- 『放課後〜一〜最終章〜』 作者:緋月 龍 / 未分類 未分類
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原稿用紙約16.1枚
第一章
放課後。と言っても部活動をやっている時間ではない。
今はもう10時。
月光が教室を照らす。
ほのかな光がやけに明るく感じた。
静まりかえっている教室。聞こえるのは自分の荒れた息遣いのみ。
ここは我が教室。2年3組。
俺が通うのは神奈川県内のH高校。
評判は良くは無いが受験するのも嫌だしそのまま入学した。
昨年はこんなところにいるはずがなかった。
なぜいまここにいるのか。
そんなことを考えていた。
そう、あれは一昨日のことだった。
授業中、一枚のメモ用紙が教室中を回った。
「明日、夜、9時、学校に集合。我は闇を支配するもの。貴様らにある秘密を公開されたくなければ来ることだ。護身用の武器をもってな・・・・。」
というものだった。
その下に参加希望者名を書くところがあり、俺は迷わず書いた。
秘密をばらされるなんて冗談じゃない。
万引きしてるところなのだろうか・・。あれは好奇心で・・・。
もしかしたらテストでカンニングしたこと?それは避けたい・・・・。
いや、ほかにも・・・・。
思い当たる節がありすぎたのだ・・・・・。
ほとんどの生徒の名前があった。
そんな中一人だけ、名前を書かない生徒がいた。
名前は清水絵梨(しみずえり)。
強気の女子で男女見境無くしゃべる、そこそこ人気のある生徒だった。
俺は大人しいタイプだったからあまり干渉しなかったけど。
清水は「こんなの嘘に決まってる」といって、書かなかった。
翌日、清水の机に一枚の写真があった。
その写真の内容はあまりにも衝撃的だった。
その写真に写っていたのは清水と見知らぬ男。
この男は他のクラスの男子だそうだ。
つきあっていたことを秘密にしていた。
そこまでなら可愛いものだ。
だが、そうではなかった。
その男子は他の女子とつきあっていたのに急に別れていて、
清水自身は他の男子とも付き合っていたのだ。
他の女子から恋人を奪い、しかも自分には付き合っているのがいるというなんともひどい話。
その説明書きは写真に添えられていた。
「清水絵梨は二股をかけている。しかも一人は他の女子と付き合っていたのを別れさせた。これは許すまじ行為だ。 私は全てを知っている。闇を支配するものより。」
と。
筆跡がわからないようにパソコンで書いたらしい。
それを見た清水は悲痛な叫び声をあげながら学校からでていった。
そして・・・・・・自殺した。
自宅のマンションの屋上から飛び降りたとのこと。
遺書がありそれにはごめんなさいとかいてあった。
そして今日、二年三組の35名全員が参加することになった。
午後九時に皆、正門前に集まる。
一枚の張り紙がしてあった。
「よくぞきた、懸命な者たちよ。お前達は生きる権利がある。秘密をかかえたものたちよ。己の秘密を守りたければ校舎内の我を探し出せ。そうすれば探し当てたものの秘密はまもろう。だが一人だけだ。一番最初に来たものの秘密だけ守り、残りの34名の秘密は公開する。秘密をまもりたければ他人を殺せ。殺せ。殺せ。一人で生き残り、平穏を手にするのだ。タイムリミットは明日、午前六時。このときまでにみつけられることができなければ時限爆弾が爆発する。闇を支配するもの」
と。
「冗談じゃない。どうしてがしあうんだ、馬鹿馬鹿しい、帰らせてもらう。」とクラスの委員長である佐藤君が叫んだ、その時、パーンという音。
佐藤君は倒れた。胸から血がでている。撃たれたのか。あっという間に動かなくなった。
そしてアナウンスが入る。「これはゲームだ。もう始まっている。リタイアは認めない
生きるか、死ぬかだ。ちなみに佐藤君の秘密は、万引きの常習だ。」
と。
何人かが叫び声を上げながら門を上り学校へ入っていく。それぞればらばらに散っていった。
九時半。廊下を歩いていたら黒い影が一つ。ちかづくとそれは死体だった。
何か硬いもので殴られた跡。男子だ。顔を見ても誰だかわからない。血の気が引くのを感じる・・・・・。手に血がついた・・・・・。だんだんと恐怖を感じる・。
そしてなんとか立ち上がり逃げる。ひたすら走る、走る、走る。
たどり着いたのが二年三組の教室だった。
だれもいない。
ふと窓の外に目をやると、校庭の真ん中だけ照らされていた。光源は隣の教室。二年二組だ。真ん中には12の人型があった。
俺はしりもちをついた。
荒くなる息・・・・・。静かな光。
10時現在、死者12名。残り時間、八時間。所有武器、金属バット、カッターナイフ。
闇を支配するものの手がかり、なし。
第二章
狂ってる・・・・・・。
この言葉をしばらく言い続ける。
教室の片隅で。
一人で。
窓の外を見れば十二の死体がそこにある。
二階だから誰だかはわからないけど。
お互いに殺しあったのだろうか。それとも逃げようとして撃たれたのか?
