た所で襲われたら?
なぜ私はこのような所で働いていた?
一時間ほど私は恐ろしさのため座り込んだままだった。
だが、しまいにこの研究所を出たいという気持ちが強くなり、私は立ち上がって出口を捜す事にした。
「ここはオートロック式か・・・てことはコンピュータで管理されているな・・・・。」
私は椅子に座ると、パソコンをいじりだした。
・・・・どこにアクセスしたら出口の場所がわかる?パスワードがあったらどうする?
「えーい、何とかなるさ!」
私は呟くと、マウスを動かし始めた。
クリックする音が静かな研究室に響く。



暗闇の中、何かがもぞもぞと動いている。
「リック、おいで、行かないで、捕まるわ。」
リック、と呼ばれたそれは動きを止めて声をかけた者を振り返った。
その者は女だった。
しかし、異形だった。
両耳はとがっており、顔にはうろこがすこし生えていて、肌の色はうすい水色。
唯一普通なのが目だ。
座り込んでいる膝には何かが乗っていた。
「あ・・・行く・・・あいつらの・・・残りがいる・・・・。」
リック、と女によばれたそれは片言で答えた。
「サ・・シャ・・・ぼく・・・行く・・・あいつらの・・・残り・・・・殺す。」
サーシャという名前らしいその女はリックに手を伸ばす。
「行かないでリック、返り討ちになったらどうするの?」
リックはうつむいた。
「お願い。行かないで。」
サーシャがもう一度言う。
リックは頭を振ると、通気候へと姿をけした。
「リック!行かないで!」
サーシャが叫んだ。
すると、サーシャの膝にのっている何かがうめき声をあげた。
「あ、ごめん兄さん・・・でも、リックを止めないと・・・殺されちゃう。」
兄さんと呼ばれたそれの形もまた異形だった。
右腕が熊のようで、顔を完全な熊。ただ、少し違う所はその熊の耳にはピアスがついていること。
人間の腕をした左手の爪は熊のようなつめだった。
顔と右手を除けば後は普通の人間だ。
「わかってるサーシャ・・・・だが俺は動けないんだ。・・・体が拒否しているんだこの細胞を。苦しいんだ。体中が痛くて起き上がれないんだ。」
「兄さん・・・。」
「だからサーシャお前が行け、俺を置いてリックの後を追ってくれ。俺は大丈夫だから。」
「兄さんそんな・・・。」
「行ってくれ。たのむサーシャ・・・。」
サーシャは困ったように目を泳がせていたが、ふいにこくんとうなずくと膝に乗せられている兄の頭をそっと床の上に降ろし、立ち上がった。
「わかった。私がリックを連れ戻してくる・・・。」



私は完全にパニック状態になっていた。
パソコンのファイルというファイルを開くつどに異形なかたちのものの写真が出てきて、クィーンだのジャックだの、終いには042などとしたにかかれていて、何時になにやら難しい名前の薬をうっただのさなぎのような――003とか書かれていた――生物がなにも食べないなどなどの書類が出てくる。
「なに研究してたんだよこの研究所は・・・。」
私は嫌悪感を覚え、パソコンをシャットダウンした。
椅子の背もたれに全体重を預け、天井を見た。
カビが発生していて、壊れた蛍光灯がちかちかと光っている。
私はパソコンの置かれたデスクの下にある自分の足を動かした。
カサ・・・
何かに触れた。
「なんだ?」
私はデスクの下に手を伸ばした。
折りたたまれた書類が一枚出てきた。
「?」
開いてみると、こういうことが書かれていた。
『エントロピーの法則が進んでいる。エリックがあのビンを落として割ったせいだ。今日中に全生物を処分する事になるだろう。』
「エントロピーの法則?」
私はなぜかこの言葉を知っていた。
確か、簡単にいえば形あるものは壊れていくという法則の名前だ。
だが、この法則は風化と同じく何年もかけて物は壊れていくと言うやつじゃなかったか?
それが進んでいる?ではこの研究所にカビが発生しまくっているのもそうなのか?
ガタン!
ふいに音がした。
私は驚いて振り返った。
何もいない。
「?」
ガン!
また音がした。
私はジュラルミンケースをにぎって身構えた。
ガン!ガン!ガィン!
どうやら上から音がする。
「・・・キングか?」
私は呟いた。
ガン!ガン!
冷や汗が首をつたっているのがわかった。
ガン!ガン!
どうやら通気候を壊して入ろうとしているらしい。
さらに身構えた。
ガギン!
音をたてて通気候が壊れた。
どさ!とその通気候から何かが落ちてきた。
私はそれに目をみはった。
ガラン、と通気候の蓋が床にころがる。

           V

私は腰を抜かした。
ジュラルミンケースを握っている手が小刻みに震えている。
今、私の目の前にいるのは――――

             

