- 『魔導伝説シークレット+a』 作者:水樹姫乃 / 未分類 未分類
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全角36352文字
容量72704 bytes
原稿用紙約122.65枚
〜プロローグ〜
風・雷・水・炎・草 の五つの力をそれぞれ司り、操ることができる者・・・『使い』と呼ばれる者が住む世界 センストラ
地・水・雷・炎 を自由自在に操ることができる者・・・『魔導師』と呼ばれる者が住む世界 スアナト
この両世界の住人たちが出会う物語が今始まる・・・。
薄暗い岩山の深奥に一つの明かりがあった。
そこには一人の女性が立っていた・・・・
「これで・・・私が・・・・・私が・・・」
その女性は水晶玉に向かってそう呟いていた。
何回も・・・何回も・・・
そして、女性は水晶にまばゆい光を放った・・・。
その光は、一つの世界の小さな村の一角へと向かっていった。
〜第一話 運命の出会い〜
センストラ 天星暦5425年 風の森でその出来事は突然起こった・・・。
「これくらいでいいかな?」
風の森の深奥辺りの花畑で腰を下ろし、両手いっぱいの花を持って、肩の下くらいまである栗色の髪をかき上げながら ウィンズリー・ソフィア は、尋ねた。
「いいんじゃねぇか?」
ウィンズリーのすぐ横に立っていた少年・・・ サンダー・ディナ が、腰に巻きつけた長く赤い腰帯と、長めの紫色の髪のポニーテールをなびかせながら、ウィンズリーの問いに答えた。
二人のいる風の森は、名前の通り そよそよ風が止むことなく吹いている。
そして、その近くにあるウィンドシティという町に二人は暮らしていた。
ここ・・・センストラでは、それぞれの使いごとの村や町に使いたちは暮らしている。
しかし、最近になって他の使いたちが他の村などに住み始めてもいた。
サンダーはその中の一人であった。
「でもごめんねっ 花摘みにつき合わせちゃって」
「いいって その花、薬草なんだろ? 摘みにこなきゃ大変じゃねぇか」
ウィンズリーの手に持っている花には、傷がすぐ治る薬草の一種である。ウィンズリーはその薬草で作った薬を他の村々まで運ぶ仕事などをやっているのだ。
「まぁ そうだよね」
そんな会話をしながら、二人は村に向かって歩いていた。
「・・・しっかし 今日は天気悪ぃなー」
すると、風の森全体の上空に黒い雲が稲光を出しながら現れた。
「うん・・・あれってさ・・・ もしかして雷雲?」
ずどーーーーーんっ!!!
その時、大きな光が光ったと同時にウィンズリー、サンダーのすぐ目の前に大きな稲妻が落ちてきたのだ。
「「!?」」
そして、さっきまであった雷雲は嘘のようになくなり、煙と元に現れたものに二人は目を丸くしているしかなかった。
「いったーーーい!! なんなのよっ もぅ!」
「ったく ここどこだよ。あんま見慣れない所だけど・・・」
そこにいたのは、ウィンズリーと同じくらいの長さをした茶色の髪に真っ赤な大きいリボンが良く目立ち、背中には小さな翼らしきものがついている少女と、真っ黒な髪が印象的な少年が座り込んでいた。二人ともウィンズリーたちよりも年齢が一つ上に見えた。
「あっ・・・あの〜 どうしました?」
二人はキョロキョロしていたが、ウィンズリーの問いにすぐ二人の方に顔を向きなおした。
すると、少女が口を開いた。
「あっ すいませんが、ここはどこなんですか?」
「あ・・・ ここは『風の森』ですけど・・・」
「えーっと・・・『風の森』は――っ・・」
ウィンズリーの答えを聞いた少年は、一枚の地図を取り出した。どうやら今の場所を探しているようだ。
「ですから・・・・・!?」
ウィンズリーは少年に近づき地図を覗き込んだ。しかしそのまま目を丸くして、固まってしまった。
「・・・どうした? ウィンズリー・・・」
それもそのはずだった。その少年の持っていた地図は、ここ センストラの地図ではなく、まったく別の世界・・・スアナトの世界の地図だったからだ。
「そんなっ・・・じゃあ、私たち・・・異世界に来ちゃったの? でも・・・どうして・・・」
と、少女が疑問に思っていた。(他の三人も)
そんな時に近くの茂みが少し揺れたかと思ったら、そこから勢い良く何かが飛び出してきた。
「げっ!? まさか・・・モンスター!?」
「いやっ・・・そんなたいしたもんじゃ・・・」
うろたえている少年に対して、サンダーはとても冷静であった。
それは、次の瞬間にすぐ分かった。
「ウィンズリー☆」
「きゃっ!」
そう・・・飛び出してきたのは、少し小柄で、水色の髪を下の方で二つに結んだ少女だったからだ。
「な? たいしたことなかっただろ?」
「「・・・・・(呆)」」
「ちょっと ワリサ!!(怒)」
ウィンズリーは、ワリサと呼んだ小柄な少女に怒鳴りつけた。
「いい加減にしてよ!! 毎日毎日! またお花つぶれちゃったじゃない!!!」
そんなウィンズリーにはお構いなしにワリサは、ウィンズリーの上から退こうとしずに、ケラケラと笑っていた。
ちなみに、今ワリサはうつ伏せ状態のウィンズリーの上に乗っている状態だった。
「まぁ とにかく二人ともとりあえずウィンズリーの家で話そうぜ」
そう言いながらサンダーはワリサの襟をつかんで、ウィンズリーを解放した。
振袖に似た水色の服から伸びた腕を上下左右に振りながら ワリサ・ライト は、抵抗したがサンダーにそのまま引きずられてウィンズリーの家に五人は向かった。
ガチャッ
ウィンズリーの家は、センストラで一つの孤児院であった。
しかし、今すべての孤児は引き取られウィンズリーが一人で暮らしていた。
・・・そのはずだったが、家の中には腰まで余裕に届く黄色の長い髪を赤いリボンで
サンダーと同じようにポニーテールに結わった少女がお茶をすすっていた。
「あっ サント ごめんね、留守番なんて頼んで」
「平気平気っ どうせ私ものすごく暇だったし・・・」
ウィンズリーに声をかけられ、そう答えながら サント・フラッシュ は、手を顔の前でひらひらと振って見せた。
「・・・そういえばさ・・・ウィンズリー・・・そこの二人は?」
サントは、入り口の前でオロオロしている見慣れない二人を見てウィンズリーに尋ねた。
「あっ・・・あのね・・・」
ウィンズリーは、サント・ワリサに二人について分かっていることをすべて話した。
それを聞いた二人は、目を丸くしたりしながら話を聞いていた。
「えっ・・・じゃあ、この二人を連れて、ファマリアとグラァストも一緒に巫女様に聞きに行くの?」
「うんっ その方がいいと思って・・・」
ウィンズリーとサントは話を進めていた矢先にワリサは思い出したように、振り返りながら青年と少女に向かって口を開いた。
「そういえばさ・・・まだ二人の名前聞いてなかったよね?」
「あぁ・・・そうだったね 私は、ウィンズリーっていうの。 で、こっちからサント、ワリサ、それにサンダーだよ」
ウィンズリーは簡単に全員の名前を読み上げた。
「えっと・・・私はヒリアです。 ヒリア・ケア ・・・」
「あ・・・ セイ・テラス ・・・です」
ヒリアと名乗った少女は、深く頭を下げお辞儀をした。セイと名乗った少年もつられて軽く頭を下げた。
「ヒリアと・・・セイだね。仲良くしようね☆」
ウィンズリーは二人の名前を復唱し、右手をヒリアの方へ伸ばした。
「はいっ!」
ヒリアは、さっきまで不安な表情だったがウィンズリーたちの態度を見て安心したのか
おもいっきりの笑みで、ウィンズリーの手に自分の手を重ねた。
それを見たワリサはいきなり立ち上がり
「よーしっ そうと決まったらさっそく二人呼びに行こうよ!」
「えっ? もぅ少しゆっくりしていっても・・・って ワリサ!!(呆)」
サントの呼びかけに答えもせずワリサはすでに、外へ飛び出しだして見えなくなっていた。
「・・・ワリサって 元気だなぁ もぅ見えねぇよ・・・」
セイは、すっかり打ち解けた様子でサンダーに向かって言った。
「まぁ・・・それだけが取り柄でもあるからな」
サンダーは呆れ顔で、ワリサの後を追うように外へ出て行った。それに続いて、残りの四人もワリサを追いかけた。
「たしかこの辺に二人がいるって聞いたんだけどなー・・・」
ウィンズリーたちは、話していた他の仲間を探していた。
ところでワリサはというと、ものすごいスピードで外へ飛び出していったのだが他の仲間二人の手がかりを何も持っていないので、町の中心辺りでうろうろしていたのをウィンズリーたちが見つけ、合流したのだ。
「あっ ねぇねぇウィンズリー あそこ」
「ん?」
ワリサの呼びかけにウィンズリーは振り向き、ワリサの指さしている方を向いた。
そこには、大きな木に寄りかかり、本を読んでいる桃色の髪がよく映え ワリサに似たような髪形だが、ワリサよりも長い髪の少女と、その隣に草木の緑色にはあまり見えにくい鮮やかな緑色の腰から10cm程度は長い髪に赤いリボンをした少女がいた。
「本当だ! おぉーい! ファマリアー グラァストー!!」
ウィンズリーは二人に気づき、二人に呼びかけた。するとその二人も気づいたようだった。
すると緑色の髪の少女・・・ グラァスト・トア は、立ち上がり
「どうしたんですか? みんな揃って」
と、六人の方へ近づいていた。
「あっ そうだ あのねー」
ワリサは、グラァストに近づいていった。そして、グラァストの横に ファマリア・ケア が、本を読むのを止め読むためにしていた眼鏡をはずし、桃色をした前髪をかき上げた。
「ふーんっ それで今から巫女様の所に行くんだ」
「うんっ」
ファマリアとグラァストは、ウィンズリーたちにあらかた一部始終を聞き終えた所であった。 ちなみに巫女とは、軽い傷や怪我を治したり 人々の相談などを聞いたりする職業である。しかし、ここでは最近巫女になる人も少なくなっていき今から会いに行く巫女様(本名はちゃんとあります。)ただ一人しかいなくなってしまったのだ。
「そうね 巫女様の家もそう遠くないし・・・」
「私がなにか?」
その声に驚き八人は、声のした方向を向いた。
「あっ 巫女様!」
そこには、赤い着物を着て金髪に長い髪をポニーテールに結わって手には書類を持った
巫女様が立っていた。
「そうですか お二人は異世界『スアナト』から・・・」
「はい・・・」
ウィンズリーたちは、巫女様にもすべてのことを話した。
「あの・・・私たちはどうやったらスアナトに帰れますか?」
と、ヒリアは巫女様に尋ねた。
「それはですね。ここ『センストラ』には、『時の山』別名『タイムマウンテン』と呼ばれている岩山があります。その深奥にあるという『時の宝玉』は空間移動ができると言われているので、それがあればきっと元の世界に帰れます」
