- 『悟り薬』 作者:神無月 / 未分類 未分類
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原稿用紙約4.2枚
「遂に完成したか。これを発明するのにだいぶかかったな」
博士は隣にいる助手に向かって話しかけた。
「そうですね博士。ですが何なんですかこの薬は?」
と助手はうなずくと同時に薬の効果についてすかさず突っ込んだ。 「おう、そうじゃった。そうじゃった。すまなかったな。これはな警察からの要望で発明された悟り薬という極秘薬じゃ。だから今までに誰にもこの薬について話さなかったのじゃ」
「そうだったのですか。ですが悟り薬とはまた面白そうなものを発明しましたね。・・・・・・そうだ! この薬のテストどうかこの私にやらせてくださいませんか? 確かまだテストはしてませんでしたよね?」
「ほーう・・・・・・この薬のテストを自ら進んでやりたがるとは。わしもいい助手をもったもんじゃよ。だが本当にこの薬のテストをやってくれるのかね?」
「もちろんですよ。きっとこのテストなら私じゃなくても受けたがるとおもいますよ」
その助手の言葉に博士はすこし不安を感じた。
「君は少し勘違いをしてるんじゃないのかな? 悟り薬の効果は・・・・・・」
と博士が言い終わらないうちに助手は博士の手に握られている悟り薬をひったくり一粒取り出して飲み込み、
「そんな悟り薬の効果なんて名前を聞けば分かりますよ。それでは博士すこしの間町中を散歩してきます」
と言って走って研究所から出ていった。
その後町中に着いた助手は片っ端から人々の心を悟ろうと耳を立てていた。
しかし、一向に人々の心を悟ることはできないので助手は考え始めた。
(もしかすると的を絞った人間の心しか悟ることが出来ないのかもしれないな・・・・・・)
そう思った彼は近くの喫茶店に入り(これだ! )と思う人があらわれるまで待つことにした。そして数分後にスタイル抜群の美女が喫茶店に入ってきてまむかえのカウンターに座りこんだ。
(おおぉ!遂に来たぞ。よし、あの女の心を悟ってみるか。きたばっかりにもかかわらずにこちらの顔をちらちらと見ているし案外一目ぼれされたかもしれないぞ)
と彼は美女のことを凝視しはじめたが一向に悟る気配はない。それどころか周りの人全員が彼のことを見てひそひそ話をはじめた。そんな周りの人たちを見て彼は喫茶店にいずらくなり遂には悟るのをやめテスト結果を報告しに研究所に一度戻ることにした。
そして研究所についた助手はすかさず博士に向かって文句を言った。
「博士! この悟り薬失敗作でした。おかげでこちらは変人扱いされましたよ」
〔そうか! 失敗作の可能性が高いって分かってたから研究所出る前に僕を一度止めたのか〕
と助手が愚痴を心に思った途端に博士は言った。
「何を言っておる! この悟り薬は失敗作などではおらんよ」
「ですが博士。実際に僕は町中に言って試してきたんですよ。ですが人っ子一人悟れやしない」
〔また言い逃れしてるよ。博士の悪い癖だ・・・・・・〕
とまたまた助手が愚痴を心に思った途端に博士が言った。
「言い逃れなどではおらん! それにわしにはそんな悪い癖はない!!」
そんな博士の言葉に助手はどきっとした。
「博士・・・・・・何で僕の思ったことわかるんですか?」
「この馬鹿者が・・・・・・まだ気づかんのか! これは飲んだものが他人の心を悟ることが出来る様になる薬ではない。飲んだ物の心を悟ることが出来るようになる薬なのじゃ」
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2004/10/24(Sun)21:42:00 公開 / 神無月
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■作者からのメッセージ
ショートショートに仕上げるつもりだったんですが結構長くなっちゃいました。それに伏線がすこし分かりづらいかもしれません。