- 『魔王=テディベア』 作者:酢一郎 / 未分類 未分類
-
全角7360.5文字
容量14721 bytes
原稿用紙約26.3枚
第1話『テディベア』
中学校の屋上に、一人の少年がいた。
金属製の手摺りに体をあずけ、程よい風に茶髪がなびいた。
彼の名は夏山千尾、中学二年生。
屋上に彼一人がいた。
彼一人がここを独占していた。
なにせ季節は秋、肌寒い風のせいで生徒たちは教室に閉じこもっている。
千尾だけが屋上にお昼御飯を食べにきていた。
友達がいないわけじゃない、誘ってみたけど寒さを理由に断られた。
千尾は気にしていない。
彼はここが好きだから。
ここから見える風景が好きだから。
山の頂上に造られたこの中学校の屋上からの景色は絶景だ。
人の住んでいる家がとても小さい。
残され山の緑は心を落ち着かせる。
遠くの方で海が光って見えた。
「・……さてと」
風景を満喫した後は早速お弁当を食べることにした。地べたに座りこむとコンクリートの冷たさがお尻にじわっとくる。
「・・・・・・冷た」と独り言。
横において置いたお弁当のハンカチをほどき、弁当の蓋を開ける。
「・・・・・・げっ、卵」
おもむろに嫌な顔。
お箸を右手に、卵焼きをお弁当の蓋にお引越し。
卵というのは色々と調理方法があるものの、千尾は小さい時に一度だけ生で食べた事がある。それも、母方の健康に逐一うるさいおじいちゃんに無理矢理飲み込まされたのだ。
そのときの口の中の感触がどうにも気持ち悪かった。
白身がヌルヌルとして、黄身が割れるとドロドロと中身が出てくる感触。
それが千尾には絶えられない。
卵の味がしないホットケーキなどは別として、卵焼きにゆで卵にオムレツは一切駄目なのだった。
「あっ、この唐揚げ美味い」
独り言でしかない。
誰も返事を寄越してはくれない。
何故なら、千尾は屋上に一人なのだから。
「そうか、じゃあ俺にも一つくれないか?」
「ああ、いいよ」
千尾はそう返事をしてから一瞬、思考回路がとまった。
―――今、声がしたような
入り口のドアに目をやる。
千尾とそれは先程からずっと、正面を向き合っていた。誰かが入ってきた気配はなかった。
「・・・・・・気のせいか」
「おい、何をしている、この黄色いの食って良いのか?」
千尾はビクッと跳ねた。
男の子のような声がした。
その声がした方に目だけをスライドさせる。
確かにした。
確かにその声は、自分の斜め前下からしたのだ。
「食って良いのか!?悪いのか!?」
千尾は驚いた。
絶句した。
目の前にいたのは、十五センチ程度の黄色いテディベア。
「たっ、食べていいですよ・・・・・・」
布と布をつなぎ合わせた黒い糸、首に結んだ赤のリボン、プラスチックで出来た黒い瞳。
それは人形だ。
それはテディベアだ。
それは赤のリボンをきゅっと結ぶと、お弁当の蓋にお引越しさせた卵焼きを食べた。
「うむ。これは美味だ、何ていう食べ物なのだ?」
「・・・・・・卵焼きです」
「そうか。俺はこんな食べ物、初めて食ったぞ」
不思議にも、そのテディベアは口から声を発し、耳で千尾の声を聞き、しっかり会話をこなしたのだ。
テディベアは脚を放り投げて、ペタンと座っている。口に卵焼きを含みモグモグといわせた。
奇妙なテディベアだ。
奇妙だ。
そこで千尾の止まっていた思考回路が急速回転した。
―――こいつは奇妙だ
第2話『魔王』
テディベアを人差し指で指差した。
「きっ、きっ、きみは何者だ!?・・・・・・嫌、テディベアだ・・・・・・きみは誰なんだ!?・・・・・・嫌、テディベアだって・・・・・・え、いや、だから・・・・・・」
千尾は頭を抱えて絶叫する。
彼は、混乱していた。
自らの口から質問を発し、自らの口から答えを発していた。
―――テディベアなのは、分かってるんだよ!