「じゃあ!」
ヒリアの顔は、明るくなったが巫女様の話の続きを聞いているうちに、また顔はくもっていった。
「しかし・・・その『時の宝玉』は魔獣フェニスドラゴンが守っています。そいつを倒さないといけません」
「フェニス・・・ドラゴン・・・」
「とにかく、 行ってみようよ で、巫女様 その山の場所は?」
「わかりません」
「「・・・・・・(呆)」」
ワリサは、くもりきった空気を変えるために明るく聞いたのだが、巫女様は即答だったために場は白けてしまった。
「地図とかにも載ってないのですか?」
「ありません ただ一つ分かっているのは、その山はセンストラの北にあると言われています。」
「よーしっ さっそく出発! レッツゴー☆」
「ちょいまちっ」
ワリサはまた外へ飛び出そうとしたが、それをすぐにファマリアが止めた。
「今何時だと思ってるのよっ もうすぐ日も暮れるし、ウィンドシティ出たらすぐ風の森で、あそこ夜はモンスターがうじゃうじゃいるのよ!」
近くの時計を見てみると、もう午後五時を回っていた。
「じゃあ 明日にしま〜す」
「それじゃあさっ ヒリアとセイは、孤児院で寝たら? 部屋もいっぱいあるし 今日、寝るところないでしょ?」
ウィンズリーは、ヒリアとセイの方を向き二人に尋ねた。
「あっ・・・そうか それじゃあそうさせてもらうよ」
それを見ていたサントは
「それじゃあ 明日の朝九時、ここに集合ねっ」
と言い 九人は、それぞれの家へ帰っていった。
そして次の日
「あ〜っ もう九時だよ!」
「お前が寝坊するからだろ!」
「だって寝られなかったんだもん!!」
そんな会話をしながらヒリアとセイは、昨日の場所へと向かっていた。
「おぉーーいっ ヒリアーっ セイーっ」
そこには、すでに七人が集まっており ワリサが二人に向かって大きく両手を振っていた。
「ごめんねー」
「どうした? 遅かったな」
「いや〜っ ヒリアの寝坊で・・・」
「セイっ!!(激怒)」
その光景を見て巫女様は微笑みウィンズリーへと視点を変えた。
「ウィンズリー・・・確か『タイムマウンテン』のある場所は『王都センストラ』に行けばすぐ分かります。あとこれは地図です」
と、巫女様はウィンズリーに地図を差し出した。
「ありがとうございます」
ウィンズリーは地図を受け取りながら言った。
そして ヒリア、セイ、サンダーを見てみるとまだ今朝のことでヒリアとセイが言い合っていた。それをサンダーがなだめていたが、なかなか治まらず、見ているウィンズリーに気づくとサンダーは、顔を歪めながらウィンズリーに微笑んだ。それに答えるようにウィンズリーは、微笑み返した。
「それと、皆さん・・・」
巫女様の呼びかけに、六人は振り返った。ヒリアとセイも言い合いをやめて振り向いた。その後ろで、サンダーは胸を撫で下ろした。
「今、風の森は何者かにより一週間前から結界が張られているようです」
「えーーーっ じゃあ魔力使えないんですか!?」
ワリサの問いに巫女様は、声を出さずにうなずいた。
「なので、それを使えるようにしてほしいのです。みんなとても困っていますから・・・」
「・・・わかしました」
「「!?」」
ウィンズリーは少し考えそう答えた。
「大丈夫だよ 私たちなら・・・それに風の森は、結構大きい森だし結界解いたほうが早いでしょ?」
ウィンズリーはそう七人へ言うと、笑みを見せた。
「そうだねっ よ〜し 『タイムマウンテン』へ レッツゴー☆」
こうして 私たちの旅は始まった・・・。
〜第二話 風の森にて〜
「もぅ いやだーーー!!」
ここはちょうど風の森の中心部辺りで、ワリサがいきなり空に向かって叫んだ。
「やっぱし魔力使えないんじゃなんもできないよー! しかもなんなのよ! モンスターどころか、鳥一羽もいないじゃん!!」
ワリサは両手をぶんぶんと振り回しながらなおも叫び続けていた。
「でもワリサ、いくらなんでも森に入ってまだ一時間くらいしか経ってないんだよ? がまんしなよ」
ファマリアは、そうワリサに声をかけた。その声にワリサはピクッと反応し、ファマリアの方に振り向いた。
その時、近くの茂みが動いて一人の青年が飛び出してきた。
「だっ・・・大丈夫ですか!?」
ヒリアは、その青年に近づいていった。青年は別に何処も怪我をしていなかったのだが、ずっと走っていたらしく息は荒かった。
「あぁ・・・っ あ!! お頭!!!」
「「へ?」」
青年はサンダーを見た瞬間すぐその言葉を放った。
「お頭ってなんだ?」
セイは、横にいたグラァストに尋ねた。そのグラァストはすぐ答えてくれた。
「それはですね。サンダーは昔、強奪団という盗賊団の頭をやっていたんですよ」
「あぁ・・・お前か〜」
「お頭ひどいですよー」
そんな会話をしていると青年はウィンズリーにも気づき・・・
「あーっ ウィンズリーの姉貴 お久しぶりです!」
「あっ・・・姉貴!? なんで!?」
「なーんか団を捕まえたかららしいぜ 俺も知らんかった」
2年前にウィンズリーは、サントと一緒に強奪団をあっという間に捕まえてしまったことがあった。そして、そのことがきっかけで強奪団は解散したのだ。
「!?・・・お前・・・それどこで・・・」
サンダーは、青年が首から提げているペンダントに気づいた。
「これっすか?これは一週間前に真っ黒なマントをしていた奴にもらいましたぜ。でも、これがどうしたんすか?」
それを聞いたサンダーは目を大きく見開いて顔を青ざめた。
「・・・そのペンダントと・・・あと、剣貸してくれるか?」
「?・・・あーっ はいっ」
それを受け取るとサンダーはいきなりペンダントを地面に置き、剣でペンダントを砕いてしまった。
「あーーーーーっ!!??」
「お前・・・これがなんだか分かるか?」
サンダーは砕いたペンダントの欠片を手に取り、青年に尋ねた。
「・・・・お頭が割った俺のペンダント・・・」
「違うっ!!(怒)」
なにかコントのような会話であったが、サンダーはゆっくりと話し始めた。
「これは・・・『悪の結晶』だ」
「え!? 『悪の結晶』ってなに?」
サントはサンダーに尋ねた。
「あぁ・・・ 『悪の結晶』は魔界にしか存在しない結晶の一つなんだ。これには結界を張ったりする力をもっているんだよ」
と、サンダーはサントの問いに答えた。
「じゃあこれで魔力が・・・」
「ダメみたいよ」
ワリサが喜んでいたが、ファマリアが水を指すようにワリサの言葉を止めた。
「少しは使えるけど、ほとんどダメね まだあといくつかその結晶があるんじゃない?」
そういうとファマリアは、自分の右手を突き出し魔法を発動させようとするのだが、すぐに消えてしまった。
「もぅ分かってしまいましたか・・・」
「「!?」」
その声のする方に八人は向いてみると、そこには青年の言っていた真っ黒のマントを身に着けた女性が立っていた。
「まさか・・・お前が悪の結晶を・・?」
「いかにも・・・」
ファマリアは、恐る恐る聞くと女性は低い声で答えた。
「さぁ 最後の悪の結晶・・・壊して御覧なさい!!」
そういうと女性はスッと右手を振り上げると頭が三つある大蛇が姿を現した。
「げっ!? でっかい蛇!! しかも額に結晶!?」
ワリサは、2、3歩下がって叫んだ。
「私がやるよ!!」
ヒリアはそういうと少し前に出て、詠唱を始めた。
「エンジェルソード・・・我に力を貸し・・・姿を現せ!!」
するとヒリアの手の中に一本の剣が現れた。そしてヒリアはそのまま詠唱を続けた。
「雷神よ・・・彼の者を焦げ尽くせ・・・サンダーソード!!」
詠唱を終え大蛇へ攻撃したが、魔法は発動せず辺りは しーん と静まり返っていた。
「・・・あれ? ここでバリバリッとくるんだけどな〜・・・」
「バカ!! まだ魔力は使えねぇんだって!!」
「あ・・・忘れてた・・・」
その時、ヒリアの方へ大蛇のしっぽが襲い掛かって来た。
「きゃあぁ!」
ヒリアはそのまま飛ばされ、地面に叩きつかれてしまった。
「かはぁっ!!」
「おいっ ヒリア!大丈夫か!!」
体が上手く動かないのかヒリアはそのままの姿勢で、気絶してしまった。
「・・・っ みんな いくよ!!」
「「ラジャ!」」
「さあ、お前たち・・・行きなさい!!」
大蛇はその指示に従うようにウィンズリーたちの方へ向かっていった。
「んん・・・」
そんな頃、少し気絶してしまったヒリアが目を覚ました。
「あっ 大丈夫か? ヒリア」
「あ・・・セイ うん 大丈夫だよ・・・」
ヒリアは頭を振って、今の状況を把握しようとした。
そして、目をカッと見開いてセイの肩をつかんだ。
「そうだ! みんなは!? どうしたの!!」
セイはなにも言わずにヒリアから目をそらした。ヒリアは、セイと同じ方を向いた。目に映ったのは、大蛇の首の一つが大きな口を開けてウィンズリーの方へ向かっていた所であった。
「!?」
ウィンズリーはそのまま大蛇に突っ込んでいた。
しかし、もう少しで大蛇の口に入ってしまいそうな時に、ウィンズリーは右手に少しの魔力をため そして大蛇の額へとジャンプした。
するとその右手には、なにか長細いものが握られていた。ウィンズリーは大蛇の額を長細いもので切りつけ、地面へと降り立った。
そして、大蛇は倒れてしまった。その大蛇の額にはすでに、悪の結晶がなくなっていた。
「あまいわね・・・」
ウィンズリーの手には、独特な形をした剣が握られていた。
センストラの人々はこの剣の出し方をマスターしているのだ。これを覚えていないと魔法も教えてもらえないらしい・・・
「それじゃあ俺たちもいくか」
そういったサンダーの手にはすでに、剣が握られていた・・・
「もぅ なんなのよこいつら!!」
「全然ひるみませんよ!」
ファマリア・グラァストの言う通り大蛇はしっぽなどを切ってもひるまず襲い掛かってくるのだ。
「二人とも 危ない!!」
サントの呼びかけに二人は振り向くと目の前には大蛇の頭が向かってきていた。
「グラァスト! 切り上げ!!」
グラァストはウィンズリーの声に反応し、言われた通りに大蛇の頭を切った。
すると、大蛇の額の結晶は取れ、倒れていった。
「やったぁ!」
ワリサは腕をパタパタと振って喜んでいた。
その時だった・・・
「ワリサ!!」
ワリサは、自分を呼ぶ声に気づき横を向いてみた。そこには大蛇の最後の頭が大きな口を開け、自分を飲み込もうとしていた。
そこにウィンズリーがワリサをかばうように肩を押した。しかし、ウィンズリーはワリサがいた場所にいたのでそのまま大蛇の口に入っていってしまった・・・。
