- 『青春馬鹿、全力疾走。』 作者:C℃(シド) / 未分類 未分類
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原稿用紙約18.85枚
走れ、走れっ、走れ走れっ!!もっと走れー!!
「ひぃっ、はぁっひっ、ひっ・・・・・・あ゛ァーーーーーーーっ」
今俺は走っている。周りになにもない田んぼ道をひたすら全力疾走。
わけもわからず大声を出しながら全力疾走。
走りすぎて脇腹がめちゃ痛いし、息がつらい。
でも・・・キモチイイ!!(北島じゃないぜ)
「うぁぁぁぁぁ!まつばやしーーーーー!!好きだー!!・・・あっ石」
グシャァッッ。
「いってぇ。こけた、かっこわりぃ。かっこわりぃよ〜」
ホロホロと涙が出てきた。男の涙とか・・・マジかっけぇじゃんよ。
さて、今俺が走り回った結果こけて泣いた理由をみなさんに教えましょう。
てか別に聞きたくないかもしれないけど、聞いてください。
さかのぼること2時間前――。
俺はいつもみたいに学校が終わって玄関で、最近買ったばっかの
お気に入りの靴をはいていた。限定版でやっと手にいれたやつ。結構コレ自慢。
俺の高校は何もないところにあるマジ田舎の馬鹿校。
っていってもほかに高校ないからほとんど知ってるヤツらばっか。
在校生も少ないし、なんせ一番近い高校のくせに
家から片道1時間もかかるんだから馬鹿げてるよな。
でもそんな学校が好きになれた理由。
それは松林恭子っていう女だった。1年ときに同じクラスになり一目ぼれ。
松林は親の転勤でこっちに高校のときから来たらしい。
髪は黒くて長くてストレートで。色白すぎて牛乳みてぇで
目んたまクリクリで顔ちっちゃくて、華奢でマジ守ってあげたくなるくらいカワイくて
ずっと片思いだった――。
そんな松林がさっき高校1カッチョイイ男、加藤に告られてた。
玄関とこで、2人がいて、盗み見するつもりじゃなかったけど。
松林は多分オッケーした。だって相手は加藤だぜ。
加藤はスポーツもできるし、頭もいいし、顔もマジかっちょいいし(女子の話を聞いたら永井大って噂)身長もでけぇし、筋肉もあるし、性格もいいし、
まじめだし・・・。いいとこあげたらキリがない。
俺なんて色白だし、格好つけて染めた茶色い髪はチリチリに痛んだし、
実はアイプチしてるし(姉ちゃんの借りた)、サッカーうまくないくせに特技とかいっちゃってるし、勉強ぜんぜん出来ない音楽バカだし。悪いほうが多いじゃんか。
だから俺は失恋したんだ。2年間の片思いは幕を閉じたわけだ。
「って誰もあきらめるなんていってねぇじゃんかよ・・・」
コケたまま道で寝転んで何分くらいたったんだ?
マジ田舎過ぎて誰もとーんねぇし。
このまま夜むかえれそうだぜ。
「・・・走ってたからわかんなかったけど、もう冬だから寒くなってきた・・・」
俺はバカだ。ショックすぎて思わずここまで走ってきたけど。
チャリンコ忘れてきた、チャリンコで片道1時間なのにこれからあと何分かかるんじゃ。
もうこのまま死んでしまおうかってかんじだ。
「・・・くん?東キミマサくん?」
アズマ キミマサ? 誰だそれって俺の名前じゃん。
誰かが俺のこと呼んでる。
・・・あっ、天使じゃん。天使がむかえにきちまった。
にしてもこの天使めっちゃカワイイ・・・って・・・
「まつばやし!!!?」
上から長い黒い髪をかきわけながら天使松林がのぞいてきた。
思わず俺は起き上がったがそのひょうしに足をつった。
どこまでツイてなくてダサいんだ俺は。
「いてっ・・・夢、夢か? 俺は本当にイカレちまったんか!?」
目の前に松林がキョトンとした顔で立っている。
何をゆったらいいかわからないまま俺はその場に仁王立ちになってしまった。
「東くん、自転車は?」
「あ、忘れてきた・・・みたい」
「前ステップつけたんだってみんなに自慢してたマイバイクを? ふふ」
「笑うとこじゃないよ〜ってか松林こそ自転車は?」
「ん〜パンクしてた。というかされたかな」
そのまま松林は後ろに両手を組みながら
暗くなってきた田んぼ道を歩いていった。
俺はとりあえずつった足が歩けるかどうかゆっくり確認したあと
大丈夫だとわかり、松林のとこまでまた走った。
そんな松林とは仲良いわけじゃないけど、こうやって普通にしゃべることはできる。
でも・・・2人だけっていうシチュエーションははじめてかもしれない。
松林の細く白い足、腕、体が今にもこの寒い空気に溶けそうだった。
俺は考えた。
さっきの玄関で見てしまったことを話そうか。
なんでさっき俺が道端に倒れてた不思議だよな?
