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『記憶の欠片を抱きしめて 氷の月をそっと見上げて』 作者:夢幻花 彩 / 未分類 未分類
全角1311.5文字
容量2623 bytes
原稿用紙約5.25枚




――冬の冷たい月がすき。身も心も凍てつくような苦しさはとても素直に感じられるから。





 

 菜の花畑に入日薄れ……

 小学校のときに習った朧月夜を口ずさんでみたけれど、やっぱりこの曲を好きになることは出来そうもない。優しすぎる。
 こんなに暖かくてほっとするような曲は今の私に感動を覚えさせることは出来ない。昔からずっとそうだった。これからももしかするとずっとそうなのかもしれない。
 私は今まで数え切れないほどの恋をして、数え切れないほど泣いた。それはとても辛くてとても幸福な時間だった。人を愛することで輝ける人間がいてそれが私だって事は知っていたから別に悲しくは無かった。けど、愛されたいという欲望は確実に私を支配している。自分はそんな強欲な人間だと思っていなかったのでそんな衝動を発見した時には怖くなった。そんなすべて抱いた感情を私は今宝物だと思うことが出来る。あの時が無かったら今の私はあり得なかった。あれはすべて必要な感情だった。

だからこそ、


「好きです」


怖くて。

震えながら、チョコレート。

「……これ、受け取ってくださいっ」


辛くて。
泣きながら、夏祭り。

「……ずっと、大好きでした」




淋しくて。
最後の制服、ユレテ卒業。

「……大学は変わっても、また連絡していいですか」







 あっけないくらいにみんな喜んでくれて。どうして「ありがとう」なんて優しく言ってしまうんだろう。



 私はみんな好きだった。いつまでも好きでいたかった。だから片思いで、実らせないで終わってしまいたかった。
 付き合い始めたら絶対悪い所が見え始めてくる。絶対絶対気づいてしまう。ああ、この人もただの男なんだ、普通の人なんだって。
 私はそれが嫌だった。愛されないことよりも愛されて嫌われる事が怖かった。だから永遠に片思いを続けられるそんな相手が欲しくて、恋をやめなかった。告白しないといられないくらいに好きになって、片思いは終わっていった。そのうちにがらりと変わって笑わなくなった私をみんな気味悪そうに捨てていく。いやだ、嫌だよ。ねぇ待って。私はずっと一人を見つめていたいの。振り向いてもらえない、それでも良いから一人を愛し続けたいの。そう思う私とは裏腹に、私自身の恋心も彼らが去ってしまうずっと前にさめてしまう。愛されたい、愛し続けたいとこんなに願っているのに。
 
 私は……

 わたしは……

 ただ……






……たった一人を愛せれば、それで良かったのに。











 たくさん愛した人の中で、たった一人だけ、彼だけは私を、ううん、誰一人として愛していなかった。私はだからやっと彼に片思いをし続けられるのだ。彼には冬の間、それもこんな深い夜にしか決して会うことは出来ないけれど。彼はそのときだけ私の見える所にいてくれるのだ。どんなに愛を伝えても、急に優しくなったりもせずに、ただそこに存在し続けてくれる。

……冬の冷たい月。身も心も凍てつくような苦しさはとても素直に、愛していると思えるの。これからも、きっとずっと。


 菜の花畑に入日薄れ…… そう思うと、朧月夜の歌も心なしか美しいと感じられるような気がした。





2005/01/02(Sun)05:43:49 公開 / 夢幻花 彩
■この作品の著作権は夢幻花 彩さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
えっと、私の恋愛モノを読んだことのある方はうすうす感ずいていらっしゃると思うのですが私は恋愛にコンプレックスをもっています。物心ついてから常に本気で恋愛をしておきながら、どろどろとした恋愛経験を持っているせいか、恋愛に対して一生懸命すぎるのか定かではありませんが、コンプレックスの塊のような私は恋愛モノをあまり書くのは好きでありませんでした。正直今でもそうです。特にこういう心理描写ばかりの恋愛モノは書いていてキツイです。そのうち脳が爆発し日本全体を揺るがすような歴史的な事件をしでかすのではないかと……こほんっ。
 じゃぁなんでこんな小説を下手な癖して書いているのかというと、書かずにはいられないんです。こんな複雑な心理状況、本当にまるで恋をしているときのような……ちなみにこの話長い片思いをしたことのある方なら何処か共感していただけるのではないだろうかとか馬鹿なことを考えています。
批判等でも全然構いません。レスいただけたら嬉しいです☆
それではっ♪
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