                      子どもだ。





「な、なな?」
しかし、その子は異様だった。
口からはよだれをぼたぼたとたらし、目はぎらぎらと血走っており、四つんばい。
服装は看護士が着ているような白い服。
それには血が――おそらく返り血――がべっとりとついている。
指のつめは鷲のようなつめだ。
私はその子をただ驚きと恐れの混じった目で見ていた。
「う・・ううっ・・・こ・・・・殺す!」
そう言うとその子は飛び掛ってきた。
「うわあ!」
私は右に避けた。
その子は私の後ろにあったデスクに勢いよく激突した。
「う・・・・っ」
その子は一瞬よろめいたがしっかりと踏みとどまり、頭をふった。
鼻からは血がぽたぽたとでて、口の中へ消えていった。
しかしそんなことなどまったく気にせずその子はぎっと目を私に向けると、また飛び掛ってきた。
私はとっさにジュラルミンケースでその子の頭を殴った。
「ぐぎゃ・・・!」
その子は簡単に吹き飛ばされて、床に どか! とぶつかり、ごろごろところがって、デスクにぶつかりようやく止まった。
「ぐうううっ・・・・。」
その子は起き上がった。
私が殴った所は、よほど強かったのか、血がつつ・・と流れている。
私はふらりと立ち上がった。
その子は様子を見るように四つんばいの体をさらに低くして私の周りをぐるぐると回り始めた。
「ううっ・・・。」
その子の口からは鼻血のまじったよだれがぼたぼたと流れ出る。
と、ふいにその子はぴたと止まって鼻血をぬぐった。
私はいまだとばかりにその子を蹴り上げた。
「ぐ・・・・っう!」
簡単にその子はひっくり返った。
私がジュラルミンケースでさらに殴りつけようとすると、その子はさっとすばやくかわし、私のみぞおちをけりつけた。
「ぐっは・・・っ」
私は膝をついた。
その子はそれを見るとにたぁと残忍に笑い、手を振り上げた。
その鷲のようなつめで私を切り刻もうとしているのだ!
ぎゅっと私は目をつぶり、これから来る痛みを覚悟した。
何も起こらないまま数秒流れた。
「?」
私は目を開けた。
その子の手は空中で静止しており、その手を魚のような奴が押さえていた。
魚のような奴は静かにいった。
「リック、やめなさい。」
そうかその子はリックと言う名前なのか。
「だ・・・・サーシャ・・・・こいつらは・・・僕たちを・・・。」
そうかその魚のような奴の名前はサーシャか。
「わかってる。でもやめなさい、何が起こっているのかこいつに聞きたいから。」
ううっとひくくリックは唸るとこそこそと部屋の隅までいって丸くなった。
その様子をサーシャは確認すると、私に聞いてきた。
「何が起こっているの?」
は?何のことだ?
私はきょとんとサーシャを見た。
「いったいどうして誰もいないの?どうして周りが血だらけなの?」
そりゃこっちのセリフだ。ってかあんたらがやったんじゃないのかよ?
「キングが殺したんだろ?ここの職員を。」
私はリックを指さしながらいった。
「やだ・・あの子はキングじゃないわよ。あの子の研究名はジャックよ。」
はい?
「あなたここの職員でしょ?そんなことも知らないの?」
ええ、知りませんとも。記憶がございませんもの。
サーシャはあきれた顔で私を見た。
「・・・あなた本当にここの職員?」
私は肩をすくめる事しかできなかった。
サーシャは困ったように目を泳がせると、リックを呼んだ。
「リック、戻るわよ。この人も連れて行くから。」
と、私を指さしながら言った。
私がきょとんと突っ立っていると、サーシャが言った。
「奴らが来たら殺されるわよ。」
奴ら?なんだそりゃ。
リックは私を睨み上げると、いきなり私のみぞおちにおもいっきり頭突きをくらわした。
この・・くそがき・・・
私は気を失った。


私は歩いていた。
研究所の廊下は明るかった。
蛍光灯が壊れていないからだ。
私とすれ違う人たちは私に頭を下げる。
だが私はそれを当たり前のように受け止め、頭を下げかえさない。
皆、防護服を着ている。
私は『関係者以外立ち入り禁止』と書かれた扉の前に来ると、ポケットからIDカードらしいものを取り出し、扉の横にあるカードを読み取る機械にさっと通した。
ぴぴっと音が鳴り、扉の上にあるランプが蒼く光る。
がしゃっとと私は扉を開け、中に入った。
個室にまた扉がある。
扉の横にモニターとキーボードがついている。
私はキーボードの横についているカードを読み込む機械にサッとカードを通し、暗証番号を入力した。
扉が音を立てずに横に開き、私は扉をくぐった。
研究室らしい。私の入ったところは。
研究室には数十人の人が行ったりきたりしていた。
研究室の奥にカプセルがあり、私はそのカプセルに近づいた。
そのカプセルの中には―――