「ウィンズリー・・・」
ワリサは、それをボー然と見ているしかなかった。しかし我に返ると顔を真っ青にした。
「いやー なにすんのよー! 出せー!! はけー 戻せー ウィンズリー!!!」
ワリサは大泣きしていたそんな時に、いきなり大蛇の体が光りだした。
「なっ・・・この光は!」
そしてどんどん光は強まっていった。
「風華 神裂魔導剣!!」
突然ウィンズリーの声がしたと思うと、ウィンズリーは大蛇の中から飛び出してきてそのまま大蛇の額を切りつけた。そして、ウィンズリーは栗色の髪と水色のスカートと背中の大きな水色リボン、そして剣の刃を血で濡らしながら地面に降り立った。
「ウィンズリー!!」
ワリサはウィンズリーの名を呼び、ウィンズリーに勢い良く抱きついた。
「良かった・・・良かったよ〜」
ワリサはそのまま泣き続けていた。それを見たウィンズリーは微笑みワリサを優しく抱きしめた。
「・・・おい あの黒女いねぇぞ しかもあの男もいねぇ逃げたな・・・」
セイはさっきまでいた女性の気配がないのに気づき、辺りを見回してみたがやはりいなくなっていた。
「でも・・・あの人だれだったんだろう・・・」
「「・・・・」」
みんなが考えていると
「まーっ いいじゃんか☆」
ワリサは、さっきまで本当に泣いていたのか? と思うくらいに元気に言った。
「ワリサ・・・そうゆうことじゃなくてね・・・」
「いいの! いいの! 結界も消えたみたいだし」
すると、ワリサは自分の右手で発動させてみた。
「それにさっ そんなのいちいち気にしていたら次のこと考えられないよ!」
「ワリサにしては、以外ね そんなこと言うの・・・」
「私、いつもそうだもん(怒)」
その会話を見ていてヒリアは呆れていたが、ヒリアはセンストラ人の全員に尋ねた。
「でもさっ みんなすごいねー 剣の腕! 他にどんなことができるの?」
ヒリアはグラァストに問いかけた。
「そうですねー 私たちセンストラ人は五つの力を司っているんです。そうゆう人々を私たちは『使い』と呼んでいます。
ちなみにワリサは水使い、サント・サンダーは雷使い、ファマリアは炎使い、ウィンズリーは風使い、そして私は草使いなんですよ」
と、グラァストはヒリアに答えた。
「それで二人は、どうなんだ?」
サンダーの問いに今度はセイが答えた。
「俺たちは四つの力が使える『魔導師』なんだよ」
「まぁそれはおいといてさっ」
するとウィンズリーは巫女様に渡してもらった地図を広げながら言った。
「ん〜 ここから近いのは『スリプタウン』かな?」
「それじゃあ さっそく行こうよ!」
ワリサはウィンズリーの言葉を聞いてすぐ立ち上がって言った。
「えっ!? もぅ!?」
「だってさ〜 善は急げって言うでしょー。 さぁ!スリプタウンへレッツゴー♪」
そう言ったワリサは走り出した。しかしすぐ近くの小石につまずいて転んでしまった。
「・・・あれが同い年とは思えないよ・・・」
「えっ!? 年下じゃなかったの!?」
ウィンズリーの呆れたように言った言葉に、ヒリアはとても驚いた・・・。
ちなみにセンストラ人六人は16歳 そして、スアナト人二人は17歳である。
〜第三話 ワリサ がんばります!〜
ここは風の森・・・ウィンズリーたち一行は、森を抜けようと森の中を歩いていた。
「あーっ ここは空気がおいしいねー」
「本当ですねー」
ヒリアの意見にグラァストは同意した。
それもそうだ。風の森の近くには、スリプタウンという水の都がある。そこにはとても澄み切ったきれいな水がある。その水の空気が風の森まで来るのだ。
「あとさっ ここの『イノセント湖』の水が、すっごくおいしいんだよ」
サントの言葉を聞いたワリサは、どこから出したのかバケツを取り出し、
「じゃあ 私汲んでくるよ!」
「あっ ワリサ!」
ファマリアは呼び止めたが、ワリサはすでに見えなくなっていた・・・。
ワリサは今、湖で水を汲んでいるところだった。
しかし、ワリサはバケツの中の水を見て ふ、と思った。
イノセント湖の水はいつも澄み切っていているのだが、今バケツの中にある水は少し色が濁ったような、そうでもないような色をしていた。
「・・・・まっ いっか♪」
そのままワリサは七人の元へ帰っていった・・・。
しかし、その湖の立て看板には、『クライム湖』と書いてあった。
「汲んできたよーーー!!」
「あっ 帰ってきた」
「あっ!」
ワリサはつまずき、持っていたバケツを落としてしまった。
「えっ・・・」
しかもそのバケツはこともあろうに、ウィンズリーへと落ちてった。 そして・・・
バシャーーーーーンッ!!
「きゃぁぁぁ!?」
「わーっ ウィンズリー!!」
Pi Pi Pi
ここは風の森の中にある休憩所である。風の森は見かけよりも大きい森のため、休憩所がいくつもあるのだ。
「38度6分・・・」
サンダーは、体温計を読み上げた。
さっきの水は予想通りウィンズリーにかかってしまい、結果的にウィンズリーは、風邪をひいてしまったのだ。
「まったくワリサ・・・気をつけろよ。お前はよく転ぶんだからよ」
「うぅ・・・ごめんね。ウィンズリー」
ワリサはサンダーの言葉に少し引いて、顔を赤くしながらベッドで寝ているウィンズリーに謝った。
「大丈夫だよ、これくらいなら・・・」
ウィンズリーは弱々しく微笑んで見せた。
「でも良かったよね。近くに休憩所があってさ」
「そうですね。ウィンズリーの風邪が治るまで、ここで休んでいましょうか」
その時・・・ウィンズリーの体が高鳴り、顔を真っ青にし、唸っていた。
「ウィンズリー?! どうしたの!?」
ヒリアは近寄ってみると、ウィンズリーの右腕は肌色から灰色へと変化していっていた。恐る恐るヒリアはその腕に触ってみた。
「・・・腕が・・・石みたいに・・・硬いよ・・・・・」
そして、反射的に触っていた手を引っ込めた。
「まさか・・・・」
グラァストは思い立ったように呟き、ワリサへと視線を換えた。
「ワリサ! 本当にさっき汲んできた水はイノセント湖の水ですか!?」
「へ!? あぁ・・・なんかいつも見るよりは水の色が変だなーって思ってたけど・・・」
グラァストの勢いに押され2、3歩下がりながら、ワリサは問いに答えた。
「・・・っ!? それはクライム湖の水です!!」
「はぁ!? クライム湖ってなんだ?」
グラァストの代わりにセイの問いをサンダーが答えた。
「クライム湖は、大昔に戦死した人々を湖に沈めたりしていたから、あそこの水は邪気で満ちているんだ。だから、クライム湖の水を被った者は少しずつ石に変化していくと言い伝えられているんだ・・・」
「じゃあ どうやって治すんだよ! このままじゃウィンズリーは完全に石になっちまうんだろ?!」
「みんな! あったよ。石になった物を戻す方法!」
「「へ?」」
その声に驚き六人は、声のした方を向くとサントが、休憩所にあったらしい本を持っていた。
サントはその本を近くにあったテーブルに置き、一枚の写真を指差した。
「ほらっ 『石になった物に「リバースリーフ」を液体にしたものをその物に掻ければ戻る 「リバースリーフ」の繁殖地は主に崖などの斜面に生える』だって!」
「これだ!」
これを聞いたワリサは少し無言になり、いきなり右手を横に払いながら叫んだ。
「私が行くよ! 私のせいでウィンズリーがこうなっちゃったんだもん!!」
ワリサの目には少し涙が浮かんでいたのが全員からでも分かった。
そして、そのままワリサは勢いよく外へ飛び出していった。
「ちょっ・・・まってよ ワリサ!」
ヒリアはワリサを追うように続いて出て行った。
「あっ・・・まってよ 二人とも! まだ続きがあるんだってば!!」
しかし、二人はすでに見えなくなってしまっていた。
「ねぇサント・・・続きってなに?」
ファマリアの言葉にサントは一瞬固まってしまった。
そして、俯きながら話し始めた。
「それは・・・・・」
それを聞いた四人は目を丸くし、顔を青ざめ固まってしまった。
「ワリサ! まってってば!!」
ヒリアの呼ぶ声にワリサは、顔の汗を拭き取りながら振り向いた。
「ヒリア・・・なんで・・・?」
「ワリサ一人じゃ大変でしょ? 私も一緒に探すよ」
「ヒリア・・・うん 頑張ろうね☆」
「うんっ」
そんな会話をしながら、ヒリアとワリサは崖付近へと向かった。
「ヒリアーっ ワリサーっ どこだー!!」
三人は、リバースリーフのありそうな場所を頼りに二人を探していた。
「たくっ あの二人どこに行ったんだよ」
「でも、まだそう遠くへは行ってないですよ」
「うんっ 早く探そう!!」
そして 20分後・・・
「あっ!! ヒリア あったよ」
「えっ!? どこ?」
「ほら あそこ」
「・・・・・・・・・」
ワリサが指差したのは、崖の上から手を伸ばして届くか届かないか微妙な所にあった。
「・・・大丈夫なの?」
「大丈夫だよ これくらい手伸ばせば・・・・・」
そう言って、ワリサは右手を伸ばしリバースリーフを採ろうとした。
「気をつけてよ ワリサ・・・・」
「ん〜・・・・・・・採れた!!」
その時、ワリサはリバースリーフを掴もうとして身を乗り出したせいで、ワリサの体は崖下へと落ちていってしまった。
「きゃぁぁっ!?」
「ワリサ!!」
ヒリアは崖下を覗き込んで見ると、なんとか岩にしがみ付いているワリサが目に映った。しかし、そこはだいぶ下の方まで落ちてしまったためにヒリア一人では引き上げることができなかった。
「ヒリア!!」
ヒリアは声のする方を振り向くと四人がこちらに走ってきていた。
「あっ みんな!!」
「ワリサは? どうしたの?」
「あそこ!」
サントがワリサを探すようにキョロキョロしているとヒリアがさっきワリサが落ちてしまった方を指差した。
10分後・・・
ワリサはグラァストの魔法によって、崖から引き上げられた。
「あ・・・ありがとう、グラァスト」
ワリサはグラァストに微笑んで見せたが、グラァストの顔に笑みは見えなかった。
それは、ヒリアを除く全員も同じであった。
そしてサンダーは、他の三人とは違ってものすごい顔でワリサに怒鳴りだした。
「ワリサのバカ!!」
ワリサは笑みを止め、サンダーの声に反応し ビクッ と身を震わせた。
「話も聞かずに飛び出しやがって!!」
「ちょっと・・・サンダー」
サンダーはサントの止めを振り払い、怒鳴り続けた。
「あのな! クライム湖の水で石になった者は、30分以内にリバースリーフの液体をかけないと時間が早まり、完全な石になって命を落とす可能性があるんだぞ!!」
その言葉にワリサは目を丸くし、言葉が出なくなってしまった。
