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『color』 作者:渚 / 未分類 未分類
全角1226文字
容量2452 bytes
原稿用紙約4.45枚
無色なんて物はない。この世のすべてのものは自分だけの色を持ってる。




「自分には個性がない」…そういって、悩んでるキミ。悩むことなんかないよ。キミはそう、たとえるなら白。何色にでも染まれる、新雪のように無垢な姿。
ねえ、気付いて。キミはこんなにも綺麗な色を持ってるよ。


「俺は何でも中途半端にしかできない」…そういって、落ち込んでるキミ。キミは、何色もの色を持ってる。器用貧乏、なんていわれるかもしれないけど、いいじゃない。
何色にも輝くキミは、とても綺麗だよ。


「あたし、やりたいことがわからない」…そういって、ふさぎこんでるキミ。深い深い、深海のような青色の心の中にたくさんの可能性を秘めていて、それを試したいと思ってる。だから、なかなかひとつに絞れないだけ。
たくさん悩むほど、海には白い波が立って、青色が映える。


「僕がいてもいなくても、何も変わらない」…そういって、悲しむキミ。キミは透明。けして無色なわけじゃない。透き通るように輝くキミ。
透明なガラスに映る、君の姿。よく見てごらん。


「あたし、好きな人がたくさんいる」…そういって、頭を抱え込むキミ。浮気者。そういわれるのが怖いの?キミは、そんなんじゃない。君は燃えるような赤。いつだって、情熱と刺激を求めてる。たくさんの恋を探してる。
燃え盛る炎の向こうに、陽炎がゆれてる。


「どうしてこんなに意地悪なんだろう?」…そういって、嘆いてるキミ。真っ黒。それは決して、嫌なイメージだけじゃない。未知の色、ミステリアスな色。
深い闇の色は、とても神秘的。


「ただ笑ってればいいってモンじゃない」…そういって、笑顔をゆがめるキミ。ヒマワリの様な、黄色。君の笑顔は、回りを幸せにしてるんだよ。
ねぇ、笑って。太陽みたいに明るい、笑顔で。


「どうせ俺は気持ち悪いよ」…そういって、ふて腐れるキミ。そんな風に、自分を割り切らないで。深い、紫。とても、不思議な色。ねえ、キミは、他の人が持っていないような、不思議な可能性を秘めてるんだよ。
みずみずしく光るブドウの様に、皮をむけば、もう一人の自分に出会える。


「どうして僕は生まれてきたの?」…そういって、涙を流すキミ。泣かないで。どうして生まれてきたの?それは、生まれたいと思ったから。生まれて、生きて、色のある世界に出てきたかったから。
キミは何色?







パタンと絵本をとじる。久しぶりに読んだ。俺は手術室のほうに目を向ける。鉄の扉は、硬く閉じられている。俺は目を閉じ、祈った。愛する人の中に宿った、新しい命。どうか、無事に生まれて来てください。




廊下に鳴り響いた、産声。医者たちの歓声。俺はぱっと立ち上がった。呆然と扉を見つめる。新しい命。今、初めて色を持った命が、この中にいる。
やがて、看護婦が微笑みながらでてきた。女の子ですよ、といいながら、白い布に包まれた赤ん坊を俺に手渡す。俺はそっとその子を抱き取った。
この子は、何色だろう。




2004/10/16(Sat)13:21:19 公開 /
■この作品の著作権は渚さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
テスト期間中に何を書いてるんでしょう、私は;
今回は本当に短いですね。色物を書くのは好きです^^

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