- 『乙女ちっくに恋させて!』 作者:若菜 / 未分類 未分類
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全角13060文字
容量26120 bytes
原稿用紙約48.25枚
パシッ…
「てめぇ!あたしにそんな汚ねぇツラ二度と見せんじゃねえ!」
かすみは男の子の顔を思いっきり殴って教室に入っていった。
「かすみぃ。あんたまた殴ったの?」
苦笑いしながら綾子はかすみを見た。
「綾子。あたしはね、ちゃんと約束守ってくれれば殴らないから!」
「そりゃあそうかもしれないけどねぇ、私の彼氏殴らないでよね!」
そう。さっき殴った男の子は綾子の彼氏だったのだ。
「えぇ?!綾子ってあいつとも付き合ってたのかよ?」
綾子は付き合っている男の子がいっぱいいると聞いたがかすみが殴ったやつとまで付き合っているとは…
かすみがそう思っていたとき、クラスメイトの大地が
「お前、うるさすぎ。言葉遣い悪いからモテないんだろ?」
と言った。
「てめぇには関係ねぇだろ?」
かすみは大地を睨みつけた。
「とにかく!もう私帰るから!」
綾子はカバンを持って教室から出て行った。
それから数分後。かすみは英語のテキストを完成させるために居残りでやっていた。最初はいっぱい残っていた人がいつの間にかかすみ1人になってしまった。
もう辺りが暗くなってしまった。かすみはもう少し残って終わらせようと思っていた。
そしたら廊下から足音がした。その足音はどんどんかすみのいる教室に近づいてきた。
ここに来る…と思いかすみはどこかへ隠れようとした。
「嶋田…?」
足音の持ち主は同じクラスの大地だった。大地は汚れたサッカーのユニフォームで教室に入ってきた。
「どうして大地が…・?」
かすみは混乱していたが見回りの先生の足音で正気に戻った。
「隠れろっ!」
大地が小さな声で言った。かすみは教卓の下へ隠れた。
先生が見回りに来た。誰もいないのに明かりがついていたので明かりを消した。
そしてそのまま鍵をかけて下の階へ行ってしまった。
「嶋田。大丈夫か?」
大地はさっきのことを思い出し恐る恐るかすみに聞いた。
「なんとか。」
かすみもかなりビビッていた。だけど一番ビビッたのは暗い上に鍵をかけられてしまいしまい教室から出れなくなったことだ。
「大地、どうしてここに…?」
「忘れ物を取りに。」
「ふぅん。」
「ふぅんって!一言で片付けんなよ!」
「それはあたしの性格知ってて言ってるの?」
「…。」
なんとも微妙な会話が続いた。今日は満月で月明かりが教室を照らしてた。
かすみは窓に近寄り満月を見上げた。その光景をみた大地は思わず笑ってしまった。
「なっ!何?!」
「いやさ、お前もいちようは女なんだなぁって。」
「悪い?」
「別に悪くないよ。」
いつもお互い嫌いあっていたり、悪口言ったりしていたのに今はすんなりと話せていた。
「あたしさ、大地ってもうちょっと最低な奴だと思っていた!」
「俺もお前は最悪な奴だと思ってたし。」
二人の間に微妙な感じが生まれた。
結局かすみはドアを蹴破って教室から出て行った。
「大地と話せてよかった。じゃあまた明日!」
「あっ!嶋田…」
「何?」
「…いやなんでもない。」
「そっか。」
かすみは急ぎ足で教室から出て行った。
大地ってあんなにかっこよかったっけ?
