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『必然? 【読みきり】』 作者:影舞踊 / 未分類 未分類
全角2994.5文字
容量5989 bytes
原稿用紙約9.75枚



―水を…なるほど。わかりました。







 外は真冬の風が吹く凍りそうな景色。今年最初の雪が見れるかもしれない空模様。最近は地球温暖化で暖かくなってきたと言うが、流石に1月ともなれば寒い。身に染みる寒さ。家の中にいれば感じることはないのだが、それでも冬の朝は冷え込んで動きが鈍くなる。
「きゃ」
 つまずいて転ぶ私に掛けられるのはいつもの聞き飽きた声。あなたは早起き。私よりもいくぶん早く起きて新聞を読み、世界情勢に目を向ける。テレビに映るニュースキャスターとコメンテーター。暖かいスタジオで半袖の女子アナ。
「ははは、ドジだなぁ。おそらく今地球の裏側でも君のような女(ひと)が転んでるよ」
 そんなはずはない。私にとって夫であり、愛した存在であるあなたはエセカオス理論信者。確かにあなたと付き合って結婚するまではこんな風なことで嫌になるとは思わなかった。何も言わない私のことを照れてると思っているのね。
「今日は早いね。地球の裏側で地震でも起こるかな?」
 ふぅ、ため息をついてあなたに微笑みかける。そういう冗談はいけないわよ。
 あなたの前に置かれているトーストとコーヒー、ごめんなさい私が入れてあげればよかったわ。今日はいつもより早く起きたつもりだったのに。新聞を読み終えて立ち上がるあなた、昨日綺麗にアイロンをかけた背広をピシッと着こなしたあなたの姿はいつもよりもたくましく見えるわ。
「それじゃ行ってくるよ。おや、雨が降ってきたね。もしかしたら地球の裏側で誰かが泣いたのかな。ハハハハ」
 何も言わずに手を振って笑う私はあなたを送り出す。そう、笑って送り出すの。
 何でもかんでも地球の裏側。たまには他の地域を言ってみたら?窓から見える雨を危惧するあなた。靴べらを戻すあなた。背広を翻すあなた。傘を持っていくあなた。全てが普通で、私が望んだ日常。あなたの思考だけが普通と違って、それが苦痛になるとわからなかった私を許して。
 普通の日常を送りたい。ただそれだけで、私はあなたを嫌いになった。でも私が早く起きたんだもの。
 今日は何か起こるんじゃないかしら?



―ええ、はい。その時間なら大丈夫です。



 照りつける太陽がまぶしく開け放った窓から入ってくる真夏の風。朝も早いというのに活気のある声が外から聞こえてくる。夏場は何かとお祭りが多いこの国なら当たり前ね。あぁ早く起きたせいでめまいがするわ。貧血気味ね。
「きゃ」
 段差があったことを忘れて転びそうになる私を受け止めてくれたあなた。でもそれは昔の話。今のあなたは机に向かって黙々と朝食を食べ、それが終わるまでは何にも気を回さない男。そんなことに気づかなかった私がいけないのかしら?いいえそうじゃないわ。そういうのはこうし始めてわかるものですものね。
「大丈夫か?」
 申し訳程度に聞いてくるあなたの言葉。足をさする私をあなたはどうとらえるのかしら。そうね、付き合い始めた頃はこんなことがあると、あなたはとんで病院まで連れて行ってくれたわね。だってあなたは情熱の男だったんですもの。痺れる様な、そんな快感を私に味合わせてくれた男。過去にしかないものを望む私は馬鹿なのかしら。
「おい。いってくる」
 あなたはいつも私の名前を呼ばないのね。そんなあなたの男気にほれたのだけれど。痺れる様な目つき。子供の出来ない私に愛想をつかしたのかしら。
 いいえ、そんな風には思わないわ。だってあなたはいつもそうだもの。私があなたを痺れさせてあげられなかったのが原因なら、素直に謝るしかないわね。変われるように努力するわ。