           W

私は飛び起きた。
汗が全身から噴出し、防護服が肌にまとわりつき気持ち悪い。
「どうしたの?うなされていたようだけど?」
サーシャが覗き込んできた。
「い、いや、何でもない。ホントになんでも・・・。」
私は手を振って立ち上がった。
と、とたんに頭をぶつけた。
「痛っ・・・」
私は頭を押さえた。
ああ、そうか、ここはリックとサーシャ、それと彼らの兄ジムの隠れ場所。
とても狭い部屋。
正四角形の密室。
ここにもカビが発生している。
テーブルが一つに、通気候が一つ。
そして私はそのテーブルの下に眠っていたらしい。
そうか、私はリックに気絶させられたのだった。
「・・・なぜ気絶させた?」
「この場所を知られたくなかったから。」
サーシャはさらりと答え、テーブルの下に私を眠らせたのはリックだといった。
「リックの遊び心よ。」
サーシャはそう言って筋肉の少なくなった顔でひきつった笑みを浮かべた。
私はテーブルの下から這い出てきた。
「・・・狭いな・・・。」
サーシャはそうかしらと答えて、通機構に消えていった。
私はその間に頭を整理した。
まず、これは二度目の目覚めだ。
最初はここについてすぐ目が覚めた。
で、ジムを紹介させられて、そのあと眠ってといわれた。
なぜかは知らないが。
で、眠れないといったらリックが私の頭を殴って私は今さっき目覚めたと。
「・・・あのくそがき。」
私はぶつぶつ文句を言いながら、立ち上がった。
狭いわりにはこの部屋の天井は高い。
私はできる範囲のストレッチをした。
筋肉がだいぶほぐれてきた所でサーシャが帰ってきた。
「缶詰があったわ。」
それだけいうと、ぽい、と私に缶詰を投げてよこし、リックを捜してくるといってまたどこかへ行ってしまった。
私は缶詰を手のひらで転がした。
「あ、缶きりがない・・・・。」
私は呟くと、溜息をついて座り込んだ。
「どうやって食べろと・・・?」
私はまた溜息をつくと、缶詰をテーブルに置き、ジムのほうに目をむけた。
ジムは眠っていた。
呼吸系等の器官が実験のさいにやられたのか、ぜーぜーと苦しそうに呼吸をしている。
私はそんなジムを見ながら夢のことを考えた。
あの夢にでてきたカプセルの中には薄い半透明な膜に覆われた何かがいた。
ただ、その何かは輪郭がぼやけており、わりと小さめの――動いていたから――生物でカプセルにはられたプレートになにか文字が書かれていた。
夢のせいなのか、私はその生物とプレートだけは見えなかった。
ただ、これだけはなんとなく分かった。
その生物とプレートが見えたとき私の記憶は元に戻る。
そうこうしているうちにサーシャがリックを引き連れて戻ってきた。
「リック、余り出歩かないでってあれほど言ってるでしょ!?」
「う・・・ごめん・・・なさい・・・・・。」
まったくとサーシャは溜息をついた。
「外に出てもいいか?」
サーシャは私を見て、一瞬嫌な顔をしたがどうぞ食べられないように気をつけてといって私を外に出した。
「ここに戻ってくるときは、合図して口笛で。迎えに行くから。」
サーシャはそう言って、私を通気候に押し上げた。
通気候は外見よりは少し大きかった。
かといってそんなに大きいわけでもなく、防護服を着た私がぎりぎり通れるくらいだ。
苦労しながら進む事三十分、私は汚れたくなかったので泥や血の後のついた場所は避け、適当に出口をさがし、通気候から出た。
そこは偶然なのかなんなのか、私が夢で見た光景とピッタリと重なった。
私はごくっとつばを飲んで歩き出した。
そして夢とまったく同じ行動をした。
ポケットを探り、IDカードをとりだし、『関係者以外立ち入り禁止』とかかれた扉を見つけ、IDカードを読み取らせ、扉を開け、またあらわれた扉も開け、研究室に入った。
研究室は血が飛び散っていた。
ばらばらになった死体があり、書類が散らばっていた。
私は嫌悪感を抱かずに死体をのりこえ、カプセルにむかって歩いて行った。
夢と少し違う所は、そのカプセルは開いていて、おそらくカプセルの中で育てていたのであろうその生物の栄養を得るものと思われるチューブが引きちぎられていた。
私はプレートをさがした。
捜しているうちに疑問に思った。
このカプセルはこの研究室にあるのと比べてひとまわりほど小さい。
リックが居たのだからこのカプセルに入っていたのは子どもなのだろう。
私はそんなことを思いながらプレートを捜した。
プレートはカプセルから数メートル離れた所に裏返しになって落ちていた。
私はプレートを拾い、裏返した。
その瞬間時間が止まったように思えた。
プレートにはこう名前が記されていた。
『キング』
2005/04/01(Fri)23:24:47 公開 / 与那覇陽光
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■作者からのメッセージ
ゲームをしていて思いついた作品です。
設定は多分未来。
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