「かすみぃ。どうしたの?今日あんまり怒ってないじゃん。男子みんな心配してるょ?」
綾子がかすみの顔を覗きながら言った。
そう。かすみは昨日の大地との一件があってから考え事をしたように静かなのだ。
「ねぇ綾子。恋ってなに?」
その言葉に綾子はもちろん、クラスにいた男子全員がかすみを見た。
「え?!何言ってるのかすみ。意味わかんないょ…」
綾子はあまりにビックリしすぎて動揺してしまった。
それを見たかすみは怒って授業放棄して中庭へ行った。
中庭へ行って先生に見つからないように隠れながら昼寝をしようと思い、かすみは木に登った。
「ったく。どいつもこいつも話しになんねーなぁ。」
かすみはプンプン怒って独り言を連発していた。
「うるさい。」
どこからか声が聞こえた。
「あぁん?誰だよ。」
「相変わらず口悪ぃなぁ。昨日はとは大違い。幽霊にでも取り付かれてたのか?」
そう。その声の主は大地だったのだ。
「なっだっ大地?!」
「今頃気づいたのか?アホ。」
かすみは木から降り、大地のそばへ寄った。
「今頃気づいたんだよアホ。」
大地が笑った。そしてかすみも笑った。
「お前さぁ、もしかして俺に惚れてるの?」
「はっ?!ありえないこと言わないでよ。」
かすみは真っ赤になった。それを見た大地は笑った
「なぁんだ☆お前と付き合ってあげようと思ったのに。」
「冗談やめろよ(笑)」
「知ってるか?俺はお前に惚れてるんだぜ?」
「…え?」
かすみは一瞬ドキッとした。
「バーカ。ウソに決まってるだろ☆」
「こいつ…」
怒ったかすみは大地の顔に一発お見舞いして
「そんなこと言ってるヒマがあったらあたしの目の前から消え去れ。」
と言ったら走っていった。
「あれぇ?どぅしたの大地君。」
綾子は不思議そうに教室に帰ってきた大地の顔を見た。
「あぁ。ちょっとケンカで…」
「えぇ〜!大丈夫??」
「まぁな。」
「まさかかすみにやられたんじゃないょね?」
「そのまさか☆」
綾子はハンカチと絆創膏を大地に渡した。大地は受け取らなかった。そしたら綾子がハンカチで無理矢理血をふき取って絆創膏を貼った。
「これでょし!」
大地は綾子を見た。
「どーも。仁科って優しいんだな。」
「ェヘヘ☆☆」
「仁科って彼氏いるの?」
「いないょ!」
実は綾子、7人の男と現在付き合っている。
「じゃあさ、今度どっかいかない?手当てのお礼に。」
「え〜。デートじゃなくて大地と付き合いたい☆☆」
「……・うん。いいよ。」
「やったぁ〜!」
綾子の8股の一人に大地が加わった。
大地と綾子は家が同じ方向なので一緒に帰った。
それを見たかすみはビックリした。
「ちょっと!なんで大地と綾子が…?!」
「私たち今日から付き合い始めたの。だから応援ヨロシクね☆」
「えぇ〜!?大地本当?」
「…あぁ。まぁ、気にすんな」
「…・。」
かすみは2人に背を向けた。
「かすみ?」
「嶋田?」
かすみは泣いてた。
「どうしたんだよ!おい!嶋田!…嶋田!!」
「うるさい!黙れ!!」
その場からかすみは立ち去った。
「かすみって本当に口悪ぃ〜!」
「そ、だな」
大地はぼーぜんとそこに立ち尽くした
夜、大地からメールが来た
『かすみ、今日どうした?』
かすみはボーっとしながらメールを打った
『べつに』
『別にってこたーないだろ!』
『べつに』
『…お前それさぁ、ある意味シカトだぜ?』
『なんで?』
『何でって…なぁ、今から会える?』
かすみは複雑な気持ちだった。だけど今大地に会えないともう話せないような気がした。
『うん。公園で待ってる』
『わかった』
かすみはメールを読んだあとすぐにジャケットを着て公園へ向かった
走ってる間ずっと大地のことを考えていた。
「着いた…。」
大地はまだ来ていない。来るまでベンチに座って待つことにした。
「大地が来なくてもずっと待ってよう…・。」
そんなこと言ってたら偶然綾子が公園の前の道路を8股の一人と歩いていた。
大地ではなかったがかすみは見てて悲しくなった。
あんなやつに大地が取られたのか…と。
「え?!ちょっと待って…?」
かすみは今自分の気持ちに気づいた。かすみはあの時から大地のことが好きだったんだと気づいた。
「そっか…」