―パチッ





 どうしてあなたはエセカオス理論信者になったのかしら。大体ちゃんとした知識もないのにどうしてそんなことを言うのかしら。もしかして私が原因?
 あなたは私と出会った時に私を楽しませようとした。そのときの小手先のカオス理論が面白くて、私はあなたに興味を持った。それがいけなかった?でもそういう風に興味を持って人の話を聞くのは大事なことだと思うわ。―たとえ、本当は興味がなくても―それに女の子なら誰でも男の人の前では可愛く見られようとするはずでしょ。私の場合はそれが少し馬鹿っぽいことだっただけ。
 あなたは私のことが好きだったのかしら。それともあなたも私達女の子の前では好いように見られたかっただけ?だとしたら似たもの同士くっついてよかったのかもね。あっ、でも今の考え方だと全員似たもの同士かしら。



 窓から差し込む太陽の光がぽかぽかして気持ちのいい冬の午後。テレビをつけて地震のニュースを聞く。それなりに大きな地震だったのだろう。だが、誰も死者は出ていない。別段自分に関係があることではない。しかしそのニュースは面白い。夫の言ったとおり裏側で起こった地震だった。
ピンポーン
 可愛らしい音を立てるベル。女は笑って玄関に向かった。



「さっきの地震大きかったわね?」
「うん、でも誰も怪我しなかったからよかったよ。この時間はみんな外にいるからね」
 案外この町の建物ももろくはないことに安心する。
「これでよかったの?」
「うん、そうそう。後は俺が上手く電源を落としてやるから、ナルはその時に演技すればいいだけだよ」
「わかったわ」
 青年の頬に流れる汗を袖で拭く。外は暑いのだろう。もともと黒い肌が日に焼けてますます黒くなったように感じる。青年はナルにキスをして玄関に戻り、靴を履きなおした。
「もういくの?」
「仕事が山積みなんだ。それにあんまり長居すると…ね?」
 ナルはもう一度袖で青年の頬に伝う汗を拭き笑った。



 青年が帰ってから5時間。夏の日差しも少し薄くなってきた。照りつける太陽は山に隠れ始め、空は宇宙の色を映し始める。別に今日という日は今日だけじゃない。何かが起こる日と決めた今日は偶然、必然?どっちかって言うと必然かしら。あの人はどんな顔をして帰ってくるのかしら。
―今日はあの人を痺れさせてあげられるかしら?
ピンポーン
「おかえりなさい」
 ナルは玄関へと足を進めた。



 夫の鞄を受け取り、その後ろから言葉をかける。寒かったのだろう。だが雨は雪にはならなかったようだ。傘からはみ出していた部分の背広が濡れている。一挙一動を見つめ、丁寧にあなたの世話をする私をあなたはどう見るのかしら。大丈夫。全てちゃんとしてあるの。あなたがもしいなくなっても生活できるだけのお金、支えてくれる人、きっと私は幸せでいられるわ。
「今日はあなたの言った通り、裏側で地震が起こったのよ。怪我人は出なかったみたいだけど」
「ハハハハ、こりゃ迂闊に喋れないな」
 他愛のない会話。もうすぐ消える。
「今日の夜に電気が少しの間消えるらしいの」
 そう言った途端に消える電気。慌てる振りをする私。それ聞いて笑うあなた。それを聞いて心で笑う私。
 なんともできたストーリーね。

 私の言ったとおりに動いてくれるあなたが愛しいわ。そう、そこの配線が切れてしまっているの。電圧が高くても乾いていた手ではダメなの。なぜなら、人は電圧で死ぬのではなく、電流で死んでしまうの。濡れているとスムーズに体に電気が流れるのよ。



―私達の裏側でも誰かが痺れているかもしれないわね。



―でも、これも「あなたの言う」カオス理論の1部じゃないかしら?





2005/01/29(Sat)01:53:11 公開 / 影舞踊
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■作者からのメッセージ
ちょっと今までとは違った嗜好で…
意味不明だと思います。書いてて意味不明でした(マテコラ
う〜んと、まぁあれです。同時進行みたいな(何が!?
全部エセです。実際にこんな風には繋がってませんけど、物語の都合上時間は合わさせました(意味わかってもらえるかな…
いろいろとおかしいところはあると思いますが、気になる点などありましたらもうガンガン責めてやって下さい(笑
基本的にはぐらかしはぐらかし、みたいな感じで腑に落ちないかもしれません。ところどころに書いてあるやつでわかってもらえるかな(と勝手に期待
変な文でしたが、読んでくれた方ありがとうございました。
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