- 『哀しき恋愛事情1』 作者:早川 ナオ / 未分類 未分類
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授業は暇だった。
先生が熱弁しているのは、日本の社会について。
窓側の席はある意味ラッキーだった。
青い海が視界いっぱいに広がり、空も無限に広がっている。
あと半年ぐらいで、社会に荒波に飲まれる恐怖をまだ知らず、仲間達はワイワイと騒いでいる。鼻で笑っているのもいいが、俺もどうやら将来に不安を感じているらしい。
不景気だな、とぼそり呟いて、今の状況とは全く関係のない記憶が脳裏に呼び起こされた。
なんだろうな。
最近イイことないなと思ったら、俺は幼い頃からそんなものに恵まれていない気がした。
とくに恋愛に関しては。
18歳になっても、まともな恋愛はしていない気がする。
最初の彼女はどんな子だっけ?
俺は目を閉じた。
1『本日はお日柄もよく』――
本日はお日柄もよく、俺はのんびりと約束の地へと向かう。
もうとっくに待ち合わせ時間を過ぎているのに、慌てない俺。
夏の日差しは今日も最高潮に暑い。走れば汗を掻く。乾けば臭いし、相手にも不快感っていうもんを与える。
まぁ、寝過ごした俺も悪いのだが、こんな朝早くに会おうという彼女も悪いのだから。
愛する彼女を見つけて、まずは大きく手を振って朝の挨拶。
軽いビンタを味わい、そして歩く。
「今日はどこに行くんだ?」
欠伸が出そうで必死に口を閉じた。
「今日は何の日だと思う?」
クイズは苦手さ。冷房がある室内ならまだしも、こんな暑い外では、ハムスターは元気よく回し車の中を走らない。
俺はついさっき起きたばかりで、ハムスターより頭の回転が悪いかもしれない。考えるふりをして、じつは腹が減っている。
「……わからん」
がっくり肩を落とすと、彼女は笑った。
「今日はあなたとのお別れの日よ。もしかして忘れてる?」
寝ぼけ眼を覗き込む彼女が、不思議そうにこちらをみる。
「……最後?」
あの夜は全部夢だと思って片付けていた。だけど、彼女ときのうの最後に交わした会話を呼び起こすと、ほんと夢みたいだ。
『別れましょう』
原因は浮気だったかな。わからん。
俺がのんびり屋だから。頼りない男だから。理由はもうどうだっていい。
最後に彼女を抱きしめて、そこで終わろう。寝ぼけている間は、もう記憶には残らない。
「……そうだな。よし、別れよう」
彼女をきつく抱きしめて終わり。
朝早く呼び出したのは、彼女が今日遠くの街へ引っ越すからだ。
もちろん小学生のガキが、遠距離恋愛などする我慢強さなど持っておらず、俺は彼女と別れた。
キスもその後の進展もなく、ただ抱きしめて終わり。涙は忘れた。
すべては寝ぼけてて、記憶は曖昧。
彼女がどこの誰だったか、トラックが走り去ってもわからないでいる俺。
瞬間的に目を開けた。
これが最初の彼女、らしい。
俺が覚えていなくても、頭の隅にはこびりついていたんだな。
あの時のあの子は、一体どこに引っ越したのかな?
教室の雑音は、チャイムが鳴るまで静まりそうにない。
続く。
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2004/11/07(Sun)16:17:39 公開 / 早川 ナオ
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■作者からのメッセージ
初めまして。早川ナオと申します。
まだまだ未熟ですがよろしくおねがいします。