思考回路がオーバーヒートして、頭から煙が出そうだ。
千尾は頭を抱えながら、もう一度、テディベアを指差して言った。
「きみは、何なんだ!?」
「テディベアだ」
沈黙。
テディベアは意図もあっさりと認めた。
それは、意図もあっさりと自分を人形だと言った。
それは、つまり、自分は喋るテディベアだと言っていた。
千尾はまた頭を抱えた。
「俺はテディベアだ。だが、ただのテディベアじゃない。魔界の魔王だ」
またテディベアは、意図もあさっりと言った。
「・・・・・・魔・・・王?」
「・・・そうだ」と言うと、テディベアは深く頷いた。
千尾は頭を抱えるのを止めて、目の前にいるものを、ぼーっと見た。
テディベアが立っている。
今しがた、自分の事を、魔界の魔王だと言ったテディベアが立っている。
「・・・・・・魔王・・・魔王・・・」
今ここで、とるべき行動は何か。
千尾の頭の中で『魔王』という呪文がぐるぐる回っている。
確か、小さい時に読んだ絵本には、魔王は世界征服をたくらむ悪い奴だった。
他の本も、他の本も、どんな本も、それは恐ろしい存在だった。
千尾は頭の中で、『魔王』という呪文を、『魔王』という一つの単語として理解した。
それの意味を理解した。
「ままままっ、まままま!魔王!!?」
左に三メートル。
殺虫剤を向けられたゴキブリのように跳んで逃げた。
「なかなかピュアな奴だな」
テディベアは笑った。
「・・・・・・魔王って事は・・・・・・世界征服に来たってこと??」
「嫌、残念ながら・・・」と言って首を振る。
「じゃあ、・・・・・・何しに来たんだい??」
疑いの目。
「うむ。・・・・・・どうやら、話すべき事のようだな・・・・・・」
と言って、テディベアは自らの手を、自らの口に突っ込んだ。
口の中からにゅっと、それは出てきた。
それは黒板だった。
どこの学校の教室にもある黒板だった。
何の変哲も無い、強いて言うならばそんな大きな物が、テディベアの何処に入っていたのかが、不思議だ。
「・・・よいしょ」と、体に不釣合いの黒板を支えながら、それは語り出した。
「一週間前だった。ある用事で魔界から、一人の魔王、つまり俺が下界へと降りてきたのは・・・」
テディベアが語り出すと、何の変哲も無かった黒板の平面に白い染みが浮かび上がった。
染みだと思っていたそれは、じわじわと大きくなり、首にリボンを付けたテディベアの絵へと変わっていった。
「下界に来るのが初めてだった俺は、道行く一匹の犬に道を尋ねたのだ」
黒板の平面のテディベアに、平面の犬が歩み寄って来た。
「『もしもし、犬よ。俺は魔界の魔王の―――』と俺が自己紹介しようとすると、犬は俺を飯と勘違いしたのか、口にくわえて走り出してしまったのだ!俺は必死に抵抗したが、犬は走るのを止めなかった。」
平面に小さな女の子が現われた。
「そして小さな女の子がやって来て『まあ、なんて可愛い熊さんなの』と言って、犬の口から無理矢理俺を取り上げた。
そこへ女の子の母親らしい女性が来て『まあ、なんて汚らしい熊なの』と言って女の子の手から無理矢理俺を取り上げた。
そして近くのゴミ箱に捨ててしまったのだ」
千尾は平面上で動く絵に見入ってしまっていた。
「俺はゴミ箱から這い出ようと頑張ったが、腕に付いたガムのせいで身動きが取れない。『・・・等々見の納め時か』と思ったその時、神の手が伸びてきた。
『ああ、俺は助かる』と思ったのも、つかの間。
神の手かと思ったら、ゴミ収集係りのオヤジの手だった。
結果、ゴミ山に直通。
その後、男の子に拾われ、何処ぞの店に売り飛ばされたりといろいろあって一週間。やっとの思いでここまで逃げてきた」
平面上にこの中学校が現われた。
「そして、ここまで来て俺は気付いた」
「えっ、何??」
テディベアは黒板を下に置くと、リボンをきゅっと結んだ。
「俺は・・・・・・」
「・・・・・・」
テディベアは空を見上げ、遠い何処かを見つめて言った。
「俺は迷子だ」
第3話『熊と熊』
「千尾、あのヒラヒラしたのは何だ?」
「蝶ですよ。魔王様」
千尾とテディベアは別棟の理科室へと向っていた。
「千尾、あの色とりどりしたのは何だ?」
「花ですよ。魔王様」
テディベアは千尾の肩に乗りながら、窓の外を物珍しそうにして、先程からずっと騒いでいるのだ。
何故理科室に向かう事になったのか、それは数分前の話しに戻る。
千尾は肩の力が抜けてしまった。
―――魔王が迷子ー!?