1時間が経った。大地は走ってきた。
「大地…」
「遅くなってごめん。」
「うぅん。来てくれたんだ…」
「お前との約束破るわけないじゃん☆」
かすみは嬉しくなった。だけどそれは束の間の休息。学校に行けば大地と綾子のラブラブ(?)なところを嫌でも見てしまうからだ。
「ねぇ大地。どうして綾子と付き合ったの?」
「だって仁科かわいいじゃん☆」
それを聞いてショックだった。そしてかすみはついカッとなってしまった。
「かわいい子なら誰でもいいワケ?だって綾子8人の男と…」
「綾子は俺の彼女だ。お前に俺たちのことなんか関係ないじゃん。」
かすみはまた気持ちが複雑になった。
「大地のバカ!!」
「なんだよいきなり…」
かすみが思いっきり大地の顔を叩いた。
「ってぇ!何すんだよ!」
「大地なんか大嫌い!最低!!」
そう言うとかすみは大地の目の前から消え去った。
あたしもう何やってるのかわからないよ…
その日からかすみと大地の仲が一気に悪くなっていった。
「かすみ…ちょっと。」
綾子が真剣な顔をしてかすみに話しかけた。
「ん?なぁに綾子。」
「あのさ…」
綾子がためらってる。
「どうしたの?具合悪いの?保健室行く?」
綾子は首を横に振った。
「じゃあ何?」
「あのさ…本当に言いにくいんだけどもう大地と仲良くしないで?」
「はっ?!」
「だってかすみ大地とすっごく仲いいじゃん。」
「…・。」
かすみは正直ムカついた。
「だからさ…!」
「あのさ、そんなこと綾子が言えるわけ?」
「え?」
「綾子さ、本気で大地のことが好きだったらどうして他に7人の男と付き合うの?」
「それは…」
「そんなあいまいなら、あたしは大地を取るからな。」
かすみは席を立った。
教室を後にしようとした瞬間綾子は怒った。
「あいまい?ふざけないでよ。綾子はちゃんと男の子と考えて付き合ってるの。全然分かってない人になんかに軽口で言われたくないし。」
それを聞いてかすみも怒った。
「どこが男の子のこと考えてる?普通男のこと考えてるなら8人の男となんか付き合わねーよ!」
「男の子がかわいそうだから付き合ってあげてるの。勘違いしないで?」
「だからって大地を巻き込むなよ。」
かすみは爆発寸前だった。
「バッカみたい。大体かすみは大地のなんなわけ?大地のことなんか嫌いじゃなかったの?」
かすみは綾子の方を振り向いた。
「あたしは大地のなんでもないよ…」
今にも泣きそうな顔してる。
「ふふっ。負け犬ね。」
「だけどね、あたしは大地のことが大好きなんだよ!去年のあの日から…」
火の粉が飛んでこないように机の横に隠れていた大地はかすみへ近づいた。
「お前…もしかしてあの日のこと覚えてるのか?」
「…ずっとあやふやだったけど思い出したよ。」
大地は綾子に寄った。
「悪ィ綾子。短い付き合いだったな。」
「えっ?!どういうこと大地!なんで綾子と別れるの?まだ一緒にいようよ…」
「俺さ、元々綾子と付き合った理由が綾子の虜になっている男を解放してやろうってことだったんだ。だから最初っからお前のこと好きじゃなかった☆俺が一番好きなのはかすみなんだぜ?」
「なっなにそれ!いい気にならないでよ!綾子だって大地のこと利用しようと思ってたんだから!好きじゃなかったんだから!!」
「じゃあバイバイ☆行くぞかすみ!」
大地はかすみの手をつかんで教室をあとにした。
ギュッと握り締められてかすみはドキドキしてた。
前を向いて走ってる大地が話しかけてきた。
「俺たちさ、あの日からずっと両思いだったんだな。」
「そ、だね。」
二人は沈黙した。
「あれから2年経つんだな。今頃春斗がいたらどうなっていたんだろうな。」
「……・。」
かすみは携帯に付けている鈴を見た。
2002年12月…
「春斗!今日一緒に帰ろうぜ!!」
春斗はあたしと仲が良かったのであった。性格も良く、誰からも好かれていた。
だけど誰とも付き合わない人だった。
「あぁ。いいよ。」
あたしとはなかなかいい雰囲気だった。
仲がいいだけじゃ普通一緒に帰らない。だけどこの二人はお互いのことが好きでほぼ付き合っているに近い仲だった。
「なぁかすみ。」
春斗は立ち止まった。
「ん?なに?」
