- 『LOVEEND―読みきり―』 作者:千夏 / 未分類 未分類
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真っ暗で、何も見えないよ。
誰か、誰か。
この真っ暗な世界に一人ぼっち…怖いよ。
ただひたすら泣く。この世界には自分しかいないのと思い込んで。ただ、ひたすら。体の中の水分を、枯らしてしまうくらいに泣く。
マイク、マイク、声が聞こえる?私の声が、聞こえる?マイク…。
彼女は真っ暗な中、マイク、と男の名を呼んだ。マイク、それは彼女の恋人の名前である。彼女は自分の名前を忘れた。まるで、いつかの一日を忘れるかのように。意図も容易く、自分の名前をこの世から消した。
「マイク」
彼女の体は熱くなっていく。マイク、と一言口にする度、熱さがどんどん増していく。熱い、熱い、燃えてしまう、誰がこんなことするの、私を、どうするのだ。彼女は堅く目を瞑った。細い両腕を強く握って。ギリギリと音を立てる。
その瞬間、彼女はプッツリと糸が切れたかのように動かなくなった。その状態が続いた。一分、いや、実際には一秒ほどの短い時間。
「キャァァァァァァァァァァァァァァァァ」
真っ暗な中、彼女の叫び声が響いた。もはや、彼女は人間ではない何か、魔物のようになっていた。
たった、一瞬の出来事であった。
「ジュー…ディ?」
小さな少年。なんだろう、黒い、魔女がかぶるような帽子をしている。手には星を持って、いや、星なんか持てるわけがないのだ。星のような物。星ではない、似た物を持っている。眩しくて目が細くなる。
どうやらジュディとは彼女のことを言っているらしく、彼女は起き上がった。すっと背中に空気が当たる。
「ジュディ?起きたんだね。君はジュディだろう?」
少年はひたすら彼女にジュディかと聞く。
「分からない、私は一体、誰なの…。ジュディは、私なの?」
「ジューディ。君はジュディだよ。きっと、多分ね。ここがどこか分かる?ジュディ」
ジュディが自分なのだと、彼女は思い込んだ。私はジュディ、ジュディ、ジュディ…。
「いいえ、分からないよ。ここはどこなの?」
ジュディは初めて出会ったその少年に、小さな声で訪ねた。
「そうか。ジュディはきっと、この世界に来る前の準備を忘れてしまったんだね。…ジュディ、君は、死んだんだ。地球から離れた、この星へやってきた。見てごらん、僕の、右手を」
そう言うと、右手で持っていた星のような物を、少年は上に投げた。キャッチするのかと思いきや、キャッチしない。それはどんどん下へ落ちてくる。
「危ない!」
ジュディはそれをキャッチしようと手を差し伸べた。その瞬間、それは瞬く間に光を発したのだった。ジュディはその瞬間に目を瞑り、静かに開いた。ジュディの目には今、自分と同い年くらいの男が見えていた。金髪に青い瞳を輝かせながら立った男。
「誰…?」
「彼はジュディの恋人。マイクだよ」
マイク。それは、彼女が唯一覚えていた名前だった。マイクとは自分の恋人であったのだ。
「マイク…マイクに会いたい。マイクに…」
少年はジュディにまだその映像を見るように言った。ジュディは何も言わず、それを見た。
一瞬、マイクの表情が暗くなった。彼女はマイク…と愛おしそうに口にした。
映像が変わる。
「…ッ」
彼女は絶句した。そこには、マイクの腕が明らかに人間の首を締め付けている映像が見えたのだ。その人間、というのは…ジュディ本人だった。
「マイク…。ねぇ、マイクが、何しているの!?ねぇ!」
ジュディは小さな少年の肩を大きく揺さぶった。少年は落ち着いて、と言って、ジュディを宥めさせた。
「ジュディ。ジュディは、最愛のマイクに殺されてしまったんだよ。ここは、天国っていうんだ」
彼女の目から涙が流れた。
「マイク…」
少年は右手の上に左手を重ね、さっきの星の形の物をまた右手に持った。
「ジュディ…こういう事はよくあるんだ。ジュディ」
彼女は少年の声など聞こえてはいなかった。信じられない現実を、ただ必死に受け止めることだけしかできなかった。
「嘘…マイク…」
彼女は顔を両手で覆って、わんわん泣いた。ひたすら泣いた。
僕の名前はありません。しいて言うなら天国への案内者。悪魔でも、天使でもない。どっちかって言うと、天使寄りだと思ってるけれど。ちなみに少年でもありません。年齢なんて、人間界だけの話です。
貴方はいつか、僕と出会います。明日、今この瞬間、貴方たちは、いずれ僕らと出会う運命にあるのです。
その日を楽しみに、待っています――
end
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2005/01/26(Wed)17:30:40 公開 / 千夏
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■作者からのメッセージ
こんにちわv
今回は不思議な感じの話を書かせてもらいました。
こういう話は書いたことなかったので、難しかったです;
最後のらへん、少し唐突すぎたかなぁとも思いましたが、
詳しく書いたら面白みが欠けると思って書きませんでした。
それぞれ自由に受け止めてもらって結構ですv
それでは、感想などお待ちしておりますv