「もう30分経ちます。急げば間に合うかもしれません」
「あっ ワリサ!!」
グラァストの言葉を聞いた瞬間、ワリサは元の休憩所へ向かって走り出した。
「ウィンズリー!!」
「あっ・・・ワリサ」
一人残って待っていたファマリアはワリサに気づき、ゆっくりと振り向いた。
「ファマリア! ウィンズリーは!?」
ワリサはウィンズリーが寝ていたベッドへと行ったがワリサの目にしたものは、・・・
目を閉じ、頭から足にかけて灰色になった・・・完全な石になってしまったウィンズリーの姿だった・・・
「一足・・・遅かったみたいね・・・」
ファマリアは弱々しい声で呟き、ウィンズリーの手をなでた。
「うそ・・・・・うそでしょ・・・いや・・・・いやだよ・・・
ウィンズリー! 目開けてよ!!・・・お願いだから・・・」
「ワリサ・・・」
ワリサを追って戻ってきた五人は、走ってきたので少し息がきれていた。
その一方ワリサは泣きながら、リバースリーフを握っていた手でウィンズリーの片手を握った。
するとウィンズリーの体が光だした。しばらくすると光は消え、ワリサの手にあったはずのリバースリーフも一緒に消えてしまった。
「あ・・・リバースリーフが・・・消えた」
その時、ワリサが握っていたウィンズリーの手の指先がかすかに動いたのだ。
「ん・・・・」
唸り声とともにウィンズリーは体を起こした。
「ウィンズリー・・・」
「・・・あっ ワリサ・・・」
ワリサに気づいたウィンズリーは、何事もなかったように微笑んで見せた。
「うわーーーーーん!」
「きゃっ!? ちょっ・・・ワリサ?!」
ワリサはものすごい声を上げウィンズリーに抱きついた。そして、そのまま泣き続けた。
「ワリサ・・・もう・・/////」
ウィンズリーは少し頬を赤く染めた。しかし、抵抗することはなかった。
「これで一件落着だね」
「本当だよ。これからは気をつけてくれよ」
「むぅ〜〜〜っ」
サントとセイの言葉にワリサは、涙目のまま少し頬を膨らませた。
「でも、サンダーもすごかったですよね」
「へ? どうして?」
グラァストの言葉にウィンズリーは首をかしげた。
「ウィンズリー。サンダーはですね、サントがもしかしたらウィンズリーが死んじゃうって言ったら一番に外に飛び出していったのが、サンダーだったんですよ。クライム湖の水は石になっちゃいますからね〜」
「バッ・・・おいっ グラァスト//////」
サンダーは少し顔を赤くしグラァストに怒鳴った。
「いいじゃないですか」
グラァストは、おほほ と高らかに笑って見せた。
ウィンズリーは二人の会話を聞いていて少し俯いて、
「そっか・・・ありがとね サンダー」
顔を上げ、サンダーに向かって微笑んだ。
「あ・・・あぁ・・・///////」
サンダーはウィンズリーを見て、さっきよりも顔を赤くし、手で顔を被いながらそっぽを向いた。
「へぇ〜っ サンダーってウィンズリーに弱いんだなぁ〜」
「うっ・・・うるせぇ!!//////」
セイがニヤニヤ笑っていると、サンダーは耳まで赤くなり、セイに怒鳴っていた。
その横で、ワリサは泣くのを止め
「まぁこれでなんとか旅ができるねっ」
「元はと言えばワリサのおっちょこちょいからだけどね」
「うっ・・・」
ワリサは、明るく言ったがファマリアの一言で息詰まってしまった。
そして、そのまた少し離れたところでヒリアはサントに話しかけた。
「ねぇサント・・・あれってさー リバースリーフを液体にしてないのになんで戻ったのかなー?」
「ん〜 まぁいいじゃない 無事にウィンズリーも戻ったんだから」
「そだね」
と、同意した
その横のテーブルに置かれたままの本のページがめくれ、下の方に注意書きがあり・・・
『以降、三人の神と スアナト人は、「リバースリーフ」に触れるだけで戻る』
と、書いてあった・・・・。
〜第四話 ヒリアの天使の翼 前編〜
やっとのことで風の森をぬけて草原の中で昼食をとっていた時、ワリサの一言から始まった。
「ねーっ ヒリア」
「ひゃひ?」
ワリサの呼びかけにヒリアは、昼食のサンドイッチを方張りながら答えた。
「ずっと気になっていたんだけど、ヒリアの背中の羽って本物なの?」
ヒリアの背中には、小さな天使の翼らしいものが生えているのだ。
「あぁ そうだよ。スアナトでは、100年に一度『魔導リーグ』っていうのがあるの。
そこで優勝した人は、『天使の翼』が与えられるんだよ」
ヒリアは、手に持っていたサンドイッチを食べ終え言った。
「まぁヒリアは、スアナトの一番偉い人みたいなもんかな」
セイは、ヒリアの言葉に簡単に付け加えた。
「へ〜・・・それじゃあ ウィンズリーと似てるんだ!」
「!!」
ワリサの言葉に横でサンドイッチを作っていたウィンズリーが手に持っていた作りかけのサンドイッチを落としそうになってしまった。
「・・・なんで?」
「だってウィンズリーは〜・・・・もごもご」
「気にしないで〜、ヒリア!」
ヒリアの問いにワリサは答えようとしたが、後ろからサントがワリサの口を押さえたので、話は途中で中断してしまった。
「・・・っ なにするのよー サント!!」
「普通しゃべるか!!(怒)」
サントとワリサが口喧嘩をしていると、サンダーがなにかに気づいたように バッ と茂みの方を向いた。
「サンダー・・・どうかしたの?」
「・・・なにか来るぞ・・・」
サンダーの言葉に全員は警戒し、構えていた。 が その茂みから出てきたのは、一つの小さな球だった。
しかし、その直後にその球から大量の煙が噴出した。
「わっ!? なにこれ!!」
「・・・・・っ どうしたんだろ・・・ 急に眠く・・・」
そう・・さっきの煙は、眠り煙の球だったのだ。
その時、ヒリアの手をなにかが掴み上げた。
「あっ・・・ちょっとまって!! ヒリア! まっ・・・!!」
ウィンズリーは、ヒリアを引きとめようとしたが、手足が痺れてしまっていた。
そして、ヒリアは誰かに引きずられていってしまった・・・
「・・・ズリー・・・ンズリー・・・ウィンズリー!」
ウィンズリーは、サンダーの呼びかけに気づき勢いよく起き上がった。
「あっ・・・ヒリアは!?」
しかし、サンダーは黙り込んでしまってそのまま目をそらした。
「うそ・・・・」
「うぉーーーっ はなせーーー!!」
その時、なにか叫び声が聞こえ二人は振り向くと、セイがものすごい暴れて他の四人が止めているのが見えた。
「さっきからあの調子なんだよ・・・なんとかしてくれないか?」
サンダーはとても呆れ顔でウィンズリーに言った。
「あぁ〜・・・分かった」
そう言ったウィンズリーは両手を空に掲げ、詠唱を始めた。
「神風よ・・・彼の者の動きを封じよ・・・ウィンドフリーズ!」
「・・・ありゃ?」
すると、セイの動きは一瞬に止まった。そこにウィンズリーが、セイの前に出てきた。
「セイっ そんなに焦っていたらだめだよ」
「でもよぉ・・・」
「私は転移魔法が使えるんだよ。だからそれで、ヒリアの近くまで飛んでいって探そうよ ね?」
と、ウィンズリーはセイに説得するように言った。
「・・・分かったけどさ ウィンズリー・・・」
「なぁに?」
ウィンズリーは、なにか分からずポカーンとしていた。
「いい加減にこれ・・・解いてくれないか・・・? 動けないんだよ・・・」
セイは動けない体を少し揺らして思潮して見せた。
「あ・・・ごめん・・・」
その一方・・・・一つの洞窟の深奥で一人の少女が立っていた。
「やっと・・・天使の翼が手に入った・・・ふふふ・・・」
と少女は呟き、笑みを浮かべていた。
「ん? なんだ?」
ワリサは、自分の足になにかが当たったのを感じ、下を見てみてそれを拾い上げた。
「・・・・」
「ワリサ? どうかしたの?」
ウィンズリーはさっきまでセイに掛かっていた魔法を解き、妙に静かにしていたワリサに問いかけた。
「これ・・・ヒリアのイヤリングだよ・・・」
ワリサの手にしていたものは、いつもヒリアが身に付けていた真っ赤なイヤリングの片方だった。
「ちょうどいいやっ ワリサ、そのイヤリング貸して」
「うん・・・?」
「でも、なにに使うんだ? ウィンズリー・・・」
「いいから 見てて☆」
ウィンズリーは、ワリサが手にしていたヒリアのイヤリングを受け取りながらサンダーに微笑んだ。
そして、詠唱を始めた。
「神風よ・・・この物の主の所へ・・・我らを飛ばせ・・・」
すると、大きな風が吹き荒れ始めた。
「きゃっ!」
「なんだ!?」
その風は弱まることはなく、そのまま七人全員の体を浮かばせた。
「うわっ・・・体が浮いた・・・」
「ウィンズリー・・・どうするの? これから」
サントは、浮いているのに慣れていないのでなかなか体制を整えられず、足をバタバタしながらウィンズリーに尋ねた。
「大丈夫だよ しばらくしたら・・・」
ウィンズリーが言った瞬間七人の周りが光りだした。そして一瞬にして、その場所には七人の姿はなくなっていた・・・。
洞窟らしき所に七人は飛ばされた。しかし、七人は空中に現れたために・・・
「きゃっ!」
「うわっ!!」
・・・全員すぐ落ちてしまったのだ。
「あーっ よかった 怪我なくて」
ワリサが一人で呟きながら起き上がると、そこにはウィンズリー一人しか立っていなかった。
「・・・よかったじゃなくてそこどいてくれない? ワリサ・・・」
「あ・・・」
ワリサは下を見ると・・・
サンダー、ファマリア、グラァスト、サント、セイ、ワリサの順に重なっていた。
なぜウィンズリーは入っていないかというと、ウィンズリーは風使いなので自分の体は浮かせることができるが、他の六人は短時間しか浮かせることができなかったのでこうゆう結果になったのだ・・・。
「来たんだね・・・まっていたよ・・・」
「「!!」」
そこには赤いバンダナをし、腰まで届く長い金髪、そしてかくとうかのような格好をした少女が立っていた。
「・・・っ ちょっとーー!! ヒリアどこやったのよーーーっ このーー!!!」
と、叫ぶワリサをサントが まぁまぁ・・・ と、ワリサの腕を抑えながらなだめていた。
「・・・あの者はちゃんと生きているよ そんなに会いたいの?」
「当たり前でしょ!! そうじゃなかったらここまで来ないよ!!!!」
ワリサはサントの腕を振り払い、両手をバタバタ振っていた。
その言葉を聞き少女は、ニヤッ と微笑むと
「じゃぁ この者に勝てたら会わせてあげるよ・・・」
少女は片手を上げ、なにかを召還した。
そして、そこに現れたのは・・・
「・・・!?」
「本当に勝てたら・・・ね」
そこには、茶色の髪に真っ赤なリボン、そして背中には小さな天使の翼がある少女・・・ヒリアが現れたのだ。
