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『ワンダー』 作者:ベル / 未分類 未分類
全角3194.5文字
容量6389 bytes
原稿用紙約9.25枚

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 ぬるりとした血の感触を覚えている。自分の前に立ちふさがるものが、雨と血にぬれるコンクリートと分かるのに、少し時間がかかった。こめかみの辺りからあふれ出る血は、止めようも無くあふれ出る。意識は朦朧とするが、決して視界が暗闇に落ちることは無い。
 痛みが、最初に大型トラックにぶち当たった右半身を始点に、体全体にガンガンと響く。そんな表現されても分からんっていわれても、体の中がガンガン響くって感じや。心臓の鼓動が早くなるのも、自分の呼吸が無意識のうちに大きくなっているのも分かる。体を空に向け、ただ涙を流し続けている、あの曇り空を見上げる。
 こめかみから頭のほうへと流れていた多大な量の血が、まぶたの上を伝い、自分の眼の中を侵略する感触を、この日ワイは絶対忘れへん。絶対や。
 痛みのおかげで薄れることの無かった意識が、徐々に薄くなっていく。まぶたが重い。血の出すぎで麻酔がかかった状態にでもなったんか、ものすごく眠たい。体全体に根を張っていた痛みが、体の奥底から抜け落ちる感覚。
 ああ、なんかめっちゃフワフワしてきたわ。それに気持ちええし。
 関西人としておかあちゃんのおなかの中からこの世に生れ落ちて14年。こんな気分は今まで一回もなかったしなあ。なんかむっちゃ新鮮な気分や。てゆうか……アカン、ホンマまじやばいって。このまま眼ェ閉じたらワイ死ぬんちゃうんか。ああでも、でもや、むっちゃ眠いんや。このまま眠ったら苦しまずにあの世へ逝けるんやろな。ああアカン、まじアカン。
 重たいまぶたが、閉じきらないように何度も抵抗する、けど、いまにも意識がまどろみに落ちそうで怖い。周りじゃワイを轢いたおっさんがワタワタしながら救急車来るのまっとるし、その遠巻きでオバハンらがヒソヒソなんか話しとるのが聞こえる。後、その横でヤマンバみたいな真っ黒な女子高生が「マジやばくなーいあれー」とかわけわからん標準語かどうかも分からん言語つこうとるのもわかる。あああれか。前になんかで見た風前の灯ってやつか。あれ? そいはちゃうな。確か――……ああ思いだせん。けど、なんか命のともし火が尽きる前ってのは、ロウソクの火が消える直前と同じで激しく燃えるってやつか。人の互換が研ぎ澄まさ……れ、る……。
 あかん、もうホンマにもたん。おかあちゃん、お父……スマ……ン――
 
 頭の中に響く救急車のサイレンがワイの人生のフィナーレか、ひときわ大きく鳴り響く。まぶたは完璧に閉ざされ、いしきもきえて

 『こっちだッ! まだ息はあるぞ!!』
 『タンカだ! 早くしろッ!!』

 
 ― 奇跡 ―

 真っ暗な闇の世界。何も見えんし何も聞こえん。あれや、ここが天国ってやつか? いやちゃうな、地獄やな。天国やったらキレイな国でお花畑ときれいな川ってのが相場や。じゃあなんや、鬼さんもおらへんし、なんやここ。んじゃああれやな。死んだ跡には天国も地獄も無くて、人類みんなここくんのか。新発見や。やば、マジやばいなワイ。でも、もう死んでんねよな。
 ドコに手をのばいてもなーんもつかめへんし、どれだけ足をバタバタさせてもどっかに進めるわけでもないしなあ。時間だけが無駄に流れ、その永遠を意識残したままずっと感じる世界、これが『死』か。
 退屈な世界やのー。暇つぶしも出来へんし。どないしょ。あーもうあかん一秒がホンマ長く感じる。何も見えへんし聞こえんのはこんなイヤなんかー。
 ってうわまぶしッ! なんやコレ、むっちゃまぶしいって、やめろって、だいやこんなことしとんのは、って……ちょい眼ぇなれて来たな……。なんや、このいかにもなタイミングでのこのまぶしさ……あれか、天国への迎えか。って……手?
 気味悪いほどに不自然なほどに現れた手を、なんかしらんけどワイは握ってしまったんや。ホンマ、なんかしらんけどな。たとえるなら導かれるようにや。
 その手、握ってみたらむっちゃ小さくてあったかいわけよ。
 ダレの手ェか知らんけど、ありがとな。
 ワイが握った小さな手ェは、ホンマに微妙にやけど、握り返してくれた。そんで、ワイの体がそのか細い手ェに引っ張りあげられとるってどないことや。なんや、今日はホンマ変な日ィやな。思えば朝から色々あったわホンマ。
 一番最初の始まりが、ワイの起床時間やった。
 いっつも遅刻してばっかりで、昼休みに登校が当たり前やったワイは、寒い冬の真っ暗な朝早く、6時に眼が覚めたってトコやな。ホンマ不思議や、何せ二度ねしようおもても寝付けへんねもん。

