- 『世界の鍵 第二話』 作者:名も無い作者 / 未分類 未分類
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原稿用紙約15.15枚
第二話
あの歓声のあと、五人はカナに連れられて、ある部屋に向かっていた。閻魔大王は執務があるからと、メモを司に渡して執務室へ行ってしまった。司はメモを渡された時の閻魔大王の言葉が気になって仕方がない。
「俺偉いから〜執務とかそういうことしなきゃなんないわけ。だからお前らはカナに案内された部屋に行け。そこで聞きたいこと聞けばいいよ。あ、それからこのメモ、お前らが探してる奴に渡してくれ。説明してくれって書いてるからさ。あと最後に一つ…カナには言っといたけど、お前はその部屋じゃなくて執務室へ来い。お前には俺からこの世界のこと説明してやるよ。んじゃな!」
そういって閻魔大王は走って執務室へ行ってしまった。途中でフードをかぶった家来らしき人に「閻魔大王様!走らないで下さいとあれほど申し上げましたのに!」という声が閻魔大王が走っていったところから聞こえてきた。
…なぜわざわざ皆が案内される部屋のあとに執務室へ行かなければならないのだろう。一緒に行けばいいじゃないか。しかも俺だけだし。あいつ、俺に惚れたか?やだな〜男だもんな〜あいつ〜、女なら大歓迎なのに。それにこのメモ…。
〜那々へ〜
こいつらに説明よろしく☆
〜閻魔〜
…ホントに言ったまんまだな。こんなメモやるぐらいならカナちゃんに直接言えばいいのに。それにこの「那々」ってだれだ?俺たちが探しているのは「奈々」なのに。たしかにどちらも「なな」って読むけど、漢字違うじゃねえか。閻魔大王のくせに漢字も書けないのかよ〜。あとでちゃんと言わなきゃな〜…。
「かさ…司?」
「んあっ!?なに?梨紗。」
「べつに用事はないけど〜…」
ゴンッ!!!司は一本の大きな柱に顔面直撃した。
「…っっっっっっってぇ―――――!!!!梨紗!何でもっと早く言わねえんだよ!!!」
「だって梨紗ちゃんと言おうとしたんだよ。でもその前に司が勝手にぶつかっちゃったんだもん。だからべつに梨紗わるくないも〜ん。」
「てめぇ――…!」
「つきました。」
カナは扉を開けた。部屋の中には大きな円卓があり、その円卓には四人の人が座っていた。全員同じ年齢ぐらいだろう。
窓に一番近いほうに座っているのは茶色のショートヘアーの少年だ。髪は天然で、ところどころクルクルなっている。容姿は中の上といったところだ。表情から、優しそうな感じが出ている。瞳の色は緑色をしている…夏の草原の色だ。そういえばカナと同じ色のような感じがする。
その少年の隣に座っているのはまた少年だ。こっちは黒い髪と黒い瞳、肌はとても白く、ちょっと華奢な体つきをしている。容姿は整っているが、表情には冷たい感じが出ていて、ちょっと怒っているように見える。
その隣には少女が座っている。これはまた派手な色で、緑色の髪をしていて、瞳は灰色と赤と、双方違う色になっている。容姿はその髪や瞳の色のイメージが強く、一瞬美人にはみえないが、よくみれば美人だということがわかる。
その隣。一番端にいるのは少女だが…この少女を見て五人はその場で立ちすくむ。少女は長い金髪を下ろしていて、瞳は深い青色だ。肌は白く、唇はやわらかい色をしており、まつげは長く、小さい顔をしている。そのバランスのよさ…容姿のすごさは、『美しい』を越えていた。そして、逆に恐ろしいとも思えた。悪魔か何かが化けているのか…動かない等身人形のような感じがする。目が離せない。その少女が口をあけて何か話そうとする…その仕草さえも夢のように美しい。
「あんたたち何ボーっとしてるの?椅子はあるんだから早く座りなよ。」
その意外な口調から、さっきの恐ろしい感じが少し消えた。なじみやすい性格のようだ。
五人は空いている席に座ろうとするが、司だけはカナに引き止められた。
「司君、メモを…。」
「あ、ああ。忘れてた。あの〜奈々は?えんまだいお〜様からメモ渡されてるんだけど〜…。」
するとさっきの恐ろしいほどの美貌を持つ少女が立ち上がった。
「奈々ってあたしに決まってんじゃん。司、あたしのこと忘れちゃった?」
「「「「「……え――――――――!!!!!」」」」」
部屋の中で五人の声が響き渡る。叫んだ五人以外は耳を両手で多い、いかにもうるさいという顔をしている。
「ホントに奈々なのか?…顔が違う。」
「そうだよ〜!奈々はそりゃ美人だったけど、ここまで美人じゃなかったもん!!」
「金髪じゃなかったし!」
「目とかちがう色だし!」
「そっそうだよ。奈々はもっとぶさいくだったぞ!こんな美人じゃなかった!もっと乱暴で、品がなくて、ガサツだったし。カナちゃん!ところで奈々はどこ…」
司の顔面にコーヒーカップがすごい勢いで投げつけられた。投げつけた相手は言うまでもなく奈々だ。カナはそんなの気にせずに司の質問に答える。
「落ち着いて、司君。まず皆を紹介するわね。窓に一番近い席から順にキョウ、私の双子の弟よ。それから海樹、サリーア、那々よ。あなた達のいう『奈々』はその子なんだけど…。説明はあとでするわ。あなた達と同じで、私たち五人も『力もつ死神』なの。よろしくね。…それじゃあ私は司君を閻魔大王様のところに連れて行くから、司君、メモを。」
「あ…ああ。」
司は何がなんだかわからずにいたが、閻魔大王にたのまれていたメモを奈々と名乗る少女にとりあえず渡して、カナと一緒にその部屋をあとにした。
司とカナが出て行ったあとの部屋では、しばらく沈黙が続いていた。するとメモを見ていた那々がため息をつき、静かにこう言った。