あたしは春斗の方を振り返った。
チリンチリン…
鈴の音がした。春斗の手には鈴があった。
「どうしたの?その鈴。」
「これさ、駅前のクリスマスツリーに飾ってあった鈴なんだぜ。」
「なんでここに?」
「かすみがあそこ通ったときに欲しそうな顔してたじゃん。」
「あたしのため…?」
「あぁ。」
あたしは赤くなった。
春斗はあたしに近寄った。
「かすみが好きだ。」
あたしは嬉しかった。そして小さな声で”あたしも…”と言った。
付き合い始めて数日後…
2002年12月23日
「かすみ。今日駅前に新しく出来た店に寄ってかねぇか?」
「あぁ。寄っていこうぜ!!」
あたしはこの時、あたし達に何が起こるのかわからなかった。
あの店に寄ってかなければ今頃二人はまた違う運命になっていたのかもしれない…
「かすみ。ここなかなかいい店じゃね?」
「うん。そうだね!!」
あたしはペンダントを見てた。
「へぇ〜。かすみって女っぽいんだな。」
「えっ?!あたしだっていちよう女だよ!こういうアクセサリーだって普通に見るんだから!」
春斗はクスクス笑ってた。
「なによ!おかしいならおかしいって言えよ!」
あたしは照れた。
「おかしくないよ。俺は一人の女としてかすみのこと好きなんだから。」
あたしは嬉しかった。嬉しさのあまり顔が真っ赤になってしまった。
ピロリロリン…
春斗の携帯が鳴った。メールらしい。
「あっ。大地からだ。」
あたしはまだこの時大地のことを知らなかった。
「大地ってヤツからメール?」
「うん。これから遊ぶ約束してたんだ。」
「じゃあお店でよっか。」
春斗は買い物すると言ったのであたしは外で待つことにした。
「大地って誰だろう…。」
数分後…・
「ごめん!待たせちゃって…」
春斗が店から出てきた。
「もう!遅いよ!!」
あたしはちょっと怒りながら言った。
「かすみ。これ…」
春斗はあたしがさっき見てたペンダントをあたしにくれた。
「クリスマスプレゼント☆」
「あ・ありがと!嬉しいっ!」
あたしはすっごく嬉しかった。多分今までで一番いいクリスマスだと思った。
「じゃあ俺、向こうで大地が待ってるから!」
車線の反対側に大地がいた。あたしは初めて見た。
「じゃあなっ!かすみ!!」
「うん!バイバイvvまた明日!」
…その時だった。あたしと大地は春斗が車にひかれるのを目の前で見た。
「春斗―!」
あたしはすぐ駆け寄った。大地も駆け寄ってきた。
「春斗!ねぇ春斗!!返事して!春斗!!」
春斗は血まみれだった。
「死なないで。ねぇ。お願いだから死なないで…」
大地は電話で救急車を呼んでいた。
ひき逃げ事故だった。
「えっと…嶋田かすみだっけ?」
大地があたしに話しかけてきた。
だけど春斗の方が心配だったので話せなかった。
「お前本当に春斗が好きなんだな。」
「…うん。」
「きっと助かるから心配すんなよ。」
あの時の大地の言葉は私にとってとても温かいものだった。
だけど出血多量で春斗は死んだ。
県立病院中庭…
「嶋田…」
「大地。ねぇ、本当に春斗死んじゃったの?」
「あぁ。」
「ねぇウソでしょ?」
「…・・。」
「ウソなんでしょ?」
「ウソじゃないよ。」
あたしは涙がぼろぼろ出てきた。
「お願いだからウソって言ってよ!」
「ウソじゃない。だって見ただろお前…冷たくなった春斗の顔…」
あたしは思わず泣いてしまった。
「どうして!ねぇどうして春斗だけが死んじゃったの?だってあんなに元気だったんだよ?それなのに…・どうして?」
大地はそっとあたしを抱いてくれた。
「俺があの時春斗の代わりになれてたならなりたかった。彼女がいるアイツをあんな目にあわせたくなかった。」
「大地って優しいんだね。」
「春斗は…春斗は俺の小さい頃からの親友なんだよ。だから辛いのは嶋田だけじゃない…」
「うん。」
あたしは25日、春斗にクリスマスプレゼントでマフラーを渡そうとしてた。
でも、そのクリスマスプレゼントは永遠に渡せなくなってしまった。
「春斗…」
「お前どうして大事なことだったのにあやふやになってたんだ?」
「あたし、あの時の記憶がなくなってた。だから春斗のことも思い出せなかったし大地のことも忘れてた。」
「そうとうショックだったんだな。」