 1

 その朝ワイは、深い深い暗闇の中で眼ェが覚めた。
 枕の横に追い取る時計を見ると、蛍光ペンで暗闇でも分かるように塗られた短針と長針がちょうど6時きっかりをさし取った。普段やったら絶対におきん時間帯。ワイはハッキリとした意識の中、今が朝の6時なん確認したら、まだ早い思うてまた布団をかぶったわけや。あったかいぬくもりが布団の中にまだのこっとるからすぐ寝れるわ……

 「なんや、全然寝られんやんか」

 10分たってもまるで眠気が襲ってこん事にワイは疑問と不快感を浮かべ、しょうもなく布団っていうワイの巣ゥからでることにしたんや。

 「さむッ」

 まあ当たり前や。今は1月。寒くないほうがおかしいやんって話。けど今までぬくもりの残った布団の中におってんから寒さも倍増するわけや。
 パジャマのままやったらホンッマ寒いからとりあえず服に着替えよか。ワイはタンスに手をかけて、適当なシャツとパーカーに、ジーンズの長ズボンを右手にかかえる。電気のスイッチを押して、しみったれた暗い部屋に活を入れる。一瞬何回もついたりきえたりしたけど、次の瞬間パっと電灯がワイのせっまい部屋をあらわにするべく明かりをつける。4畳半の部屋にメタクソにつっこまれた散々な道具たち。
 まずコタツやな、まあこれは必需品ってヤツや、冬のな。まあこれで一畳半くらいとってるわけや。次にプラズマテレビッ。何インチやっけ……てか単位インチやったか? まあええとして……週刊ジャンボに何十回もハガキおくってようやく当たったワイのある意味宝モンや。
 んで、次にまあ着替えがはいっとるタンスとー、部屋中に散乱しとるNBA……通称ナチュラルバスケットボールアメリカの事を詳しくかいとるよーするにバスケット専門スポーツ雑誌。でも最近収納すぺーすないからのう。何冊かすてなあかへんわ。んで、これまた懸賞で当てたゲームキューブや。こいも宝モン。
 今あげたもんでホンマにごった返しになっとる部屋を、パーカーとジーンズに着替えた姿でワイは出る。まだ6時20分……くらいくらい。足元に気ィつけて、ワイは慎重に階段を下りた。

 「……なんか朝って天気予報しかしとらんの。散歩でもいこか……時間あるし」

 下のリビングで3分くらいリモコンを操り、何か番組してないかと色々探すが、結局やってるのは天気予報とわけわからんニュースばっか。強盗? 知るか。放火? 危ないのう。政治? 関係ないわ。
 かかとのつぶれたマイシューズに足を突っ込んで、ワイはポケットに手ェ突っ込んで外に出る。青黒い空の向こうでは、ちょっとやけど星がかがやいとる。水平線の向こうでは、おひさんが顔出そうとしとるから少しオレンジ色や。

 「ホー、息白いのー」

 口をOの形に広げ、自分の吐息が白くなるのを見て少しはしゃぐ。ああ、そういえばここ何ヶ月か、息、しろなってんの見たこと無かったなあ。何度も白いと息を吐き出してるうちに、次第に口の中が乾いてくる。ワイは辺りを見回し、自動販売機を探す。少しばかり歩きながら見回すと、遠く離れた駄菓子やの前で自動販売機が明るくひかっとる。ポケットに手を突っ込んでサイフをつかみ、ワイは自動販売機へと歩を進めた。

 続く〜のか
2005/01/22(Sat)00:03:29 公開 / ベル
■この作品の著作権はベルさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 
 …………(いやなんかしゃべれよ
 こんばんはっつうよりおはようです。
 はい、なんか二つ目書いちまいました。ええ、一つ目終わってないのに。誘惑に負けて、ええ。同時進行、できるはずないのに。ええ、やっちまいやがりましたよ。どうしましょう;;

 うわ〜うあ〜うgy(殴
 ふう深呼吸深呼吸(何
 …ではではッ(逃
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