ヒリアは、なにも言わずに『エンジェル・ソード』を手にした。
「勝つって・・・ヒリアに攻撃するの!?」
七人はヒリアに攻撃するのをためらっていた。
しかし、ヒリアはなにも感情がないようであった。
「電空剣!!」
そして、七人に剣圧を飛ばした。
その剣圧は次第に大きさを増し、七人の逃げ場をなくしてしまった。
「だめだっ 剣圧が大きすぎる!!」
その時、ウィンズリーがヒリアの放った剣圧に向かって走り出した。
そしてすぐ止まると、すでに手には剣が握られていた。
「ガット ウィング ウォール!!」
ウィンズリーは呪文を唱え、剣圧を防ぐためのバリアを張った。
しかし剣圧は、衰えることなく襲ってくるので、ウィンズリーは今にも倒れそうだった。
するとファマリアは、立ち上がるとウィンズリーの後ろに立ち、呪文を唱えた。
「ヘブン フレイム!!」
ウィンズリー、ファマリアの立っている所から 2、3m 離れた場所に大きな爆発が起こり、剣圧は跡形もなくなっていた。
「あっ・・ファマリア ありがとう」
「いいって それより大丈夫?」
ファマリアは、少し疲れているウィンズリーに笑みを見せた。
「・・・っ おい! まだ終わってねぇぞ!」
それを聞いた六人は振り向くと、まだヒリアは立っていた。
ヒリアは、さっきから表情が一切変わらず、今の攻撃以来、一行に動こうとしなかった。
それを見たウィンズリーは、なにかに気づきヒリアへと歩み寄った。
「・・・っ!! ウィンズリー 危ないよ!」
サントの呼びかけに一度足を止めたが、ウィンズリーは振り向いて微笑んで見せると
「大丈夫だよ」
と、またヒリアの方へ近づいていった。
しかし、しばらく二人はなにもすることもなかった。先に動いたのは、ウィンズリーの方だった。 ウィンズリーの行動は六人も予想していなかったものだった。
ウィンズリーは、武器である剣をしまってしまったのだ。
「ウィンズリー!!」
六人の呼びかけに、ウィンズリーはもぅ反応せず、動かなかった。
当のヒリアは攻撃をしてこないウィンズリーに少し焦っているようにも見えた。
そして、ヒリアは持っていた剣でウィンズリーを斬りつけた。
しかしウィンズリーは、反撃も防御もやらずに、ヒリアの攻撃を受けた。ウィンズリーは、体中に切り傷をつくり、手足、顔を血で濡らしていた。
そして、威嚇するようにヒリアを睨み付けた。
ヒリアはそれにひるんだようで、構えていた剣を下ろしてしまった。
それを見たウィンズリーは、剣をまた取り出し、そのままヒリアを斬りつけた。
しかしヒリアは、心臓辺りを切られたにもかかわらず倒れずに、しかも、血も流れていなかった。
「・・・っ!? おい! 見ろよ ヒリアが!!」
セイは、ヒリアを指差しながら叫んだ。
見てみると、ヒリアの周りから無数の光が出ていた。そして、その光と共にヒリアは消えてしまった。
「そんな・・・・」
少女は目を丸くしているしかなかった。
さっきのヒリアは本物そっくりの立体映像・・・偽者だったのだ。
「きっ・・・消えた!? じゃぁ あれは偽者だったの!! ウィンズリーなんで分かったの!!」
ワリサは、なにがなんだか分からず、腕を振ってウィンズリーに問いかけた。
「ヒリアの耳だよ」
と言い、ウィンズリーは手に持っていたものをワリサに投げつけた。
「あ・・・・」
ワリサの手の中には、ヒリアのイヤリングが乗っていた。
「本物だったら片方あるはずでしょ?」
先ほどの偽者のヒリアは、両方の耳にイヤリングがついていた。
本物なら、片方しかないはずなのだ。
サントは、二人の会話を聞き少女の方へ体を向け、
「ほらっ 勝ったじゃない 本物のヒリアはどこにいるのよ!!」
と、叫んだ。
少女は少し、黙っていたがしばらくして にっ と笑みを浮かべた。
「いいよ・・・会わせてあげるよ」
少女は、七人の方に手をかざした。すると、六人はどこかへと転送された・・・。
残った少女は、意地悪そうに笑っていた。
「ここは・・・」
七人は、大量のカプセルがある大部屋にいた。
「・・・っ あ! みんな見てください!!」
グラァストは一つのカプセルを指差した。
そこには、大きなリボンに小さな天使の翼が生えた。ヒリアが入っていた。そのヒリアの耳には片方、イヤリングがなかった。
「どう? 感動の御対面は」
少女は、ヒリアが入ったカプセルの前に現れた。
「ちょっと! なんでヒリアをあそこに入れんのよ! 早く出してよ!!」
「いや」
ワリサは、少女の前に立ち、睨みつけたが少女は即答で、否定した。
「だって 「会わせてあげる」とは言ったけど・・・「出してあげる」なんていってないでしょ」
と言い、少女は甲高い声で笑っていた・・・。
〜第五話 ヒリアの天使の翼 後編〜
「なによーー! なんでヒリア出してくれないのよ!!(怒)」
ワリサは、前の格闘家の格好をしている少女に怒鳴っていた。
その横でグラァストは、周りを見回して一つのカプセルを見て、固まってしまった。
「みんな・・・あれ・・・見てください・・・・・」
グラァストは少し震えた声で、一つのカプセルを指差しながら、六人に言った。
カプセルの中に入っていたのは、サファイア色をした長い美しい髪に、足には大きなヒレがついている少女がいた。
「・・・サファイアマーメイド・・・・」
ファマリアは、ボソッ と呟いた。
「へっ? サファイアマーメイドってなんだ?」
セイはファマリアに問いかけた。ファマリアは少し間を空け、話し始めた。
「それはね・・・マーメイドはものすごく珍しいの。今でも三匹しかいない貴重な存在なの。だから、マーメイドは捕獲禁止になっているんだけど・・・・」
「そうだよ。これは私の・・・・コレクションだよ」
少女は、サファイアマーメイドが入っているカプセルを撫でながら言った。
「だからってヒリアまで入れることないじゃない!!」
サントは少女に近づきながら怒鳴った。
「だって、翼の生えた人間なんてそういないでしょ?」
そう言った少女はまた甲高い声で、笑っていた。
「このーーーーっ!!」
ワリサは剣を取り出し、ヒリアのカプセルを叩き割ろうとした。
しかし、カプセルは割れるどころか、傷一つ付かなかった。その代わりに、ワリサはものすごい顔で声が出ない悲鳴を上げた。
「いったーーい!! なにこれ! 硬すぎるよ」
ワリサは涙目で剣を持っていた手を振っていた。
「無駄だよ。それは超合金でできているからね!」
そして、少女はそのまま笑い続けていた。
それを聞いたファマリアは少女の方を向き、詠唱を初めた。
「神火よ・・・我に力を貸せ・・・・フレイムボール!!」
ファマリアが放った炎は少女目掛けて飛んでいった。
しかし、少女はひらりとかわしてしまった。
「くそっ 逃げ足が速い奴ね・・・・っ!?」
ファマリアはそう呟いたが少女が立っていた場所が少し、溶けかけているのを、見つけた。
それを見てファマリアは、 にっ と笑みを浮かべ、六人の方を向いた。
「みんな、あのさ・・・・」
「よしっ それでいくぞ!!」
サンダーの掛け声と共に六人は散らばっていった。
「神草よ・・・我に力を貸せ・・・・・ウッドワインド!!」
グラァストの魔法は、少女めがけて行った。しかし、ファマリアの時と同じようにかわされてしまった。
だが・・・・・
「ボルト!!」
少女は呪文の声を聞き、すれすれの所でかわした。
「ほらほら〜、油断禁物だよー!」
そこには、サントが笑みを浮かべながらまた詠唱をしていた。
「さーて、私たちもいっちょやりますか」
ファマリアは、指の骨をボキボキ鳴らしながら言った。
「んじゃあ いくよー! ファマリア」
「うん、よろしくね〜」
ウィンズリーは目を閉じ、詠唱を始めた。
「我らの神よ・・・汝らに力を貸したまえ・・・・・」
すると、ファマリアの周りの魔力が少しずつ増幅していった。
今の魔法は、味方の魔力を最大限まで高める魔法であった。
「罪深き物よ・・・・この天光と灼熱の炎の渦にて・・・呑み込め・・ヘブンフレイムオール!!」
ファマリアは詠唱を終え、少女に向かって炎を放った。しかし、炎は少女の横をすり抜け後ろにあったカプセルを包み込んだ。
そして、カプセルのガラスが割れ、ヒリアは床に倒れこんだ。だがそれを、セイが抱きとめた。
「ワリサ!!」
「はーい!」
ファマリアは後ろにいたワリサの名を呼んだ。そして、ワリサは返事をし、魔力を溜め武器を出した。
しかし、剣ではなく弓矢が出てきた。
水使いは、剣の他にも弓矢も出すことができるのだ。
ワリサはそのまま矢をかまえた。
「いっきまーす! 水弓龍!!」
ワリサの放った矢は、一つのカプセルに刺さった。
「そんな矢でなにができるって・・・・」
その時、その矢から大量の水が溢れ出してきた。
「へへ〜んだ! 『水弓龍』は、その矢から大量の水が出る技なんだよー!!」
ワリサは少し胸を張り、威張りながら後ろへ下がった。
「くそっ・・・・覚えてな!!」
そして、少女はそのまま姿を消してしまった。
「みんな! 早くここから出ないと危ないよ!!」
サントはたまった水を掻き分けながら、出口を探していた。ワリサの技から出た水は、ずっと止まることがなかった。
そのため、水は今、全員の腰辺りまでたまっていた。ワリサは、背が低いために胸辺りまできていた。
「ウィンズリー、大丈夫か? 怪我が・・・・・」
サンダーは、ウィンズリーの体中の傷を見て言った。
「平気だよ。これくらいなら」
と、顔の前で手をひらひらしながら、ウィンズリーは言った。
しかし、ウィンズリーは六人の後を歩いていると、なにかにはまったと思った瞬間、気づくと、ウィンズリーは水中の中にいた。
(うそ・・・あそこから落ちちゃったのか・・・)
ウィンズリーは、上を向くと床が割れているのが見えた。
(とにかく・・・早くここから出ないと・・・)
その時、上に向かって泳いでいたウィンズリーは、目を見開き、顔を歪めた。
(あ・・・・足が・・・・)
そう・・・ウィンズリーは、偽ヒリアの攻撃で足を痛めていたため、今足をつってしまったのだ。
その頃七人は、洞窟らしき所に、出てきた。
「ここまで来れば、まぁ大丈夫だろう・・・・」
セイは、ヒリアを抱いたまま、水浸しの状態で辺りを見回した。
「あ・・・大丈夫だった? ウィンズ・・・リー・・・」
ファマリアは、ウィンズリーの怪我を気づかい問いかけたが、答えは返ってこず、周りを見回しても、ウィンズリーの姿はどこにもなかった。
(い・・・・息が・・・)
ウィンズリーは、足の怪我のため足をつり、そのまま上に上がれずにいた。
(もぅ・・限界・・・・・)
