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『右手』 作者:新先何 / ショート*2 ショート*2
全角1714文字
容量3428 bytes
原稿用紙約4.75枚
 僕はだしまき玉子が好きだ。
 味付けは塩味で甘いたまごの味と塩が素晴らしいハーモニーを作る。なんて上手いんだ。
 だから僕の毎日の朝御飯はだしまき玉子だけで、一人暮らしを始めてからそれを日課として毎日かかさない。
 突然だが僕は右利きだ。だからだしまき玉子を左手で作る術を知らない。だから今、僕は困っている。
 そこで突然僕は右頬に痛みを感じた。
 右手に殴られた。僕はバランスを崩し横に倒れて冷蔵庫に頭をぶつけたまま2発目のパンチを腹にくらった。ここではくらわせたの方があっているのだろうが。

 その日僕はいつも通りの朝に目を覚ましたかった。頭の上で携帯の目覚ましがなっている。うるせえ、静かにしろよ、このくそ携帯。まあすぐにアラームを止めれば良いのだがその日は右手が動かなかった。まるで右手だけが僕のじゃ無い様な感覚で、一瞬自分のかどうか疑った位だ。
 とりあえず左手でアラームを止めようとしたがなかなか目的のボタンを押せず、かなり戸惑った。その間も右手が動く気配は無い。
 そのあと椅子に座り机の上に乗せた右手を睨んでみた。右手のしわが寝顔に見えた。右手はジャンケンのパーの形をしたまま動く気配がなくあらためて自分のかどうか疑うが、その右手は確かに右肩から生えていた。

 右手が動かぬまま試行錯誤して朝食を作ることにした。まず左手で長方形のフライパンをセットし火をつけた。ここまでは順調。次にガラスの容器に玉子を入れる作業に入る、が上手く行かない。机に玉子をぶつけようとすると慣れてないせいか力み過ぎて割ると言うよりつぶしてしまう、しかも勢い余って左手強打。黄身を洗い落とししばし悩む。だしまき玉子を左手で作る方法を。右手はやっぱり動かない。
 ところが右手を見るとかすかに動いたのだ。見つめてると拳がだんだん大きくなる。あれ。拳はスピードを増して僕の右頬を殴り飛ばした。
 右頬が痛い。世界広しと言えど自部の右手に殴られる人はいないんじゃ無いか?じゃあ俺は珍しいな。びっくり人間だ。
 は、僕は我にかえる。右頬を殴られた後バランスを崩し冷蔵庫に頭をぶつけた。そのあと自分の腹にパンチを喰らって意識がトリップしてしまった。僕の右手は僕の頭とお腹を殴りまた意識を失ったみたいにぴくりと動かなくなってしまった。
 ああ、だしまき玉子が食べたい。
 いつまで続くのだろうか、僕はだしまき玉子が食べたいのに。
 とりあえず、右手がまた暴走しない様にガムテープを使って身体に縛り付けた。
 僕は再びキッチンに立ちだしまき玉子作りに燃える。今度は容器の上で玉子を握る潰し容器の中から余分なからを取り除くという地道だが確実な方法を採った。だが片手だけでは簡単なはずが無い。難関、難問は全ての物事に付いてくるものだ。たった今気づく、左手じゃあ箸が使えない。

 だしまき玉子が食べたい。考えるだけで腹が減ってくる。キッチンにはやりかけの玉子が置いてある。あの後ずっと特訓をしていた、左手で箸を持ち閉じたり開いたり。スムーズに動くまでずっと頑張ってきた、けど無理だ。努力って何だよ、発展無しじゃねえか。はあ、だしまき玉子が食いたいなあ。
 そこでまた僕は、右手で殴られた。今度は顎にアッパーだ、いいパンチしてるなあ、こんな才能があればプロのボクサーになれたかもなあ。椅子から転げ落ちまた意識がトリップした。痛いなあ、なんでだろうなあ、今は何時かなあ、もう会社なんていいや今日は。ああ、お腹減ったなあ。
 右手は攻撃を止めない、僕の身体が悲鳴を上げる。もう意識なんて無かった、僕はだしまき玉子が食べたいんだ。

 その一周間後、男は会社の捜索願いのおかげで警察に見つかった。身体のあちこちに大きなあざができていて死んでいたという。男の横の机には、既に腐ってしまったと思われる食べかけのだしまき玉子が置いてあった。

 いつのまにか右手が思い通りに動かせた。
 やったこれでだしまき玉子が作れる。
 あっためたフライパンに混ぜ合わせた黄身と白身を少しづつ入れる。
 割り箸を上手に使い念願のだしまき玉子を完成させた。
 塩で味付けして口に運ぶ。

 ああ、美味しいなあ。
2005/03/06(Sun)20:46:11 公開 / 新先何
■この作品の著作権は新先何さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ああ、テスト三日前だとゆうのに何を書いているのでしょうか自分は。
とにかく歴史と英語がヤバい。いやまじで。
歴史なんかできるかおい、昔の日本の偉い人は馬鹿ばっかで変な決まりばっか作りやがってちくしょう。
はっ、愚痴になってしまいました。すいません。
この新しいジャンル分けいいですね見やすいです。紅堂さんお疲れ様です。
では、御感想、御指摘お願いします。
以上、新先でした。
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