「うん…。」
かすみは下を向いた。そしてしばらく沈黙が続いた。
「辛かったら俺に頼れよ。」
「うん…。」
大地は立ち去った。
かすみは座り込んでしまった。涙がぼろぼろ出てきた。
「春斗!どうしていないんだよ!」
綾子はさっきから陰で二人の様子を見ていた。大地が立ち去ったのでかすみの側へ行った。
「かすみぃ。ごめん。」
「綾子。」
「あたしずっと知ってたの。大地がかすみのこと好きだって。」
「え?」
「あたしかすみに嫉妬してた。だからあんなヒドイことしちゃった。ごめんね。」
綾子は反省しているような顔だった。
「…うん。正直綾子があんなこと言うんだってビックリしちゃったけど綾子は綾子だからあたしは大丈夫だよ。」
「許してくれるの?」
「うん!」
かすみは笑って綾子のことを許した。
「かすみ大丈夫??春斗君のこと、思い出しちゃったの?」
「大丈夫だって☆あたしは強いんだから!」
そう言って綾子を見送った。
(あたしは強いんだから!泣いちゃだめなんだから!)
次の日、かすみはいつも通り大地や綾子と話した。
「ねぇ。お二人さん☆付き合ってないの??」
「えっ?!」
大地とかすみは口をそろえた。
「そういえば…付き合ってないよな。」
「大地は結局どうしたいのょ!?」
「俺はかすみと付き合いたい。」
「ひゅーvvかすみは?」
「あっあたしも!」
曖昧な感じで大地とかすみは付き合い始めた。
付き合って数日、二人は学校公認になるくらいのラブラブ振りだった。
分かり合えてるからこそ、数日間でこんなにラブラブになるのであった。
今日もいつも通り学校終わってから駅前のショッピングモールへ行った。
「わぁ〜!もうクリスマスのイルミネーションやってるよ!」
「もう12月だから普通だろ?」
「そうだね!」
二人は綺麗に光ってるイルミネーションに見とれていた。
そしてかすみはあるものを見つけた。
「あっ…」
「どうした?」
「鈴…」
「あっあぁ。あれか。春斗がプレゼントしてくれたっていう鈴?」
「そう。あたしの宝物。」
「…・。」
いくら愛し合ってても二人はそれぞれの想いを打ち明けられないでいた。
「なぁ、もう寒くなったから帰らねぇか?」
かすみは首を横に振った。
「イルミネーション綺麗だね。あたしはまだここでもう少し見るけど…大地先帰る?」
「いや、俺ももう少しここにいる。」
大地の心は複雑だった。駅前のクリスマスツリーはかすみと春斗の思い出が結構詰まってるからだ。
「俺、帰る。」
「えっ!?あっうん。バイバイ。」
複雑さが増した。俺よりいなくなっちまった奴との思い出の方が大事なのか…
大地は走って帰った。
途中公園に寄った。携帯電話を出し、大地の元カノのくるみに電話した。
『もしもし?』
「久しぶりくるみ。大地だけど…?」
『大地?!久しぶり!どうしたの?大地から電話かけてくるなんてめずらしいじゃん。』
「あぁ、いろいろあってな。」
大地は1時間ぐらいくるみと電話した。
次の日…
大地はかすみといつも通りに話していた。
話すことがなくなった時大地は真剣な顔をした。
「どうした?大地。」
「あのさ…」
「ん?」
「なぁやっぱ俺たち付き合うのやめにしないか?」
「どういうこと?」
「別れようぜ。」
「言ってることが意味分かんない。それ本気?」
「…・。」
そしたらいきなり教室のドアが開き、一人の女性が入ってきた。
「こういうこと。」
「あんた誰?」
「あたしは沢木くるみ。大地の元カノよ。」
「えっ?!」
かすみは混乱してしまった。
「大地はねぇ、あたしとよりを戻したいって昨日電話してきたのよ。」
「そんなことって…大地それマジ?」
かすみは断固否定しながら大地を見つめた。
「あぁ。俺お前というと苦しいんだよ。」
「…え?」
「だから別れてくんない?」
沈黙が続いた。短い付き合いだった。二人は破局した。
そして大地は教室から出て行った。
かすみはそれを複雑な顔で見てた。
「ねぇ綾子。今日さ、どっか二人で寄ってかない?」
「ぅん。いいょ☆」
強がっているかすみを見たら誰もが言葉を失った。
かすみ本人も自分が強がっていると思っていた。
ダケド ワタシハ ナイテハ イケナイ...