そして、口を覆っていた手を離し、ウィンズリーは気絶してしまった。
しかし、ウィンズリーは気絶する直前に、なにかの影を見たような気がした。
「え!! ウィンズリーがいないぃ!?」
サントとワリサは、自分の髪どめを外し、ながらファマリアの話を聞いて叫んだ。
「ん?・・・おい・・・あそこ」
セイは、近くの水面に泡が出てきた所を指差しながら言った。
そこから茶色と、青色の物体が浮き上がってきた。
それは、ウィンズリーとサファイアマーメイドだった。
「ウィンズリー! 大丈夫!?」
ウィンズリーは水をだいぶ飲んだらしく、顔を赤く染め咳き込んでいた。
「あ・・・・サファイアマーメイド・・・あのっ・・・その・・・」
顔を赤くなってファマリアは、口ごもっていた。
実は、ファマリアはお礼などを言い慣れていないんだった・・・。
それを見たマーメイドは微笑んでファマリアを見上げた。
「いいんですよ 私の方が謝罪をしなければならないんですから・・・・」
「え? どうしてですか?」
サントの問いにマーメイドは少し間を空けて、答えた。
「私も・・・あのカプセルから出ることができませんでした・・・。しかし、あなたたちのおかげで出ることができました。 本当に・・・ありがとうございました」
そう言うとマーメイドは、水中へと消えていった・・・。
「あ・・・行っちゃった・・・」
「・・・・・・ん・・・」
すると、ヒリアの身が少し揺れた。 そしてゆっくりと体を起こした。
「あれ? 私どうしちゃったの・・・?」
ヒリアは、まだ自分がどこにいるのかどうなったのか分かっていなかった。
「あ!! そうだ。 ヒリア・・・」
ワリサは思い出したように、ヒリアのナを呼び、自分のポケットに手を入れた。
「はい。これ!!」
と、言いながらワリサは、赤いものをヒリアに手渡した。
「これって・・・私のイヤリング・・・」
そう・・・ワリサの渡したのはヒリアが連れて行かれる前に、落としてしまったイヤリングの片方だった。
「それのおかげでヒリアを探せたんだよ」
ワリサは、乾いた自分の髪を結わいながら言った。
「あ! 見て あそこに地図があるよ」
八人は、近くの穴から外へ出た。そこでサントが、一つの立て看板を見つけた。
「ええぇぇーー!?」
その立て看板の地図を見たワリサは大声で叫び、固まってしまった。
「どうしましたか?」
「・・・ここはどこでしょ〜〜〜・・・・・」
ワリサは、いつもと違う低い声で後ろにいる七人に問いかけながら、地図の現在位置を指差した。
それを見た七人は、地図を覗き込んだ。
「あ・・・ここって・・・・」
「水の洞窟!?」
ファマリアは地図を見た瞬間、そう叫んだ。
「あのさ〜 『水の洞窟』ってどこなの?」
ヒリアは、近くにいたサントに尋ねた。
「あのね、水の洞窟はスリプタウンよりも北にある洞窟なんだよ」
「じゃあ スリプタウンを通り越しちまったってか・・・?」
「そうゆうことだな」
セイの言葉に、サンダーが答えた。
「そんな・・・もうすぐで行けると思ったのに〜〜!!!」
ワリサは、その場に座り込んでしまった。
「でも、王都に近くなったんだからいいじゃん☆」
ヒリアは、ワリサを元気付けるために側へより、肩をポンッと叩いてやった。
しかし、いつもなら元気よくその言葉に同意するワリサであったが・・・・
「でも〜〜・・・・」
涙目で、ヒリアを見上げながら弱々しく言った。
「あのね、ワリサはスリプタウン出身なんだよ」
ヒリアの近くにより、ウィンズリーは耳打ちをした。
そこへファマリアが、ワリサの側へ行き
「ほらっ ワリサ、ヒリアとセイをスアナトン帰してあげれば、いつでも戻ってこられるんだから、それにそんなくよくよしてたらワリサらしくないでしょ」
ワリサはファマリアの言葉で、少し俯いていたが、しばらくして顔を上げた。
しかし、その顔にはいつも通りのワリサの顔があった。
「そうだよね! こんなウジウジしてたら私らしくないもんね! 元々、王都に行こうとしてたから、これで良かったんだよね!」
「良かった。ワリサがいつも通りになって・・・」
「ほんとに」
サントは、ワリサを見て胸を撫で下ろした。そして、ファマリアもそれに同意した。
「それに、ワリサは唯一のムードメーカーだもんね」
「トラブルメーカーでもあるけど・・・」
その理由、以前の事件が物語っていた・・・・。
「でもまあ・・・やっぱり、ワリサも成長したよね」
「前は、頭より体が動く方だったから、大変だったよね〜」
サントは、そう言いながらワリサへと視線を向けた。
しかし、そこでは、ワリサが小石に足が引っかかり、ものすごい勢いで倒れこんだ。
「そうでも・・・・ないか・・・」
「・・・ワリサ、おっちょこちょいな所もあったっけ・・・」
二人は呆れていると、ワリサはその二人に気づき、照れ隠しに微笑んでいた。
〜第六話 王都センストラ〜
「やっと王都だぁーーー!!」
ワリサは、目を輝かせながらそう叫んだ。
叫んだせいで、町を歩いている人がみんなワリサの方を注目していた。
一方、ワリサはそんなものも気にせず、両手を大きく振り、はしゃぎ続けていた。
しかし、それをファマリアがワリサの襟首を掴んで止めた。
「まぁ、そんなことよりもこれからどうするのよ」
「ん〜・・・そうだねぇ」
その時、一人の男性が八人に話しかけてきた。
「君たち・・・。もしかして、旅の人たちかい?」
「あ・・・そうですけど、なにか?」
グラァストが男性の問いに答えると、男性はなにかを指差しながら言った。
「それなら、あそこの立て看板を見るといいよ。ここに来た旅の人は、必ずあれを見るようにされているんだよ。」
「・・・サント、なんて書いてある?」
「えーっとね・・・」
サントは、男性が指差した立て看板を覗き込んでいた。
「『旅人の方へ、ここから西にある図書館でお調べください。――事務長』・・・だって」
「・・・ようするに、この町の人たちに聞くなと・・・?」
「まぁ、そんなところじゃない?」
サンダーの問いにサントはさらりと答えた。
「とにかく図書館に行こうか」
そう言うとウィンズリーは、西の方角に向かって歩き始めた。
「ったく・・・俺、こうゆうの苦手なんだけどな〜・・・」
と、セイは図書館にある戸棚のぎっしり入ったたくさんの本を眺めながらそう言った。
すでに、図書館に来てからもう二時間は経っていた。他の七人もいろいろな所の本と格闘していた。
「・・・ん? これって――――・・・」
セイは、一つの本に目を止めた。そして、その本を手に取り、少しページをめくってみた。
「おい みんなこれ!!」
セイは、さっき取った本を持って、七人の方へ走り叫んだ。
「ちょっ・・・セイ! ここ図書館だよ」
サントは、人差し指を立て、口の前に持ってきてセイに注意した。
セイは、それに気づき周りを見ると、そこにいた人々が、こちらを見ていた。セイは、少し頭を下げ、手に持っていた本をサントに手渡した。
「あぁ・・・あとサント、これ」
サントは、その本を受け取り本を開いた。そして、それを見たサントの目は輝いたようにも見えた。
「サント、なんて書いてあるの?」
ヒリアの問いにサントは近くの椅子に腰を掛けて、本を机の上に置いた。
「えーっとね・・・『時の山へ向かう者は「エアフロート」へ行けばよい』だって・・・」
「じゃあ『エアフロート』っていう町に行けば何とかタイムマウンテンにいけるんだー!」
「そりゃ無理だ」
ワリサとヒリアが手を取り、跳ねているところへ、水をさすようにサンダーは即答で答えた。
「「・・・・・・・・」」
それを聞いた二人は、サンダーの方を向いてしばらく黙り込んでいた。
そして・・・
「「なんで! どうして! 行けないの!!」」
二人は声を合わせて、サンダーに向かって叫んだ。
「お前ら、うるさいって!」
サンダーは叫んでいる二人の頭を押さえながら言った。
「あのな・・・さっき地図で調べたんだけど、『エアフロート』なんて町なかったぜ?」
それを聞いたワリサは、口を大きく開け、目が点になっていた・・・。
しかし、すぐに我に返りウィンズリーの方へと駆けていった。
「でっ・・・でも、ウィンズリーならいろんな所行ったりしていたでしょ?」
「あ・・・いや・・・確かに薬草とか届けるときにこっちの方には来たけど・・・
『エアフロート』なんていう町はなかったよ」
ワリサは、すでにものすごく暗くなっていた。
「そ・・・そんな・・・」
七人はそのワリサに、呆れているとサントはさっきの本の裏の折り返しの部分を見て、
ワリサのようにではないが、少し暗くなっていた。
「どうしたの? サント」
「あ・・・あのさ・・・これ・・・」
ファマリアは、暗くなったサントに気づき、声をかけた。サントは、見ていたところを指差した。
そこに書かれていたこととは・・・・
『詳しくは、「王都センストラ」の東にある事務所までお越しください 事務長より』
バンッ
ここは、王都の東にある事務所・・・そこに勢いよく小柄な水色の髪・服の少女・・・・・ワリサが入ってきた。
「ちょっとーー!! 事務長は?! どこにいるの!!」
ワリサは、入るなり近くにいた事務員に怒鳴っていた。
「あ・・・事務長は今・・・・」
「あんな立て看板なんか立てるなー!! あんなこと書くなー!!」
「すいませんね・・・」
事務員が話そうとしたが、ワリサはそれも聞こうとしずに、暴れていた。
「それで、事務長はどこにいるんですか?」
ヒリアは再度事務員に尋ねた。
すると、事務員は一枚の書類を手に取った。
「事務長は只今ウィンドシティの方へ行かれているので、一週間はお戻りにならないと思います・・・けど・・・」
その言葉に、ワリサは暴れるのを止め、その場所でうずくまってしまっていた。
「あの・・・お話なら、私がお聞きしましょうか?」
「それじゃあ・・・タイムマウンテンのことなんですけど・・・行き方を・・・」
それを聞いた瞬間、事務員は顔色を変えた。
「それは・・・お教えできません・・・」
「なんでだ!!」
セイは机に手を叩きつけた。それに驚き、事務員は理由を話し始めた。
「そ・・・それは・・・なぜだかこの時期に、時の山への行き方を多く聞かれるので、一切、時の山への行き方はお教えしないようになったのです」
「そんな〜・・・」
ヒリアは、がっくりと肩を落として見せた。
「・・・でも、一つだけ方法がありますよ」
「本当に!?」
ヒリアは、顔を上げた。その顔はとても輝いて見えた。
「はい、これです」
そういうと事務員は、一枚のチラシを出してきた。
「『トーナメントタッグバトル』? なにこれ・・・」
ファマリアは、チラシの大文字を見て復唱し、尋ねた。
