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『無色の世界  【読みきり】』 作者:夢幻花 彩 / 未分類 未分類
全角1779文字
容量3558 bytes
原稿用紙約5.9枚
キャロライナからでた新発売の香水の香り。確か雑誌でタレントに一番人気の香りっていってたような。ちょっぴり大胆で甘い香りはかわいい私に良く似合う。綺麗なピンク色のボトルもまるで私のためにあつらえたみたい。
 中島美嘉みたいなブラックシャドー、お気に入りだったけどやめちゃった。代わりにマジョマジョのパールピンクのシャドーにしたよ。カッコイイ女の子より、可愛い女の子の方が好きだっていってたもんね。
 細く細くハイライト。綺麗に綺麗にアイライン。ロングラッシュのマスカラで、くるんってカールした睫毛を優しく撫でてあげて。
 ぽんぽんのせるイメージでピンクのグロスを塗ったら完璧。ざっくり系のニットをたぽって着て、フレアな花柄のスカートにピビットカラーのレッグウォーマー。アニマル柄のヒールとまるっぽい形のひらひらしたバッグをあわせた、とっても可愛くて、お洒落な私、出来上がり。
 私もともと顔立ち綺麗だし。スタイルだって抜群にいいし。バイトで一生懸命ためたお金はほとんどメイクと洋服に使った。カッコイイ女の子もやめて君好みの可愛い女の子になった。そう思わない?
 君は前より私に優しくなって、前より私と居てくれる。そのためにがんばったんだもん、当然だよね?

 たとえ心の距離はどんなに離れてしまおうと。

 私は君が思ってるほど馬鹿じゃないから知ってるけど、君にとって私の価値は「私」そのものなんかじゃない、このかわいい「外見」がすべて。下手なアイドルなんかよりずっとずっと綺麗な私の見た目。友達に自慢できる「彼女」って名前のブランド品。だから、デートの度にこんなに可愛くしてくるんじゃなかったかなぁって後悔。でもきっと、可愛くしてこなかったらもっともっと後悔。
 駄目だなぁ、私。



 あ、あの人いいな。ちょっと太ってて似合わないミニスカなんかはいちゃった女の子。はっきりいってあんまり顔も可愛くないし。
 私もあのくらいだったら「ブランド」なんかにならなくてすむのに、ね。
 もしそうだったらそれはそれでへこんで私みたいな可愛い女の子にあこがれたりするんだろうなぁ。隣の芝生は……ってヤツ。
 結局どこにも完璧な物なんて存在したりしないんだ。

 





 あれは3ヶ月くらい前。いきなり君に告られた。もちろん君の事はずっと前から知ってたよ。学年中の女の子はたいてい君に憧れてたから。私もその中の一人で、だから最高にうれしかったの。うれしくてうれしくて一生懸命前よりもおしゃれにして化粧水も高いのに買えてパックも週に3回に増やした。少しずつ私が可愛くなると君は少しずつ私に優しくなった。女の子の友達もうほとんど残ってないけど、君が居てくれたから全然平気だった。遊ばれてるって噂も信じない。だって、好きなんだもん、今君を失ったら、後に残るのは意味無く可愛い服とコスメ、そして価値を無くしたやっぱり可愛い私だけ。


 だから。




 全部見ないフリをしていればいい。もしくは見間違い。あそこで綺麗な女の子と一緒に居るのは私の大好きな君じゃなくてよく似た全然別の人。だって君は綺麗な女の子じゃなくて可愛い女の子が好きだから。絶対違う。あれは君じゃない、絶対ぜったい、そんなはずはない。私は信じてるよ。そんなひどいこと君はしない。この3ヶ月間、いっぱい一緒にいろんなとこいったね。楽しかったよ。だって、違うの。「また行こうね」っていったら「うん」っていってくれたから。「うん」って。だからそんなはず無いの。私は信じてるの。



 けれど。


 

 Happy Daysの着メロが自分のケータイから流れていて、それが君からのメールが来たということを理解するまでにちょっと時間がかかった。デートに遅れる、ごめんって、そういうメールでしょ? 判ってるよ、バイト抜けられないとか、そういうこと?


『彼女できたから、別れよ』

 顔文字も絵文字もないたった一言。今までこんなメール送られてきたことあったっけってちょっと考える。駄目だ、頭がぼぁってしてて、全然思い出せない。
 あれ、目までぼぁってしてきた。


 

 

 世界から色が消える。抜け殻みたいな世界。







 残ってるのは意味無く可愛い洋服とコスメ、価値を無くした可愛い私、それからもうひとつ。たった一行だけの最後のメール、君からの。




2004/11/12(Fri)05:23:18 公開 / 夢幻花 彩
■この作品の著作権は夢幻花 彩さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
PCがウイルスに感染、やっと使用可能な状態になりました☆11月にはいって初です!PCの無い生活の寂しさを実感(涙
 ただ完全には直ってないのでメールを送ると相手にまで感染する可能性があると父に言われメールができないという上脅威陥っています(汗 実は登竜門のある方にメールを送りたいのですがその方に感染するかもしれないため送れないでいます。その方がこれを読んでくださる事を祈ります(必死

 というかこの主人公の女の子かなりの自信家ですね(自分で書いたんだろうが あえて情景の描写をなくして一人称でうだうだとやってみたのですが・・・失敗してそうで怖いです。批判等でもかまいませんのでレスをいただけたら嬉しいです。

PS,書いていた続き物二つが奥にいってしまい、非常に凹んでいます(大泣 しばらくショートを書きながらそっちも進めていきたいと思いますのでどうかよろしくお願いします。たまにでいいのでのぞいてやってください(懇願

 それではっ☆
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