「じゃあ、きみ・・・・・・魔界に帰れないのかい?」
「嫌、それは大丈夫。今すぐ迎えを呼べばいい。だが、それには火が必要なのだ」
「・・・・・・火?」
「そう。火だ」
千尾はテディベアをじっと見つめた。
テディベアは「ん?」と小首をかしげる。
―――魔王は魔王でも、放火魔王かもしれない・・・・・・
千尾はテディベアを見つめ続ける。
いくら見つめても、どんなに見つめても、そこにいるのは黄色のテディベア。
魔王という所以外、不審な所は無い。
―――嫌、テディベアが魔王という所が、一番不審なのかも・・・・・・
だが、そこにいるのは黄色のテディベア。
帰ってくれるのに、こしたことは無いと決断。
「・・・・・・火だったら、理科室にマッチがあると思います」
「おお!本当か!?じゃあ今すぐ連れていってくれ!」
「いっ、今すぐ!?理科室は別棟にあるんだよ??・・・・・・もうすぐ五時間目が始まるし・・・・・・」
テディベアは黒板をゴクリと飲みこむと、腰を持ち上げトテトテと屋上から出ていこうとする。「あっ」と振り返った。
「そうだ。俺のことは魔王様と呼べ」
「え・・・・・・僕は夏山千尾・・・・・・って、待ってよ!魔・・・魔王様ー!」
そして今。
千尾と魔王は別棟の廊下を歩いていた。
別棟には移動教室の時にしか使わない教室ばかりがあるので、普段、こっちの棟に来る生徒はいない。
今日もその通りで、別棟の中は静かだった。
魔王を除いて。
「千尾、下界は清々しいなぁ!魔界はもっとジトジト、ベタベタ、グログロしているぞ!?」
「あっはっはっはっ」と笑う。やけにその声が響く。
しかも魔王は千尾の肩の上に乗っている。
「千尾、どうした?退屈そうだな」
「いえ、そうではなく・・・・・・」
―――そうではなく、魔王様の声が聞こえすぎて耳が痛いな〜って・・・・・・
また、「あっはっはっはっ」と笑う。
「なら良いのだ!」
長い廊下をまっすぐ進んで、突き当たりの階段で二階まで上れば、すぐそこの教室が理科室だ。
千尾はため息をついた。すると、それに共鳴するかのように廊下が歪んだ。
ぐにゃりと。
―――なんだ?
