- 『夢と現実』 作者:霜 / 未分類 未分類
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原稿用紙約5.2枚
ため息をつくときはどんなとき?
僕は、とても後悔しているときにつく。
体の中にたまっている重苦しいものを息と同時に吐き出す――吐き出そうとしている。完全に吐き出したいんだけど、体のどっかで引っかかってしまって、それが外に出ることはない。
だから、僕は何度も何度も繰り返す。
「はあ〜……」
なんというか、僕はとても落ち込んでいるところだった。
今、僕は学校にいる。そして、休み時間だというのに僕は誰とも話さずにこうして席に座っている。
簡単に説明すると、友達と喧嘩したのだ。
発端は小さなことだったと思う。でも、結果はこんな状態になってしまった。
何やってんだろう……ああ〜。
いつもは気にならないはずの周りの喧騒がすごく五月蝿く感じる。だからといって、黙っていて欲しいわけではないけれど。
孤独という名の寂しさが自分を取り巻いていた。
「草野〜。次の授業自習らしいから本貸してくんない?」
唯一の友達河野が、僕にそう言った。
僕は自分が今読んでいる本以外持っていなかった。
だから、僕は謝ったんだ。
「ごめん。これしかないんだ」
当然、僕だって自習のときに本を読みたかった。だから、この本は貸したくなかった。
その途端、河野の口調が変わった。
「別に一時間ぐらい良いだろ。ケチくせえなあ」
侮蔑の目と辛辣な言葉。
今思えば、そんなに大したことではなかったような気がする。でも何故か、僕はそれに対して過剰に反応してしまった。
「そんな言い方ないだろ。読みたいものは読みたいんだ。他あたれよ」
突き放すような僕の言葉に対して、河野も少しだけ怒りをあらわにする。
その後のやり取りの結果、僕らは一言も話さなくなっていた。
それは、かれこれ五日前のことだった。
どちらが悪いとは思っていない。
慣れ親しんだために、僕らはお互いへの配慮を少し忘れていただけなのだから。
とはいうものの、自分たち(もしくは自分だけ)の悪い部分を認めておきながらも、仲直りすることができない。
僕から、一言ごめんというだけでもことは足りるんだ。でも、僕はどうしてもそれを躊躇してしまう……。
ある日の休み時間。僕はそっと席を立って河野の席まで歩いていった。
河野もまた、僕以外話す相手はいない。僕は友達を無意味に増やすのが面倒なだけなんだけど彼はどうなんだろうか。
僕は、彼の視界の中に入り込んで、一言ごめんと言った。
本当に申し訳ないと思っている。だから許して欲しい。そんな感じの声を頑張って作り出した。
河野は、僕の目と言葉を聴いて置きながらも、無言で席を立ち去った。
去り際に肩をぶつけて、どこかへ行ってしまった……。
僕は、それを呆然と見ているしかなかった。
心の中では許してもらえると思っていたのに。もとの仲に戻ることができると思っていたのに。……できなかった。
悔しさよりも、悲しさよりも、虚無感のほうがずっとずっと大きかった。
彼が姿を消してから数秒。
僕はやっとのことで目を覚ました。僕がいる場所は家の自室、ベッドの上だった。
僕はいつもこんな夢を見ている夢とも現実とも区別のつかない夢。
その光景は、現実と全く区別がつかない。もし、永遠にその夢を見ていたのなら、僕は永遠にそこが夢だと気づくことはないだろう。
少しだけ寝汗をかいていた。
毛布の上に置かれた手が小刻みに震えていた。
拒否されるのが怖いんだ。
河野との仲が分断されるのが怖いんだ。
今ならまだ切れかけているだけだから。
無意味な推量でもギリギリ保たれているから。
僕はいつでも河野に謝りたいと思っている。けれど、現実のような夢を見て、その勇気はかき消されてしまう。
現実はそんなに甘いものじゃない。誰もが知っていることだ。
だから、夢が現実になりそうで怖いんだ。
僕は、夢と現実の区別がつかない。だって、夢のほうがよほど現実味を帯びているんだから。
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2004/12/27(Mon)19:44:26 公開 / 霜
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■作者からのメッセージ
お久しぶりです。
こんなの書けたらいいな〜と思って書きました。
でも、なんだか矛盾しているような気がします。
アドバイスできたらお願いします。