- 『腐った正義の住み着く世界』 作者:spring nigh / 未分類 未分類
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原稿用紙約3.6枚
あるところに、一人の悪人がいました。その悪人は、最初は悪人では
ありませんでしたが、ちょっとした誤解から多くの人々に非難を浴び、
心は廃れ本物の悪人になってしまいました。悪人を作り出した人々は、
自分達を正義と思い込み、自分達で作り出した悪人を徹底的に苛め抜きました。
「悪人は必要ない、徹底的に潰す。例え改心したと言っても、信じない。
一度過ちを犯した者は永遠に悪人なのだ」
これが正義感を振りかざす人達の考えでした。
【小説 腐った正義の住み着く世界】
「申し訳ございません。もう二度とこのような事は致しません。
私が全て悪かったです。本当に、本当にすいませんでした」
一人の男が一つの過ちを犯し、それを心から反省し迷惑をかけた人達に謝罪していた。男は両手両足を鎖でつながら自由を奪われていた。
「貴方の言う事など誰も信じません。一度過ちを犯した者は改心などすることは不可能。もし出来たとしても許しません。いいですか? この世の悪人は
全員死ねばいいのです」
悪人と決め付けられた男の周りにいる大勢の人々。その中のリーダー格であると見られる、白いスーツを身につけた男が言い放った。
周りの人々もその男の言葉に同意する。悪人は全員死ねばいい。反省などしなくていい、改心などしなくていい、ただ死ねばいい。全員が声を合わせてそう叫ぶ。まるで呪文のように。
「……ふざけんな」
鎖に束縛された男がぽつりと呟く。
「人は過ちを犯す生き物だ、だけどな、反省して成長していく生き物だろ!!
反省しても認めない? 悪人は死ねばいい? 俺から言わせればお前ら、上辺の正義を振りかざして平気で最も悪とされる行為をしているお前らの方が
この世から消えるべきだっ!」
男は訴えた。しかしそんな言葉は腐った正義を振りかざす者達には届かない。男はすぐに処刑された。
この世界には、表面的に悪人と思われる人間は限りなく0に近い数に減った。しかし、皆の顔に笑顔はない。皆が何かに怯え心の中は漆黒の闇に包まれている。この世で最もたちの悪い【悪】。それは正義を振りかざし悪を見つけたらここぞとばかりにでしゃばり、非難を浴びせる人々のことを言うのかもしれない……。
彼らは知らない。自分達が悪を次々と生み出し、消すことで自分は正義だと優越感を感じていることを。
此処まで執筆を終え、私は万年筆を置いた。
もしも、悪すらにも愛を与え正しい道へと導く人々が多くいたなら、きっと私の描いたこの世界は、とても素晴らしい平和なものとなっていただろう。
邪魔だから切り捨てるやり方、それになんの意味があるだろうか。
「殺す以上の悪がある訳ない」
完
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2004/10/29(Fri)11:18:35 公開 / spring nigh
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