目の錯覚かと、歩を止める。
目の前に更なる小さな歪みが出来た。
それは例えるなら、池の中に小石を落とした時の水の動き。池の底が歪んで見えるのと同じように、小さな歪みからは歪んだ廊下が覗けた。
千尾はそれをじっと見つめた。魔王は肩から乗り出して、歪みを覗きこむ。
そう、その小さな歪みは丁度、魔王が入れるぐらいの大きさ。
歪みが黒色に変わったかと思うと、そこからビュンッと小さな黒い影が出てきた。
「わっ!!」
千尾が驚いて尻餅を付いた瞬間、びゅんっと廊下の歪みが小さな歪みに飲み込まれ、小さな歪みも跡形もなく消えた。
千尾が顔を上げると、そこには普段の廊下があった。
「お、お前は」
魔王は言った。
千尾は目だけを天井へとスライドさせた。そして天井まで高く飛び上がっていたそいつを見て絶句する。
そいつは、なんとなく何処かで見たような奴だった。
何でだよ!?という千尾の疑問を他所に、そいつはそこに浮いていた。
黒いテディベアが浮いていた。
片手に、温泉マークの入ったうちわを持った、黒いテディベアが浮いていたのだ。
「お前・・・・・・何故ここに・・・・・・?」
魔王は黒いテディベアに問う。
「何故かって?」
黒いテディベアは、にやりと笑うと、温泉マークの入ったうちわを魔王に向けて言った。
「お前を探しに来たに決まっとるじゃ!」
「・・・・・・」
沈黙。
「なんだ、なんだ?」と千尾は、肩に乗っている魔王と、宙に浮いている黒いテディベアを交互に見た。
第4話『オコゲ』
黒いテディベアは魔王を見下ろすように宙に浮いていた。
「お前ん家の城訪ねたら、執事のジョジョジュしかいないしよー。何処行ったって聞いたら、一週間前に下界に降りたっきり帰ってこん言うたじゃ」
そいつはニヤニヤと笑う。
「まさか、こんなに早く見つかるとは・・・・・・ワシも運が良い。・・・・・・さて魔王・・・・・・分かってるんじゃろ?ワシがお前を捜しに来た理由を・・・」
千尾は魔王へと目をやる。魔王は小さな体をわなわな揺らしていた。
黒いテディベアはニヤニヤ笑い続ける。
「どうしたじゃ?魔王」
「・・・・・・お前・・・お前って奴は・・・・・・」
魔王は千尾の肩からジャンプすると、両手を広げて、
「お前って奴は、信頼すべき俺を迎えにきてくれたのかーーー!」
と抱きつきに行った。だが、
「・・・・・・たわけかああああ!!!」
振り上げられたうちわによって叩き落され、廊下にめり込んだ。
千尾が駆け寄る。
「大丈夫?」と聞くと、「痛ててっ」と頭を抑えながら立ちあがった。
「違うのか?」
「・・・・・・当たり前じゃ」
魔王は少しの間悩むポーズをとった。そしてポンと手を打つ。
「ああ!なるほど、人間の前だから恥ずかしがってるんだな?」
「違うわ!!」
「心配せんでも千尾はなかなかピュアなやつでな、魔界の存在同士の感動の再会も、広い心で見守ってくれるぞ」
「なあ?千尾」と振られ「はあ・・・」と答える。
「さあ!オコゲ。遠慮するな」
魔王は腕をいっぱい広げる。当の千尾は、テディベアとテディベアの会話に付いていけなくなっていた。
―――結局、黒いテデイベアはなんなんですか?
「・・・・・・魔王・・・ふざけるのもたいがいにしろや?」
黒いテディベアは、やや口の端を吊り上げる。
魔王にうちわを向けて問うた。
「ワシの職業!魔界の魔王ならはっきり答えてみろじゃ!!」
「温泉屋だろ?」
千尾は「え?」と驚いて見せる。
「そうじゃ。じゃあ、三百年前のウチのツケの事も覚えとるじゃろな?」
「……」
また魔王は少しの間悩むポーズをとった。そしてポンと手を打つ。
「おお!!あった!あった!そんな事もあった!」
黒いテデイベアは吊り上った口の端を更に吊り上げる。
「じゃあ、三百年前からの利子付きで、ツケ払ってもらえるんじゃろうな〜」
魔王は首を傾けてニッコリ笑うと、
「無理」
と言った。
「ほう、そうか・・・」と黒いテディベアは温泉マークの入ったうちわを天高く上げた。
「お前も知ってるだろ?ここ最近魔界も不景気でな〜」
と魔王。
「そうなんじゃよ。おかげでこっちも商売あがったりでな〜」
うんうん、と魔王は頷く。
「従業員の給料も、ろくに払えんのじゃ。で、あいつ等、魔王からツケ払って貰えんのやったら、首掻っ切ってでも連れて来い言うてな〜」
うんうんと頷く。