そんな言葉がかすみを縛っていた。
「綾子。綾子ってさ、くるみさんと一緒のクラスになったことある?」
「あるょ!」
「どんな子だった?」
「うーんとね…」
やはり沢木くるみは思っていた、いや思っていた以上の人だった。
勉強も、スポーツも、何でもできて、優しくて人一倍思いやりのある子でかなりモテるらしい。
だけど憎めないタイプなのにあんな冷たいことを言ったのは初めてらしい。
綾子は不思議そうに思いながらもかすみと一緒に駅前のイルミネーションを見に行った。
「イルミネーションキレイだね!」
綾子ははしゃぎながらかすみを見た。
だがかすみは綾子の言葉を聞いていないかのようにボーっとしながらイルミネーションを見ていた。
春斗との思い出の場所でもあり大地との終わりの場所でもあるこのイルミネーションを見て二人の男の遠さを実感した。
「…終わりだね。」
つぶやいていた。かすみは泣きながらつぶやいていた。
「かすみ…」
「あたしもう恋なんかしたくない。傷ついて、傷つけて、もう何にも無くなっちゃったよ。結局あたしは何にも守れなかった。自分が傷つくのが嫌だからって大地のこともあっさり諦めちゃったんだよ。」
「大バカだょ。かすみは。その言葉大地に言えばいいのに。」
「もうダメだよ。期限切れちゃった。」
そう。もう言っても仕方ない。今さら言ってもどうにもならない。大地は今頃くるみと幸せにしているだろうしかすみが入り込める隙間もない。
かすみはあと一歩でつかめそうなものを一気に蹴落とされてまた振り出し地点に戻る感じがして苦しかった。
そんな矢先のことだった。
かすみはイルミネーション前倒れて救急車で運ばれた。
かすみは病院に運ばれて一時意識が回復したが夜中に突然意識不明になってしまった。
そして集中治療室に入った。
かすみの親と綾子はもちろん、大地とくるみも駆けつけた。
大地は綾子からかすみのことを聞いた。
かすみの母親は小さい時に事故で亡くなっていた。そして父親は何回も何回も離婚・再婚を繰り返していていた。
いつしかかすみの家は血の繋がっていない赤の他人同士が住んでいた。
かすみはかなり苦労していたのだ。
だが、そんな素振りを見せなかったのがかすみらしかった。
「かすみ…」
「…ねぇ綾子ちゃん。ちょっと。」
くるみは綾子を手招きした。
「おいくるみ。まさかあのこと言うんじゃ…」
「言うわよ☆」
綾子はくるみから衝撃的な事実を明らかにされてビックリしてた。
そんなことがあって、三人は明日学校だし夜遅いしということで帰った。
一時間後、かすみが集中治療室から運び出された。
「先生。かすみは?」
「…・。」
「先生!」
「全力を尽くしましたが…意識が戻るかどうか…」
かすみの両親は下を向いて黙った。
「しばらく様子を見ますので。何かあったらご連絡いたします。」
「はい。」
そしてそのままかすみは一晩病室で寝ていた。
意識は奇跡的に戻ったのだが起きるかどうかは分からないとのこと。かすみの親は絶望的だった。
もしこのまま眠り続けるのならばそれなりの覚悟が必要だと告げられた。
1週間後…
昼間にも関わらず病室は暗かった。雰囲気がかなり重苦しくてかすみはいろいろな装置を取り付けられていた。
そこへ大地が来た。
「こんにちは。」
大地はかすみの両親に挨拶した。
「あなたが…大地さん?」
かすみの母親が尋ねた。
「はい。」
「かすみちゃんね、ずっと一人ぼっちだったの。綾子ちゃんから聞いたでしょ?嶋田家はお父さんも、お母さんも、お姉ちゃんも、弟も、妹もいるにぎやかな家族なんだけどね、どこか冷たいの。そのせいでずっとかすみちゃんは一人ぼっちで寂しい思いをさせてしまったの。かすみちゃんはその寂しい心を見せてくれないから私達はどうしたらいいかわからないの。毎日お見舞いに来てくださってる大地さんならきっとかすみちゃんの寂しい心と気持ちを溶かせると思う。だから、かすみちゃんが目を覚ましたら…・」