「はい、ここでは2年に一度トーナメント戦が行われるのです。そのトーナメント戦で優勝した方たちは、『チャンピオン戦』へと進むことができるのです。」
「じゃあ、チャンピオンも二人なの?」
「いいえ、チャンピオンは一人しかいませんよ。でも、どちらか一人がチャンピオンに勝てたら、なにか一つ願い事を叶えてもらえると言われています」
サントの疑問に事務員は、答えた。
「それじゃあ、早速そこに行こうよ!!頑張って勝てばいいんだもん!」
ワリサは今にも、飛び出しそうな勢いで言った。
「ですが・・・・」
事務員のその言葉にワリサの行動が一瞬にして、止まった。
「今まで、チャンピオンに勝てた者はいないらしいですよ。それと、これはとても人気があるので早く行かれた方がいいですよ。あと2組しかエントリーできないですから」
事務員は近くのパソコンをいじりながら言った。
「それじゃあさ〜」
ワリサは、サンダーたちの方を振り向いた。サンダーは、顔を引きつり、ひいていた。
「ヒリア、ウィンズリーと・・・サンダー、セイのタッグでやれば!! 絶対勝てるよ!」
ワリサは、ガッツポーズをしながら言った。
「あのさ・・・なんで私たちなの? ワリサたちじゃ駄目なの?」
「なんとなく!」
ヒリアの問いにワリサは、真顔で即答したので四人は、呆れてしまった。
「まあ・・・いいか・・・」
「えぇぇーーーーー!!! 1組しかエントリーできない!? なんで!!」
ワリサは、トーナメント受付の人にそう怒鳴っていた。七人はそれにまた呆れていた。
「申し訳ありません。さきほど1組エントリーされたので、あと1組しか残っていないのです。」
「まあ、人気があるって言ってたかたな・・・・・と、いうわけで」
「?」
セイは、その言葉に同意し、なにか思いついたように顔を上げた。
「頑張ってこいよー☆」
「ちょっと!!」
セイは白い布を振りながら満面の笑みで言った。
「俺たちより大丈夫だって、二人なら・・・」
「・・・とか言っといて、本当は出たくないだけでしょ」
ヒリアの言葉に、セイとサンダーは顔色を変えた。どうやら図星だったようだ。
「まあ、頑張ろうね。ヒリア」
「うん!」
二人はいきこんでいると、ワリサは一枚の紙を持って二人の方へ歩み寄って来た。
「はい、これがトーナメント表だよ☆」
「え・・・もうエントリーして来たの・・・?」
―――――そしてトーナメント戦が始まった・・・―――――
「アースグレイン!!」
会場から呪文の声が聞こえ、地面から岩の刃が出現し、客席からは歓声が上がった。
「なっ・・なに、こいつら・・・強い・・・」
「さあ、とどめよ〜・・・・エアホールウィング!!」
ウィンズリーは、すでに詠唱を終え、呪文を唱えた。
すると、相手の方で風が吹き、その風はカッターのように切りつけた。
「きゃぁぁ!!」
【試合終了(ゲームセット)!! 勝者、ヒリア・ウィンズリー組!】
「やったー!」
アナウンスが流れ、ウィンズリーとヒリアはガッツポーズをし、お互いの手を握り合った。
「なあ・・・なんか早くねぇか?」
サンダーは隣にいたグラァストに尋ねた。
「なんでですか?」
「なんで?って・・・だってよ〜・・・・もう決勝終わっちまったじゃねぇか・・・」
「あぁ・・・そうですね・・・」
そう・・・ヒリアとウィンズリーは、次々と勝ち進み、決勝までいってしまったのだ。
【さあ、いよいよ「チャンピオン戦」へ移ります。ここで一度、10分間の休憩タイムをとります】
二人は、額から流れる汗を拭いながらアナウンスを聞いていた。
「はい、ウィンズリー」
ファマリアは、控え室で休んでいるウィンズリーに、水が入ったコップを渡した。
「ありがとう、ファマリア・・・」
ウィンズリーは、少し顔を赤らめながらコップを受け取った。
「でも・・・このあとチャンピオン戦があるんでしょ?」
「あぁ・・そうだよね。順番はどうする? 一人ずつになるんだったよね?」
サントノ言葉でヒリアとウィンズリーは、悩みこんでしまった。
「はい、はい! 私に提案がありまーす!」
ワリサは両手を挙げた。
「なに? ワリサ」
「あのね〜、ライト家に伝わる・・・これで!!」
そう言いながらワリサが取り出したものは、白い紙を細く切ったものだった。それを見た七人は、呆れてしまった。
「あのさ、ワリサ・・・それって・・・」
「くじだよ?」
ファマリアは恐る恐る聞いたが、ワリサは真顔で答えた。
「・・・それが、伝わっているの? ライト家は・・・」
「うん☆」
(ワリサの家系っていったい・・・・)
七人はものすごく悩んでいたが、ワリサは全員のその表情が分からなかった。
すると・・・
ピーンポーン
【残り2分になりました。優勝者の方々は、前後半を決め、エントリーをして下さい】
と、アナウンスがかかった。
「ほら 二人とも、早く引いて! その方がてっとり早いよ☆」
「・・・うん」
二人は、ワリサに言われるままに、くじを引いた。
「あ・・・」
ヒリアの引いたくじには、赤い丸が描かれていた。
「それじゃあ、ヒリアが前半ね! じゃあ、エントリーしてくるね〜!」
ワリサはすぐに控え室を出て、走っていってしまった。
「なんか・・・ワリサ元気ね・・・いつもより・・・」
サントとファマリアは、ワリサを見て呟いた。すると、それにセイが話を続けた。
「あれじゃねぇか? バトルしないから責任感ないんだろ?」
「「・・・・ありうる」」
二人は顔を見合わせながら言った。
するとまた・・・
ピーンポーン
【只今より「チャンピオン戦」を行いますので、選手は入場準備をお願いします】
と、アナウンスがした。
「よし、行こう!」
そして、二人は立ち上がり、会場へと向かった・・・。
【これよりチャンピオン戦を行います。まずトーナメント戦優勝者、前半 ヒリア・ケア選手】
アナウンスが流れ、ヒリアが入場すると、客席から歓声が上がった。
【そして、チャンピオン セレナ・ハスキー】
反対側からチャンピオンが出てきて歓声が上がった。しかし、八人だけは呆気にとられていた。
「・・・あなたは―――――・・・・」
〜第七話 激闘! チャンピオン戦〜
【これよりチャンピオン戦を行います。まず――――――】
そして、客席からは歓声が上がった。そしてチャンピオンが出てきた時、八人は呆気にとられていた。
ヒリアは恐る恐る口を開いた。
「あなたは・・・風の森の時の・・・・」
そう・・・ヒリアたちは一度風の森で、会ったことがあった。その時の彼女は、漆黒のマントに身を包んでいた。
「あいつ・・・ここのチャンピオンだったのか・・・」
サンダーは、そう呟いた。
「なんで・・あの時、あんなことしたの?」
ヒリアは、少し聞いてみた。
「あなたを試してみたかったのよ・・・」
「へ?」
チャンピオン・セレナは、ヒリアの問いに答え続けた。
「あなた・・・スアナト人なのでしょ?」
ヒリアは、それを聞いて びくっ と驚いた。
「なんで、私が・・・」
「スアナト人は、背中に翼があると、言われているらしいから・・・」
それを聞いたヒリアは、
(そんなにいないんだけどな〜・・・)
と、心の中で思った。
すると・・・
【それでは、チャンピオン戦を行いたいと思います。・・・・・試合開始(ゲームスタート)!!】
パンッ
と、開始の合図がなった。
「いくよ〜・・・・
炎の渦よ・・・汝を灰燼と化せ・・・ファイヤー!!」
ヒリアは合図と同時に詠唱をし、魔法を発動させ、セレナへと放った。
しかしセレナは、動こうとせずにいた。すると、セレナは 二ッ と笑みを浮かべた。ヒリアは、その表情の意味が分からなかった。
炎がセレナに向かっていき、もう少しで当たりそうなところでセレナは、前に腕を上げ
呪文を唱えた。
「返(リターン)」
すると、セレナの前に見えない壁が現れた。その壁によって炎は、ヒリアの方へ反射されてしまった。
「え!? うそーっ!!」
ヒリアは避けようとした。しかし、もう遅くヒリアは、炎の渦に呑み込まれてしまった。
「きゃあぁ!!」
ヒリアは、体中に傷を負って、そのまま倒れてしまった。すぐに立ち上がろうとしたが、体が言うことを利かず、なかなか立てなくなっていた。
すると、セレナは魔力を手に溜め、剣を現した。
「これで、とどめよ」
「早いな・・・・」
セイはセレナにつっこんだ・・・。
セレナはそのまま呪文を唱え始めた。
「地雷波 発双牙!!」
剣から放った剣圧は、ヒリアを包み込んで、斬りつけた。
「きゃあぁぁ!!」
そのままヒリアは倒れこみ、動かなくなってしまった。そして、客席から歓声が上がった。
【試合終了(ゲームセット)! 勝者 チャンピオン セレナ・ハスキー!!】
「強い・・・」
ファマリアは、そう呟いた。
【それでは、後半に移りたいと思います。】
アナウンスが流れ、ヒリアは医務室へと運ばれるところだった。
「あ・・・ウィンズリー、ごめんね・・・負けちゃった」
「大丈夫だよ、ゆっくり休んでね」
ウィンズリーは微笑み、ヒリアを見送った。
そして、ウィンズリーは一人になり、顔はさっきとは違う きりっ と引き締まった
顔つきになった。
「頑張らなきゃ・・・・」
【それでは後半、ウィンズリー・ソフィア選手です。 さあ、またチャンピオンが連勝記録を延ばすか。それとも、ウィンズリー選手が変えるのか。それでは・・・・・・・・
試合開始(ゲームスタート)!!】
そしてまた、客席からは歓声が起こった。
「天空の風よ・・・・我らの力となりて、汝を切り裂け・・・・・
エアホールウィング!!」
ウィンズリーは詠唱をし、風の刃を飛ばした。
それにサントは、顔色を変えて叫んだ。
「ウィンズリー! それじゃあ、ヒリアと同じ・・・」
しかし、その言葉も遅く、すでにセレナがヒリアの時と同じように反射した。その刃に
よってウィンズリーの体中に切りつき、血が流れ出していた。
「さあ、いくわよ・・・・」
そう言いながら、セレナは魔力を手に集めながら言った。そして・・・・
「ハードレインカッター!!」
セレナは、さっきのウィンズリーの技と似た技を放った。ウィンズリーは、耐えていたが体が宙に浮き、そのまま壁に叩きつかれてしまった。
「くっ・・・いた・・・・・っ!?」
気づくと、倒れこんだウィンズリーの前にセレナが立っていた。
「そろそろとどめを刺しましょうか・・・」
―――いや・・・ここで負けたら・・・・ヒリアたちが・・・
ウィンズリーは、ヒリアたちの方をちらっと見ると、ワリサ・ヒリアが叫んでいた。
しかし、ウィンズリーにはその声は聞き取れなかった・・・。
―――そんなのいや・・・!!