「ワシもそれはヤりすぎやろって思ったんじゃが、まあ、魔王の事やし、首切ったって死なんわってことでな?決まったんよ」
うんうんと頷いてから「え?」と疑問の声が漏れた。
「お前の首、このオコゲ様が貰ったるじゃーーーー!!!」
温泉マークの入ったうちわが振り下ろされる。
ギュルルルッと空気が巻き取られた。
そして、巻き取られた空気が竜巻へと変わる。丁度、黒いテディベアの三倍の大きさだ。
竜巻は千尾と魔王に向ってきた。
「わわわわっ!?」
千尾は意思に反して言う事を聞かない体を、無理矢理横に転がした。
ガリガリガリッという音。
すぐに起き上がって、足元へと目をやった。
そして、カサカサッと逃げ出す。
全身の血が一気に引いた。
そこには足元らしい物は無く、変わりに、横にバスケットボールが三つ、縦にはバスケットボールが四つ入りそうなぐらいの穴があいていた。
「ちっ」と舌打ちの音。
「千尾!走るぞ!」
いつの間にか横に来ていた魔王が言った。「ままま待って!」と駆け出す。
「魔王!待つじゃーーー!!」
「あははははっ!オコゲが怒った〜」
廊下を真っ直ぐ走り抜ける。
千尾の顔の横を竜巻が擦っていった。
「うわあああ!?」
ガラガラガ〜
反れていった竜巻は正面の壁に穴をあけた。
黒いテディベアが浮いた状態のまま追いかけて来る。
横の階段を駆け上がった。
また後ろからガラガラガラ〜、というコンクリートが崩れる音。
「まっ、魔王様ああ!あのテディベア止めてくださいーー!!」
「・・・・・・止めてやってもいいが、・・・・・・俺とアイツがまともにヤりあうと、下界はこっぱみじんだろうな〜」
「あははは〜」と笑う。
―――笑い事じゃあない!!
二階に駆け上がると、千尾は一番最初に目に入ったドアを開けて教室の中に転がり込む。
勢いよく、ドアを閉めた。
教室には大きな机がたくさん並べてあった。
ドアの向こうで、「何処に行ったじゃ、魔王ーー!!」と先程の黒いテディベアが叫んでいる。
そいつの声が遠くなるのを確認して、荒い呼吸を整えるように胸に手を当て、座りこんだ。
「ほっ・・・」と声を漏らしてから、用心にこしたことは無いと立ちあがって、机の影に隠れることにした。
一番後ろの、机の影に隠れて座りこむ。
―――オコゲとかいったっけ?あの黒いテディベア
「・・・はあ」とため息を付く。
―――僕、夢見てんのかなー??
嫌々と首を振る。
―――何を今更・・・・・・
そう、すべては今更だ。
今起きていることを現実と認め、そして今しなければならないのは、自分の心配だ。
まさか理科室に魔王とマッチを取りに来ただけで、このような事になろうとは。
千尾は天井を見上げた。
―――現実なんだ〜
何を呑気な。
「・・・・・・ねえ、魔王様・・・・・・」
返事は無い。
「あれ?」と横を向く。
「あれれ?」
そこには何もいなかった。
黄色いテディベアがいなかった。
千尾は汗って、自分の周りを捜しまわる。
「何処行っちゃたんだ?・・・魔王様〜?魔王様〜??」
自分が踏みつけてしまったのかと腰を上げる。
だが、そこにも何もいなかった。
千尾はある結論へとたどり着く。
「ああ」
―――全部、夢だったんだ
「なあんだ」と立ち上がろうとしたとき、
ド―――ンッ、ガラガラガラ―――・・・・・・
という激しい音。
千尾は恐る恐る、机の影から顔を出した。
砂ぼこり。
その中から黒いシルエット。
そいつは壁を破壊してやってきた。
二階の一番端の教室から、ここまで、黒板や壁を破壊し、横一列。
教室を吹きぬけ状態にして。
そいつはニヤリと笑った。
「さあ、出て来い魔王」
砂ぼこりから、うちわを持った、黒いテディベアが現われた。
next
-
2005/02/15(Tue)14:51:24 公開 / 酢一郎
■この作品の著作権は酢一郎さんにあります。無断転載は禁止です。
-
■作者からのメッセージ
ここまで読んで下さってる方々、本っ当にありがとうございます!
第四話です!第四話!!
初めて書いた小説なんで、やっぱりつたないですね〜
あっ、でももう四話目ですから初めてとは言いませんかな?
で、まあ、そうです。この話しに出てくる魔王様のモデルは、家のテレビの上に乗ってるテデイベアなんです。でも、なんでそこから魔界の魔王という発想がでてきたんでしょう?あっはっはっっはっ!