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『ウマヤド』 作者:葵沙羅木(きさらぎ / 未分類 未分類
全角1500.5文字
容量3001 bytes
原稿用紙約4.25枚
 六世紀―日本。
 各地で争いが繰り返され、人々は支配したり支配されたりしていた。聖徳太子―この名前は誰でも聞いたことはあるのではないだろうか。が、しかしこの人物に対する明瞭で詳しい書籍はほとんど残っていない。すべて、伝説と交じり合ってしまっているのである。それでは、こんな物語はいかがであろうか―。

 天瀬村は静かでいいむらだった。玖珠川にそって山を開き、そこにできた小さな集落の中に人々は仲良く暮らしていた。八女(ヤメ)は津江(ツエ)と泗水(シスイ)との間に生まれた八番目の娘だった。村の娘達は毎朝日の出前に起き出し、井戸水を汲んだり、朝食や畑へ行く者達の弁当を作る。八女もそのうちの一人だった。
 ある朝、八女はとても早くに目が覚めた。まだあたりは真っ暗で誰も起きていなさそうだった。が、八女はまるで誰かに呼ばれているような気がし森へ行きたいと思った。朝の森はまだ暗く、いつも見慣れている森とはまた違った感じがした。鳥達や虫達もまだ起きていないのか、とてもシンとしている。また、少し肌寒いせいもあってかなんとなく怖い気さえした。八女は一瞬引き返そうかとも考えた、しかし持ち前の負けず嫌いな性格と好奇心に負け、森の奥深くまで進んでいく事にした。森は昼間とはまた違った雰囲気を醸しだしていた。いつもなら気にならないはずの風の音や木々のざわめきがやけに響いて聞こえる。なにか、八女に言いたいことがあるかのようだった。八女は怖さを紛らわすかのようにずんずん進んでいった。進まなくてはいけないような気さえした。しばらくいくと、八女はおかしな光景を目にした。枯葉が一箇所に集まってこんもりと山を作っているのだ。まるでその中に何かがあるかのように……。八女は好奇心にかられ近寄ってみた。見れば見るほど中に誰かがいるようだ、いや、もはやそれは確信に変わっていた。“クマかもしれない……。”八女はおそるおそる覗き込んだ。“違うわよね、こんな形だもの、まるで人間みたい……誰か倒れているのかしら?”数秒どうしようか迷った後、八女は思い切って一部枯葉をどけてみた。やはり、そこには人間が入っていた。枯葉の塊全体が上下に動いている。生きている証拠だった。だれかが中で眠っているようだった。八女は少し安心し全体の枯葉をどけてみた。それは八女より少し年上らしい青年が眠っていた。
「……誰?!」
思わず八女はつぶやいた。と、枯葉をとられ急に寒くなったのか青年は動き出しブルッと身震いすると目を開けた。村人らしくない顔立ちで漆黒色の目はとても大きくなんでも見透かされそうな感じがした。髪もとても長く八女の始めて見る人間だった。二人は少しの間黙り込んでしまった。しばらくしてやっと青年が口を開いた。
「そなたは……どうしてここに?」
「あんたこそ。なぜこんな所で寝ているの?」
「私は……。」
青年は口ごもってしまった。八女はかまわず続けた。
「あんた、名前は?この村の者ではないね?見慣れない顔だもの。」
「私の名前は、いや、今はわけあって名乗れませぬ。ウマヤドとでもよんで頂きましょうか。」
「ウマヤド?へんな名前ね。」
「そうだ、そなたはこの村の者であろう?しばらくの間、そなたの家にいさせてもらえませぬか。」
突然の申し出に八女はおどろいてあんぐり口をあけた。だが青年、いやウマヤドは驚いた風も無く、淡々としている。
「そんな、急に言われても。父さんや母さんにも聞いてみないといけないし。」
「それでは私も共に行って頼んでみよう。」
「え?」
ウマヤドのあまりの自信に八女は断りきれなかった。しぶしぶウマヤドをつれて家に向かい森を歩いた。
2004/12/01(Wed)21:59:32 公開 / 葵沙羅木(きさらぎ
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■作者からのメッセージ
書きかけでごめんなさい、また次回続きをつけます。
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