- 『いろんな成長』 作者:今井詩鹿 / 未分類 未分類
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原稿用紙約6.75枚
君が俺のそばにいてくれる限り
俺も君のそばにいてあげる…
いつまでも一緒にいようね…
「この木、他のと比べてちっちゃいね〜」
「これから大きくなるんだよ!!」
「恭(きょう)ちゃんは大きくなるの?」
「あたりまえだろ?この木が大きくなったら俺も大きくなってるんだよ!」
「じゃあ、そのときは優(ゆう)も大きくなってるの?」
「もちろん!!」
過去を思い出す。
あれから何年たったんだろうか…
昔、隣に住んでいた幼馴染の優とは小学校2年の俺の転校以来一度もあってはいない。
あの頃とかわってないだろうか?
元気なんだろうか?病気ではないだろうか?
社会人になった今でも優のことを思っては胸がくるしくなる。
もう会えないのだろうか…?
俺のことなんて忘れてしまっているだろうか?
会いたい…一度でいいからもう一回…
そんなことを思いながらも俺は会社へと急ぐ。
(今日は朝から会議か…めんどくせぇ)
ガキの頃は野蛮だった俺も今では社長のいすに座っている。
「社長、どうぞ」
秘書の大山(おおやま)に言われ車に乗ろうとするが…
「いや…今日は歩く」
野生のカンというやつだろうか?なぜか今日は歩けと俺の本能がいっている。
「しかし…今日は朝から会議が…」
「午後に回しといてくれ。」
「かしこまりました」
久しぶりに歩く道は人が大勢とおっていた。
このぐらいひとがおおかったら優ももしかしたらいるんではないかとおもってしまう。
「うわっ…!!」
ードテッ
転んだ…大勢の人の前で…
(はずかし〜〜〜〜///)
「大丈夫ですか?」
「あ…平気です」
前にいた綺麗な女のひとに声をかけられ倒れた体を起こす。
「…あ…」
遠くの方に見覚えのある顔が…
「まって!!!」
目の前の女を突き飛ばし、無我夢中で走った。
(まって…まって)
視界がかすむ…うまく前が見えない
(くそ…くそ…お願い待って、もうあえないなんて嫌だ)
「ハア…ハァ」
久しぶりに走ったので数メートル走っただけで息切れをし、足が止まってしまった。
「…」
(なさけない…)己の惨めさに情けなく思ってしまう。
もう会えない人なのに…追いかけられない
抱きしめたいのに…抱きしめられない…
「…恭ちゃん??」
「!!!」
「やっぱり恭ちゃんだ〜」
「優…?」
久しぶりにみた優は綺麗な大人の女性になっていた。
「ひ…ひさしぶりだな」
「恭ちゃんこそ。元気?」
「ああ…」
何を言っていいのかわからなくなってしまう。
出会いたいと思ってみても、いざあってしまうとなかなか言葉が出ないものであった。でも、一つの確信…それは…
(気持ちを伝えたい…)
長年心にしまっていた優へのきもち…
「優…あっあのさ」
ぎこちない言葉で一言ずつ言ってみる
「なあに?」
「俺…お前のことが「優〜〜」
「!!!」
遠くから優を呼ぶ男の声
「誰?この人」
俺を見て男は優に問いかけた。
「幼馴染だよ〜」
「優…そちらのかたは?」
「私の婚約者なの!」
うれしそうに男の腕に自分の腕をからませる優
「はじめまして。優の婚約者の沢井 秀夫(さわいひでお)です」
「あ…こちらこそ」
「秀夫、おなかすいたよ〜」
「わかったて…ではこれで失礼します」
「バイバー恭ちゃん!!また会おうね!!」
そういってまた優は姿を消した…
あの頃と変わらない無邪気なかおで…
今、優と俺が繋がっていた何かが途切れたような気がした…
俺は走った
なんとなく走りたい気分だった…
こんなことなら会わなければよかった。
真実を見なければ良かった…
これは…失恋なのかな?
考えているうちに一つの木の前で足をとめた。
それは優と最後に見たあの木…
「お前成長したなぁ〜」
なつかしい木に思わず笑みがこぼれる
(本当に大きく成長したなぁ…)
俺も優も成長した…
そして、知らないうちにそれぞれ違う道を歩いている。
俺は大きな木を抱いて頬に一筋の涙を流した。
会いたいと願って知ってしまった真実。
気づいてしまった己の気持ち…
真実はなかなか受け入れられなかったけど、
(君が幸せであるのならば…)
君も成長した、木も成長した、世界中の全てのものが成長した
そして、俺もおとなになって成長した…
もう子供じゃない…
いつまでも引きずるわけにはいかない。
数日後、優から結婚式の招待状が届いた。
俺は優しく微笑み、彼女の幸せを祈った。
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2005/02/05(Sat)19:45:03 公開 /
今井詩鹿
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■作者からのメッセージ
書き直してみました…あっでもちょっとわかりにくいかも…