- 『白銀世界の外』 作者:夢幻焔 / 未分類 未分類
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原稿用紙約11.3枚
君は今生きているこの世界が本当だと思うか?
こんな事を聞かれれば、誰もが「当たり前だ」と答えるであろう。
だが、中には「分からない」と答えるものもいる。
確かにそうだ、皆がもし、生きていないでこの世界を形成していたとしたら―――
「おはよう、今日も寒いね」
「あっ、おはよう。ほんと、困るよね」
街は辺り一面白銀の世界と化し、吐く息は白い。
そして空からは、純白の雪が舞い踊るように、深々と降っていた。
「そういえば、今日って雪祭りでしょ? 美香は行くの?」
「うーん、どうしよっかなぁって迷ってたとこ。優美は?」
「そうねぇ、美香が行くなら、一緒にいこうかな」
雪祭りとは、この街で毎年この時期に行われるイベントのことで、雪で作った人形やお城などがずらりと並び、街のメインストリートでは屋台などが軒を連ね、この街で一番の大きな祭りである。
この季節、この街では他の者も、この話題で持ちきりである。
そんな楽しい話をしながら、二人は冷え込みの厳しい朝、学校へと普段の通学路を歩いていた。
この後、奇妙な体験をするとも知らずに。
「起立、礼。」
「おはよーございまーす」
「着席。」
クラス委員長が号令をかけ、教壇に立った担任の教師に、クラスメイト全員が間延びした挨拶をする。
「えー、今日は街で年に一度の雪祭りがある。みんな、ちゃんと学校で決められた門限を守るんだぞ」
規律というものか。遊びたい年頃の生徒達に、つまらない校則を言う。
「門限たって、夜の八時までだぜ? 全然遊べねぇよなぁ」
「なんで学校って、こうも厳しいのかしら」
教室のあちらこちらで、教師の言った『門限』について、文句が飛び交っている。
「いいかー、ちゃんと守るんだぞ。先生達も立ち番してるからな。では、一時間目の授業に入る」
この辺りの学校は、雪祭りがあるということで、ほとんどが特別に午前中授業となっている。
「ねぇ、美香。やっぱり行こうよ、年に一度きりなんだしさ」
「うーん、そうね。それじゃ行きましょうか」
「そんじゃ決定〜。忘れないでよ?」
「はいはい、分かったわよ」
今朝、道を歩いていた仲良し組の美香と優美が話していると、前から大きな声がした。
「こらぁ! そこの二人! ちゃんと授業を聞いてるのか!」
ひそひそと笑いながら話をしていた二人に、授業をしていた教師が注意する。
「てへへ、怒られちゃった」
「もう、優美が話しかけてくるからでしょ」
怒られたのにも関わらず、二人はまだ話をしていた。
「ったく、テストの点数が悪くなっても知らんぞ?」
いつもの事なのか、諦めたように教師は黒板へと向き直った。
そして、退屈な授業が四時間。午前中で学校は終わり、生徒達は雪祭りの話をしながら、各自の家へと帰ってゆく。
「ねぇ、美香。あたし達も帰るわよー」
「うん、ちょっと待ってて。今帰る用意してるからさ」
二人は授業中うるさかった罰として、居残りで掃除をさせられていたのだった。
時間はちょうどお昼過ぎ、お腹もかなり減っている時間帯である。
「ったく、あのハゲ教師! あたし達を飢え死にさせる気かっ!!」
「まぁまぁ、優美。そんな怒んないでよ」
拳を握り締め、メラメラと怒りの炎を上げている優美を、美香がなだめる。
「まぁ仕方ないじゃない。さぁ、おまたせ。急いで帰って昼ご飯食べよ」
「むぅ… 仕方ないわね。それじゃ帰ろっか」
二人は登校してきた時のように、並んで校門を出た。
そしてしばらく歩いていると、道の真ん中に妙な格好をした、背の低い老人が立っていた。
魔女がかぶっていそうな黒いとんがり帽子、それに黒いマントのようなものを纏っていた。
「ちょっとおじいさん、そんな格好で道の真ん中に立ってたら危ないわよ? それにその変な格好、雪祭りは夕方からなんだし」
その老人に優美が話しかけるが、老人はまったく反応を見せずに、じっと立っている。
「ねぇ、ちょっと聞いてるの?」
優美がいつまで経っても動かない老人の肩に触ろうとした瞬間、しわがれた声で老人が喋った。
「今生きているこの世界が本当だと思うか?」
突然の老人からの問いに、二人は、きょとんとした顔をする。
「何言ってるの? おじいさん」
