- 『守るべきもの』 作者:Spark / 未分類 未分類
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プロローグ
世界に、朝日が昇る。
人々はこの朝日と共に目覚め、夕暮れより四時間ほど遅く眠りにつく。
こんな穏やかな生活がいつでも続くようになった。
そう。世界は今、平和なのだ。
世界中を焼き尽くした暗黒戦争が終わって早五十年。
この世に、もう争いは無いと思われていたが、戦争を体験した人の提案で、世界の平和と秩序を護る四人の戦士
“フォーグレイス”が設けられた。
無論、平和な世で彼らが主に動くことは無かったが…
今、また此処に戦乱の予感を告げる風が吹いた。
不吉な予感のこの風にまず気づいたのはフォーグレイスの一人、
十三代目“大地の守護者”の青年ロークだった。
第一話“予感”
その日、大地の守護者ロークは“四戦士の祠”の一つ“大地の祠”にいた。
四戦士の祠とは、フォーグレイス達が世界中の“気”を読むために作られた祠で、大地の祠はその一つである。
ロークは前代から授かった剣“ラーブレイバー”を目の前の台座に立て、眼を瞑った。これから“気”を読むのである。
「…………」
全神経を集中させ、世界の気を読むローク。
そろそろ終わろうかと思いかけた、その時だった。
ヒュウゥゥゥ…という音と共に、風が祠を通り抜けた。
「!!」
突然異常な気の乱れを感じたロークは気を読むのをやめ、風下を見た。方角は東。ただならぬ予感がしたロークは、
剣を台座から抜き、背中にセットして東に向かって走り出した。
第二話“大海原の戦士”
ロークが向かったのは、大地の祠より東にある“祈りの石碑”。
祈りの石碑とは五十年の昔に起こった暗黒戦争の末期、平和に貢献した人々を称えて作られた石碑であり、この世界の平和の象徴でもある。
と、祈りの石碑に向かって走るロークの横に、一人の男が現れた。男は左の腰に長剣を装備している。
「よぉローク。お前も気づいたな」
軽い口調でロークにこう言う男の名はリジナ。
実は彼もフォーグレイスの一人“大海原の戦士”で、フォーグレイスの中で一番性格が軽く、
親しみやすい男として有名(?)だ。
「当たり前だ。
……それにしても、こんなに異常な気の乱れは初めてだ」
「ああ。コイツは絶対何かあるぜ」
「……ところで、他の二人は?
俺とリジナが動いててあの二人が動かないのは不自然だぞ?」
それを聞くと、リジナはニッと笑って
「さあな、もうすぐ来るんじゃないか?」
と簡単に答えた。ロークは分かったような分からなかったような複雑な顔をした。
第三話“謎の女性”
ただならぬ予感を感じた二人は、遂に祈りの石碑にたどり着いた。
石碑はまるで何事もないかのようにそこに立ち尽くしていた。
リジナが近くによって見てみる。そして辺りを見回してこう言った。
「何だ? 何もねえな、どうなってんだ」
ロークも辺りをさっと見回してみた。リジナの言うとおり、何もなかった。
その時だった。パァンという音と共に、小さな蒼い風が石碑を取り巻いた。
「うわっ!! 何だ!?」
近くにいたリジナは驚いて腰を抜かしてしまった。
「リジナ! 下がれっ!!」
ロークが後ろから叫ぶ。リジナはサッと体制を立て直し、後ろに下がった。
現れた蒼い風は下から上へと巻き上がり、そして上に高く上がって地面に触れた。その瞬間、風は一瞬光って消え、変わりに一人の女性が現れたのだ。女性はそこに倒れこんでいる。
「!!」
「!!」
二人は驚いて女性に近づいた。如何やら気絶しているようだ。
「おいっ! 大丈夫か?」
リジナが女性の肩を揺する。が、反応はない。
ロークは女性を見た。この時代には珍しい格好をしている。手に目を移すと、その手には紛れもなく杖が握られていた。
そして、その杖にはある紋章が描かれていた。限りなく続く荒野に一つの祠。
ロークはハッとして自分の持つ剣の柄を見た。なんと、先端には女性の杖と同じ紋章が描かれていたのだ。この紋章は、“大地の守護者”の証なのである。
「……リジナ、これを見ろ」
ロークは女性の杖に描かれた紋章を指差した。
「!! こ、これは……」
リジナは紋章を見て言った。
「ああ、大地の守護者の証だ」
「ってことは……」
リジナはロークの顔を見た。ロークは真剣な眼差しでこう言った。
「この女は“今”ではない何時かの、紛れもない“大地の守護者”なんだ」
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2004/10/16(Sat)16:11:07 公開 / Spark
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■作者からのメッセージ
第三話まで完了しました。
アドバイス、文句、待っております。