「じゃあ、説明するね。この世界のこと、『力もつ死神』のこと、…あたしのこと。」
「お〜きたか〜。まあ座れ座れ。カナ、茶〜持ってきてくれる?」
「はい。」
そういってカナは執務室のドアを静かに閉め、お茶を取りに行った。
執務室の中は広く、閻魔大王が座っている机にはペンとインクと電気スタンド、あとは煙管など、そういったものがある。思っていたよりもキレイなのが以外だった。執務室というから、てっきり書類が束になっているものだと思っていた。だが、ここの執務室にはぜんぜん書類一枚すらないようだ。
「あんだ?『執務室って聞いたからもっと書類とかつまれてるもんだと思ってたのに』って顔してんな〜。まあとにかくそっち座れ。説明始めるから。」
自分の思っていたことが見透かされていてちょっとくやしかった。
司はあることを思い出し、閻魔大王に問う。
「えんまだいお〜様さあ、漢字も書けない訳?この「那々」って漢字。奈々の漢字と違うんだけど。」
「俺が漢字ごとき間違うわけねえだろうが。とにかくそれもいれて説明してやるからさっさと座れや。」
司はしぶしぶと座る。…逆にこっちがバカにされた気分だ。
その昔、無王という王がいた。王は自分の箱庭に四つの世界を創り、それぞれに管理者をつけさせた。神界では『神王』を、死界では『閻魔大王』を、人間界では『天使』を、真界では『真王』を。そしてそれぞれの世界には役割があった。
神界では全ての世界のあらゆるものに神をつけさせ、管理させる。
死界では全ての世界の死んだ魂を裁判・調教し、生まれかえさせる。
人間界では霊力を住民にためさせて、他の世界のためにする。
真界では武力を強め、箱庭を壊そうとするものがいれば排除する。
管理者達にとって無王は絶対的存在で、それぞれの管理者は無王にとっては庭師みたいなものだったが、それぞれの世界の住民にとってはそれぞれの管理者は絶対的存在だった。
四つの世界はとても平和だった。それぞれの世界が仲が良く、種族関係なく友人や家族になっていた。皆このままの平和が続くと思っていた。この平和が壊れるなどと、誰も思ってはいなかった。
ところがある日、無王は箱庭を見ていて思ったことがあった。いつまでも変わらぬ平和、変わらぬ日々、刺激のなさ。とても面白くない。
こんなつまらない箱庭はいらないと思い、無王は箱庭を壊そうとした。でも無王はあることを思いついた。
―――この平和の中に強い『刺激』を入れたらどうなるだろう。―――
無王は楽しくなってきた。『刺激』を入れて平和が壊れるところを見たくなってきた。
早速無王は『刺激』を創ることにした。どんなものがいいだろう。あの平和を壊すのだから、とても凶悪なものにしよう…と、着々と『刺激』の創造は進んでいった。
「…そして無王は『刺激』を作り上げ、真界におくりこんだ。」
初めて海樹が口をひらいた。冷静な感じで淡々と話を続ける。
「その『刺激』ってなんなわけ?どんなもの?つヵどんな形してるの?」
「まあそう急かすな。」
閻魔大王は煙草を吸い、円形の煙をポッポッポッと出してまた煙草を吸う。
「その『刺激』っていうのはな…破壊神だ。……この破壊神の登場で箱庭の平和は見事にくずれさったよ。破壊神は世界の半分の住民を殺した。おまけにその強大な力は存在するだけで世界に影響が出たんだ。破壊神をおくりこめられた真界は破壊神をつくったと誤解され、他の世界から非難されつづけた。お前らが箱庭を壊そうとしているじゃないか…ってね。」
「なにそれ〜!じゃあ今ここにいる世界も無王とかいう奴が操っているわけ!?梨紗ちょーむかつくんだけど!それになんで真界は誤解だって言わなかったのよ!友達だったんでしょ!?信じてもらえないとか思ってたわけ!?」
「言っただろう?管理者達にとって無王は絶対的存在だ。管理者達は無王の言ったことはすべて信じる。」
「無王が真界のせいだと言ったら他の管理者達はそれを信じることになる。だから真界の者が何を言っても他の世界からは信じてもらえなかったの。悲しいものよね…。」
那々は少し悲しそうな顔を浮かべ、言葉を続ける。
「真界の管理者は、無王が自分達を操って楽しんでいるということにやっと気づいた。でも遅かった…。他の三つの世界の者が怒りに満ち、武器を持ち出した。そうして戦争が始まった…。」
戦争は500年もの長い年月を得てもなお終わらなかった。
もともと真界は武力を高めていたので、そうそう簡単に決着はつくはずがなかった。もちろん、無王はそれをわかっていて破壊神を真界に送り込んだのだ。戦争が長続きするように、と。
500年の間に、死界の閻魔大王は無王の考えに少しずつ気づいてきた。そして、真実を確かめるために一人で真界の真王のところまで行ったのだ。
「……俺がもっと早く気づけばよかったんだけどな。ジャカ…真王に事実を聞いた時、俺は自分の不甲斐なさに落ち込んだよ。無王は、俺たちを手駒のように操って遊んでたんだ。そして破壊神は…一度も人を殺したりしたことはなかった。」
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2004/12/13(Mon)23:41:43 公開 / 名も無い作者
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■作者からのメッセージ
こんばんわ。ねっみぃ〜です(ノД`)
第1話のときにアドバイスされていたことが改善できていれば良いですが…。
またアドバイス&感想お待ちしてます!