それともこんなチャンスは滅多にないから世間話でもワイワイ話そうか。
パンクされた? ってどういうことだ?
このままどっか二人で遊びにいこうか。
俺は・・・松林が好きだ。ってそれは今は置いといて!!
「松林!!」
「ん?」
「えーっと、これからひま?」
アズマ キミマサ。全力疾走突っ走るしかないっしょ!
2
「きみ!早く起きんさい!」
誰かが俺の事を呼んでる・・・?
「ったくなんでこんな格好で寝てんだろうねぇこの子は」
あれ?ここは 家?
「うあわぁっかあちゃん!?」
「おはよ。あんた昨日制服のまま寝たでしょ」
「昨日? ああ、そういや・・・」
そういや昨日家に帰ってきたとき気分が良すぎて
布団の上で音楽聞いてたんだった。
そのまま寝ちゃったのかよぉ・・・
でもそりゃそうだよな。昨日はあの松林といっしょに帰ったんだぞ俺。
気分もよくなるはずじゃん!
暇があれば遊びたかったけど松林にはやっぱり断られ。
松林、これから習い事あるのってゆってたな。
たしか小1からピアノ習ってるって。
あんな細い手でピアノとかひくんかぁ・・・
相当いい音色奏でるんだろうなぁ・・・
しかもなにげ松林と俺んち近かったな。
これから毎日遊んだりとか出来たら
まじ最高なのに・・・。はぁ。松林〜・・・
「きみ!ホラぼーっとしてないで早く学校いけ!」
「わかってるよー。ゴハンはぁ」
「そこに置いてあるでしょ」
「なんで納豆じゃねぇんだよ〜納豆がいいよ〜」
松林も今ごろ朝ご飯とか食ってんのかな?
朝ご飯つーかフレンチトーストとか、コンポタージュとか飲んでそうだな。
「なんだいこの子ニヤニヤしながら気持ち悪いねえ!」
「ヤベ!そういえば俺チャリないんだった!原付で行くか」
「馬鹿!バイクなんて乗って先生に見つかったらどうすんの!」
「はーい、走っていきまーす」
起きて温まったはずの体が外に出た瞬間一気にさめた。
「さみぃっ」
鼻は赤くなって手がガチガチ震え、口からは白い息が大量に出た。
朝はやっぱり寒い。でも俺は朝が一番好きだ。
これから陽も昇ってくるし、空気がおいしく感じるし、田舎にしかわからない
この感覚。
「ウーン、今日も一段と最高!」
そういや松林が学校まで何で行くんだろう?
でも前親の車らしき車で登校してるのを目撃したことはある。
原付2ケツ・・・。いや、警察に捕まったら松林からしたら迷惑かもしれん。
「別にいっしょに行きたいわけじゃないけどっ」
照れくさそうにへりくつを言ってみた。しかも独り言。やっぱり俺は変態だ。
ドュッドュッドュッドュッ・・・
かかりにくいエンジンをかけ、俺は田舎道で原付にまたがり出発した。
後ろから母さんの声がかすかに聞こえる。《バイクのるな〜っ》
「ついたどー!」
いつもより20分ぐらい早く学校に着いた。
「松林はもう着いてるんかなぁ?」
今まで学校でお互い何か用がないと話したりはしなかった。
なのに今日いきなり俺は松林に話し掛けたらみんなどう思うだろ?
うらやましがって俺に文句いってくるヤツぁいっぱいいるだろうなぁ、だろなぁ
「ふっふっふ♪」
松林の教室の前についた。俺鼻まだ赤くないか? 髪はボサボサじゃないか?
アイプチはとれてないか?? よし、OK!
ガラッ
「松林いますかー?」
「東くん、どうしたの?」
いた!!松林・・・アレ? ん!?
「よぅ。東、おはよう」
「よ、よう。あれ? ・・・加藤ってこのクラスだっけ?」
「いや、俺は1組だよ。松林さんとこに遊びにきたんだ」
「そ、そう・・・」
「東こそ松林さんに何?」
ってかちょっと待てよ!なんで松林を訪問したのに加藤がいるんだよ?
しかもなんで加藤おまえはさりげなく松林を隠すように立ってるんだ?
もしかして・・・昨日の告白、OKしたのか!?
おまえらつきあってんのか!? でも盗み見したことバレたらやだし、
へたに聞けねえじゃん。松林どうなんだよ?
俺・・・ついに本当に失恋!?
