- 『居場所さえ探す日々。』 作者:黒羽根 / 未分類 未分類
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全角1545文字
容量3090 bytes
原稿用紙約5.1枚
サングワネリー・クルフィクス・エンパイア
血腥い 十字架の 帝国
必死になって居場所を探した。そして神を恨んだんだ。何度も何度も願ったのに、神様はただ見下ろすだけで、指の一本さえも差し伸べてはくれなかった。
あぁ神様。こんな僕を汚してください。いっその事、遠く突き放してください。
そんな中途半端な所に立って居られたら、僕は無情にも貴方に『助けて』と願ってしまうから・・・――――――――
”私の分まで精一杯生きてね”
その言葉は僕をこの世界に縛り付けて、離そうとはしなかった。
空は朝を迎え静寂に満ち、考える時間が増すばかりで、夜の次にキライな時だ。
くらったい1LDKのマンションの部屋は僕の不真面目さとやる気の無さを示すよう。灰色ののカーテン、ほこりっぽい空気。ソファに寝転ぶ自分と、砂嵐のテレビ。
今日も一睡もできずにいた。寝てしまえば襲う悪夢。
―守ってやれなかった―
あの時を、彼女を、罪を忘れぬように刻んだ胸元の十字傷。何度も死んでしまいたいと願った僕を繋ぎとめた、唯一の証。
あの時は一緒に死んでしまおうと思ったのに、彼女の言葉が流れると、そうもいかなくなって、孤独だった。
丸で罪を償えと言っているような面影が痛いほど突き刺さる。
髪伸びたな。そろそろ切ろうか。面倒。うざったい…
―死にたい―
毎日がそうで、それでも生きろと、十字架が訴えるんだ。
生きて何か変わるとか、別に期待なんかはしないさ。
問い詰めたいのは存在理由・・・――――
何故僕は彼女を守れずに、生きていて良いのだろう。
でもそれは嬉しい事でもなんでもない。ただただ苦しいだけで、生きるなんてことは
”世界で一番難しいんだ”
だからわざわざ彼女はそれを償いの対象として、
”生きろ”と。
エーテル・オブ・エール
天空 の 叫び
ロゴス(神の言葉)はそう、僕を突き落とす。
「ソルア?」
ソルア?ダレだ?あぁ、そうだ。僕の名前だ。忘れるなんてこんな簡単なのに、刻んだ傷は消えないんだ。どう頑張ったって、残る十字傷・・・
それでも残る、あの日の未来。あぁ面倒だ、死にたい。何故生きていなくてはならないんだ。
「ソルアだろ?」
煩いな。何度も呼ばなくても判っている。判っているけど答えたくないんだ。だってもうそんなのも面倒だと思うから・・・・・・
「・・・・・・?」
近くから声がした。まさか?そんなはず無い。だってこの部屋には僕独りしかいないはず。それでも気になって耳を澄ませば、淡く光る声がした。
気が遠くなるくらい僕には眩しすぎる光に思えたが、それはやがて小さくなって、僕の視線を釘付けにする。
「えーと、ソルア=ライオン。うん間違いない。本人だ」
ロゴス。神の言葉。・・・ゴッド。神。・・・エンジェル。天使・・・
そんなものたった今の一瞬まで信じていなかった影。小さな身体に細く繊細な羽がまとい、妖精でも何でもない唯一僕が嫌った『神』という名の偽善者。
―貴方にも見えればいいのにね―
いつしか彼女がそんな事を言っていて、今の僕にやっと意味が分かった気がした。「天使?」
呟いた言葉を拾い集めて、その小さな天使は言い返す。
「あれ?今まで見えてなかったのに、見えんの?俺のこと」
つり気味の目と眉は漆黒。耳元の髪は長く伸び、後ろは短く切ってあるという風変わりな赤色の髪。そして、羽根・・・。彼女が言っていた”貴方に似ている人”とじゃこのちいさな羽根なのかと、瞬間思った。
「見えるも何も・・・ダレ?」
唖然とする僕と口元に笑みを浮かべる天使とで出来た小さな世界。それは実にかんたんな欠片で、でもその小さな世界に一握りの光を感じた。
「俺はアンプ・キリマ。そこで、最愛の人(ラブドワン)を生き返してみたいとは思わないか?」
初めて”生きたい”そう思ったんだ。
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2005/02/02(Wed)19:08:31 公開 / 黒羽根
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■作者からのメッセージ
すみません前回の作品は都合上により中止させていただきました。申し訳ありません。
今回の作品は男の人の感情文章なのでセリフがなかなか出てきません。セリフが出しにくいというのもありますが…
とりあえず最愛の人を自分の責任で亡くしてしまったソルア・ライオンが、その彼女にしか見えていなかった謎の生物(天使)のアンプ・キリアと一緒に何故か彼女を蘇生させます。
そのなぜかは後ほどに…
それではご感想お待ちしております。
次回また会いましょう。