身震いがした。
でも、おかしい。
なぜ、校庭の真ん中に並んでいるんだ?
校舎内でやられたのなら校舎内にいるはずだ・・・・。
俺はなんとか立ち上がり、なんとか階段を降り、校庭にでる。
そして一歩一歩、慎重に死体に近づく。
空気が重い・・・・・。息が苦しい・・・・・。
近づいた俺はその光景にまた腰を抜かしてしまった。
そこには胸を撃ち抜かれて死んだ、佐藤君の体があった。
怖い。怖い怖い怖い怖い。
自分も死ぬんじゃないかという恐怖と闇という恐怖。
ここから逃げ出したい。いやだ、いやだいやだいやだ。
その場からはいつくばって校舎に戻る。服が泥だらけだ。
少し落ち着くのをまって考えてみる。
なぜ佐藤君の死体があそこにある?
あるということは誰かが運んだということ。
一体誰が?
闇を支配するもの、か。
ということは。
どこかに居続けるのではなく、常に動いているということか!!
そして見つけた死体をああやっておいておくのか。
と、死体のほうへ目をやる。
死体のある場所からここまで一本の線がある。
俺の体の後だ。
・・・・・・・・。
それなら、足跡もあるんじゃないのか??
闇を支配するもの、の。
運んできたのなら。
よしっ、と体を起こし校庭にでる。
地面を見渡す。
「あった!!」
足跡が確かに残っていた。
それは職員室のほうからだった。
来たほうへ戻っていっている。
足跡を追って歩き出す。
まだ地面にぬかるみがある。
靴が重くなったので、バットで靴の裏を叩き泥を落とす。
そしてまた歩きはじめる。
たどりついたのは職員室だった。
勝手口が開いている。
靴を履き替えていないらしく、泥の足跡が校内までつづいている。
俺はさらに足跡をおっていった。
暗い廊下を懐中電灯で照らす。
懐中電灯は職員室にあったものだ。
いったいどこまでつづくのか・・・・。
それにしても、誰とも会わないのは何故だ。
もしや、もう皆・・・・。
「いやいや」と首を横に振り歩き続ける。
足跡が薄れていくのがわかった。
だんだんとわかりにくくなる。
そして、ついに、足跡が、消えた。
その時、前の教室から「ギャー!!」と叫び声が聞こえた。
俺はドアを開ける。
そこで、友達の、山本が、死んでいた。
山本は変わり者だから、俺なんかとつるんでいた。
楽しい奴だったのに。
どんな秘密があったのだろうか。
そしてその後ろには、山本と仲が良かった、遠藤がいた。
手にはトンカチを持っている。
「よぉ、小島。お前も死ぬか、こいつみたいに。」
と、遠藤は山本を指差し、笑う。
「こいつも馬鹿だよな、協力すりゃあいいのに。どんな家庭の事情があるのかしらねえが、俺のほうがやばいっての。くっくっくっく・・・。」
そして遠藤は続ける。
「で、お前はここで死ぬ?それとも協力する?」
俺は即答した。
「協力するよ。」
時刻、11時。死者、13名(確認済)武器、バット、カッター。
仲間、遠藤
第三章
「で、お前はここで死ぬ?それとも協力する?」
俺は即答した。
「協力するよ。」
とこたえた瞬間だった。
ガシャーン!!