「東くんどうしたの?」
松林がにっこり笑いかけてきた。加藤は笑ってない。くそっ俺は笑ってやるぜ。
「朝一に訪問してみようと思っただけかな、あはは」
作り笑いが痛々しいぜこのシチュエーション。
早く加藤も笑えよこんちくしょう。
「何でそんなに引きつってるの? おかしい。」
松林が笑ってる!かわいいなぁ。
んで、加藤は?
「そう。そういや東、今日原付で登校してたよな?」
「あれ?加藤なんで知ってるの?あははは」
「窓から見えたんだよ」
「あはは、そうなんだ、あはははは」
笑えよ加藤!!
笑ってみろよ!!永井大!!!
「・・・おまえアイプチとれてるぞ」
「あ、あははは・・・は?」
負けた!!
笑えねぇ。
負けたこの勝負。時間が止まった。きまづい。きまづい。
松林にアイプチってバレた。
加藤はちょっと鼻がヒクヒクしてやがる。そんなに今うれしかったか?
俺は多分今顔が固まってる。
なさけない!
いい男(加藤)いくない男(俺)ちょうど180℃になってるよこの空気。
もう最悪だ!!
「はぁ。もう俺なんで一重なんだよ・・・」
ここは保健室。1時間目の授業もうけられないくらい心がズタズタにされた。
今まで保健室には何度がお世話になったけど本気でここが天国に思えた。
でも藍ちゃんは険しい顔をしながら俺のことを見てる。
藍ちゃんとは、保健室の天使とはいいがたい悪魔のような先生だ。
っと、本人にバレたら半殺しだ・・・。
「ちょっと、アンタ。ちゃんと授業出てきなさいよ」
「もう受けらんないくらい心が痛い、助けて」
「ここは溜まり場じゃないでしょ」
「今日は俺1人しか来てないじゃんか!」
「仮病が何ゆってる」
鬼だ、このセンコウ。絶対鬼だ・・・。
「も〜保健室さえ俺のこと拒否るのかよ」
「何? 保健室に何しにきたのよ? アイプチは置いてないわよ」
「あーもう!アイプチの話はしないで!」
はぁ、また涙が出てきたよ。俺って実は涙もろい?
しかもいっつもくやしい涙しか出してねぇし。うれしい涙は出ないのか?
涙も涙で恨むぞ。俺の人生って悲しいことしかない人生なのか?
「アンタにとって嬉しいときってないわけ?」
俺にとって嬉しい時・・・金が入ったとき?
ほしいものが手に入ったとき? 音楽をきてるとき? 松林・・・
松林のこと考えてるとき? まさに昨日とか・・・幸せだったなぁ。
「ほら、あるじゃん」
「ってなんで藍ちゃん俺の気持ちよんでんだよ!」
「アンタの顔がわかりやすすぎなの!」
「俺って素直だからさ・・・」
「わかってるよ。もういいよ、ここでゆっくりしてきな」
藍ちゃんが天使に見えた。
俺はそのあと藍ちゃんに松林のことを話した。
加藤のことも、昨日のことも。
藍ちゃんはウンウン。と聞いてくれた。俺は男友達に話すよりも
いっぱい松林のことを話せた。
気づいたころにはスッキリしていて、ポジティブな自分になっていた。
「藍ちゃんアリガトウ!!まじすきだよ」
「はいはい、ありがと。ホラ、泣いたからさらにアイプチとれてるよ」
「クラスの女に借りるから!」
「うん、じゃあもう休み時間なったから、クラスに戻りな」
「うーい!」
俺はすがすがしい気持ちで廊下を出た。
ああああああぁぁぁぁ。
やっぱ俺は松林が好きだから加藤には負けらんねぇな。
俺は馬鹿で顔も悪くていいとこなんもないけど、
松林の事好きって気持ちは負ける気がしない!
悪いけど加藤。俺はおまえに勝つぞ。そのうち加藤の泣き顔みてやるからな!
「早くこいよっ」
怖い声が聞こえた。そっちに目をやってみた。
ん?うわぁこえぇ。女集団が1人女の子連れてるってカンジだな。
なんかこれから文句でもいうんかね?
なんで女子ってあーゆーネチネチしたことしかできねぇの?
あの女の子かわいそうだな。
しかもあいつら俺らと同じ学年じゃねぇか?
あ!しかも女ボスみたいな目立ってるやつ、俺のクラスじゃん!
しかも俺が毎日アイプチ借りてるサチじゃん!!普通に俺仲良いよ。
何やってんだよ。かっこ悪いな。
って・・・しかも松林じゃん!?
どうみてもこの状況、松林、呼び出し?
コレって俺、守るべきだよな?
ってか守るしかないよな?
・・・・・・松林を守る。
俺はゆっくりと足をだし、唾を大量に飲み込み、そこに向かっていった。
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2005/01/17(Mon)13:31:22 公開 / C℃(シド)
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