「えぇ。分かってます。」
かすみの母親は涙ぐんでた。血は繋がってなくても親は親なんだなと大地は思った。
「あ…でも…大地さん彼女いるんですよね?」
「…・はい。」
「彼女に怒られない程度にかすみちゃんのこと心配してもらえると嬉しいです。」
「…・・分かりました。」
大地は複雑そうな顔をしながら病室を去った。
「大地!!大地!大地!!!」
廊下中にくるみの声が響き渡った。
「なんだようっせーな。」
「聞いたよ。かすみさんのこと。どうするの??」
「どうするもなにも、目が覚めなきゃ意味ないじゃん。」
「あたし、もう来週行くんだよ?」
くるみは切なそうな顔していた。
そう。大地とくるみは計画上の付き合いだったのだ。
かすみと別れた前の日、つまりくるみに電話をした日からこの計画が始まっていたのだ。
計画とは、春斗と大地、かすみにとってどっちが大切なのか結論を出してもらうというとんでもないことだった。
大地がくるみと寄りを戻せばきっとかすみも本当のこと言ってくれると思ったからだ。
「だけどさ〜。私あの時ビックリした☆終わった私達がまた戻るなんて…って思っちゃった。」
「くるみには迷惑かけたな。」
「うぅん。楽しかったから大丈夫。最後の日本のいい思い出ができてよかった。」
くるみは来週の月曜日にイギリスに留学するのだ。
「寂しくなるけど…頑張れよ。」
大地は手を差し伸べた。くるみはその手を握った。
「また会う時はお互い何になってるのかな?!」
「そんなこと知らないよ。」
二人は楽しく話していた。
一方病院では事態が一変していた。
かすみが目を覚ましたのだ。意識はもうろうとしているがもう大丈夫だそうだ。
だが一つ欠点があった。
かすみの記憶がなくなっていたのだ。
かすみは病気のせいじゃなくて、倒れたときに強く後頭部を打っていたのだ。
そんな時、大地がくるみと一緒に来た。
「こんばんは。」
大地もくるみも起き上がっているかすみを見てビックリした。
「おい。かすみ?」
「かすみさん意識戻ったんですねv」
「…・・。」
「かすみ!おいかすみ!」
「…・・。」
先生が入ってきた。
「先生!どうしてかすみは何にも話さないんですか!?」
「…・・。」
「先生!」
「大地君だね?君かすみさんの恋人だそうだね?ならこのことは聞かないほうが…」
「先生!なにがあったんですか?」
「かすみさんは…・」
「…・あなた誰?」
大地は一瞬頭が真っ白になった。
「かすみさんは記憶喪失になっています。」
大地の心は苦しくて今にも押しつぶされそうだった。
そのことを隠しているフリをしている大地を見て先生もくるみも胸がつぶれそうな勢いだった。
大地の心は傷ついた。周りの人間が見たらそれはノイローゼみたいに見えた。
くるみもイギリスへ行ったのだが搭乗する前までかなり心残りがあるように見えていた。
そしてかすみは未だに記憶が戻ってなかったのだ。
「かすみ…」
大地は不安な思いも募らせながらも一生懸命かすみの病院へ見舞いに行った。
「こんにちは。」
「…こんにちは。」
かすみは大地のことを知らないので不安な顔で大地の事を見てた。
「ねぇ。あなたなんでいつも来てくれるの?」
「かすみさんのことが放っておけないからです。」
今本当のことを言っても仕方がないと大地は心のどこかで思ったので真実は言わなかった。
「え…?」
こんなことが毎日、1ヶ月続いていた。正直大地の心はもう傷つき過ぎていた。
かすみが記憶喪失で大地のことが分からないのは仕方ない。でも大地はかすみのことが好きだからこそ、かすみが大切だからこそ頑張って見舞いに来ているのだ。
「ねぇ。どうしていつもいつも…」
いつもの通り大地は見舞いに来てた。
「私、あなたにとって何なの?どうしていつもここに来てくれるの…?」
大地は黙った。
「答えてください。」
大地は下を向いたままだった。
「お願いです。」
