- 『無題』 作者:今井詩鹿 / 未分類 未分類
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全角1074文字
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遠い遠いところで少女が泣いていた…俺は少女に近寄って
「どうして泣いているの?」と…たずねてみると
「忘れられたの…」とこたえられた。
(忘れられた?誰に?この少女は一体だれなんだ…?)
見覚えがありそうでない…近くにいそうで近くに少女はいない…
一瞬で視界が真っ白になって気がついたときには視界は自分の部屋になっていた。
「またか…」
何かが悲しく思える…この気持ちは何なんだろう?何かを忘れているようで毎日見る夢に悲しみをおぼえる
(なんであんな夢を見るのだろう?あの少女は一体誰?)
疑問を抱えながらいつもの通学路を通って学校へ向かう
「…・!?」
目を疑った、通学路の横にある川を見つめている少女…間違いなく夢に出てくるあの少女…
「ねえ、君なにしてるの?」
「犬、埋めてるの」
「犬…って」
少女が抱いているのはドライアイスで身を包まれた犬の死体
「何もしないで埋めたらただの土の肥料になって消えていくの、でもこうすれば体は消えない…生きていたことがわかるでしょう?」
そう話した少女は何処か悲しい顔をしていた。
「ところで?お母さんは?」
「忘れられたの…」
ああ…俺の夢と同じ事を言うんだね。君はやっぱり夢の中の少女か・・
「忘れられたって、迷子?」
いつも疑問に思うこと、夢の中では聞こうとすると少女が消えてしまうから
逃がさないようにと俺は少女の肩をつかんで問いかけた
「お兄ちゃん…わすれた…」
「お兄ちゃん、君の…?」
「ううん。よくここで遊んでくれたお兄ちゃん。私のこと忘れたの」
お兄ちゃんか…君は俺の夢に出てきて俺におにいちゃんを探してもらいたかったのかな。
「お兄ちゃん探してあげるよ」
「………・」
少女はうつむいて何かを言った。
「本当に忘れたの?翼のこと忘れたの?」
「…つ…ばさ?」
名前に聞き覚えがある。昔、よく近所で遊んだ子供の名前。
「…あ」
よく見ると少女はそのこと瓜二つだった。当時のあのこと変わらない。
「翼…?」
ーザァ
風が吹いたと思ったら少女は消えてしまっていた。
同時に何かが聞こえた…
「ワスレナイデ…皆私を忘れるの…」
少女はそれから俺の夢にでてこなくなった。しかし、俺は少女を忘れられなくなった。あの子が死んで、何年かたって、皆の記憶から忘れられていく…だから俺に助けを求めたのだろう。
「もう忘れない…さびしかったんだね」
少女の悲しみを思う、誰かに忘れられることは悲しいこと…
あの犬も、いつか…
生きていたことも消されてしまう。
忘れかけてた記憶を少女が呼び起こし、俺はその記憶を抱きながら安らかな眠りについた。
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2005/02/02(Wed)10:16:46 公開 /
今井詩鹿
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■作者からのメッセージ
思いつきでちょっと書いたので意味がわからないところがありますが、ちょっとがんばった作品です。前回の作品に対して空白を埋めてみたりしてみました。