ガラスが一枚割れた。
そして、ガラスを貫いた何かはそのまま遠藤を貫いた。
遠藤はそのまま紅い液体を残し、倒れこんだ。
そのまま動かなくなった。
なにがおきたのかわからない・・・・・。
わからないわからないわからないわからないぃぃぃぃ!!!
おれは教室から飛び出し走った、走った、走った。
途中、柱に肩をぶつけた。痛いけど気にしない。
トイレに駆け込む。
そして、その場にうずくまる。
はぁ・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・。
自分の吐息だけが聞こえる。
やっと落ち着きを取り戻したとき、アナウンスが入った。
「・・・・・・・・・・・・。まだなれないのかい、小島君。小島 透君。ふふふ・・・・・・・・・。もう生き残ってるのは君だけだよ?」
なんだと?今、・・・・・・・・なんていった?
イキノコッテルノハオレダケ??
ホカノミンナハ??
「他のクラスメイトは、全員死んだよ。校庭に皆、並んでる。」
俺はトイレから飛び出し廊下の窓から外を見る。
校庭の真ん中には たくさんの 人影が 倒れていた。
また放送が入る。
「私が誰なのか、知りたいか?知りたいなら、三階の放送室にくるといい。そこで決着をつけよう。 研究長の息子さん」
第四章
そこからの記憶が全く無い。
俺はやっとの思いで購入した念願のマイホームの広めのリビングにあるソファにもたれてながら懐かしき中学時代の思い出を脳裏に浮かばせていた。
だが、放送がかかりそこからどうしたのか全く覚えていない。
クラスメイトは一人も欠けずに無事卒業したし、謎の男の正体もわからない。自殺したことになっている絵梨は俺の妻となっている。
その絵梨がお茶を運んできた。
丁度いいので聞いてみることにした。
「なぁ、絵梨。」
呼びかけに反応した絵梨が隣に腰掛ける。
「なぁに?」
少し間をおいて話し始めた。
「中学の時のあれ、覚えてるか?」
絵梨が少し無言になる。
「・・・・・。えぇ、覚えてるわよ。あの、私が自殺したってことになってて、実は義父さんの会社の部下に誘拐されてて、それを貴方が助けてくれたんじゃない。」
と背中を叩かれる。
「あぁ、そういえばそうか。」
死体とは全て気絶していただけで、校庭の光を浴びて催眠効果により洗脳させていたのだったか。
一体、何のために?
「世界人類の平和には一人の人間の意志にあわせるしか手段は無い。」
突然、絵梨がつぶやいた。
「なんだそれ?」
「私が誘拐されてたとき、よくつぶやいてたのよ。その男が。」
へぇ・・・。と湯飲みに手を伸ばしたとき、玄関のベルがなった。
「私、見てくるね。」
と玄関に向かった。
数分後、帰ってきた絵梨の隣には、その男が立っていた。
あまりの驚きに声がでない。
「やぁ、小島 透君、やっと私の研究が完成したのでね。キミには第一号となってもらう。」
ドスン。と、なにかがうちこまれて、意識が遠のく。
その上に絵梨も覆いかぶさった。
薄れ行く意識の中で、男の笑いだけが聞こえていた・・・・・。
完
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2004/12/04(Sat)01:46:36 公開 / 緋月 龍
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■作者からのメッセージ
終了です。
何が何でも終了です。
どう転んでもいい方向にはいきませんでした。
世の中には間違った世界平和をたくらむ人もいる。というお話。
最後までどうもありがとうございました。