そうウィンズリーが思った瞬間に、ウィンズリーの体が光だした。その光でセレナは少し、後ずさりをした。
【なんなんだ、この光は!? 二人は大丈夫なのでしょうか!!】
光は、衰えることなく光り続けていた。セレナは、怯むことなく技を繰り出した。
「スワールレイン!」
技は、ウィンズリーに当たったと思った・・・・が、そこには誰もいなかった。
「えっ・・・いったいどこに・・・・っ!!」
セレナがそう言った途端、背中に刺激を受け、後ろを振り返って見るとそこには、ウィンズリーがいた。おそらく、ウィンズリーが放ったものが当たったのだ。
【おぉー!!今まで攻撃を一度も受けたがなかったチャンピオンが!!! この試合どうなるか分からなくなってまいりました!!】
セレナはそのアナウンスに、顔を歪めた。そして剣を取り出し、ウィンズリーに向かって走った。
「受けなさい!!」
カンッ
しかし、ウィンズリーは一瞬で剣を出し、盾にしたのだ。
【さあ、残り時間20分です!】
アナウンスが流れると、セレナはウィンズリーと少し距離を空け、技を放った。
「地雷波 発双牙!!」
検圧は、ウィンズリーの方に向かっていった。
そこでウィンズリーも剣を上に掲げ、技を繰り出した。
「風華 消返破斬!!」
すると、セレナの放った剣圧は消え、ウィンズリーの剣圧が、セレナに襲い掛かってきた。
「そんな・・・・・・っ!!」
セレナは避けることができずに、ウィンズリーの技を受けた。そして、そのまま目をつぶってしまったので、目を開けると、ウィンズリーがこっちに向かってきていた。
カンッ
気づくと、ウィンズリーはセレナの剣を振り払っていた。セレナの剣は、後ろの方へ飛ばされていた。
「そんな・・・・」
セレナは呆気にとられていた。その時・・・・・・
「風華 神裂魔導剣!!」
ウィンズリーは、風を起こしセレナを攻撃した。それを受けたためセレナはそのまま崩れ倒れてしまった。
【試合終了(ゲームセット)!!】
すると、さっきよりも大きな歓声の声が上がった。
【勝者 ウィンズリー選手!! チャンピオン連勝ならず、ウィンズリー選手が記録を塗り変えました!!】
ウィンズリーは、まだよく分かっていなくポカーンとしていた。
ここはチャンピオン戦が始まる前までいた控え室だった。そこには、八人とセレナがいた。
「まさか、私に勝てる人がいたなんて思いませんでしたよ」
「そんなことないですよ。初めは負けると思っていましたから」
ウィンズリーとセレナがそんな話をしていた時に・・・・
「あの〜〜、お話の邪魔して悪いのですが〜・・・」
と、ワリサが横から出てきた。
「あっ・・・そうでしたね。それで、皆さんの望みはなんですか」
「私たち・・・タイムマウンテンに行きたいんです」
ヒリアは、一度深呼吸をして話した。
「なるほど・・タイムマウンテンに行くにはまず・・・エアフロートに行くことです」
「でも、エアフロートって地図に載ってないんでしょ? どうやって行くんですか?」
サントは、焦った顔でセレナに尋ねた。
すると、セレナは、サントを見て笑みを浮かべ、答えた。
「それでは、どうして地図にないと思いますか?」
「はい、はい!! 地下にあるんだ!!・・・・・・・・あれ?」
ワリサは元気よく手を挙げて答えたが、周りは しーん と静まり返ってしまった。
「じゃっ・・・・じゃあ、なくなっちゃったとか!」
ワリサは、本気で言っているようであった。
「なんで、そう考えるのよ!!」
ファマリアは、見たこともないような顔で、ワリサに怒鳴っていた。
「え〜? だって・・・」
「だってじゃなーい!! 普通、名前的に分かりそうなもんでしょうが!!」
それを見て呆れているセレナにグラァストが気にする様子もなく
「お気になさらず、お話をお続けください」
と言った・・・・。
「まあ・・・地図にないのはですね・・・・」
セレナは、咳払いをして、話し始めた。
「空中都市だからです」
〜第八話 空中都市・エアフロート〜
「エアフロートは、空中都市だからです。」
セレナは、エアフロートが地図にない理由を話してくれた。
「私もそれ思ってたの〜☆」
「うそつけ」
「ぃてっ・・・・」
ワリサが言ったことに、ファマリアが呟いて、ワリサの頭を軽く叩いた。
七人は、それを無視するように話を続けていた。
「でも、空中都市だったらどうやって行くんですか?」
サントはセレナに問いかけた。
「それはですね・・・この闘技場の奥にセンストラの紋章の魔法陣があります。そこにすべての使いの力を加えることで、エアフロートへ行くことができるのです。」
そして九人は、暗い階段を下りているところだった。
「ねー・・・なんでこんなに暗いの〜?」
ワリサは、いやそうな顔で尋ねた。
「地下にありますからね。 あ・・それと、気をつけて下さいね。出ますから・・・」
セレナは振り返り、ぼそっ と言った。それにワリサとウィンズリーは びくっ と反応した。
「噂だと、ここを歩いている誰かに肩に手が置かれ、結局後ろには誰もいなかったという・・・。 それは、幽霊のしわざとか―――――」
「え〜〜・・・・・」
ワリサが嫌そうに言った時、ウィンズリーの肩に手が置かれた。
「・・・・っ!!? いやぁ――――――!!!!」
ウィンズリーの叫びに、すぐ後ろにいたヒリアは、ものすごいおどろいて、後ずさりしていた。
「・・・あ・・・ごめん・・・」
ウィンズリーは、顔を赤く染め、涙目になりながら言った。
「あ・・・あの・・・でも、噂ですから・・・」
セレナがそう言っても、ウィンズリーの目は潤み続けていた。
(なんで、こうなるんだ・・・・・)
サンダーは、左腕をウィンズリーにしがみ付かれ、歩きながらそう考えていた。
「も〜・・・ヒリアだったの?さっきのやつ」
「ごめ〜ん・・・まさかウィンズリーがあそこまで驚くとは、思わなかったから・・・」
さっきのウィンズリーの肩に乗った手は、ヒリアの手だったのだ。
「お前・・昔も同じようなことやってたよな〜・・・たしかあれは・・・」
「セイ!!/////(怒)」
「あ・・・着きましたよ」
セレナは、突き当たりの扉を開きながら言った。
鈍い音がしながら扉が開いた先には、大きな魔法陣がそこにあった。
「あれが・・・魔法陣・・・」
「はい・・・皆さん、私が言う位置について下さい」
「そして、魔法陣の中心に力を加えるような感じでお願いします」
そして、八人が魔法陣の上に乗り、力を注ぎ込んでいた。
すると、八人の体が自然に浮き上がり、光の球に包み込まれ、そのまま浮上していった。
それをセレナは、無言で見つめていた・・・。
「ここが・・・エアフロート・・・・」
ヒリアはたった今、地面に足を付けてそう呟いた。
「樹・・・ばっかりだね」
「ほんとに・・・」
ワリサは正直に言った。確かに、見ただけで周りは樹が生い茂っていたからだ。
ガサッ
すると、近くの茂みが揺れ、一人の男が出てきた。
「お前たち、ここでなにをしている」
男は、鎧に真っ赤なマントをしていて、いかにも軍兵という格好をしていた。
「あ・・・私たちはですね・・・・」
グラァストは、少し焦りながら答えようとしたが、男が先に口を開いた。
「まさか・・・お前たち・・・地上からではないだろうな・・・・」
――――地上とは、センストラのことをさしてる――――
「え? なんで分かった・・・・っ!!」
ワリサは正直に言おうとしたが、サントが口をふさいだため続きが言えなくなってしまったのだ。
「あのね、ワリサ・・・前に見た本にエアフロートの人たちは、警戒心が強いから地上の人がいたらどうするのか分かってる?」
サントは、ワリサの口を押さえたまま耳元で、耳打ちをした。
「・・・?」
ワリサは、きょとんとした表情で、サントを見た。サントはワリサの口を開放し、一言で、その理由を述べた。
「・・・死刑」
「えぇ――――!!?」
ワリサは、口が開放されたため、大声で叫んでしまった。
「なんで! ちょっといただけなのに!!」
「私に聞かないでよ・・・」
ワリサがサントに迫っていると、男は軽く右手を挙げた。すると、後ろの茂みから20人はいる軍兵が出てきた。
「「げっ・・・・」」
「行け! やつらを捕まえろ!!」
男が指示を出すと、20人の軍兵は一斉に八人の方へ向かってきた。
「・・・・! えーい、水刃!!」
「おい、ワリサ! そんなむやみに技出したら・・・・・・・・って!!?」
サンダーは注意をしたがすでに遅く、ワリサが放った水のカッター状のものは、近くの
大木に激突し、八人の方へ倒れてきていた。
「風華!!」
ウィンズリーは、大木が倒れる寸前のところで大木の根元に飛び込み、風の力で大木を
浮かせた。
「グ・・・ラァスト・・・お願い!!」
「はい! リーフリフト!!」
グラァストは両手を上にかざし、呪文を唱えた。すると、樹から伸びた蔓が、倒れそうな大木を持ち上げ、八人とは反対方向に倒した。
その間、軍兵たちはないか話していたが、八人には聞こえるはずもなかった。
「ウィンズリー、大丈夫?」
サントがウィンズリーを気にして、近づいていった。しかし、その直後、サントの体に
ロープが巻きつき、サントは動けずにそのまま倒れこんでしまった。
「サント?!」
「なによ、これ!!」
サントが暴れれば、暴れるほどロープはサントの体にきつく巻きついていった。
「うわっ!! なにすんだよ!」
そのすぐにセイの叫び声が聞こえ、振り返って見ると、他の六人もサントと同じように
捕まってしまった。
「連れて行け」
軍兵長と思われる男の声により、七人は連れて行かれてしまった。
「ちょっ・・・まって!! なんで私だけ捕まえないの!? みんなを放してよ!」
そう・・・ウィンズリーだけは、捕まることなく軍兵たちに押さえるつかれてしまった。
「それはできない」
「なっ・・・なんでよ!!」
軍兵長の言葉にウィンズリーは、反発するように睨み付けた。
「それは―――――――」
その理由を聞きウィンズリーは目を丸くし、暴れるのを止め、おとなしくなった。
「そこでおとなしくしていろ!」
ガシャン
軍兵はそう言うと、どこかへ行ってしまった。
「たく〜・・・なんでこうなるんだ?」
「これから、どうなっちゃうの〜」
七人は、鉄格子の狭い檻に入れられてしまった。
「ん?・・・なんか、人が集まってきたよ・・・?」
サントは、外が騒がしくなってきたのに気づき、外を見てみると周りには、たくさんの
エアフロートの住人らしき人々が集まりだしていた。
「まあ、確かに・・・町のど真ん中ですからね・・・」
グラァストの言う通り檻は、大通りの真ん中にあった。
しばらくすると、周りの人々が歓声を上げた。何事かと見てみると、先程の軍兵長が来ていたのだ。
「これより、地上人の死刑を執り行う」
そう言うと、檻に設置されていたレバーを下げた。すると、檻の天井が少しずつ下がってくるのが分かった。
「このままだと、潰れちゃうよ」
「これで俺たちを潰すきか!!」
「ねぇ、この檻を壊せば止まるんじゃねいかな?」
ワリサは、なんとか体を小さくしながら言った。
「やってみるか・・・だめもとで・・・」
するとセイは、右手を上に挙げ、詠唱を始めた。
「雷神よ・・・全てを焦げつくせ・・・・スパークス!!」
セイは天井に向かって電撃を放った。他の六人は、電撃を受けないように屈んだ。
しかし・・・・
「ぎゃあぁぁぁ!!?」
天井は止まるどころか、鋭い巨大な針が出現した。
「この檻の仕掛けは、一度刺激を受けるとそうなるんだよ。だから絶対に逃げられないんだ・・・・」
「そんな・・・・・・」
セイは、それを聞いて目を丸くした。
「くっ・・・」
ヒリアは、赤面でなんとか潰されないように、天井押さえていた。
――――いやだ・・・こんなとこで・・・せっかくここまで来たのに・・・いやだ!!
ヒリアがそう思った瞬間、天使の翼がいつもより大きくなりヒリアの体が光った。
すると、檻の柱が折れ、天井もばらばらに砕け散ってしまった。それを見た軍兵長は、目を丸くしているしかなかった。
「なっ・・・なに? 今の・・・・・」
今の出来事をヒリア自身も分かっていなかった。そして、気づくと天使の翼は、いつもの小さな形に戻っていた。
「くそっ・・・行け!! 取り押さえろ!!」
すると軍兵は、八人の方へ向かってきた。
第九話へ・・・
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2004/12/07(Tue)13:33:18 公開 / 水樹姫乃
■この作品の著作権は水樹姫乃さんにあります。無断転載は禁止です。
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■作者からのメッセージ
初めまして、水樹といいます。
いかがでしたでしょうか?楽しんでいただけましたか?
これからどんどん書いていくので、皆さん楽しんでください。
更新は早いか遅いかまちまちですが、これからもよろしくお願いします。
と、言いたいのですが、ごもっともな意見ですぅ・・。これは結構前に書いたので、自分でも何書いてるのかわからない部分も多いですぅ。(泣)
でも、これの次回作製作中なので皆さんの言葉を生かしながら頑張ろうと思います。
すいませんね・・・
最近PCが壊れちゃってて更新ができませんでしたが、頑張ってこれからも更新していこうと思います。
あのですね、私の勝手な行動なんですが、今日から12月30日までに私にメールをくれた人に今まで書いてきた私の小説『魔導伝説シークレット+a』のキャラクター・ウィンズリー、サンダー、ヒリア、セイの四人のお正月イラスト付の年賀状を送ろうと考えています。
では〜☆