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『光の旅人〜弱肉強食の剣〜』 作者:詩楼都 / 未分類 未分類
全角1518文字
容量3036 bytes
原稿用紙約6.05枚



「敵が退いていくぞー!」


「我等の勝利だー!」


 終わった……
 やっと終わったんですね
 長かった戦争も……
 神器を廻った争いが――。
 私たちの……政府軍の勝利ですね……




1.戦士ソフィア




「やったぁ!
 ユウダイくん!やったねぇ!」

 長い金髪、大きな黄色の瞳。
 長身に見事なプロポーション。
 赤い胸当てと赤い長ブーツを着こなし、
 腰には剣、手には銃を握った少女ソフィアは、隣の少年に飛びついて喜びを全身で表した。

「どけよソフィア、相手が全滅したわけじゃねえだろうが。
 こっちの被害もデカイ。
 一先ずは勝って神器を護れたが、次が無いとも限らないだろ?」
 
 この少年ユウダイは、政府軍の中でも最も剣術に長け、
 学力は無いものの、頭の回転が早く、知略も良い。
 所々はねた黒髪、鋭く切れ長な漆黒の瞳に、
 黒い長ズボンに大きな黒いローブを羽織り、
 手には大きな装甲の様な黒いごつごつの手袋を装備し、
 右手には剣が握られている。
 
 ユウダイは、頬を赤く染めながらソフィアを退かした。
 ソフィアは相変わらずにこにこしながら、武器を片付け、辺りを見渡す。

「………………」

 敵軍、味方軍問わず、四方に広がる亡き骸の数々…
 正にこの世の地獄を描いたような光景が、ソフィアたちの前に広がっていた。

「……たくさん、死んじゃいましたね………
 仲間も……相手の方々も……」

 いつもは満面の笑みを絶やす事は無いはずのソフィアだが、目の前の地獄絵図に視線を下に落とした。

「誰かを生かすってことは、誰かを殺すってことさ。
 弱い奴は死に、強い奴が生き残る。
 それが、自然の理だろう。」

 ユウダイは剣を鞘に収めながら、ソフィアの瞳をじっと見据えた。
 相手の感情を読み、瞬時に剣筋を見切ることを得意とするユウダイは、会話中でも感情の変化を逃がさない。
 言わば、癖になっているのだ。

「………戦争なんてして……命を捨てる事はないのに……
 何か……死んだ人たちに出来れば良いんですけど……」

「………。
 そー言えば、お前は銃しか遣わねえな。
 死んだ相手を意味のある命にしたいなら、剣だ。
 剣で相手を斬れば、相手の命と引き換えに強く成れる。
 相手の命を活用してやれよ。
 銃は強さと言うよりは『腕の良さ』だからな。」

 ユウダイの言葉に、ソフィアは顔をハッと上げる。
 その瞳には、微かに涙がたまっている。

「でも、剣なら確実に殺してしまいますっ!
 銃なら急所を外すことで、手当てが間に合いますけど……剣は……」

「甘いな、お前は。
 生きたいのなら相手を殺さないと。
 来い。俺が剣を教えてやるよ。」

 そう言うと、ユウダイは歩き出し、政府軍拠点の近くの森へと向かって行った。

「……」

 ソフィアは顔を俯かせたまま、ゆっくりとユウダイについて森へと入ってゆく。

 拠点には神器があるため、敵を近づけずに死守した為か、森だけは自然とゆとりの空間を残していた。

「……わぁ……」

 先刻まで地獄絵図を見ていたソフィアは、その美しく偉大な姿に、思わず言葉を失った。
 ユウダイはまだ先へと進み、やがて大きな滝がある泉へとでた。

「さて……
 まずは基本から―――」

 ユウダイがそこまで言えば、ソフィアは言葉を遮り、少し大きめの声で言った。

「神器のことなんですけど……」

「ん?」

「神器なんて、危険なものがあるから……
 争いが絶えないんだと思うんです。」

 ソフィアは、そこまで言えば、泉へと近付き、その場にしゃがみ、水の中へ手を入れた。
 冷たさと水の柔らかい流れが手に伝わり、ソフィアは口許で笑顔を浮かべた。





つづく




 
2005/03/08(Tue)17:30:59 公開 / 詩楼都
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■作者からのメッセージ
初めまして。
ファンタジー物ですかね?
神器の説明は次回……
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