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創作小説 投稿掲示板『登竜門』 『Crossing』
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- 『Crossing』 作者：氷河雄飛 / SF SF
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全角2183文字……ううっ…はぁ…はぁ……
容量4366 bytes
原稿用紙約6.7枚
彼女、皆塚藍那（みなつかあいな）は暗闇の中で脅えていた。
「どーこだぁ皆塚ぁ！隠れてないででてこいよぉ、俺がたっぷり可愛がってやるぜぇ？！」
ギャハハハハと井野（いの）が叫ぶ。狂ったように。そもそも”そいつ”は井野なのか？それすらもわからない。
「…いやぁ…助けて……だれかぁ…」
藍那はキッチンのテーブルの下に隠れていた。
今から数分前だ。いつものように自分の部屋で寝ていた。今日に限って家には藍那一人しかいない。父親は夜勤。母親は離婚してすでにいなかった。
普段なら夜は父親が居るのだが、同僚にどうしてもといわれ、シフトを交代し夜勤になっていた。自分一人しかいないという孤独感に寂しさを覚えながらいつもより早く就寝していた。
だが、なかなか寝付けずに丸くなり、布団の中に潜り込んでいた時だった。物音がして不審に思い布団から顔をだすと、ベット脇には”そいつ”がたたずんでいた。
ベットの脇にいた”そいつ”を見るなりすぐに起き、下の階へと走った。
”そいつ”は慌てることもなくゆっくりと追ってきた。
パニックに陥ってる藍那は隠れることをただ考え、テーブルの下にうずくまっていた。
階段を下りる音が消え、床の上を靴で歩くこつんという音と共に、狂った井野の言葉が迫ってくる。
彼女は震え、ただひたすらに祈っていた。想い人の名前をつぶやきながら。
カチチッ…
蛍光灯のグロースタータの音が静まりかえった室内に木霊し、リビングに明かりが灯った。
井野はもうそこまで来ていた。
なぜ今自分は井野に狙われているのか、今こうして自分は何故隠れているのか、そもそもなぜ井野がここに居るのか。すべての謎が、藍那の冷静な判断力を奪い、ただただ脅えさせていた。
「さぁ〜て、ここに居るのはわかってるんだぜぇ皆塚。お前のその可愛い顔も、体もすべて俺の物にしてやるよぉ、”あっち”じゃおめぇには逆らえねぇからなっ！！」
ギャハハハハと狂った笑いを発しながらキッチンへと近づいてくる。カウンター越しにあるキッチンの為、リビングの状況は見えないが足音は確実に近づいてきてる。
カチチッ…
グロースタータの音が響き、キッチンの中にも明かりが灯った。藍那はそっとキッチンの入り口の方を見た。そこには、”そいつ”が立っていた。
「へへへっ、皆塚みぃ〜つけた。見えてるぜぇ、ピンクの可愛いパジャマがさぁ！」
「ひっ…」
テーブルの下とはいえ、角度によっては全ては見えずとも、部分的に見えてしまう。
パニックになったままとっさに隠れた自分の情けなさと、見つかってしまった恐怖に声にならない弱々しい声を上げるしかなかった。
「さぁ！でてこい‥よっ！！！」
腕を捕まれテーブルの下から引きずり出された。その反動でキッチンの戸棚にぶつかった。
「おぉっとごめんよぉ。ちょーっとばかし力み過ぎちゃったみたいだねぇ。」
「い…井野君なの…？あなたは？」
「いぃーーのぉーー？まぁー確かに俺は井野だぁ。お前の知ってる井野じゃないけどなぁ。」
ギャハハッと笑い、答えた。
おそるおそる井野を見てみるが、おかしな格好をしている。たとえるならば…そう、軍服みたいな緑の迷彩服だった。頭は金髪。普段の大人しそうな井野とは似てもにつかない形相。
こいつは井野じゃない。藍那はそう思った。そうしか思えなかった。
なんとかしなきゃ。藍那はそう思った。恐怖で足がすくみ、上手く言葉を発する事も出来ない。でも、なんとかしなきゃ犯られる。
自分の後ろの戸棚には包丁がある。だが、理性がそれはダメだと訴えかけている。自分ではそれは出来ない。そう、思った。
じゃぁどうする。自分のいる戸棚の上には扉はなく、皿が置いてある。その程度なら、自分でも投げるという抵抗が出来る。それしかない。そう思い、藍那はゆっくりと立ち上がった。
「…‥だ…」
聞き取れないほどの小さな声。
「あぁっ？なんだってぇ？ぜんぜん聞こえねぇぜぇー？？」
ゆっくりとつぶやきながら起きあがる藍那の姿を見ながら、井野は楽しんでいた。弱者を見下ろす快感に酔いしれていた。
「……いやだ……」
そういいながら戸棚にもたれかかりながら藍那は立ち上がり右手を後ろに回し、無造作に皿をつかんだ。
「それをどうするつもりだいぃ？皆塚。やれるもんならやってみなぁ？お前のそんな非力な細い腕でどうにかなるとでも思ってるのかぁ？」
ギャハハと笑う。藍那は何も考えず皿を投げつけた。
ガキャン！
井野の胸の当たりについている何か金属のような堅い物に当たり皿は割れた。パラパラと井野の周りには皿のかけらが散乱していた。
「・・ほぉう…本当に投げてきたとはなぁ。だがそんな皿で俺をどうに…‥なっ！」
話しつつ、いきなり叫んだ。井野は手を自分の頬に持って行くと、小さな切れた傷からうっすらと血が流れていた。皿が割れ、四方に飛んだかけらが頬をかすったのだ。
「…‥っくっそぉ！これまでか！…‥残念だなぁ皆塚ぁ犯りそこねたぜぇ、まぁいいか。次合うときは覚悟しておきなよ！！」
ギャハァと笑うと井野は左手に付いている時計のボタンを押した。
それと同時に井野のいた場所がゆがみ、何事もなかったかのごとく井野は消えた。そこには割れた皿の欠片以外、何も残っていなかった。
藍那はそこに立ちすくみ、震え、脅えてるしかできなかった。 -
2005/03/02(Wed)16:06:03 公開 / 氷河雄飛
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■作者からのメッセージ
とりあえず話の始まりです。まだこの時点では何がしたいのか、何が起こるのかは書いていません。 この話は続きますのでよろしくお願いします。
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