美香がその問いの意味を聞くが、老人はそれに答えることなく、再び同じ問いを投げかけた。
「今一度聞く、今生きているこの世界が本当だと思うか?」
老人は声を大きくした。
「うわっ、そんな大きな声で言わなくても…」
「そんなに答えて欲しいなら答えてあげるわ」
老人に対する親切の気持ちなのか、驚いている美香を脇目に、優美は思い切って答えを言う。
「さぁね、そんなの分かるわけないじゃない」
優美の答えを聞いた老人は、その皺だらけの顔で、濁った目を大きく見開いた。
「そうか。で、そちらの娘は?」
「えっ、あたし? うーん、そうね。あたしもやっぱり分からないわ」
いきなり質問を振られたので、少々困惑しながらも、美香は答えた。
「そうか、ならば御主等には見せてやろう」
そう言うと、老人が二人の目の前から一瞬で姿を消した。
「えっ!? おじいさん消えちゃった!!」
優美があまりの突然な出来事に、そのままの声を上げる。
すると次の瞬間、辺りの雪に昼の日光が反射し、眩しいくらいだった二人の周囲が、一瞬にして一切の光が届かない、真っ黒な空間へと変わった。
そう、あの老人が纏っていたマントのように――
「キャァアア!!! ちょっと何よこれ!? 美香!? そこにいるの!?」
「うん、いるよ! 優美こそ大丈夫なの!?」
「ええ、あたしは大丈夫よ。あなたは!?」
「うん、なんとか私も大丈夫みたい」
二人は見えないため、声だけでお互いの無事を確認する。
「ふぇふぇふぇ、突然すまぬことをした」
何処からか、先ほどの老人の声がする。
「ちょっとぉ、ここは何処よ!」
優美は姿が見えず、声しか聞こえない老人に腹を立て、怒鳴りつける。
「ここは、御主等がさっきまでいた世界の”外”の世界…」
老人は、いきなり訳の分からないことを言い出す。
「正確に言えば、ここが本当の世界…」
「それって、つまりはアニメとかで言う『異世界』に来たってことですか?」
老人の説明に、美香が尋ねる。
「そう… だが、本当は御主等が存在した世界が『異世界』なのだ。御主等の存在する世界は、我等がイメージした空想の世界…」
「なに? じゃあ私たちはおじいさん達の想像の中の住人って訳?」
あまりに理不尽な話に、優美が荒い口調で尋ねた。
「そういうことだ… だが、御主等はわしの質問に『分からない』と答えた。だからこっちに来る機会を与えてやったのだ」
つまり、この老人は「こちらの住人になれ」と言いたいらしい。
「ふーん、けどそれが何? あたし達はあたし達の世界でいいの。ねぇ、美香だってそうでしょ?」
自信満々そうに答えながらも、美香に同意を求める。
「そうね… 私たちは、自分達の世界がいいわ。こんな暗くて、何もない世界なんか絶対に住みたくないし」
事の重大さが分かっているのかいないのか、二人はあっさりと答えてしまう。
「そうかそれは残念だ。だがわしとて、理解のない者をこちらに連れてこようとは思わぬ」
その言葉を聞いた瞬間、二人の目の前が真っ白になった――
「…きゃっ、冷たい!!」
「ちょっと、なんでこんな所でこけてるよ、あたしたちは」
二人は校門を出て、すぐの所で倒れていた。
先ほどまで起きていたことは、何も覚えてはいない。
「あぁ、お腹空いた。急いで帰ろっ!」
二人は雪道の上をサクサクと音を立てながら駆けていった。
今日の夕方行われる『雪祭り』を見に行くため、そしてお腹を満たすために。
―――今生きている世界が本当だと思うか?―――
こんな問いかけをしてくる人には気をつけたほうがいい。
もしかすると、この世界の外へ行ってしまい、帰って来れなくなるかも知れないから―――
〜〜〜終〜〜〜
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2004/10/26(Tue)22:55:12 公開 / 夢幻焔
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■作者からのメッセージ
どうも夢幻焔(旧紅蓮)です。やっちゃいました超長駄文(汗)自分で読んで「うわぁ、おもしろくねぇ」と思ってしまいました。書くたび書くたび、文章力が落ちているというか、退化しているというか、ほんとスミマセンm(_ _)m こんな私に喝を入れてもらいたく思い、あえて投稿させて頂きました。また感想や超酷評などを頂けると、非常にありがたいです。それではこの辺で(o_ _)ノ