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『悪魔』 作者:月夜の灯 / 未分類 未分類
全角2537文字
容量5074 bytes
原稿用紙約7.8枚
僕はいつものように机の前でぼーっとしていた。来月は大学受験本番なのに今日戻ってきた模試の結果によればほぼ確実に落ちるとのことだったからだ。それで僕は落ち込み半分諦め半分でぼーっとしていたのだ。すると部屋の真ん中にポンという音と共にまねかねざる客が来た。
「はーい。私は魔界からはるばるとやってきた悪魔です」
だがいきなり現れた悪魔にもかかわらず僕はビクリともせずに冷たく言った。
「俺は今いそがしいんだ。お前と遊んでいる暇はない! はるばる来てもらって悪いのだが魔界にさっさと帰ってくれないか?」
「おやおや困ったことだ・・・私は遊びに来たのではありませんよ。はやとちりされては困ります」
「じゃあ何しに来たというんだ?」
「何ってそれはビジネスに来たんですよ」
「ビジネスだと!?」
「はい。ビジネスでございます」
「ははあーん・・・さては押し売りか。それならお生憎様、家はセールスお断りだよ。わかったらとっとと帰ってくれ!」
「だからはやとちりされては困りますよ。セールスに来たというわけじゃありません」
「じゃあなにしに来たというんだ!」
「はい。それを申し上げますと私は魂と交換に三つの願いを叶えるという人生に一度あるかないかのチャンスを売りにきたのでございます」
「何! ・・・三つの願いを叶えるだと?」
「はい。必ず三つの願いを叶えてさしあげますよ」
そんな悪魔の言ったことに遂に僕はキレて奴に向かって怒鳴った。
「はぁ・・・悪魔が来たのだからやはりそんなこったろうと思ったがそれならなおさらごめんだ。 ふざけるな! 人間様をすこしなめてるんじゃないのか! 魂をあげたら三つの願いもくそもあるかってんだよ!」
だがそんな僕をよそに悪魔はつづけて冷静に話し始めた。
「だから・・・そう何回もはやとちりされては困りますよ。魂をもらうのは死後のことです。願いを叶えたらすぐ・・・という訳じゃないんですよ」
「えっ・・・そうなのか?」
その話を聞いて僕のムカツキはどっかに消えてしまったようだ。だが僕はそれと同時にすこし不安を抱きはじめた。
「だがなぁ・・・死後の世界が地獄行き決定ってのはなぁ」
そんな僕をみて悪魔はすこし焦りながら言った。
「い・いいじゃあありませんか死後の世界なんて! 今が楽しければそれでいいじゃないですか」
そんな悪魔の一言に僕の不安はさっきのムカツキと同様にどっかに消えてしまった。そして僕の中でそれもそうだなという意見が生まれはじめたのだった。
「よし。その契約乗ったあ!」
僕は威勢のいい声で悪魔に向っていった。そして悪魔のほうはその一言をまってました! といいたいような顔をして契約書とボールペンをこちらにむかってつきだしてきた。
「はい。ありがとうございます。ではこちらのほうに手書きのほうでよろしいのでサインをおねがいします」
僕はすらすらと契約書にサインをした。そして書き終わった後早速悪魔に一つ目の願い事を叶えてもらおうと口を開けた途端に悪魔はいくつか条件を言うのを忘れたなどと言い出した。
「すみませんお客様。悪魔人間取引法で定められている条件をいくつか言うのを忘れていました。とりあえず短く要約させてもらいますと願い事をふやせとの事や、不死身になりたいなどの願い事はこちらとしては叶えて差し上げられませんので御了承下さい」
そしてその話を聞き終わった後僕は一つ疑問を感じた。
「んじゃさ、一つ質問してもいいかな?」
「はい。何でもお聞きください。」
「んじゃ聞くよ。お前がもし俺の言った願い事を叶えられなかった又は、矛盾しているところがあった等ということがあったらどうなるの?」
そんな質問に悪魔は少しビクリとしたがまた前のように冷静に話はじめた。
「お客様、そのようなことは決してありません。もしそんなことがあったならば悪魔人間取引法に乗っ取り、死後の魂回収は一切行いません!」
その話を聞き僕はニヤッとした。それもそのはず、願いをただで叶える方法が存在そんざいしたのだから。
「じゃあ一つ目の願い事を言うよ。まずは僕を○○大学に合格させてくれ!」
その願い事を言い終わった後に悪魔は
「はい。必ず」
と一言言い残して消えてしまった。

そして1ヶ月後僕は見事○○大学に合格した。
「よし! 最初は無理だと思った大学に見事合格することができたぞ。これでいちおう目標達成だな・・・さてと、後の残っている二つの願い事は自分の魂を守ることにつかおう。」
彼はああすればいいのか? こうれすばいいのか? などといろいろ考えながら家に帰ることにした。そして家に着き、ベッドに横になってくつろいでいると突然悪魔が現れた。
「大学受験合格おめでとうございます。これで私にできない事などないということがお分かりになりましたか? では二つ目と三つ目の願い事をおっしゃって下さい」
その一言を聞き、僕は焦りはじめたがふと名案が頭にうかびはじめた。
「よし、じゃあ二つ目の願い事を言うよ。聞いてからそれはやめてくれませんか? なんて言うなよ」
僕は念をおした。だがそんな僕の一言を小馬鹿にするように悪魔はわらいながら言った。
「はい、どうぞ。いつでもおっしゃって下さい。私の力はさっきお見せしたばかりですけどね。」
「では二つ目の願い事だ。誰にも解読することができない文字で書かれた本をだしてくれないか?」
悪魔は少し嫌な気がした。
「そんな物をだして一体どうするというんです。いいんですかそんなくだらない願い事で。私にしてみれば無駄な願い事にしか思えないんですけどね」
僕はいらだち気に言った。
「いいから早くだせ!」
「はいはい分かりましたよ。だせばいいんでしょだせば・・・」
悪魔は泣き泣き本をだした。僕はその本を手に取り悪魔に向ってそれを突きつけた。
「よし! さっしのいいお前ならもう気づいていると思うが三つ目の願い事を叶えてもらうぞ」
「うぅ・・・」
悪魔は情けない声をだした。それと同時に僕は悪魔に向って大声で叫んだ。
「三つ目の願いだ! この本を僕の前で朗読しろ!」
悪魔は黙り込んだ。それと同時に悪魔の姿はぱっと消えてなくなった。それ以来悪魔は二度と僕の前に姿を現すことはなかった。




2004/10/25(Mon)18:26:30 公開 / 月夜の灯
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