- 『カモさん、お山へいらっしゃい♪』 作者:鈴乃 / 未分類 未分類
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原稿用紙約9.1枚
(……なんだこれ?)
秋も深まり、コスモスが鮮やかに咲き、落ち葉が淋しく舞う今日この頃。
ちょっとだけ出掛けたいと思うときに倉庫の奥からの掘り出し物があったのでした。
僕は今、山を登っていた。
何処にでもあるような小さな名も知れぬ山。
こんなところで迷うはずない。
……が、只今地図と奮闘中…。
山を舐めてかかったせいで、東西南北なんてさっぱり。コンパスなんて持ってませーん。
宝探しに来たはずが、こんな所で野垂れ死に…。そんな惨めな真似だけはしたくない。白骨化なんてしたくない!
そもそも、倉庫の中で見つけた地図を宝の地図だなんて夢のような話しを考えた僕が馬鹿だったんだ。
…帰りたい。
喉も渇いた、持ってきた水はもう尽きた。
腹も減ったし、歩き疲れて足には激痛…。汗と泥でベタベタグチョグチョ。
もうイヤだ…。
そんな気持ちが頭の中を支配してきた時だった。
僕の目の前には見たこともないオレンジ色のツルツルした実が一つ。
食えるかどうか齧り付く。
無理だった…。堅い、堅すぎる。
食えないものに意味は無い、捨てるか…。
「もし、その実を下さいましたらお礼を致しましょう」
勢いよく投げようとした時だった。
振り向いたが人はいない。幻聴か…。
「ここです!居ますよ!投げないで下さい」
よく耳を済まして聞いてみると頭上からだった。
…リス?どうしたんだ、僕の頭!とうとうガタがきたか?しっかりしてくれよ!
頭の中では自分を蔑む…いや、励ました。
だって悲しいじゃないか!こんなメルヘンチックなことを認めるなんて!
「お礼ってどんなものですか?」
悲しい!悲しいけど、藁にもすがる思いだ!
僕は、平静を保って答える。
「どんぐりなんていかがでしょう?」
「却下!せめて山道の案内とかさぁ…どんぐりじゃさすがにマズイっしょ?」
相手はリスだぞ?自分…。幻かもしれないんだぞ?てゆーか認めんな。
リスの提案を却下した後に無性に高まる自分への蔑み。
もう溜息しか出ませんよ…。
「私がご案内するには弱すぎるので、お友達を紹介致しますよ。ついてきてください」
リスが木の枝を跳ねて渡り出す。あり得ないだろ、コレ。
五分程度、軽いマラソンをさせられる。クタクタで棒の様な足には相当きついものがあった。
リスが跳ぶのをやめる。僕も走るのをやめた…途端、膝がカクン。コケた。
「お疲れのご様子ですね。こちらが私の友達、クマさんです」
「……よろしく」
「カクカクシカジカ、こんなわけなんですがお願いできます?」
「……任せておけ」
あり得ないだろ?オイ、僕の頭!夢なら覚めてくれ!!
リスとクマの会話を聞いてますます不安になってきた。
だってさ、「カクカクシカジカ」で話しが通じちゃうんだよ?夢以外何であるというんだ?
「では、またお会いしましたらゆっくりお話致しましょう」
絶対会わないね。二度と。
「……案内する。ついて来い」
ひぃっ!!行きますよ!行きますともっ!!
クマの鋭い眼光は、僕を脅しているとしか思えなかった。地なのだろうが…。
あれから、数時間…。歩き続けて、もう限界。
歩けねぇよ…。そんなことを愚痴りたくなってきた。
…バタンッ!
「…すまん。もう寝る……」
ひぃっ!クマが倒れたぁー!!
って、ん?冬眠ですか?なんとも気の早い方ですね…。
理解するのに時間がかかった。だって、いきなり倒れたら頭真っ白になるでしょ…。
これからどうすれば良いんだよ…。
とりあえず座り込む。足がうまく動かず尻餅ついた。
太陽が目の前に。だけど、葉が程よく隠していて目には痛くない。
「お困りのようですな、少年」
今度は何の動物だよ…。今度はもう驚かないぞ…って、老人?
「迷ったのかい?ここを真っ直ぐ行けば道があるぞい」
「有難う御座います、早速行きます!」
心優しいおじいさん有難う!!
いうこと聞かない膝を必死で伸ばして立ち上がる。そして、歩き出そうとしたら…
「情報料じゃ。その首から提げた水筒を置いていけ」
タダじゃないんかい…。
仕方なく水筒を首から取りお爺さんに渡した。どうせ中身は空だし…。
そして歩くこと、数時間。辺りは一面オレンジだ。
こんなにも歩き続けたのに…何故道が出てこないんだー!!
騙された。それはわかっている!しかし、何故騙す必要があったというんだ?!たかが水筒!欲しいならくれと一言言えば良いじゃないか!これじゃ、まるで馬鹿じゃないか、僕!!
一番星が輝き始めた頃、僕は相も変わらず山の中。
誰か助けてくれー…。
「お助けしますよ。その手に握られた地図を下さればね」
「ああ、良いとも。街まで辿り着けたらな」
次はシカだった。
もうどうにでもなれと思う反面、生きて街に帰りたいとも思っていた。だから、さっきみたいに騙されぬよう条件を出した。
「交渉成立。さぁ、背中に乗ってくださいな」
一瞬呆けた。
本当に助けてくれるんですか!?
帰れると思うと涙がこみ上げてきた。早速シカの背に跨った。
シカがピョンピョン跳ねるように下りていくと、すぐに街が見えた。
……助かったんだ!!
心の底から喜んだ。街のすぐ近くの一本道でシカの背から降りたとき、涙が溢れ出てきた。
有難う!シカ様!!
すぐに地図を渡した。そして、カクカク言う足で自分の家へ帰り、二日振りにふかふかのベッドで寝た。
…はずだった。
なのに、起きてみたら何これ?山の中?
何?どういうこと?やっぱり夢だったの?そうだよなぁー…動物が喋るはず無いもんなぁ…。って、え?水筒は?地図は?
「馬鹿だねぇ、キミは」
振り向くとそこには、リスとタヌキとシカにキツネ、クマが寝てる?
四匹ともニヤニヤと不気味な笑みを浮かべている。
「貴方から頂いた木の実、美味しく食べましたよ」
リスが言う。
「御主から頂いた水筒、大切にするぞい」
タヌキがお爺さんに化けて言う。
「貴方から頂いた地図、子供達が喜んでましたよ」
シカが言う。
「キミから頂いたリュック、良い寝床にするよ」
キツネがベッドに化けて言う。
そして、四匹一斉に四方へ散った。クマだけはその場で寝こけている。
つまり現実だったと?荷物は全て騙し取られたと?体力まで削られて終わりですか?夢でなくっちゃ困りますよ?これ…。
「そこのアンタ、困ってるの?アタイが助けてあげようかい?その服をくれるなら」
黄色いトリが青空を飛びながら言う。
いえ、結構です。もう騙されないよ…。喋る動物なんて信用ならないよ。
「……あのトリ、山一番の正直者」
クマが欠伸しながら言った。
…マジですか?
☆END☆
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2004/10/30(Sat)15:44:03 公開 / 鈴乃
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■作者からのメッセージ
まずは、ここまで読んでくださった皆様にお礼を…。
ありがとうございますw
どうしたんでしょうか?ホントに僕は…。
何をラリっちゃってるんでしょうね?
書き上がったので取り敢えずは良かったのかな?;;
何かとんでもない作品ですが、読んでいただけて光栄ですw
是非ダメ出しをお願いします;;