「俺はかすみのことが世界で一番大切で大好きなんだ。」
赤くなった大地はそのまま帰ってしまった。イスには大地のコートがかかっている。
かすみはキョトンとしていた。
「だい…・ち…・・?」
かすみは全てを思い出した。記憶を取り戻したのだ。
イスにかかっていたコートを持ってかすみは急いで病室から出て行った。
走って、走って、ずっと走ってた。大地のところまでずっと走っていた。
そして大地を見つけた。
「大地。」
大地はビックリしてた。
「かすみ?」
「大地。これ…」
コートを差し出した。それを大地が受け取った。
「あたしね、記憶が戻ったんだ。今までありがとう!大地さ、これからくるみさんとお幸せにね!」
かすみは大地の返事も聞かず病室に戻ってしまった。
「…やっと笑顔でサヨナラが言えた。バイバイ。大地。」
かすみはベットにしがみつきながら泣いた。
数日後、かすみは退院して久しぶりの学校へ行った。
「あっ!かすみぃ!退院おめでとぅ!」
綾子が一番に出迎えてくれた。
「綾子〜!久しぶり!」
「ビックニュース!!くるみっちね、イギリスいったんだよ!」
「え?じゃあ大地は…?」
かすみは綾子から事実を聞かされた。何にも知らなかったかすみは傷ついた。
「じゃあ…あたし、また大地を傷つけちゃったの…?」
「…大地は平気だょ!だけど…」
「?」
「大地ね、明日アメリカ行くんだって!」
「え…・」
かすみは頭が真っ白になった。このままお別れは嫌だと思った。
だけど残酷にも時は早く過ぎていってしまった。
空港…
綾子とかすみは見送りに行った。
「じゃあね!大地っ!綾子のこと忘れないでね!!」
「あぁ。」
「大地…」
かすみは暗い顔をしていた。
「かすみらしくないぞ。俺の好きなかすみはいつも笑顔で口が悪いんだぞ!」
「…なんで?お別れの時にそんなこと言わないで!」
フッと大地はかすみを抱きしめた。
「まだ別れじゃねーよ」
「だ・大地!」
「お前は弱いんだから、俺がそばにいなきゃダメなんだろ?」
「…うん。」
かすみは涙をこぼした。
「きっといつか会えるから、じゃあその時な!」
大地は笑顔で去り、かすみはずっと泣きながらそこにいた。
いつかみたいに、また愛し合える日が来るのだろうか…
三年後…
かすみは高校三年になっていた。放課後の時間、一生懸命高卒後の進路を決めているのだ。
「あ〜!決まんねー!」
相変わらずな口調だ。だが以前にも増してかすみはモテモテだった。
しかしかすみは誰とも付き合っていたなかったのだ。
「先生!あたしもう帰るから!」
「おっおい!嶋田!」
先生はビックリしていた。かすみは急いで帰っていった。
帰り道、物思いに老けていたら目の前に男の人が立っていた。
「かすみ。」
懐かしい雰囲気が漂っていた。
「もしかして…大地?!」
「また会えたな。」
「お前彼氏とか作ってないだろうな?」
「あったり前よ!」
そして大地はかすみを抱き寄せた。
いつしか、かすみの心の中には春斗ではなく大地が住んでいた。
春斗との思い出は大切にしながらもかすみは大地を愛していた。
どんな時もあなたのこと考えてた
諦めようと何度も思った
だけど私は頑張って
想いをあなたに伝えた
一緒に過ごしてきたあの時間あの季節
忘れない
忘れないよ
一生懸命恋をしたら
きっと後悔はしないんだから
乙女じゃなくても
きっと恋はできる!
Fin.
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2005/02/05(Sat)10:36:19 公開 / 若菜
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■作者からのメッセージ
初めて長編に挑戦しました。
「」が多いのでもう少しなくした方がいいのかなと書いてて思いました。
未熟者ですがよろしくお願いします!